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2009年7月

2009年7月31日 (金)

排除型私的独占ガイドライン(不公正な取引方法との限界)

排除型私的独占ガイドライン(まだ「案」ですが)は、排除型私的独占に課徴金が課せられることになったことにともない、正常な競争との区別がつきにくい排除型私的独占の限界を明確にするために策定されるとのことです。

このように正常な競争と私的独占を区別するということも大事ですが、もう一つ大事なことは、私的独占と不公正な取引方法とを十分に区別できるかどうか、ということです。

排除型私的独占には、不公正な取引方法と似たような行為も多く含まれます。ガイドラインでも、コスト割れ供給が私的独占になり得るとされています。

それでは、私的独占としてのコスト割れ販売と、不公正な取引方法としての不当廉売との区別はどこにあるのでしょうか。独禁法2条3項9号の不当廉売の文言と、ガイドラインのコスト割れ供給の説明を読み比べても、両者の区別の限界がどこら辺にあるのか、今ひとつよく分かりません。

両者の区別が意識されているのかな、と思われる点として、私的独占の場合には「参入の困難性」が考慮要素として挙げられています。これは、読み方によっては、コスト割れ供給によってその供給者が被った損失をその後取り戻して余りあること(recoupできること)が私的独占の成立のためには必要であるとする趣旨であるようにも思われます。日本では一般的に、不公正な取引方法の不当廉売の場合には、後に損失を取り戻せることは違反成立のために必要でないと解されているので、この点が両者の区別ということなのかも知れません(ただ、それならそうともう少し分かり易く書いて欲しいところです)。

私的独占としてのコスト割れ供給なら課徴金は売上の6%であるのに対して不当廉売なら3%で、それなりに両者の違いの意味は大きいと思われます。それにもかかわらずガイドラインは全体的に、両者の区別に無頓着なのではないでしょうか。

重要なポイントとしては、ガイドラインで私的独占はおおむねシェア2分の1を超える業者について成立すると明記されました。そのこと自体の妥当性はまた別の機会に考えるとして、結局、私的独占と不公正な取引方法の区別は行為者のシェアで決まる、という安易な処理が定着しそうな気がします。

しかし両者の区別は、根本的には、反競争性の程度が、競争の実質的制限のレベルにまで至るのか(私的独占の場合)、公正競争阻害性のレベルにとどまるのか(不公正な取引方法の場合)に求められるべきです。

例えばガソリンスタンドの場合には地理的市場は比較的狭く画定されるべきと思われますので(安いガソリンを求めて何十キロも遠くのガソリンスタンドに行く人は少ない)、合理的に狭く画定された市場ではシェア50%以上のガソリンスタンドというのは全国にいくらでもあると思われますが、それらのガソリンスタンドが、例えば全国シェアは数%だとか、県内でのシェアは20~30%に過ぎないからとかいうことで、何となくの印象で不公正な取引方法にとどまってしまう、という安易な処理がなされるような気がしてなりません。

2009年7月29日 (水)

除斥期間の経過措置

2009年の改正で排除措置命令と課徴金納付命令の除斥期間が3年から5年に延長されました。除斥期間についての経過措置は附則3条(排除措置命令)および4条(課徴金納付命令)にあります。

課徴金納付命令の方が排除措置命令よりも命令を受ける側にとっては重要と思いますので課徴金納付命令のほうで説明しますと、附則4条では、

「この法律施行の際その実行期間・・・の終了した日から3年を経過している旧独占禁止法7条の2第1項〔不当な取引制限〕・・・に規定する違反行為については、新独占禁止法第7条の2第27項の規定にかかわらず、課徴金の納付を命ずることができない。」

とされています。

そこで施行日が2010年1月1日とすると、例えばカルテルを2006年10月31日に止めている場合には、2010年1月1日の時点で実行期間の終了日から3年以上経過しているので、課徴金納付命令は課せられないことになります。

これに対して例えばカルテルを止めたのが2007年3月31日の場合には、2010年1月1日の時点で実行期間の終了日からまだ3年経過していませんので、新法の5年の除斥期間が適用されることになります。つまり、除斥期間が満了するのはカルテルの終了から3年が経過した2010年3月31日ではなく、5年が経過した2012年3月31日となります。

このように、旧法下でなされた違反行為であっても、新法施行の時点で除斥期間が満了していない場合には、新法上の5年の除斥期間が適用されるので注意が必要です。

2009年7月28日 (火)

株式取得の経過措置

株式取得については今回の改正により事前届出化されましたが、経過措置が附則10条にあります。

附則10条では、

「新独占禁止法第10条2項〔株式取得の届出〕及び第8項〔待機期間〕の規定は、施行日から起算して30日を経過した日以後に行う株式の取得について適用し、同日前に行う株式の取得又は所有については、なお従前の例による。」

とされています。

公取の記者会見によると施行日は来年の1月1日を目指すとのことなので、仮に施行日が来年1月1日だとすると、「施行日から起算して30日を経過した日」というのは平成22年1月30日を経過した日(期間が午前0時から始まるので初日(1月1日)が算入されます。民法140条但し書き)を意味するので、結局、平成22年1月31日以後(同日を含む)に行う株式取得については新法が適用され、事前届出をすることになります。

反対に、平成22年1月30日まで(同日を含む)に行われた株式取得については旧法が適用され、事後報告で足りることになります。

なお、この経過規定は「株式の取得」がいつであったかによって旧法・新法の適用を分けており、「株式の取得」というのは株式の所有権の取得のことであると解されています。代金の支払いや名義書換の有無とは関係が無く、株式譲渡契約の締結日とも関係がありません。

したがって、例えば今年中に株式譲渡契約を締結していても、株式の移転の日が来年2月に設定されているような場合には、新法が適用されて事前届出が必要になりますので注意が必要です。

2009年7月27日 (月)

株式の「保有」の届出の廃止

2009年改正前の独禁法(旧法)では、議決権の保有割合が一定の割合を超えた場合には、新たな株式取得が無くても届出を要することとされていました(旧法10条2項)。

例えば、株式発行会社が自己株式を取得したことにより議決権の総数が減ったために株式所有会社の議決権保有割合が届出基準を超えてしまった場合には、新たな株式取得はありませんが、届出を要することとされていました。

これに対して新法では、届出を要するのは株式を取得した場合に限られることが条文上明らかにされました(新法10条2項)。

つまり、前述のような株式発行会社の自己株式取得により議決権割合が上がってしまったような場合には、届出を要しないことになります。

このような改正がなされたことは株式取得の届出が事前届出化されたことと関係しているように思われますが(株式を取得しないのに議決権割合が上がってしまう場合に事前に届出を要求するのは困難な場合もある)、新たな取得もないのに届出を要するとしていた旧法のほうが問題なのであって、新法の立場は妥当なものとして歓迎すべきと思います。

2009年7月26日 (日)

不公正な取引方法の定義(公正競争阻害性)

2009年独禁法改正で不公正な取引方法の一部が、一般指定から法律に格上げされ(新法2条9項1号~5号)、課徴金の対象とされました。

ところで、旧法2条9項(不公正な取引方法の定義。新法では2条9項6号に相当)では、不公正な取引方法が成立するためには公正な競争を阻害するおそれがあることが、定義自体に明示されていました。

ところが、今回法律に格上げされた不公正な取引方法(1号~5号)では、その定義に「公正な競争を阻害するおそれ」(公正競争阻害性)が明示されていません(6号には明示されています)。

これを文字通り読めば、法律に格上げされた不公正な取引方法が成立するためには、公正競争阻害性が不要、ということになりそうです。例えば、再販売価格維持(新法2条9項4号イ)は、検討対象市場の商品の価格等が維持されるおそれがなくても違法ということになりそうです。

しかし、これは明らかにおかしいので、法律に格上げされた不公正な取引方法についても、解釈上、公正競争阻害性を要すると考えるのだと思います。

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