株式の「保有」の届出の廃止
2009年改正前の独禁法(旧法)では、議決権の保有割合が一定の割合を超えた場合には、新たな株式取得が無くても届出を要することとされていました(旧法10条2項)。
例えば、株式発行会社が自己株式を取得したことにより議決権の総数が減ったために株式所有会社の議決権保有割合が届出基準を超えてしまった場合には、新たな株式取得はありませんが、届出を要することとされていました。
これに対して新法では、届出を要するのは株式を取得した場合に限られることが条文上明らかにされました(新法10条2項)。
つまり、前述のような株式発行会社の自己株式取得により議決権割合が上がってしまったような場合には、届出を要しないことになります。
このような改正がなされたことは株式取得の届出が事前届出化されたことと関係しているように思われますが(株式を取得しないのに議決権割合が上がってしまう場合に事前に届出を要求するのは困難な場合もある)、新たな取得もないのに届出を要するとしていた旧法のほうが問題なのであって、新法の立場は妥当なものとして歓迎すべきと思います。
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