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2024年6月 5日 (水)

2週間あけて将来価格二重価格表示をくり返す場合に関するガイドラインとパブコメの論理に関する若干の疑問

二重価格表示ガイドラインp7では、

「・・・比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する期間がごく短期間であったか否かは、そもそも当該将来の販売価格での販売が、比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として行われていたものではないかなどにも留意しつつ、具体的な事例に照らして個別に判断されるが、一般的には、事業者が、セール期間経過後直ちに比較対照価格とされた将来の販売価格で販売を開始し、当該販売価格での販売を2週間以上継続した場合には、ごく短期間であったとは考えられない(注6)。」

と規定されています。

そして、これに関連して同ガイドラインパブコメp24では、2週間だけ売ったら値下げしてもいいのか、という質問に対して消費者庁は、

「一般的には、セール自体の期間にかかわらず、比較対照価格とされた将来の販売価格での販売が2週間以上継続されれば「ごく短期間」であったとは考えられませんが、本執行方針第2の1に記載のとおり、合理的かつ確実に実施される販売計画を有しているかどうかが問われることになります。将来の販売価格は、将来における需給状況等の不確定な事情に応じて変動し得るものですので、長期間のセールを実施した後に、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売することができるかどうかの検討が必要となります。

なお、長期のセールを行った後に将来の販売価格での販売期間を2週間実施するということを何度も繰り返したことにより、そのことが消費者にも認識され、将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況においては、当該将来の販売価格での販売が「比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として」行われているとみられる可能性があることに注意する必要があります。」

と回答しています。

たしかに、

「長期のセールを行った後に将来の販売価格での販売期間を2週間実施するということを何度も繰り返したことにより、

そのことが消費者にも認識され、

将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況においては、

当該将来の販売価格での販売が

「比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として

行われているとみられる可能性がある」

という理屈は理解できるのですが、他方で、そのようなくり返しが行われることが

「消費者にも認識され、

将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況」

であれば、消費者が将来価格二重価格表示の有利性を誤認しているということもなく、そもそも、

「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの・・・よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(景表法5条2号)

に該当しなくなるのではないでしょうか?

パブコメを立てれば法律が立たず、ということろでしょうか。

こういう脱法的なくり返しがけしからんという価値判断は理解できるので、これを違法にする法律構成もありそうですが、私にはちょっとわかりません。

少し考えてみたいと思います。

2024年5月27日 (月)

キャンペーンのくり返し(同一性)に関するセドナエンタープライズに対する措置命令の担当官解説の疑問

(株)セドナエンタープライズがキャンペーンのくり返しをしたとして、2022年3月15日に有利誤認表示で消費者庁から措置命令を受け、その担当官解説が公正取引867号64頁に掲載されています(羽原広一「株式会社セドナエンタープライズに対する景品表示法に基づく措置命令について」公正取引867号64頁)。

この事件は、セドナエンタープライズが、その販売する脱毛器について、期間限定で、30%の値引きに加えレビューを投稿すればさらに15%のポイントを付与するキャンペーンと20%のポイントを付与するとのキャンペーンを交互に行っていたことが、有利誤認表示と認定されました。

つまり、同じ付与率で付与をくり返していたわけではないけれど、それでも有利誤認表示になるのかが問題となりました。

この点について前記担当官解説p65では、

「(1) 「乗り換え割」の期間限定表示

「乗り換え割」〔注・不要になった脱毛器と交換すると割引でセドナの脱毛器が購入できるキャンペーン〕の期間限定表示については、

1か月毎に期限を区切って月交代で5%違うポイント〔注・15%と20%〕を繰り返し付与していたことから、

ポイント数に着目すれば「期間限定」であったともいい得ることから、

毎月繰り返されるポイントの付与に変更があった場合でも、その前後のキャンベーンと同ーのキャンベーンであると評価できるのかという点が問題となる。」

「この点、ポイントの付与は、レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていたが、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。

したがって、本件乗り換え割の期間限定表示の取引に付随するポイントの付与については、

毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価されることから、乗り換え割の期間限定表示は、有利誤認表示に該当するとされたと考えられる。」

と解説されています。

しかし、私はこの解説はおかしいと思っています。

キャンペーンのくり返しが有利誤認表示になるのは、先行する第1キャンペーンと後続の第2キャンペーンが「同一のキャンペーン」だからではありません。

キャンペーン終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示が実際と異なるから、優良誤認表示になるのです。

たとえば、第1キャンペーンで「期間限定、通常価格より50%OFF」と表示していれば、その意味するところは、キャンペーン期間が終了したら「通常価格」に戻る、ということでしょう。

なので、キャンペーン期間が終了したら、通常価格に戻さないといけません。

当然のことだと思います。

たしかに、第1キャンペーンと第2キャンペーンが同一の内容であれば、第1キャンペーンの表示は有利誤認表示になるのでしょうけれど、同一内容である場合というのは、キャンペーン期間終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示内容が実際と異なる場合の一例に過ぎません。

セドナの事件での問題の表示は、

「・「乗り換え割って? 不要になった脱毛器 ※光脱毛器・レーザー脱毛器のみ 除毛マシーンやシェーバーは不可 or 脱毛サロ
ン会員証 ※脱毛ラボ以外 を送ることで・・・ 3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFFで脱毛ラボ Home Edition(新古品※3)を購入できる超おトクなサービスです!」

・「※2 レビュー投稿なしのお場合は30%お値引き、レビュー投稿ありの場合は30%お値引き+15%ポイント付与で実質45%お値引き価格で購入いただけます」

というものでしたが、このように、「3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFF」と表示すれば、3月15日以降は45%オフをしない、つまり、通常価格に戻す(0%オフにする)、という意味であると解するのが自然だと思います。

私見と軌を一にするといえるものとして、消費者庁の「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(将来価格ガイドライン)の第2-1では、

「事業者が、セール期間経過後に比較対照価格とされた将来の販売価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画・・・を、セール期間を通じて有している必要がある」

とされており、有利誤認表示とならないためには「比較対照価格とされた将来の販売価格」で販売しなければならないことを当然の前提にしているものといえます。

ほかにも前記担当官解説にはいろいろと問題があって、まず、

「レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

という部分ですが、実際に15%または20%のポイントは付与されていたわけですから、「15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」というのはまずいと思います。

これではまるで、15%または20%のポイントを実際には付与していなかった(のに付与するかのように表示していた)かのようです。

ここは正しくは、

「レビューを投稿すれば、キャンペーン期間に限り、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

というべきでしょう。

また、仮に同一内容かどうかを基準にする消費者庁の見解に立っても、

「付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。」

という理由付けは荒っぽすぎると思います。

ここで言っていることを文字どおりに理解すれば、同一性(有利誤認表示の成否)は、ポイントキャンペーンか、そうでない(例えば、単純な値引き、抽選でハワイ旅行プレゼント、記念品進呈、など)か、で判断し、ポイントキャンペーンであるかぎりは付与率にかかわらず(「ポイントが付与されることに変わりはなく」)、一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識する、といっているのです。

しかし、ポイント付与率(≒値引率)に5%もの差(15%と20%の比を取れば33.3%の差)があれば、顧客誘引力もずいぶんと違うでしょうから、それなのに「同一のキャンペーン」というのは、ちょっと無理なんじゃないかと思います。

もちろん私見でも、ポイントキャンペーンとハワイ旅行プレゼントは別のキャンペーンと考えています。

しかしそれは、「期間限定でポイントを付与する」という表示が、キャンペン期間経過後はポイントを付与しないという意味に解されるにとどまり、およそいかなるキャンペーンも行わないとまでは読めないからです。

ほかには、担当官解説は、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはな(かった)」・・・①

と指摘する一方で、

「毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価される」・・・②

とも言っており、

①では、ポイント付与率の違いは意味がなく、ポイントが付与されることに変わりがなければ違反なのだ、

とも取れる説明をしながら、

②では、「若干の」変更を超える変更であれば、同一キャンペーンと評価されず違反にはならないのだ、

とも取れるような説明をしており、いったいどっちなんだと言いたくなります(たぶん、②でしょうけれど)。

こんな大事なところの説明は、もうちょっと気を遣ってほしいものです。

このように、担当官解説には理論的な問題があるのですが、実務的には、15%と20%くらいの差でも同一のキャンペーンとみなされてくり返しが有利誤認表示になるということがはっきりしたことが大きいと思います。

これは、ポイントキャンペーンだけでなく、値引きキャンペーンでも同じでしょう。

ですので、キャンペーンの内容を多少変えれば違反を免れられると考えるのは、危ないと思います。

2024年5月20日 (月)

JAROでの講演がReport JAROに載りました。

2月15日にJARO(日本広告審査機構)さんで「最近の措置命令から読み解く不当表示対応のポイント」というセミナーをオンラインでさせていただいたのですが、その講演要旨がReport JAROの5月号に掲載されました。

Jaro
Report JAROではこれまで何度かその時々の最新の景表法の措置命令の解説を書かせていただいているのですが、それをいちど講演の形で、ということで実現したもの(の講演録)です。

いつもReport JAROは実務上有益な情報が満載で、とくに巻頭特集はそうなのですが、今回私の講演録が巻頭を飾ってしまいました💦

講演を振り返ってみると、われながらなかなかマニアックな内容でしたが、JAROの会員さんには目が肥えた方が多いそうなので、そのあたりをかなり意識しました。

ふだんの原稿の場合と比べると、やはり講演ではパワーポイントを使いながらていねいに説明できるので、その点はよかったと思っています。

私は世の中は論理で成り立っていると思っているので、基本的に図やイラストで説明するのが嫌いで、文字以外の情報は常に不正確な部分が残るので文字情報しか信じないようにしているのですが、景表法は表示物(場合によっては動画なども)を評価するので文字だけというわけにも行かず、やっぱりパワポは便利ですね。

講演に参加いただいた方も、参加されなかった会員のみなさまも、ご一読頂けると幸いです。

2024年5月18日 (土)

労務費転嫁ガイドラインについて

公正取引委員会は2023年11月29日、内閣官房と連名で、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(労務費転嫁ガイドライン)を公表しました

このガイドラインには、発注者は取引先から言われなくても人件費高騰による値上げの必要性について自発的に協議しないといけないとされていているなど、法律家の目からみるとおよそ法律論の名に値しないようなひどい内容なのですが、このガイドラインに書いてあるようなことに反すると社名を公表するなど(このガイドライン公表前ですが、2022年12月27日公取委報道発表)、現在の公取委はほんとうにこういう運用をしているので、どうしようもありません。

いちおう公平を期すためにガイドラインの関連箇所を引用しておくと、p3では、

「発注者が本指針 に記載の 12の 採るべき行動/求められる行動 に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法 及び 下請代金法 に基づき厳正に対処していく 。」

としており、12の行動を採らなかったからといって直ちに優越的濫用に該当するとまではいっていません。

つまり、「公正な競争を阻害するおそれがある場合には」というのは、いわゆる黒灰白の3分類によれば「灰」に該当するものについての定型句なので、これらに該当してもケースバイケースで判断する、ということです。

ただ、優越の公正競争阻害性なんて、流取ガイドラインや知財ガイドラインと違って、ほとんどあってないような要件で、行為の外形が認められたら即公正競争阻害性ありとされるので、ほんらいは限りなく黒に近いともいえます。

また続けてガイドラインでは、

「他方で、後記第2の1〔発注者が採るべき6つの行動〕及び3〔双方が採るべき2つの行動〕に 記載の 全ての行動を適切に採っている場合には 、

取引条件の設定に当たり取引当事者間で十分に協議が行われた もの と考えられ、

通常 は 独占禁止法 及び 下請代金法 上の 問題は生じない と考えられる ことから、

独占禁止法 及び下請代金法 違反行為の未然防止の観点からも、同行動に沿った積極的な対応が 求められる 。」

としており、12の行動はいわばセーフハーバーないしはベストプラクティスという位置付けなのだということのようです。

でも、実際には、前述のとおり12の行動は違反すると限りなく黒に近いと捉えられかねない記載にしており、ベストプラクティスというのとはまったく異質な印象を受けます。

いわば、ベストプラクティスをするように脅しているようであり、国家権力のありようとしてたいへんいやらしいものを感じます。

でも本音のところでどこまで真面目にこのガイドラインに付き合わないといけないのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれないので、私なりの感覚を述べておくと、12の採るべき行動のうち、これに反すると注意を受ける可能性があると思われれるのは、

受注者が求めなくても価格引上げ協議をすること(発注者の行動②)

公表されたもの以外の根拠資料を求めないこと(発注者の行動③)

値上げを求められたことを理由に不利益な取扱いをしないこと(発注者の行動⑤)

でしょうね。

逆に、

経営トップの関与(発注者の行動①)

受注者の拙い交渉には値上げの考え方を提案すること(発注者の行動⑥)

は、さすがにこれに従わなかったからといって直ちに注意を受けると言うことは考えにくく、あくまでベストプラクティスなのだと思います。

経営トップ(代表取締役社長に 加え 、代表権を持つ取締役等実質的に会社組織の最上位に位置する者も含む)の関与については、具体的には、

①労務費 の上昇分 について取引価格 への 転嫁 を受け 入 れ る 取組方針を 具体的に 経営トップまで上げて決定すること、

②経営トップが同方針 又はそ の要旨 など を 書面等の形 に 残る方法で 社内外に示すこと、

③その後の取組状況を定期的に経営トップに報告 し、 必要に応じ、経営トップが更なる対応 方針 を示すこと。

が求められていますが、そもそもこんなことにまで経営トップが関与しなければ独禁法違反になるなんていう解釈は馬鹿げてます。

きっと、カルテルで経営トップの関与が重要だというのに着想を得た思いつきのレベルでしょう。

受注者の拙い交渉には値上げの考え方を提案すること(発注者の行動⑥)については、関連部分を引用すると、

「受注者からの 申入れ の巧拙 にかかわらず 受注者と 協議を行い 、必要に応じ 労務費上昇分の価格 転嫁に 係る考え方を提案する こと。」

とされています。

つまり、値上げの要求の仕方が分からないという取引先には、発注者が手取り足取り値上げ交渉の仕方を教えてあげなさい、ということです。

私はそんな取引先は潰れても仕方ないと思いますが(あるいは経営コンサルでも雇うべきでしょう)、公取はけっこう本気のようです。

このガイドラインでもう1つ気になったのは、なぜか発注者の行動⑤(不利益扱いの禁止)のところ(p11)に書いてあるのですが、

「そもそも、労務費も原材料 価格 やエネルギーコストと同じく 適切 に 価格 に反映 させるべき コストであ り 、発注者においては 、 受注者から 、原材料価格やエネルギーコストとは明示的に分けて 労務費の上昇を理由とした取引価格の引上げ を求められた場合 についても協議のテーブルにつくことが求められる。」

という記述です。

要は、人件費とその他のコストは分けて協議しないといけない、ということです。

分けて積み上げていったら全部まとめて交渉するときよりも大きな値上げに結びつきやすいのが通常だと思われるので、発注者の側は要注意でしょう。

下手をすると、原材料費の高騰を理由に値上げ交渉して妥結したら、その後に人件費の高騰を理由に別途値上げを要求された、というようなことも理屈の上では起こりうるわけです。

その当否はさておき(そもそも本ガイドラインは法的な当否を論じるに値しないことは冒頭で述べたとおりです)、もしこれを書くなら独立した行動として書くべきであり、不利益扱いの禁止とか、ぜんぜん関係ないところに書くにはいかがなものかと思います。

わかりにくいですし、体系的ではありません。

また上記引用箇所につづけて、

「なお、持続的な賃上げの実現の観点からは、受注者 が過去に引 き上げた賃金分の転嫁だけでなく 、今後賃金を引き上げるために必要な 分の転嫁についても 同様に、協議のテーブルにつくことが求められる。」

と書かれており、これも不利益扱いの禁止とは何の関係もありません。

ただ、言っていることは理解できて、要は、従業員の給料を上げるためにはまず値上げに応じてもらわないと上げられないので、まだ人件費が増えてなくても、増やす見込である(増やしたい)ということをもって、値上げの理由として受け入れろ、ということです。

これは、人件費が他のコストと異なり受注者が自分で決められることからくる人件費の特徴といえます。

ですが、これはけっこう大事なことなので、これまた不利益扱いの禁止の中でこっそり書くようなことではないと思います。

たぶんこのような法的に議論する価値のないガイドラインは学者の先生方が論評することもまずないでしょうけれど(もしそういう論評をご存じの方がいたらぜひ教えて下さい)、おかしいものはたとえつまらないことでもおかしいといわないといけないと考え、今回は書いてみました。

世の中にこれを参考にしてくる人が少しでもいてくれたらうれしいです。

2024年5月 5日 (日)

景表法の確約運用基準について

2024年4月18日に、「確約手続に関する運用基準」が定められました。

気になった点をいくつか指摘しておきます。

まず、「5 確約手続の対象」「(3) 確約手続の対象外となる場合」では、

「①違反被疑行為者が、違反被疑行為に係る事案についての調査を開始した旨の通知を受けた日、景品表示法第25 条第1項の規定による報告徴収等が行われた日又は景品表示法第7条第2項若しくは第8条第3項の規定による資料提出の求めが行われた日のうち最も早い日から遡り10 年以内に、法的措置〔注・措置命令または課徴金納付命令〕を受けたことがある場合(法的措置が確定している場合に限る。)、

及び

②違反被疑行為者が、違反被疑行為とされた表示について根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っているなど、悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合

には、・・・確約手続の対象としない。」

とされています。

①の10年以内はまあいいとして、②の「根拠がないことを当初から認識」していたというのは、かなり広い(そのため確約の適用範囲はかなり狭くなる)と思います。

たとえば、「飲めば痩せる」系の健康食品は、確約の対象にはならないでしょう。

私はよく講演で、不当表示の原因を、

⑴ 虚偽だと知りながら表示していたケース

⑵ 事業者が表示の意味を誤解・曲解していたケース

⑶ 「実際」が変わったのに、表示を変えるのを忘れたケース(モデルチェンジ・製法変更)

⑷ 本来予定した「実際」が作れなかった(能力不足、材料不足)

に分けて説明するのですが、⑴は確約の対象外ということですね。

もともと⑴と⑵の限界は結構微妙でしたが、これまではいずれにせよ不当表示であるとの結論は変わらないため今まであんまり深く検討する必要もありませんでしたが、確約が導入されるとまさに⑴と⑵の区別が問われることになりそうです。

次に、「6 確約計画」「(3) 確約措置」「ア 基本的な考え方」「(イ) 措置実施の確実性」では、

「例えば、確約措置として一般消費者への被害回復を行う場合には、

当該措置の内容、被害回復の対象となる一般消費者が当該措置の内容を把握するための周知の方法並びに当該措置の実施に必要な資金の額及びその調達方法が具体的に明らかにされていなければ、

原則として、措置実施の確実性を満たすと認めることはできない。」

とされており、確約計画には返金する場合の資金調達方法を具体的に書くよう求められています。

独禁法の確約対応方針では資金調達方法まで書けとはいわれていないので、ちょっと驚きです。

独禁法とちがって景表法の場合は零細企業も違反者となることが多いので、とくに資金調達について言及したのかもしれません。

とはいえ、手持ち資金で足りるなら、「自己資金」でよいのでしょう。

では、そもそも確約が認定されるために被害回復をする必要があるのかについては、「6 確約計画」「(3) 確約措置」「イ 確約措置の典型例」「(オ) 一般消費者への被害回復」で、

「例えば、被通知事業者が違反被疑行為に係る商品又は役務を購入した一般消費者に対し、その購入額の全部又は一部について返金
(景品表示法第10 条第1項に定める「金銭」の交付をいう。)することは(注2)、

一般消費者の被害回復に資すること、及び自主返金制度が設けられた法の趣旨を踏まえると、

措置内容の十分性を満たすために有益であり、重要な事情として考慮することとする。」

とされています。

まず、この確約での被害回復は、景表法10条の返金措置とは何の関係もありません。

(運用基準の注2では、

「(注2)返金の手段、方法等は、事業者の自主的な判断に委ねられるが、自主返金制度において定める内容が参考となる。」

とだけされています。)

ですので、景表法10条の返金計画の認定は受けずに、任意で被害回復をしつつ確約にしてもらう、ということは当然可能だと考えられます。

次に、「有益であり、重要な事情として考慮する」ということの意味ですが、景表法の確約運用基準では、確約措置の典型例を、

「必要な措置」(「(ア) 違反被疑行為を取りやめること」「(イ) 一般消費者への周知徹底」「(ウ) 違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置」「(エ)履行状況の報告」)

「有益であり、重要な事情として考慮する」措置(「(オ) 一般消費者への被害回復」)

「有益」な措置(「(カ)契約変更」「(キ)取引条件の変更」)

の3段階に分けています。

これは、独禁法の確約ガイドラインが「必要」と「有益」(優越の返金措置だけですが)に分けているのと比べると、被害回復を「有益」から「重要」に格上げしたのだな、と理解できます。

独禁法の優越の確約でも、返金が求められる場合と求められない場合があり、結論をみるとそれなりに穏当な処理になっている(お金の問題じゃないものは返金は求められない)ように思われるのですが、景表法でも、きっとそういう処理がされるものの、あえて「重要」といているので、基本、被害回復は求められるんじゃないかと思います。

景表法違反でも、返金が納得感のある事例と、そうでないものがあると思います。

たとえば、「食べたら痩せる」系の健康食品は、全額返金でもいいでしょう。

これに対して、メルセデスベンツの事件の、オプションがカタログどおり付いていなかった、というのは、どちらかというとカタログの誤記だと思いますので、何十万円もするオプションを無料で付けろ(オプション代返金)というのは、ちょっと行き過ぎに思います。

近頃流行りのNo.1表示(優良誤認)は、一体何を返金したらいいのか見当が付きません。

キャンペーンの繰り返しも、返金という話ではないように思います。

さらにいえば、全般的に、有利誤認は被害回復に不向きでしょう。

というわけで、きっと景表法の確約では、返金に納得感がある事例では原則返金が必要で、上記のように返金に納得感がないものだけが例外的に返金不要となるのでしょう。

このように、任意の被害回復が確約の事実上の要件となると、これと景表法10条の返金措置との関係が気になるところです。

というのは、景表法10条の返金措置は手続がめんどうなわりに、むしろ課徴金を満額払ったほうが安く付くことがわかり、ほとんど利用されていません。

これが、確約をめざすためには被害回復が必要だということになると、どっちにせよ面倒な手続をするなら(確約の条件としての被害回復は、確約という正式な制度の中で行われる以上、優越の被害回復みたいに、被害者の特定などそれなりに厳密に行うことを要求されそうな気がします。)返金措置(10条)もやってしまえ、という判断に傾くこともありえなくはないように思われます。

というわけで、事実上死に体だった自主返金制度を亡霊のように生き返らせる可能性が、確約制度にはあるように思われます。

次に、細かいことですが、「6 確約計画」「(3) 確約措置」「イ 確約措置の典型例」に、

「(イ) 一般消費者への周知徹底」

とありますが、一般消費者へは「周知徹底」ではなく「周知」ではないでしょうか。

景表法の措置命令は昔からそうなのですが、従業員なら「周知徹底」でしょうけれど、消費者に「徹底」するというのは、いったい何様だという感じがします。

ちなみに独禁法では、たとえばクーパービジョンの確約では、

「前記(1)に基づいて採った措置を,自社の一日使い捨てコンタクトレンズ等の小売業者及び販売代理店に通知するとともに,一般消費者に周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底すること。」

というように、「周知」と「周知徹底」を使い分けています。これが正しい日本語でしょう。

次に、「6 確約計画」「(3) 確約措置」「イ 確約措置の典型例」の「(エ)履行状況の報告」では、

「確約措置が措置内容の十分性を満たす場合であっても、実際に確約措置が履行されないのであれば、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保することができない。

このため、確約措置の履行状況について、被通知事業者又は被通知事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者消費者庁が認める者に限る。)が消費者庁に対して報告することは、

措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つである。

なお、報告の時期及び回数は、確約措置の内容に応じて設定する必要がある。」

とされています。

米国の反トラスト法などで有名な、いわゆる外部モニター(external monitor)ですね。

しかも、「必要な措置」になっているので、確約をすると全件外部モニターに監視を委託することになりそうです。

外部モニターといってもそんなに毛嫌いする必要もなく、私は入れたらいいんじゃないかと思いますが、企業によっては確約のハードルになるかもしれません。

零細企業の場合にはモニターのコストもばかにならないかも知れません。

というわけで、全体としてはなかなか内容の濃い、読み応えのあるガイドラインでした。

2024年5月 4日 (土)

同一取引に対する複数事業者の企画の競合(暫定版)

掲題の件について以下のとおりまとめておきます。誤りや追加があれば随時修正します。

【前提】

事業者1と事業者2は、いずれも商品A,B,Cの供給者

A, B, Cは相互に排他的(お互いを含まない)

pa: 商品Aの取引の価額(以下同様)

Max(pa): paに基づく(=商品Aに附随する)景品法定上限(以下同様)

Max(pa+pb): 商品AとB両方の購入者に提供可能な景品法定上限(以下同様)

Kactual1: 事業者1が現実に提供する景品額(2も同様)

Kmax1: 事業者1が提供しうる景品上限(2も同様)

懸賞においては事業者1と2は重複当選を排除しない。

事業者1と2が各々単独でするい場合、2が1に景品類を追加するとする(1が先)。

事業者2の景品対象取引に「たまたま」事業者1の景品対象取引が含まれる場合、「同一取引」への複数景品提供とはみない(消費者庁景品Q&A95-1)。

事業者は、消費者がキャンペーン対象者かどうかはわかるが、どの商品を購入したか(対象商品の内訳)はわからない(知る必要がない仕組みとする)。

【パターン①-1】事業者1と2が共同で、商品A購入者に景品提供する場合

Kactual1 + Kactual2 ≦ Max(pa)

Kmax1 = Max(pa) ー Kactual2

Kmax2 = Max(pa) - Kactual1

【パターン①-2】事業者1と2が各々単独で、商品A購入者に景品提供

Kmax1 = Max(pa)

Kmax2 = Max(pa) ー Kactual1

【パターン②-1】事業者1と2が共同で、1は商品A and Bの購入者に、2はBの購入者に、景品提供

Kactual1 + Kactual2 ≦ Max(pa+pb) = Max(pa) + Max(pb)

Kmax1 = Max(pa+pb) - Kactual2 = Max(pa) + Max(pb) - Kactual2

Kmax2 = Max(pb) - (Kactual1 ー Max(pa)), if Kactual1 ≧ Max(pa)

           = Max(pb), if Kactual1 < Max(pa)

【パターン②-2】事業者1と2が各々単独で、1は商品A and Bの購入者に、2はBの購入者に、景品提供

Kmax1 = Max(pa+pb) =Max(pa) + Max(pb)

Kmax2 = Max(pb) - (Kactual1 ー Max(pa)), if Kactual1 ≧ Max(pa)

           = Max(pb), if Kactual1 < Max(pa)

【パターン③-1】事業者1と2が共同で、1は商品A or Bの購入者に、2はBの購入者に、景品提供

Kmax1 = min(Max(pa), Max(pb))

Kmax2 = Max(pb)

【パターン③-2】事業者1と2が各々単独で、1は商品A or Bの購入者に、2はBの購入者に、景品提供

Kmax1 = min(Max(pa), Max(pb))

Kmax2 = Max(pb)

(※パターン③-1に同じ。)

【パターン④-1】事業者1と2が共同で、1は商品A and Bの購入者に、2も商品A and Bの購入者に、景品提供

Kacutual1 + Kactual2 ≦ Max(pa+pb) = Max(pa) + Max(pb)

Kmax1 = Max(pa+pb) ー Kactual2 = Max(pa) + Max(pb) - Kactual2

Kmax2 = Max(pa+pb) ー Kactual1 = Max(pa) + Max(pb) - Kactual1

【パターン④-2】事業者1と2が各々単独で、1は商品A and Bの購入者に、2も商品A and Bの購入者に、景品提供

Kmax1 = Max(pa+pb) = Max(pa) + Max(pb)

Kmax2 = Max(pa+pb) - Kactual1 = Max(pa) + Max(pb) - Kactual1

【パターン⑤-1】事業者1と2が共同で、1は商品A and Bの購入者に、2は商品B and Cの購入者に、景品提供

Kactual1 + Kactual2 ≦ Max(pa+pb) + Max(pb+pc) - Max(pb) = Max(pa) + Max(pb) + Max(pc)

Kmax1 = Max(pa+pb) - (Kactual2 - Max(pc)), if Kactual2 ≧ Max(pc)

           = Max(pa+pb), if Kactual2 < Max(pc)

Kmax2 = Max(pb+bc) - (Kactual1 - Max(pa)), if Kactual1 ≧ Max(pa)

           = Max(pb+pc), if Kactual1 < Max(pa)

【パターン⑤-2】事業者1と2が各々単独で、1は商品A and Bの購入者に、2は商品B and Cの購入者に、景品提供

Kmax1 = Max(pa+pb) = Max(pa) + Max(pb)

Kmax2 = Max(pb+pc)- (Kactual1 - Max(pa)), if Kactual1 ≧ Max(pa)

           = Max(pb+pc), if Kactual1 < Max(pa)

2024年4月26日 (金)

共同研究開発終了後の同一テーマの研究禁止について

共同研究開発ガイドライン(「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」)の

「第2 共同研究開発の実施に伴う取決めに対する独占禁止法の適用について」

の、

「2 不公正な取引方法に関する判断」

の、

「⑴ 共同研究開発の実施に関する事項」

の、

「ア 原則として不公正な取引方法に該当しないと認められる事項」(白条項)

の⑨では、

「⑨ 共同研究開発の成果について争いが生じることを防止するため

又は

参加者を共同研究開発に専念させるため

に必要と認められる場合に、

共同研究開発終了後の合理的期間に限って、

共同研究開発のテーマと同一又は極めて密接に関連するテーマの第三者との研究開発を制限すること(⑴ウ〔黒〕①及び②参照)」

とされています。

そして、第2の2⑴の、

「ウ 不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項」(黒条項)

の①では、

「① 共同研究開発のテーマ以外のテーマの研究開発を制限すること((1)ア⑧及びの場合を除く。)」

が黒条項とされており、

(なお、「⑴ア」(白条項)の⑧というのは、

「⑧ 共同研究開発の成果について争いが生じることを防止するため

又は

参加者を共同研究開発に専念させるため

に必要と認められる場合に、

共同研究開発のテーマと極めて密接に関連するテーマの第三者との研究開発を

共同研究開発実施期間中について制限すること(⑴ウ〔黒〕①参照)」

というものであり、「⑴ウ」(黒条項)の①というのは、

「① 共同研究開発のテーマ以外のテーマの研究開発を制限すること((1)ア〔白〕⑧及び⑨の場合を除く。)」

というものです。)

第2の2⑴ウ〔黒〕の②では、

「② 共同研究開発のテーマと同一のテーマの研究開発を

共同研究開発終了後について制限すること

((1)ア〔白〕⑨〔終了後合理的期間第三者との研究禁止〕の場合を除く。)」

というのが黒条項とされています。

また、ガイドラインでは第2の2⑴ウ〔黒〕の②に続けて

 「○ 上記①〔テーマ以外の禁止〕及び②〔終了後の禁止〕のような事項は、

参加者の研究開発活動を不当に拘束するものであって、

公正競争阻害性が強いものと考えられる(一般指定第一二項(拘束条件付取引))。」

とされています。

加えて、ア〔白〕⑦では、

「⑦ 共同研究開発のテーマと同一のテーマの独自の又は第三者との研究開発を共同研究開発実施期間中について制限すること」

が白条項とされています。

黒と白の例外がぐるぐると循環して少々わかりにくいですが、まとめると、

原則:

A. 期間中、

同一テーマの制限は、例外なく白(ア⑦)、

テーマ
以外の
制限は、原則黒(ウ①)、

B. 終了後、

同一テーマの制限は、原則黒(ウ②)、

テーマ以外の制限は、原則黒(ウ①)

例外:

(紛争防止または専念に必要な前提で)

C. 期間中、

極密接テーマ〔※同一テーマは例外なく白。ア⑦〕で、⑵第三者との共同研究開発の制限は、白(ア⑧)、

D. 終了後、

同一テーマ制限は、⑴同一または極密接テーマで、⑵第三者との共同研究開発の制限は、白(ア⑨)、

ということになります。

ここで、共同研究開発期間終了後同一または極密接テーマの部分だけ抜き出すと、「紛争防止または専念に必要」という前提なら、

原則黒(ウ②、①)、

例外として、第三者との共同研究開発の制限は、白(ア⑨)

となります。

つまり、期間終了後同一または極密接のテーマの、相手方自身による研究開発を制限することは、原則どおり黒(同一につき、ウ②。極密接につき、ウ①かつア⑨の不適用)となります。

しかし、私は、期間終了後の同一または極密接テーマの相手方自身による研究開発を制限することを「不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項」というのは、少々厳しすぎると思います。

「不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項」といわれると、ほとんどの企業は自動的にあきらめてしまうと思いますが、それほど悪いものではないと思います。

それに、そもそも同じ期間後の制限なのに、第三者との同一・極密接共同研究開発なら白になる(ア⑨)のに、相手方単独開発だと黒(同一につき、ウ②。極密接につき、ウ①かつア⑨の不適用)になるのか、合理的な説明は難しいように思われます。

この点について、平林英勝編著『共同研究開発に関する独占禁止法ガイドライン』(1993(平成5)年)p82では、

「(2) 同一テーマの終了後の制限

共同研究開発のテーマと同ーのテーマの研究開発を共同研究開発終了後について制限することは,基本的には,参加者の事業活動を不当に拘束し公正競争阻害性が強いものと考えられる(一般指定13項(拘束条件付取引))。

ただし,例外的に共同研究開発終了後の同一テーマの第三者との研究開発の制限については,

共同研究開発の成果に関する紛争防止(工業所有権等の帰属の問題)または共同研究開発に専念させること(共同研究開発終了後直ちに他と研究開発を行って成果を得るといった背信行為の問題)を目的として,

合理的期間に限りそのような制限を設けたとしても,独占禁止法上許容される場合があると考えられる。

なお,この場合の「合理的期間」は,あくまで背信行為の防止または権利の帰属の確定のために必要不可欠な範囲に限られる。

「第三者との」研究開発の制限については,合理的な期間許容される場合があり得るが,

「独自の」研究開発の制限については,紛争防止や背信行為の防止の問題は,成果等に関する両者間の取決めによって解決できると考えられ,

このような制限を終了後についてすることは共同研究開発の実施のために必要とされる合理的な範囲を超えた制限であり,不公正な取
引方法に該当するおそれが強いと考えられる。」

と説明されています。

しかし私には、独自研究の場合に、「紛争防止や背信行為の防止の問題」が、どうやったら「成果等に関する両者間の取決めによって解決できる」のか、理解できません。

まず「紛争防止」(「共同研究開発の成果に関する紛争防止(工業所有権等の帰属の問題) 」については、たとえばA社とB社の共同研究開発で、共同研究開発の成果を、A社に帰属させるのか、B社に帰属させるのか、両方の共有にするのか、という取決めをするのでしょう。

そこで、A社に帰属させるという取決めをして、成果が出たので共同研究が終了し、その後、B社が同じテーマの独自研究をしたとしましょう。

この場合に、A社が当該取決めによって「紛争防止」できるとすれば、たとえば、「B社の研究はA社に帰属する成果を用いているので契約違反だ」と主張してB社の独自研究を差止める、ということが考えられるかもしれません。

あるいは、そういう差止めを受けることをおそれてはじめからB社が当該成果を用いた独自研究をするのを控える、ということで「紛争防止」になる、ということがあるかもしれません。

でもそれは、B社が共同研究の成果を用いていることが明らかならそうですが、B社が成果を用いていることを争ったら(独自のアイディアで研究しているのだと言われたら)、やはり紛争防止にはならないのではないでしょうか。

しかもこれだと、独自研究と第三者との共同研究の場合で差を付ける理由が、やっぱりわかりません。

もう1つの「背信行為の問題」のほうについては、上記引用部分では、

「共同研究開発に専念させること(共同研究開発終了後直ちに他と研究開発を行って成果を得るといった背信行為の問題)」

という性格付けがなされていますが、そもそも「共同研究開発終了後直ちに他と研究開発を行って成果を得る」ことが、「背信行為」だと断定するのは疑問です。

こういうのはお互い様ですから、お互いに「共同研究開発終了後直ちに他と研究開発を行って成果を得ることはやめておこう」と思うのであればそのような合意をすればいいのであって、その結果お互いに他と研究開発をしないのは、合意をしたからしない(やってはいけない)のであって、「背信行為」だからしない(やってはいけない)のではないと思います。

それに、やっぱり、

「共同研究開発終了後直ちに他と研究開発を行って成果を得る」

ことが「背信行為」なのに、

「共同研究開発終了後直ちに独自研究開発を行って成果を得る」

ことは「背信行為」にならない、という区別の理由もよくわかりません。

私がこのガイドラインの部分を読んだときに頭に浮かんだ理由は、たとえば、

消極的販売の禁止は競争への影響が大きいので違法だが、積極的販売は禁止できないと取引のインセンティブが失われるので禁止してもいい、

とか、

ワイドなMFN(あらゆる販売チャネルを利用して販売する価格を,価格Aより安くしてはならない)は競争への影響が大きいので違法だが、ナローなMFN(供給者が消費者に直接販売する価格を,価格Aより安くしてはならない)はそれほどでもないので適法だ、

といった、競争への影響を考慮した理由付けでした。

つまり、

B社に第三者との共同研究までやられてしまうとA社は一気に競争劣位になってダメージが大きいので、これを禁止できないと共同研究のインセンティブが失われてしまうので第三者との共同研究の禁止は認めるのに対して、

B社独自の研究まで禁止してしまうとイノベーションへの悪影響が大きい上にB社の自由を縛りすぎるので、独自研究の禁止は認めない、

といったことかな、と思いました。(それが説得力があるとは思いませんが。)

でも、前掲書にはそのような競争への影響の発想はまったく見られません。

むしろ、「背信行為」という、民法の不法行為のような、道徳のような理由が述べられています。

まあ、平成初期の公取委はこんな感じだった、ということなのでしょう。

これに対して、共同研究に入るインセンティブの確保というのは、共同研究開発にともなう制限を認めるべきかどうかという議論全体におよぶべきものだと思います。

共同研究開発ガイドラインでも、たとえば、第2の2⑶ア①で、

「① 成果であるノウハウの秘密性を保持するために必要な場合に、合理的な期間に限って、成果に基づく製品の販売先について、他の参加者又はその指定する事業者に制限すること((3)イ③参照)」

が白条項とされているのなどは、共同研究開発に入るインセンティブ確保の趣旨でしょう。

そういう一般的な理屈が、共同研究開発終了後の独自開発の制限の場合にだけあてはまらないということはありえないでしょう。

実際、A社が、

「自分(A社)のほうがノウハウをたくさん提供しているのに、終わった途端B社に独自研究されたらたまらない。

だけど、成果を自分(A社)に全部帰属させるという条件だと、B社が共同研究に応じてくれないだろう。

でも、成果共有で、期間終了後は独自研究をしない、という条件なら共同研究してくれそうだ。

だって、共同研究で成果が上がらないのにB社の独自研究で成果が上がる保証もないんだから。」

といったような具合で、共同研究開発期間終了後の独自開発を制限することが最適解であるということは、世の中にそれなりにあるのではないでしょうか。

そいういった、当事者のインセンティブとイノベーションへの影響というものを、考えないといけません。

2024年4月21日 (日)

公正取引に米国反トラスト法コンプライアンスについて寄稿しました。

公正取引882号(2024年4月号)の、「企業におけるコンプライアンス」という特集に、

「米国反トラスト法におけるコンプライアンス・プログラム ~アップル電子書籍カルテル事件モニター報告書の検討を通じて~」

という論文を寄稿しました。

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原稿執筆依頼は米国反トラスト法のコンプライアンスについて書いて欲しいということだったので、「公取委のコンプライアンス・ガイド(「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド-カルテル・談合への対応を中心として-」)が出たので特集を組むんだろうなぁ」と思いを巡らしながら、どういう切り口で書こうかいろいろと考えたのですが、「米国」という括りでテーマを絞るのがなかなか大変でした。

理論的にも、実務的にも、(日本でもEUでもなく)「米国」独自のコンプライアンスというものがあるわけではありません。

もちろん、競争法の実体法や手続法は各国違うのですが、では米国についてロビンソン・パットマン法について書くのも何か違うなと思いました。

米国の特色を出すなら、リニエンシーや秘匿特権などの手続面に絞って書くということも考えましたが、たぶんこの特集でそれは期待されていないだろうなぁと考えました。

論文の冒頭サマリーにも、

「競争法遵守プログラムに、国による本質的な違いはない。あるのはトリビア的な違いに過ぎず、本誌において主題的に論じるに値しない。そこで本稿では、米国企業による米国反トラスト法遵守プログラムの具体例を示すべく、電子書籍カルテル事件の連邦地裁判決によりアップルに設置が命じられた社外モニターがその報告書で明らかにした同社の反トラスト法遵守プログラム(社外モニターの提言を含む。)の内容を紹介することにする。」

と、率直に書きました。

というわけで今回は、米国企業の反トラスト法コンプライアンスプログラムの詳細が明らかにされている希有な例ということで、アップルの電子書籍事件社外モニター報告書に依拠して、同社のコンプライアンスプログラムの内容を紹介することにしたわけです。

今回、4通のモニター報告書を読んでみましたが、これがなかなか面白いです。

(ちなみにこの社外モニターについては当時、報酬が高すぎるとアップルが裁判所に解任を求め、モニターの最初の2週間の報酬が138,432ドル(!)だったと報じられたり、なかなか曰く付きではあります。)

とくに、モニターとアップル代理人との間のやりとりが、コンプライアンスプログラムとして何をどこまですべきなのかについて、立場によってさまざまな考え方がありうることを示していて、大変興味深かったです。

読まれた方は、報告書を要約しただけなのかとがっかりされるかも知れませんが、全部で500頁近くある4通の報告書を要約するのはけっこう大変でしたし、参考になりそうなところはだいたい拾ったつもりですから、じっくり読んでいただければそれなりに参考になることがあるのではないかと思います。

これを読んで興味を持たれた方はぜひ、報告書の原文も参照していただければと思います。

報告書原文に当たりやすいように、論文には報告書のページ数を逐一記載しておきました。

それから、引用するにも文字数がきつかったり(ギリギリ詰めて6頁に収めました)、ボツにしたりしたので、論文には引用しませんでしたが、執筆過程で参考になった文献を以下に挙げておきます。

最初に、American Bar Associationの、

『Antitrust Compliance: Perspectives and Resources for Corporate Counselors, Second Edition』

は、プログラムの作り方など大変実務的で、日本企業にも参考になることが多かったです。

理論的な整理としては、『The Oxford Handbook of Strategy Implementation』の第7章の、

Sokol, Antitrust Compliance

が、大変詳細かつ網羅的に反トラスト法コンプライアンスを整理しており、とても参考になりました。

末尾の参考文献リストは極めて網羅的です。

この論文もそうですが、アメリカの(というか、英語の)論文を読むと、そもそも企業にコストをかけてコンプライアンスプログラムを導入させることの合理性にまで遡って議論がなされていて、判で押したように「コンプライアンスプログラムは大事!」と叫ぶのより、よほど理知的な議論がなされていて、たとえばコストベネフィットを考えずリニエンシーや確約制度を景表法に導入してしまう日本の現状と比べて、彼我の議論の厚みの差を感じました。

米国企業の反トラスト法プログラムの具体例については、

Howard Bergman and D. Daniel Sokol, The Air Cargo Cartel: Lessons for Compliance

が、エアカーゴ事件の実例を内部者の証言を交えつつ詳細に紹介していて、とても貴重な資料だと思いました。

今回の論文執筆にも参考にしようかと一瞬考えましたが、検討対象がルフトハンザで米国企業ではなかったので(笑)、やめました。

同じくSokol教授の、

CARTELS, CORPORATE COMPLIANCE, AND WHAT PRACTITIONERS REALLY THINK ABOUT ENFORCEMENT

は、反トラスト法弁護士に反トラスト法の執行についてどう思うかをアンケートで尋ねた結果をまとめたもので、「へぇ~、こんな研究手法もあるんだ」と感心するとともに、実務家の本音が垣間見られて興味深かったです。

あとは、公取委ガイドにも引用されている、

OECD, "Competition Compliance Programmes"(2021)

が、なかなかよくまとまっていました。

公取委ガイドを読んでしっくりこなかったところをこちらで確認すると腑に落ちたりします(苦笑)。

2024年4月15日 (月)

ABA Antitrust Spring Meeting 2024 に行ってきました。

先週4月10日(火)から12日(金)にワシントンDCで行われたAmerican Bar AssociationのAntitrust Spring Meetingに行ってきました。

今回一番印象深かったのは3日目のAntitrust Markets Critical to Decocracyというセッションでした。

パネリストは、

ミシガン大学のDaniel Crane教授と、

私も反トラスト法を教わったNew York UniversityのHarry First教授と、

元FTC委員(共和党)のChristine Wilson氏と、

Columbia Center of Sustainable Investmentsという機関のDenise Hearn氏

で(モデレーターはHenry Su氏)した。

Crane教授は、「Antimonopoly and American Democracy」という書籍の編者でもあられます。

内容は、民主主義のためには市場が競争的であることがいかに重要かを説くものでした。

米国反トラスト法も、それを受け継いだ日本の独禁法も、社会の民主化を目指すことを目的の1つにしていたということはよく言われることですが、それを戦後ドイツ(Crane教授)と日本(First教授)の歴史の裏付けに基づき説得力のある議論を展開し、それでいながら、もちろん競争法のできることには限界があることを認め、実に迫力に満ちたセッションでした。

Hearn氏(女性)は、比較的お若い方でしたが、さまざまな文献からのフレーズを議論の中で縦横無尽に、かつ極めて的確に引用され、実によく勉強されていて、頭のよい方だと思いました。

出る前からこのセッションは外せないと思っていたのですが(First教授が出ることは事前発表されておらず、当日その場で知りました)、実に、期待を上回るものでした。

最後のQ&Aで質問者の1人が「自分が出たセッションの中でこのセッションが最高だった。」と激賞されていましたが、全くそのとおりで、私の中では、今回のみならず、これまで出てきたSpring Meetingのすべての中で最高でした。

(それに比べると、本来ハイライトであるはずのEnforcers' Roundtableは、いまいちでした😖)

やっぱりこういうのは本を読むだけではなく、生の議論を聞くに限ります。

自分の仕事がどれくらい世の中の役に立っているのかは誰しも気になるところではないかと思います。

最近はbull shit job(クソどうでもいい仕事)という言葉がはやっていて、さすがに独禁法弁護士が「クソどうでもいい仕事」とは思いませんが、それでも、過去の経験を切り売りするような仕事に果たしてどれだけの社会的意味があるのか、それはお金は生んでも価値を生んでいないのではないか(まさに「クソどうでもいい仕事」のように)、など疑問を感じることは時々あります。

そう考えると、自分のやっている競争法という仕事が、民主主義に貢献できるかもしれないと実感できたことは、私にとって大きなモチベーションとなりました。

とくに最近は巨大デジタルプラットフォームやAIの規制が競争法では大きなテーマで、今回のSpring Meetingでも多くのセッションで取り上げられていましたが、経済的な厚生という狭い価値ではなく民主主義という大きな価値にかかわるものであると考えると、日本のプラットフォーム規制法も、またぜんぜん違った見え方がするのではないでしょうか。

経済法をまじめにやると経済学を勉強しないといけなかったり、景表法の不実証広告規制をまじめにやると統計学を勉強しないといけなかったりと、やらないといけないことが増えるのは大変であるとともに楽しくもあるのですが、今回あらたに、民主主義と競争法が私の勉強のテーマに加わりました。

あともう1つ面白かったのが、初日の、DO NON-COMPETES CAUSE MORE HARM THAN GOOD? というセッションでした。

このセッションでは、経済学者のEvan P. STARR氏(University of Maryland, Robert H. Smith School of Business)が、競業避止義務がいかに競争に悪影響を与えるかを、ご自身のものを含め数々の実証研究を引きながら、実に説得的に論じられていたのが印象的でした。

そのほかのパネリストはみなロイヤーで、競業避止義務は必要な場合もあるので合理の原則にすべきだとか、実際、競業避止義務がないことで困ったケースがあったというエピソードばかりで、やっぱり法律家ってどこの国でもこの程度のことしか言えないんだなぁと感じ、逆にあらためて、経済法における経済学のツールとしての有用性、強力さに感銘を受けました。

経済学の強力さは、何も計量経済学のようなデータの問題だけではなくて、今回のStarr氏の反論の中心も、

①競業避止義務がった場合となかった場合で給与が上がったとか下がったとか言っても無意味であり、causationとcorelationを混同してはいけない、

②比べるべきは、秘密保持義務と目的外利用禁止義務があって競業避止義務はない場合と、競業避止義務がある場合、なのであり、競業避止義務がある場合とない場合を比べても意味がない、

という、実に理路整然としたものでした。

これを聞いて思い出したのが、かつてとある勉強会でクレジットカードの手数料の議論をしていたときに、ある弁護士さんが、

「自分はクレジットカードのポイントでファーストクラスにアップグレードしたりして大きなメリットを得ているので、多少手数料が高くても気にならないし、こういうサービスがなくなるならむしろ手数料の規制には反対だ。」

というような発言をされていたことでした。

私は、これを聞いて、「ああこの人分かってないかぁ」と思いました。

というのは、理屈の上では、手数料が高い現状と、低い(あるいは、ない)場合(but for)を比べないといけないんですね。

そして、数々の経済学の研究が指摘するのは、手数料が高いために小売価格が高止まりしているのではないか、という点なわけです。

つまり、カードでポイントをたくさん稼いでいる人も、実は、but forの状態に比べて高い価格でたくさん買い物をすることで、ポイント原資以上を負担しているのではないか、ということなのです。

少なくともご自身はそうであっても、このようにbut forを想定して、世の中で損をする人と得をする人のどちらが多いのか、を考えないといけないわけです。

でも、これがふつうの法律家の限界なのでしょうね。

競業避止義務については、かつて読んだ「Against Intellectual Monopoly」という本に、退職後の競業避止義務がイノベーションにとっていかに有害であるか、ということが書いてありました。

同書では、シリコンバレーがあれだけ栄えたのは競業避止義務が州法で禁止されているからだ、ということでした。

それ以来、私は競業避止義務に批判的なのですが、今回のセッションはそれに経済学的な裏付けがあるということがわかり、その意味でも実に有益でした。

それから、ウクライナ支持の私はいつも黄色と青のウクライナカラーのネクタイをしているのですが、Enforcers' Roundtableのときにウクライナ人の女性の弁護士が、それをみて声をかけてくれて、実に嬉しかったです。

がんばれ、ウクライナ!

2024年3月15日 (金)

『はじめて学ぶ景品表示法』(オレンジ本)の期間限定表示に関する解説の疑問

掲題の書籍のp66に、ハピリィに対する措置命令(3914)の解説の一部として、

「期間限定表示については、表示と実際のものとの間に乖離が生じるのは、表示された『期間限定』の期間が終了した後である。」

という記述があります。

でも、これはかなり問題のある解説だと思います。

結論からいえば、表示と実際の乖離は、「期間限定」の期間中に既に生じています。

例えば、同書で解説されているハピリィの事件では、通常38,700円のところが、

「対象期間:6月1日(月)~7月31日(金)」

に限って19,800円になる、と表示されていましたが、ここでの「表示」の意味をかみ砕いていうと、

5月31日以前(の最近相当期間)は38,700円であったけれど、6月1日から7月31日までに限って19,800円になり、8月1日以降は再び38,700円になる

という意味になるところ、「実際のもの」は、

5月31日以前(の最近相当期間)も19,800円であったし、6月1日から7月31日までも19,800円であったし、8月1日以降も19,800円であった

ということになり、上記「表示」の意味のうち、期間前(過去の実績)と期間後(将来の予定)の価格について、表示期間中(6月1日~7月31日)に、既に表示と実際の乖離が生じています。

決して、「『期間限定』の期間が終了した後」にだけ、乖離が生じているわけではありません。

また、もし同書のように考えると、不当表示の期間中には表示と実際の不一致が生じていないことになり、そもそも不当表示ではないということになりかねません。

この点は、「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」ではきちんと整理されていて、同指針第2(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について消費者庁が景品表示法を適用する際の考慮事項等」)の1(「景品表示法上の考え方」)では、

「事業者が自己の供給する商品等について、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うと、

当該表示を見た一般消費者は、通常、

比較対照価格とされた将来の販売価格に十分な根拠がある

すなわち、

セール期間経過後に、当該商品等が比較対照価格とされた価格で販売されることが予定されており、かつ、その予定のとおり販売されることが確実である

と認識すると考えられる。

したがって、事業者が、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する確実な予定を有していないにもかかわらず、

当該価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うと、

このような消費者の認識と齟齬が生じ、景品表示法に違反する有利誤認表示となるおそれがある。」

とされています。

ここでは、表示の意味(=消費者の認識)は、「将来は確実に比較対照価格で販売される」ということであるのに、実際は、そのような確実な計画は(表示期間中において)なかった、という齟齬があるために有利誤認表示になるのだ、という考え方で一貫しています。

期間限定の期間後に表示どおりの価格で販売しなかった事実は、

「事業者が、・・・将来の販売価格で販売できない特段の事情が存在しないにもかかわらず、当該将来の販売価格で販売していない場合・・・には、通常、合理的かつ確実に実施される販売計画を有していなかったことが推認される」(第2,2⑴)

という形で、期間限定の期間後に表示どおりの比較対照価格で販売していなかったことは、表示期間中に「合理的かつ確実に実施される販売計画を有していなかったこと」の推認材料である、と位置付けることを明らかにしています。

つまり、どこまでも、不当表示は期間限定表示であり、不当表示期間は期間限定表示をした期間です。

当たり前です。

同書の解説はこの指針にも真っ向から反しており、ちょっと筆が滑ったというレベルではすまないのではないかと思います。

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