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2009年8月 4日 (火)

国内売上高の定義

国内売上高の定義

企業結合の届出に関する公取委規則の改正案が発表されました。

特に外国企業にとっては注目の「国内売上高」の定義については、規則案2条1項で以下の3つの合計となりました。

1.国内の消費者に対する商品・役務の売上高(2条1項1号)

2.法人等(社団、財団、個人事業者を含む)に対して国内で供給する商品・役務の売上高(同2号)

3.法人等に対して外国で供給され国内を仕向地とする商品の売上高(同3号)

細かい条文の内容は公取のHPをご覧いただくとして、いくつか気がついたことを書きますと、まず、2号のかっこ書きで

「(当該会社等〔企業結合の当事者のことです〕が、当該取引に係る契約の締結時において、当該法人等〔販売先のことです〕が当該商品の性質を変更しないで外国を仕向地としてさらに当該商品を取引すること又は当該法人等の外国に所在する営業所、事務所その他これらに準ずるもの・・・に向けて当該商品を送り出すことを把握しているときにおける当該取引に係る売上を除く。)」

とされているので、販売先が商品を加工して外国に販売する場合には、当該商品は国内売上高にカウントされてしまうことになります。

例えば、外国企業が液晶パネルを日本へ輸出し、液晶パネルを購入した日本企業が国内の工場で液晶テレビに加工して外国に輸出した場合、完成品であるテレビの需要者は外国にいますが、「液晶パネル」が「テレビ」に変わっているので、企業結合の届出との関係では、そのような外国へ輸出されるテレビに組み込まれた液晶パネルの分についても「国内売上高」に算入されることになります。

このように外国転売分の国内売上からの除外を「性質又は形状を変更しない」場合に限る合理的な理由はないと思います。性質又は形状を変更しようとしまいと、国内市場への影響は異ならないと思われるので、外国転売分は一切国内売上から除外するか、いっそのことまったく除外しないか、どちらかに統一した方が良かったのではないでしょうか。

次に3号(法人等を取引の相手方として外国で供給した場合)では、

「当該会社等〔企業結合の当事者のことです〕が、当該取引に係る契約の締結時において、当該法人等〔販売先のことです〕当該商品の性質又は形状を変更しないで本邦を仕向地としてさらに当該商品を取引すること(中略)を把握している」

とされているので、取引の直接の相手方(「当該法人等」)が日本に商品を送る場合にのみ、外国で供給した商品が国内売上高に算入されることになります。つまり、「当該法人等」がたとえば間に商社を噛まして日本に送った場合には、国内売上高に算入されないことになります。

そのような脱法(?)を許して良いのか、という疑問もあり得るところですが、こういう割り切りの良さは歓迎すべきであろうと思います。

さて、同規則の2条2項では、

「会社等〔企業結合の当事者〕は、前項各号の規定による売上高を計算することができない場合においては・・・適正かつ合理的な範囲において、同項の規定の趣旨及び一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に基づくものであって、前項の規定とは異なる計算方法により国内売上高を計算することができる。」

とされています。

「売上高を計算することができない場合」って、どんな場合なんでしょう?取引先が日本に品物を送るかどうか企業結合の当事者には分からない場合は、企業結合の当事者が「把握しているとき」(2項2号・3号で)に該当するかどうかで処理すれば良いので、「売上高を計算することができない場合」というのはそういう事態を想定しているのではないようです。

国際的な大企業の場合、商品の供給先が日本かどうかなんていちいち把握していない場合もあると思いますので、そのような場合も「計算することができない場合」に含めて解釈してもらいたいものです。できれば規則の条文を「計算することが困難である場合」とでも変更して欲しいところです。

また、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」というのは、どうして挿入されたのでしょう?つまり、売上が国内での売上か外国での売上かを決める「会計処理の基準」というようなものがあるのでしょうか。私の知る限り、そのようなものはありません。

とすると結局、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に基づく」というのは、たんなる枕詞に過ぎず(まともな企業なら公正妥当な会計基準に従っているでしょうから)、「(第1項)の規定の趣旨」に合致するかどうかだけで国内売上かどうかを判断する、ということになると思われます。

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