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2009年9月28日 (月)

日経新聞法務インサイド(9月28日)

今朝の日経朝刊の「法務インサイド」の排除型私的独占についての特集に私のコメントを引用していただきました。実務界の方の反応も大変興味深かったです。

改めて記事を読み返して思うのですが、今回の課徴金対象行為の拡大で、独禁法の解釈論としては本筋ではない些末な問題で多くの問題が生じるように思われました。

例えば排除型私的独占の課徴金の算定対象である売上額の範囲を決める「一定の取引分野」などは、課徴金が絡むために、本来の「一定の取引分野」の解釈とはかけ離れた独特の解釈がなされる可能性があると思われます。

つまり、通常「一定の取引分野」といえば、商品市場と地理的市場で画される一定の競争の場のことを意味し、企業結合の場合に最も激しく争われ、またそのために最も精密な議論がなされます。

しかし、排除型私的独占における「一定の取引分野」は、これとは異なった考え方がまかり通るような気がします。

例えば、企業結合の場合に「一定の取引分野」は日本全国だ、とわれるような商品でも、排除型私的独占の課徴金算定の際に「全国」を「一定の取引分野」としてしまうと余りに課徴金の額が大きくなるので、例えば、排除された事業者の店舗が東京都にしかないような場合には東京都が「一定の取引分野」であるとして、課徴金の額の辻褄を合わせる、というような考え方が取られるのではないか、と予想します。

これにはそれなりの根拠があります。例えば入札談合の場合には従来から「合意の対象が一定の取引分野である」という考えが公取の実務の中でまかりとおってきました。この傾向は、リニエンシーが導入されて以降、より一層強まったように思われます(それでもこちらはリニエンシーを申請する側なので、場合によっては市場を細切れに認定してもらった方が良いこともあり(その方が、小さな市場では3位以内に滑り込めたりする)、そういう公取の扱いに文句を言うこともないのですが)。

つまり、これと同じようなこと(=根拠のない狭い市場画定)が、排除型私的独占の課徴金算定の際に起こるのではないか、と思うのです。

違反者の全売上を基準にするのではなく、排除された競争者の事業活動の範囲を基準に課徴金を算定するというのは、ある意味しっくり来ますし、結論も穏当なので、理論的根拠は疑問ですが、公取には案外すんなり認められそうな気がします。

このこと一つを取っても、課徴金に公取の裁量を認めないために生じた技術的な問題が、多くの無用な紛争を生むような気がしてなりません。

刑事事件の情状立証で、情状(例えば被害者弁償は済んでいるか、被告人は反省しているか)と刑期の間に明確な、数学の関数のような関係があったら、無用な争点が増えてしまうでしょう。排除型私的独占や不公正な取引方法の課徴金算定方法は、そんな危うさを感じます。

やはり公取の裁量を認める課徴金制度にすべきだったのではないでしょうか。

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