株式取得の事前届出が困難な場合(規則2条の7)
2009年の改正で株式取得が事前届出化されましたが、「あらかじめ届出を行うことが困難である場合として公正取引委員会規則で定める場合」(新法10条2項但し書き)には、届出が不要とされています。
ここで念のため申しますと、予め届出をすることが困難な場合には、「それなら事後に届出をすればいいじゃないか」となりそうですがそうではなくて、届出をするのがまったく不要(事後届出も要らない)になります。
では、予め届出をするのが困難な場合はどういう場合かと言えば、公取規則(昭和28年規則1号)の改正案2条の7に、以下のように定められています。
①株式分割・併合による取得
②株式無償割当による取得
③取得条項付株式又は取得条項付新株予約権の取得事由発生による取得
④投資事業有限責任組合の有限責任組合員が、当該組合の組合財産として取得する場合
⑤投資事業を営む民法上の組合の非業務執行組合員が、当該組合の組合財産として取得する場合
⑥金銭の信託の信託財産として株式が取得される場合で、会社(信託の委託者又は受益者として自ら議決権を行使でき、又は信託の受託者に議決権行使の指図をできることにより株式取得の届出義務を負う会社のことです)が、金融商品取引業者と投資一任契約(投資判断の全部を委任するものに限ります)を締結し、信託受託者が株式を取得する場合
⑦金銭の信託の信託財産として株式が取得される場合で、信託契約の内容として信託受託者が投資判断(とそれに基づく投資)を行うことになっている場合(この場合も⑥と同じく議決権の行使又は行使の指図をできる会社が届出義務を負います)
①~③は、株式発行会社の行為によって新たに株式を取得させられることになるので、事前の届出が困難、ということです。
株式分割の効力発生日が株主総会決議(又は取締役会決議)よりもだいぶ先に設定されているようなスケジュールの場合には、予め届け出ることが困難でないこともありそうですが、公取規則では一律に「困難」ということになっています。
ただ、株式発行会社が普通株式だけを発行しているような場合には、株式分割・併合や株式無償割当があっても、株式を取得する者の議決権の割合は変わらないので、届出をすることは必要なさそうです。
④~⑦は、株式の取得の判断を届出会社自身が行わない場合です。
では、他に事前届出が困難な場合として付け加えておくべきことはないでしょうか。
例えば、外国会社の株式分割は規則2条の7第1号の「株式の分割」に含まれるのでしょうか。素直な文言解釈からすると含まれないように思われます。同条2号や3号は日本の「会社法」に規定する株式無償割当、取得条項株式・新株予約権の取得であることが明記されています。
そうすると、外国会社が株式分割を行う場合には事前届出が必要ということになりそうです。
④⑤についてはせっかく外国の類似の制度も含まれると書いているのですから、①~③についてもそのように(外国会社の株式分割も含むというように)するべきではなかったでしょうか。
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