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2009年9月24日 (木)

平成21年改正法と共同株式交換

平成21年改正で共同株式移転に関する届出制が導入されました(新法15条の3第2項以下)。

では新法下で共同株式交換はどのように取り扱われるのでしょうか。

まず、旧法下では共同株式交換も単独株式交換も株式の取得として事後報告の対象とされていました。株式交換においては株式交換親会社が株式交換子会社の株式を取得するので、株式交換親会社に株式取得の届出義務が生じるのは、いわば当然のことでした。

そしてこの取扱は、新法に株式交換についての特別の規定がないことからすると、新法においても変わらないと思われます。

例えば、株式交換の結果親会社となる会社をA社、株式交換の結果子会社となる会社をB社とすると、株式交換によりA社はB社の株式100%を取得するので、A社に株式取得の届出義務が発生します(もちろんA社の国内売上高合計額が200億円超、B社の国内売上高(子会社があればそれも加える)が50億超であることが前提です)。

さらに、B社株主の中に国内売上高合計額200億円超の会社があると、当該B社株主が株式交換の末A社の株式20%超を取得する場合、当該B社株主にも、A社株式を取得したことについての株式取得の届出義務が発生することになりますので注意が必要です(なお、この点は企業規模の基準が総資産から国内売上高に変わった点を除き、基本的に旧法下でも同じことです)。

そこで共同株式交換に関連して以下のような問題が生じると思われます。

例えば、ここに共同株式移転により経営統合を計画しているA社とB社があるとします。話を簡単にするためA社およびB社には親会社および子会社がなく、A社とB社の間には株式の持ち合いはないとします。さらに、A社の国内売上高は200億円超(200億をやや超える、という意味です。以下同じ)、B社の国内売上高は50億円超とします。

ここでオーソドックスに共同株式移転を行うと、新法15条の3第2項により、事前届出義務がA社およびB社に発生します。

では、この2社が共同株式移転をせずに、①新たなペーパーカンパニーC社を設立し(C社の株主には司法書士さんにでもなってもらいます)、②B社(国内売上高50億超)が完全子会社、C社が完全親会社となる株式交換を行う、③次いでA社(国内売上高200億超)が完全子会社、C社が完全親会社となる株式交換を行う、とした場合、どうなるでしょうか。

この場合、①の時点でペーパーカンパニーであるC社の国内売上高はゼロなので、B社との株式交換(②)について株式取得の届出は不要です。

次に、③のC社とA社の株式交換についてもC社に株式取得の届出義務は生じません。なぜなら、②の株式取得が終わった時点でC社の国内売上高合計額はB社の国内売上高である50億円超だけであり、株式取得の届出要件の1つである《取得会社の国内売上高合計額が200億円超》を満たさないからです。

結局、どの会社にも届出義務は生じないことになります。実質的にはA社とB社の共同株式移転と変わらないにもかかわらず、です。

以上のことは、②→③の順序で行うのではなく、②と③を同時に行う(共同株式交換)であっても異ならないと思われます。株式取得側の国内売上高200億円超というのは取得の直前で判断すべきだからです。A社もB社も国内売上高200億円超の場合には、同時にやるしか手は無さそうです。

なお、「脱法行為を禁じる17条に反するのではないか」という議論は当然あり得るので注意が必要です(しかしこの点については、新法が共同株式移転については規定を設けながら株式交換については敢えて規定を設けなかったことからすると、株式交換については引き続き株式取得一本で取り扱うという趣旨であり、脱法というのは筋違いではないかと思いますが、いかがでしょうか)。

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