2021年11月28日 (日)

総付と懸賞を併用した企画について

あるパンメーカーが、

食パン(1斤200円)に「1点」と記載されたシールを貼り、

あんパン(1個100円)には、「シール20点分を獲得できる抽選に参加できる抽選応募券」を貼って、

40点分のシールを獲得した人には豪華賞品をプレゼントする

という企画をしたとします。

この企画で提供できる景品類の価額はいくらまででしょう。

この企画では、食パン40斤を買えば確実に40点獲得できて賞品がもらえるので、その意味では総付です。

そして、あんパン2個を買って抽選に2回当選しても同じ賞品がもらえるので、その意味では懸賞です。

これだけなら、総付の制限(1斤200円×40斤×0.2=1600円)と、懸賞の制限(1個100円×2個×20=4000円)の、いずれも超えない範囲に収めればいいので、提供できる景品類の価額の上限は低いほうの1600円になりそうです。

ところがこの企画では、あんパン1個(100円)買って抽選に当選して20点獲得し、残り20点を食パン20斤(200円×20=4000円)を買って獲得することでも、同じ景品がもらえます。

このように、総付と懸賞を併用して景品がもらえる場合、景品類の上限価額はどのように考えればよいのでしょうか。

困ったときには定義に戻りましょう。

懸賞制限告示1項では、

「1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。

一 くじその他偶然性を利用して定める方法

二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」

と規定されています。

この定義にしたがえば、40点全部を抽選(あんパン2個購入)により獲得することは、あきらかに「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」に該当するので、懸賞にあたりそうです。

では、40点中20点をあんパン1個購入した抽選で獲得し、残り20点を食パン20斤購入して獲得する場合はどうでしょうか。

この場合も、現に賞品を獲得した人は、あんパン1個のくじに当選したから賞品を獲得できたのであり、くじに当選していなかったら賞品を獲得できなかったわけですから(賞品をもらえるかどうかはくじに当たるかどうか次第)、「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」に該当し、懸賞に該当することになると考えられます。

では、40点全部を食パン40斤購入することで獲得した人についてはどうかというと、この人は、「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」には該当しないので、この人に対してする賞品の提供は、懸賞ではないことになります。

懸賞だとして、次に問題になるのは、取引の価額です。

ここで、懸賞制限告示2項では、

「2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない。」

と規定されています。

そして、「懸賞に係る取引の価額」の意味については、懸賞制限告示5(1)では、

「(1) 「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準第一項(1)から(4)までは、懸賞に係る取引の場合に準用する。」

と規定されていて、総付制限告示運用基準1項(1)から(4)では、

「1 告示第一項の「景品類の提供に係る取引の価額」について

(1) 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。

(2) 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、100円とする。

ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに100円を下回つていると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることとし、

当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額のうちの最低のものが100円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。

(3) 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、100円とする。

ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。

この場合において、特定の種類の商品又は役務についてダイレクトメールを送り、それに応じて来店した顧客に対して景品類を提供する等の方法によるため、景品類提供に係る対象商品をその特定の種類の商品又は役務に限定していると認められるときはその商品又は役務の価額を「取引の価額」として取り扱う。

(4) 景品類の限度額の算定に係る「取引の価額」は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は対象商品又は役務の実際の取引価格を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価格を基準とする。」

と規定されています。

ここで、あんパン2個(200円)買って2回抽選を当てた消費者は、(1)の、

「購入者を対象とし、購入額に応じて〔懸賞=偶然性を利用して定める方法で〕景品類を提供する場合」

に該当するといってよいでしょう。

(なお、購入額に「応じて」とは、購入額に比例して、とか限定した意味ではもちろんなく、(2)の「購入額の多少を問わないで」ではない場合、つまり、購入額(の多少)で提供される景品類が決まる、あるいは、購入額と景品類が対応している、ということです。)

そして、その場合の「取引の価額」は、「当該購入額」、つまり、景品類の提供が「応じ」るところの「購入額」なので、あんパン2個の代金200円となる、というのが1つの考え方ですが、それでよいのでしょうか?

ここは、懸賞に該当する点数のすべての獲得パターンの中で、最も少なくてすむ取引額が、「取引の価額」であると考えるべきだと思います。

つまり、設問の企画では、賞品を獲得するためには、

①あんパン2個(200円)買って抽選を当てて賞品をもらう方法(合計200円)と、

②あんパン1個(100円)買って抽選を当てて(20点)、食パン20斤(4000円)買って(20点)賞品をもらう方法(合計4100円)

の2つのパターンがあるわけですが、最低必要な取引額は①の200円となります。

そして、この種の企画では抽選のほうが、(抽選に全部当たると仮定した場合に必要になる)取引価額が総付で必要になる取引価額より小さいのが通常です(∵抽選に全部当たっても総付のほうが割がいいと、誰も抽選を選ばなくなるため)。

ということは、結局、取引の価額を最低にするには、全部抽選で獲得する方法を選ぶことになります。

よって本件では、①の200円が、取引の価額となり、懸賞で提供できる景品類の価額の上限はその20倍の4000円となります。

次に、懸賞では、景品総額の規制もあります。

つまり、懸賞制限告示3項では、

「3 懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2を超えてはならない。」

と規定されています。

ここで、「当該懸賞に係る取引」が、あんパンの取引だけなのか、食パンの取引も含むのかは、検討を要します。

「当該懸賞に係る取引」という文言だけをみれば、あんパンだけという解釈も、あんパンと食パン両方含むという解釈も、いずれも成り立つように思われます。

というのは、現にあんパン1個購入して抽選を当てて20点獲得し、食パン20斤買って20点獲得することによって賞品も獲得することが可能だからです。

前述の、景品額の上限の場合には、必要最低限の取引価額を特定するとあんパン2個購入(200円)だと考えましたが、これは、このようにすれば最低限の取引価額で賞品がもらえるといっているだけで、本当にもらえるかどうかは運次第です。

また、現にあんパン1個購入して抽選を当てて20点獲得し食パン20斤買って20点獲得することによって賞品を獲得する消費者も存在しうる以上、食パンの取引も誘引していることはあきらかですから、食パンも「当該懸賞に係る取引」に含めるのが、実質的に見ても妥当でしょう。

また食パンも含めたほうが、結果的に、提供できる賞品の総額も大きくすることができます。

ところで、②の、抽選と総付を併用する場合点数をあんパンと食パンのどちらで先に獲得するかは結論に影響しないと考えられます。

先に食パン20斤買って20点獲得ずみの人があんパン1個買って抽選に参加する場合、食パン20斤の購入は、不確実性のない、賞品を獲得するための客観的な条件にすぎない(ので懸賞の取引の価額には算入されない)、という考え方もありえますが、条件が取引そのものである場合には、当該条件も取引の価額に算入されるべきでしょう。

2021年11月26日 (金)

懸賞による景品類の提供の既遂時期

1回の取引で複数回の抽選に参加できる企画の場合、1回当たるだけでは景品規制の上限を超えないけれど、2回以上当選したら超えてしまう、ということが起こりえます。

たとえば、1万円の商品購入者に、10万円の賞品が当たる抽選に2回参加できる権利をあたえる場合、1回だけの当選なら10万円ですから懸賞規制の上限の範囲内ですが、2回当選してしまうと合計20万円の賞品(景品類)を獲得できてしまうので、上限を超えてしまいます。

1種類の取引で1種類の賞品が当たるだけの単純な企画なのであれば、わざわざ2回抽選に参加できる権利を与えたいということはあまりなさそうですが(2回くじを引けるので2回わくわくできる?)、たとえば、

1個1000円の商品に「1点」のシールを貼り、1個2000円の商品に「2点」のシールを貼り、1個1万円の商品に「10点」のシールを貼り、とにかく5点集めたら1回抽選に参加できる(なので1万円の商品を1個購入したら2回抽選に参加できる)というような場合や、

1回の抽選で複数の賞品のうちのどれが当たるのかわからない抽選(1等○○、2等××、残念賞△△)ではなく、特定の賞品が当たる複数種類の抽選から自由に選んで参加できる場合(○○が当たる抽選と、××が当たる抽選を選べる場合)

などのケースには、1つの取引に対して複数回の抽選参加権を与えたい、ということが起こりえます。

このように、2回当選してしまうと20万円で懸賞の上限を超えてしまうような場合には、重複当選を禁止する扱いにすることが考えられます。

しかし、重複当選を禁止しないと絶対に違反になるのかというと、必ずしもそういうわけではありません。

というのは、重複当選すれば上限を超えてしまうような企画であっても、現に重複当選者が現れないのであれば、景品類を未だ提供していることにはならず(比喩的に言えば、未だ未遂であり)、景表法違反には問われないからです。

このことは、懸賞告示2項において、

「懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない。」

と規定されており、現に「提供する景品類」の価額のみを問題にしている(当選する可能性がある抽選を行うこと自体を問題にしていない)ことから明らかです。

比喩的に言えば、懸賞による賞品の提供は現に景品類を提供したときであり、企画を実施したときではありません。

もちろん、重複当選を明確に禁止していない限り、常に重複当選の可能性はあり、そのぶん、違反の可能性もあるわけですが、実際に違反になるのは、実際に重複当選が発生し、景品類を現に提供した時点です。

この点、過去の懸賞に対する公取時代の排除命令をみると、たとえば、平成11年3月30日のジャパンエンバに対する排除命令では、

「ジャパンエンバは、⽑⽪製の⾐服及び⾝の回り品の販売に関して、

1 「ダイアナ妃の故国、イギリスの旅ご招待」と称し、平成10年10⽉2⽇から同年11⽉30⽇までの間、店舗及び展⽰販売会場として借り上げた会場ごとに、それぞれ応募期間を定め、あらかじめ郵送したダイレクトメールに同封した応募券により当該期間中に当該店舗⼜は会場において応募した⼀般消費者を対象に、抽選により、「イギリスの旅」と称するイギリス及びフランスヘの6⽇間のペア旅⾏(24万6000円相当)を2名に、ハワイヘの5⽇間のペア旅⾏(16万円相当)を5名に、国内旅⾏券(4万円相当)を10名に、それぞれ提供すること

2 「クリスマスバザール」と称し、平成10年12⽉1⽇から同⽉25⽇までの間、店舗及び展⽰販売会場として借り上げた会場ごとに、それぞれ応募期間を定め、当該期間中に当該店舗⼜は会場において商品を購⼊した⼀般消費者を対象に、抽選により、ハワイヘの5⽇間のペア旅⾏(16万円相当)を5名に提供すること

をそれぞれ企画し、これらを実施した。」

と認定されており、これらの企画を企画し実施したとは認定されていますが、実際に、景品類が提供されたことは、厳密にいえば、認定されていません。

たぶん、実際には当選者がいて、旅行等も企画どおり提供されたことが当然の前提になっているのだとは思いますが、厳密に言えばこれは不正確で、実際に景品類が提供されたことまで認定する必要があったと思われます。

とはいえ、「当選者は少なくしているし(たとえば5名)、まさか2回当たる人はいないだろう」と高をくくって重複当選を明示的に禁止しない場合には、まさに違反するかどうかを「運にまかせる」ことになるので、あまり好ましくはないでしょう。

もちろん、当選者が1名だけの抽選であれば、重複当選は論理的にありえませんから、重複当選を禁じるまでもないでしょう。

2021年11月 3日 (水)

スマートバリューに対する立入検査について

本日3日の日経新聞朝刊によると、2日、公正取引委員会が、自治体向けにウェブサイトの編集や更新に使うコンテンツ管理システム(CMS)を販売するスマートバリューほか1社に対して、新規参入を排除した疑いで立入検査をしたそうです。

疑いの内容は、CMSはオープンソースでも開発できるところ、自前で開発していたスマートバリューが、セキュリティー対策を理由に自治体の入札仕様書にオープンソースのソフトウェアを使っていないCMSであることを盛り込むようはたらきかけた、ということだそうです。

これは、違反になるかなかなか微妙な案件です。

というのは、入札仕様書に自己に有利な仕様を盛り込ませることは、世の中でふつうに行われていることだからです。

私も公取委から調査を受けたケースで依頼者から何度も同じようなことを聞いたことがあり、談合の容疑で調査を受けた企業の方が、

「先生、でも自分たちのやっている受注調整なんてかわいいもんで、大元のところで大手と発注者が結託して、競合が入れないような仕様にしているんですよ。そっちのほうが、ずっと競争を制限するんじゃないですか?」

とおっしゃっていて、至極もっともだとは思ったのですが、

「でもねぇ、発注者がそれで納得しているかぎりは、なかなかそれを独禁法違反というのは難しいのですよ。」

と答えていました。

また、別の案件でも、依頼者の方から、

「先生、自分の仕様をどれだけ仕様書に盛り込ませることができるかが競争なんであって、そこで負けたら、入札なんてもう負けたも同然なんですよ。」

という話も聞いて、なるほどそういうもんなんだなぁ、と思ったこともあります。

そして、発注者が、限定した仕様にすることのメリット(本件であれば、セキュリティが上がること)と、デメリット(本件であれば、入札参加企業が減って値段が上がる可能性があること)を天秤にかけて、納得の上でどちらにするか決めたのであれば、独禁法違反にはなりません。

ここで、スマートバリューに、新規参入排除の意図があったかどうかは、(公取委は裁判になればそういう証拠を山のように出してくるでしょうけれど)独禁法違反の有無とは関係がありません。

客観的に、セキュリティが上がるメリットがあるのであれば、たとえ同時に新規参入排除の意図があっても、独禁法違反にはならないからです。

世の中の同様の行為でも、「この仕様のほうがメリットがありますよ」と営業をかける企業には、常に、競合する企業の数を減らしたいという思いも併せ持っているわけです。

本件とやや似た事例としては、パラマウントベッド事件(平成10年3月31日勧告審決)というのがありますが、報道を見るかぎり、スマートバリューの件はパラマウントベッド事件とはずいぶん違うように見えます。

つまり、パラマウントベッド事件の勧告審決では、

「1 パラマウントベッド社は、仕様書⼊札において、前記⼀2(三)の東京都の⽅針〔注・仕様は複数の事業者が入札参加可能なものとする方針〕を承知の上、医療⽤ベッドの仕様に精通していない都⽴病院の⼊札事務担当者に対し同社の製品のみが適合する仕様を含んでいても対外的には東京都の⽅針に反していることが露⾒しないように仕様書を作成することができると申し出るなどして

(⼀) 同社が実⽤新案権等の⼯業所有権を有している構造であることを伏せて、仕様書に同構造の仕様を盛り込むことを働きかけること

(⼆) 仕様書にフランスベッド社及びマーキスベッド社(以下「競合2社」という。)の標準品の仕様にはなく、競合2社がそれに適合する製品を製造するためには相当の費⽤及び時間を要することが予想されるパラマウントベッド社の標準品等の仕様を盛り込むことを働きかけること

により、同社の製品のみが適合する仕様書とすることを実現し〔た〕」

と認定されています。

つまり、知識のない入札担当者をだまして、さらには、自己が知的財産権を有することを隠して、自社の仕様を入札仕様書に盛り込ませているのです。

ただ、パラマウントベッド事件も、

同社の製品のみが適合する仕様を含んでいても対外的には東京都の⽅針に反していることが露⾒しないように仕様書を作成することができると申し出るなど」

していることからすると、入札担当者もパラマウントベッドだけが適合できる仕様であることは認識していたことになるので、知的財産権を隠していたかどうかは、実は本質的な問題ではないようにも思います。

いずれにせよ、パラマウントベッド事件では、製品に詳しくない東京都の入札担当者をだまくらかして仕様に潜り込ませた、という匂いがプンプンします。

これに対して、スマートバリューの件については、セキュリティの問題なので、相当程度、会社の言い分に現実味がありそうです。

日経新聞にも、

「法令上の問題はないものと考えているが、公取委の検査に全面的に協力していく」

という会社のコメントが載っています。

なので、本件ではセキュリティ上の理由があったのかどうかという、まさにそこが争点になるのでしょう。

そしていうまでもなく、セキュリティ上の理由があったことの立証責任を会社が負うのではなく、セキュリティ上の理由がなかったことの立証責任を会社が負うのです。

実はパラマウントベッド事件でも、パラマウントベッドが都の入札担当者をだまくらかして(=同社の仕様にたいしたメリットがないのにあるかのようにだまして)入札仕様に自社仕様をもぐりこませたとまでいえるのかはやや微妙でした。

というのは、同事件の勧告審決では、パラマウントベッドの違反行為として、同社が、

「入札事務担当者をして

(三)入札のための現場説明会において仕様書の内容を説明する際に、同社の製品の仕様のみに合致する内容を説明し、⼜はメーカー3社の標準品の機能等を比較しパラマウントベッド社の製品の機能が競合2社の製品の機能に比較て著しく優れていることを⽰すパラマウントベッド社の作成による⼀覧表を掲⽰して説明し、入札参加者に対し、同社の医療用べッドを発注する旨表明すること

(四) 仕様書が同社の製品しか対応できない内容ではないか等の競合2社等からの質問及び仕様書の修正要求に対して、パラマウントベッド社の作成した回答に従って当該仕様書の内容の必要性等を回答すること及び同社と相談の上修正要求に応じないなどとすることをさせている。」

という事実が認定されており、実際に、「パラマウントベッド社の製品の機能が競合2社の製品の機能に比較て著しく優れて」いた可能性が示唆されている(あるいは、可能性が排除されていない)からです。

そしてもし、「パラマウントベッド社の作成による⼀覧表」の内容が事実に反するなら、競合2社は、それは事実と異なると反論したはずですが、そのような反論はなく、ただ、

「仕様書が同社の製品しか対応できない内容ではないか等の競合2社等からの質問及び仕様書の修正要求」

があったと認定されているだけで、一覧表の内容がウソだという質問はなかったことがうかがわれます。

つまり、競合2社も一覧表の内容が事実だということは認めざるを得なかったわけです。

たしかに、パラマウントベッドが作成した一覧表を使ったり、パラマウントベッドと相談して回答したりしているのは、いかにも同社が都を操っているような印象を与えますが、もしパラマウントベッド社の製品が本当に優れているなら(そして、その可能性は勧告審決では排除されていません!)、たとえ一覧表を同社が作成したり、技術的なことがわからない都の担当者が同社に相談したりしても、それで競争が制限されていることになるのかは疑問でしょう。

医療用ベッドの場合は、いくら医療用とはいえ、たかが(失礼!)ベッドですから、競合2社であるフランスベッドとマーキスベッドの製品が病院で使い物にならないくらいだめな商品だということはなかったのだろう、という常識的判断がはたらきます。

ですが、理屈のうえでは、もしそうなら、勧告審決書に、

「パラマウントベッド社の製品は競合2社の製品に比べて特段優れているわけではないにもかかわらず、優れているかのように都を欺罔し」

とか、何らかの事実が認定される必要があったと思いますが、そのような事実は認定されていません。

それでも、3社の製品が実用に耐えるものであったことをうかがわせる事実として、勧告審決書に、都が、

「(1) パラマウントベッド社、フランスベッド社及びマーキスベッド社の3社(以下「メーカー3社」という。)が製造する医療⽤べッドが納⼊可能な仕様書⼊札を実施すること。」

を入札方針としていたという事実が認定されており、3社がいずれも実用に耐える製品であったことがうかがえます。

ではスマートバリューの件で、これに類するような、

「オープンソースのCMSが納入可能な仕様書入札を実施すること」

というような方針を各自治体が採用していたのかというと、きっとしていなかったのではないかと想像されます。

むしろ、

「セキュリティの確保されたものであること」

というような条件が入っていても(あるいは、そんなことは当たり前すぎて書かれていなくても当然そういう運用がなされていても)不思議ではありません。

というわけで、パラマウントベッド事件を知っている者からすると、システムのセキュリティみたいな重大な要件について、よく公取委が踏み込んで来たなあ(本当に大丈夫か???)と思わざるを得ません。

前述のように、自社に有利な仕様を入札仕様書に潜り込ませることは多くの入札でふつうに行われていることです。

それがもし、入札担当者をだまくらかすようなものならよろしくないのでしょう。

ですが、ほんとうに自社の仕様が優れている(スマートバリューの自前のCMSのほうが、オープンソースのCMSよりセキュリティに優れている)のなら、そのような営業行為を独禁法違反とされたのではたまりません。

というわけで、もし本件でおかしな判断が出たら、入札に参加する企業の営業の在り方を根本的に見直さないといけなくなるかもしれません。

それくらい、本件は重要な案件になりそうな気がします。

今は確約制度がありますが、スマートバリュー社は、もし自社の営業が何ら恥じるものでないと考えるなら、安易に確約を申し出るべきではないでしょう。

オープンソースでも作れるCMSを、あえて自前で作っているからには、そのほうが優れているからそうしているはずであり、その点をアピールする営業が禁じられるなら、自社の事業を全否定されているに等しいのではないかという気がします。

2021年10月31日 (日)

商品購入者が応募できる抽選に当選した者がにさらに商品を購入することを条件に提供する景品類

ある商品Aを事業者から購入すると抽選に応募でき、当選した人が賞品をもらうためにさらに商品Bを同じ事業者から購入することを要する企画は、懸賞でしょうか、総付でしょうか。

景品類を考えるときには、その提供の原因となる取引ごとに考えるのが基本です。

そこでまず、商品Aの購入取引で賞品が提供されるものとみて、考えてみましょう。

商品Aを購入すると抽選に応募でき、当選者が商品をもらえることからすれば、これは懸賞による提供のようにみえます。

では、さらに商品Bを購入しなければならないことについては、どのように考えればよいでしょうか。

見ようによっては、商品Bを購入することは商品A購入者から抽選で選ばれた当選者が常に満たすべき客観的条件であるに過ぎず、商品Aの購入にかかる懸賞には関係がないようにも見えます。

それでいいのでしょうか?

このような問題を考えるときの基本は、結局、消費者は最低どれだけの取引をすれば賞品を獲得できるのかを考えることです。

このように考えると、本件で賞品を獲得するためには、結局、商品Aと商品Bの両方を購入しなければならないことになります。

ということは、今は商品Aの購入取引を起点に考えていましたが、結局、商品Bも購入しなければならないことからすると、賞品を獲得するために最低限必要な取引は、商品Aの購入取引と商品Bの購入取引の2つである、ということになります。

つまり、この企画を、商品購入の順番と抽選の順番はさておき、全体としてみると、商品Aと商品Bの両方を購入した人に対して抽選で賞品を提供しているのと同じです。

ここで、上の例では、

A購入→当選→B購入→賞品獲得

という順番を想定していましたが、この順番は、企画で特段指定しない限り、

A購入→B購入→当選→賞品獲得

でも、

B購入→A購入→当選→賞品獲得

でも同じことだと考えられます。

では、もし、企画で、「抽選に当選したあとに商品Bを購入しなければならない」と指定されていたらどうでしょう。

つまり、

A購入→当選→B購入→賞品獲得

という順番が指定されている場合です。

この場合、B購入は、ますます当選者が満たすべき客観的条件にすぎないようにも見えます。

ですがやはり、A購入とB購入により賞品が獲得できるとみるべきでしょう。

以下のように考えられます。

今、商品Aを起点に見ていますので、この賞品により商品Aの取引が誘引されることが前提です。

しかしながら、商品Aを購入する段階において、消費者は、賞品を獲得するためには商品Bも購入することが必要であると認識しているはずです。

とすれば、結局、商品AとBの取引の両方に誘引されているものと言わざるを得ないように思われます。

もし、

A購入→当選→B購入→賞品獲得

という順番が指定されているのに、

B購入→A購入→当選

という経過を経た人は、さらにBを購入し、

B購入→A購入→当選→B購入→賞品獲得

という経過を踏まなければならないことになります。

この場合、1つめの「B購入」は、企画との関係では意味がないことになります。

ここで、

①A購入→当選→B購入→賞品獲得、という順番が指定されている場合と、

②順番は問わず、A、Bの両方を購入していればいい場合(もちろん当選することが前提)

の場合で何が違うのかと考えると、

①(順番指定)の場合には、当選者しかBには誘引されない

のに対して、

②(順番任意)の場合には、A、B両方を購入する人もけっこういそう

という違いがあるかもしれません。

しかし、仮に②(順番任意)の場合であっても、とにかくAを購入するだけで抽選に応募でき、B購入前に当落を知ることができる仕組みなのであれば、慎重な人はひとまずAを買って抽選に応募し、当たった場合にだけBを購入する、という選択をするように思われます。

ですが、①②いずれの場合であっても、とにかくAとBの両方を購入することが必要であることには変わりはないので、取引の価額はAとBの合計額となります。

(ちなみに、上述のようにAを購入すれば抽選に応募できる企画ではなく、AとBの両方を購入してはじめて抽選に応募できる企画の場合には、賞品はAとBの両方に付随するので、AとBの合計額が取引の価額になることはあきらかです。)

ということは、結局、取引の価額は商品Aの価格と商品Bの価格との合計額となり、当該合計額の20倍か10万円の小さい方までの賞品を提供することができることになります。

では次に、Bの購入取引で賞品が提供されているものとみて、考えてみましょう。

ここでも便宜的に、

①A→当選→B→賞品という順番が指定されている場合と

②順番は問わない場合(Aを購入すれば抽選には応募できる)

を考えてみましょう。

まず、①(順番指定)の場合、Bを中心にみると、この企画は、「Aの抽選に当選したB購入者全員に賞品提供」という総付企画にみえなくもありません。

しかし、賞品が提供されるパターンを具体的に考えてみると、まずAを購入して当選しなければならないので、たとえB購入時には確実に賞品がもらえることがわかっていても、A購入時を基準にみれば、「偶然性を利用して」、「提供の相手方」を定めている(懸賞告示1項)、というべきでしょう。

②(順番不問)の場合も、賞品が提供されるパターンを具体的に考えてみると、たとえば、

B→A→当選→賞品

という順番を辿った消費者に賞品を提供する場合も、(B購入時を基準に見ても、A購入時を基準に見ても)賞品は偶然性を利用して提供の相手方を定める方法(懸賞の方法)により提供されている、というべきでしょう。

以上より、結局、どのようなパターンであっても、本件企画は、AとBの取引に付随する懸賞による景品類の提供であり、AとBの合計額を基準に景品類の価額を算定することになります。

2021年10月28日 (木)

ジュリストに寄稿しました。

ジュリスト1564号に、

「アフィリエイトの広告責任」

という論文を寄稿しました。

ざっくりまとめると、アフィリエイト広告においては、アフィリエイト記事は広告主の表示であり、アフィリエイターの書いたアフィリエイト記事の内容について当然に景表法上の責任を負う、ということです。

いろいろ意見はあるところかと思いますが、解釈論としては、この解釈が一番しっくりくると思っています。

これまでのアフィリエイト広告に関する議論や消費者庁の考え方の変化もまとめてありますので、ご関心のある方はお読みいただけるとうれしいです。

2021年10月26日 (火)

消費者庁景品Q&A57番(ポイントによる支払と取引価額)に対する疑問

消費者庁の景品に関するQ&Aの57番に、

「Q 当店ではポイントカードを発行しており、100円お買上げごとに1ポイント提供しています。

貯まったポイントは次回以降の買い物の際に1ポイントを10円として支払に充当することができます。

この度、2,000円のA商品の購入者を対象とする懸賞企画を実施しようと考えているところ、

A商品を購入する際に、貯まったポイントを使用した場合であっても懸賞企画に参加することは可能とします。

このように貯まったポイントを対価の支払に充当することにより商品を購入することが可能な場合の取引価額はどのように考えるのでしょうか。」

という質問があり、これに対して、

「A 本件の場合、貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるものであり、

貯まったポイント分を対価の一部に充当することによりA商品を購入することは、

現金とポイントによって2,000円という対価の支払が行われたものと考えられるので、

本件における取引価額は2,000円となります。」

と回答されています。

私は、これは理屈としておかしいと思います。

というのは、定義告示運用基準6(3)アで、

「(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること

(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

と説明されており、ポイントは「複数回の取引を条件として対価を減額する場合」でることがあきらかだからです。

つまり、ポイントというのは、最初の「取引①」で1000円購入したら10ポイント(100円相当)付与して、次の「取引②」で2000円購入するときにポイントを充当して現金による支払いは1900円となる、という仕組みですが、これは、取引①と取引②という「複数回の取引を条件として」取引②の対価を減額しているのだ、と整理されているわけです。

なので、Q57のように、

「2,000円のA商品の購入者を対象とする懸賞企画を実施」

する場合であれば、これにポイント(たとえば10ポイント=100円)を充当して購入した人は、100円の値引きを受けて1,900円で購入した、と考えるほかないと思います。

回答では、

貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるもの」

であることを1つの理由にしていますが、これは理由になりません。

というのは、ポイントを使用するかどうかは購入者の選択ですが、ポイント(=値引き)をあたえることは事業者が決定しているからです。

事業者は、消費者がどの取引にポイントを使うかはコントロールできなくても、どれかの取引で値引きをするとの判断はしているわけです。

消費者は、このように事業者がみとめた範囲内で選択をしているにすぎません。

また、回答では、

現金とポイントによって2,000円という対価の支払が行われたものと考えられる

という理由もあげていますが、これなどは、ポイントが値引きであるとされていることと、真っ向から矛盾します。

回答の理屈だと、質問のケースは、

「ポイントによって2,000円という対価〔の一部。たとえば100円〕の支払が行われた」

ということになりますが、定義告示運用基準の整理にしたがえば、

「ポイントによって2,000円という対価〔の一部。たとえば100円〕の減額がされた

というべきです。

そして、ポイントを使うとキャンペーンに参加できなくても、それはそういう企画として行えばいいわけですし、もしポイントで100円分支払ったら(厳密には、100円分値引きを受けたら)キャンペーンに参加できないのが困るというなら、2,100円の買い物をすればいいだけです。

あるいは、顧客に、ポイントを使うと2000円の買い物ではキャンペーンに参加できないことを伝えて、どうするか、任意の選択にゆだねれば良いだけの話です。

その結果、キャンペーンの賞品がもらえなくてもポイントを充当する人もいれば、ポイントを使って2100円の買い物をする人もいるでしょう。

とはいえ、消費者庁が、ポイントで減額を受けても2000円の取引をしたものとみなして景品類を提供してよいといっているわけですから、事業者にとってはありがたいことであり、何も目くじらを立てる必要はないのかもしれません。

このように、景品規制というのは、細かいルールを論理的に見ていくと相互に矛盾することがたびたびあるのですが、これもその1つの例だと思います。

2021年10月25日 (月)

10点集めて景品と交換できるシールについて

商品に「1点」などと印刷されたシールを10枚集めて(商品を10個買って)応募したらもれなく景品がもらえる企画については、「1点」のシール1枚はいくらの価値があると考えられるでしょうか。

たとえば、景品が1000円のものなのであれば、「1点」を10枚集めて1000円のものと交換できるので、「1点」1枚では100円の価値があることになると考えられます。

したがって、「1点」1枚を提供できる商品の価額は、100×5=500円、ということになります。

ただ、「1点」のシール1枚が100円の価値がある、というのはあくまでもののたとえであり、ほんらい、シール自体(「1点」と印刷された紙片)は無価値です。

そこで、論理的には、1000円の景品を獲得するのに最低いくらの商品を購入する必要があるのかを考えて、総付規制では商品を最低1000×5=5000円買わなければいけないので、1商品に「1点」のシール1枚を貼付するなら、1商品あたり500円でなければならない、と考えるのが正確です。

もし、複数の種類の賞品が提供される場合には、消費者にとって最も割のいい賞品を基準に考えます。

たとえば、「1点」10枚集めて1000円相当の賞品がもらえるとともに、「1点」を20枚集めたら3000円相当の賞品がもらえる企画の場合、3000円相当の賞品をもらう場合の「1点」のシールの価値は150円で、1000円相当の賞品をもらう場合の100円にくらべて高いので、20枚集めて3000円のほうを基準に取引価額を算定します。

なので、3000円の5倍の1万5000円が最低の取引価額ですから、1商品あたり最低、15,000÷10=1,500円、の取引でなければならないことになります。

さらに、シールに複数種類(「2点」や「5点」のシール)がある場合も、考え方は基本的に同様で、ある賞品をもらうために最低限いくらの取引をしなければならないかを考えます。

たとえば、10点集めて1000円相当の賞品をもらえる企画の場合、取引価額は最低1000×5=5000円でなければならないので、「1点」のシールを500円までの商品に貼付するのはよいのですが、「5点」のシールを2000円の商品に貼付すると、4000円で10点に達してしまうのに1000円相当の賞品がもらえて、賞品の総付上限の800円(=4000×0.2)を超えてしまい、違反になります。

懸賞の場合も考え方は同じで、景品を獲得するために最低いくらの取引をしなければならないかを考えます。

たとえば、「1点」のシール10枚集めて抽選に1回参加できて、当選すれば豪華賞品がもらえる企画の場合、懸賞の場合は抽選に当たることを前提に、商品を獲得するためには最低いくらの取引をしなければならないか、を考えます。

そうすると、たとえば、賞品が9万円だと、それに必要な取引価額の総額は最低でも9万円÷20=4500円なので、1つの取引では最低450円となります。

ここでもし、シール10枚集めると抽選に1回参加でき、20枚集めると3回参加できる場合(UFOキャッチャーで100円だと1回挑戦できるけど500円玉をいれると6回挑戦できるようなイメージでしょうか)、最低必要な取引価額はどうかんがえればよいでしょう。

ここで、「10枚で1回参加するより20枚で3回参加できるほうが割がいいから20枚で3回を基準にして1回あたり6.7枚相当だな」と考えてはいけません。

あくまで、抽選に当選することを前提に、賞品を獲得するには最低いくらの取引をしなければならないかを考えるので、「20枚で3回参加」のオプションでは、20枚貯めないと1回も参加できないので、むしろ割りが悪い(賞品獲得は困難)ということになります。

それよりも、10枚で1回のオプションのほうが、20枚貯めるよりも早く10枚で抽選に参加できるので、こちらの10枚のほうを基準に考えます。

というわけで、「1点」10枚で1回抽選に参加できる企画も、さらに加えて「1点」20枚で3回参加できる企画も、9万円の賞品をもらえるなら、取引価額の最低は9万円÷20=4500円、ということになります。

少しややこしいのが、企画の途中で賞品を追加する場合です。

「1点」のシールを10枚集めて抽選に参加できる企画を1年中やっていて、途中で賞品を入れ替えたり追加したり、ということをやると、このようなことを考える必要が出てきます。

たとえば、これまで1個500円の商品に「1点」のシール1枚を貼付し、シールを10枚集めた人(5000円の取引をした人)に対して、総付告示の範囲内で、もれなく1000円相当の賞品を進呈していた企画があるとしましょう。

さらに、企画の途中で、それまでの、シール10枚でもれなく1000円相当の賞品がもらえるのに加えて、シール20枚で1800円相当の賞品がもらえるように追加した場合は、どのように考えればよいでしょう。

(なお、1800円相当の賞品を追加する前に消費者が貯めたシールも、1800円の賞品との交換に使用できるものとします。)

これは実は、なかなか微妙な問題です。

論理的には、1800円相当の賞品の追加を告知する前に獲得したシールが貼付されていた商品の取引は、1800円の賞品とは何の関係もないので、たとえば、1800円の賞品の追加前にすでに「1点」のシール20枚を貯めていた人(1000円の賞品を2個もらえる権利のあった人)との関係では、その20枚のシールと交換してもらえる1800円の賞品は(過去の取引との)取引付随性がなく、景品類に該当しないことになりそうです。

これは、従来よりも安い賞品を追加する場合も同様で、たとえば、企画の途中で、「1点」シール10枚でもれなく1000円相当の賞品がもらえるのに加えて、シール3枚でもれなく500円相当の賞品がもらえるように追加した場合、(商品が1個500円だとシール3枚の取引でもらえる賞品の上限は1500×0.2=300円なので500円は上限を超えますが)そもそも500円の賞品追加前にすでにシール3枚貯めていた人(景品規制との関係では、ほんらい、何の権利もない人)との関係では500円相当の賞品は取引付随性がないので、見かけ上上限の300円を超えているにもかかわらず、違反にはならない、ということになりそうです。

ただ、こでは、取引付随性のある方法と無い方法を併用する場合の考え方が適用されると考えられます。

すなわち、定義告示運用基準4(2)では、

「(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である。)。」

とされています。

たとえば、

「ア 商品の容器包装に経済上の利益を提供する企画の内容を告知している場合(例 商品の容器包装にクイズを出題する等応募の内容を記載している場合)」(定義告示運用基準4(2)ア)

において、「取引に附随しない提供方法を併用」する場合、たとえば、ホームページやCMで企画の内容を告知する場合は、応募者が容器包装をみて企画を知ったのか、ホームページやCMをみて知ったのかを問わず、すべて、取引付随性ありと判断されることになります。

この場合、ホームページやCMを見ただけで応募した人は取引をしていないので取引価額がいくらなのかが一応問題になりますが、定義告示運用基準は、取引をしていない人もした人と同じように考えるという考え方に基づいていると思われるので、すべての応募者との関係で、商品の取引価額が基準になると考えるべきでしょう。

ということは、上記で検討している、企画の途中で賞品を追加して、追加前にシールを貯めていた人(厳密に言えば取引付随性のない人)の場合も、取引付随性があるものとみなして、かつ、取引付随性がある人と同等の取引をしたものとみなして、景品類の規制がかかるというべきでしょう。

以上より、「1点」のシール3枚でもれなく500円相当の賞品がもらえるように追加した場合に、追加前にすでにシール3枚持っていた人は、追加後に取引をする人と同様、1個500円の取引を3回(計1500円)したものとみなして、景品類の上限は300円(これは、追加後に取引をする人と同様)であり、500円はこの上限を超えるので違反だ、ということになります。

さらにややこしいのは、シールの交換レートを変える場合です。

たとえば、従来、500円の商品に「1点」のシール1枚を貼付して、10枚貯めたら(5000円の取引をしたら)1000円の賞品をプレゼントしていたのに対して、あるときから、600円の商品に「1点」のシール1枚を貼付して(あるいは、商品が500円から600円に値上げされたイメージでしょうか)、10枚貯めたら1200円の賞品をプレゼント、と変更したような場合です。

この場合に、変更前の取引で既にシール10枚貯めていた人の交換を認めると、その人との関係では、5000円の取引で1200円の賞品をあたえることになるので、上限を超えてしまいます。

しかし、変更前のシールと変更後のシールの取扱いを変えることは、企画の内容をいたずらに複雑にするもので、やや現実的でないように思いますし、そこまで厳密に考えなくてもいいように思います。

そこでここでは、取引付随性のある場合とない場合を併用する場合においては取引付随性のない者も取引付随性のある者と同じ取引をしたものとみなすという前述の定義告示運用基準4(2)の考え方を類推適用して、変更前にシールを獲得した人も変更後に獲得する人と同じ取引をしたものとみなして(つまり、1個600円の商品を購入したものとみなして)、1200円の賞品を提供してよい、と考えておきます。

2021年10月24日 (日)

総付でも懸賞でも同じ賞品がもらえる企画の取引価額

たとえば、1000円の商品を10個買うと賞品がもらえ、かつ、1000円の商品を1個買うと抽選で同じ賞品がもらえる、という企画の取引価額と景品類の価額の限度額はどのように考えればいいでしょうか。

つまり、同じ賞品を獲得するのに、確実だけれどお金のかかる総付と、一か八かだけれど(もらえないかもしれないけれど)お金のかからない懸賞がある、という企画です。

イメージとしては、商品に、「1点」などと記載したシールが貼られていて、そのシールを10点分集めてハガキで応募すれば必ず賞品がもらえるし、シール10枚集めるのがめんどうな人は、「1点」のシールを1枚だけ貼ってハガキで抽選に応募することもできる(当たれば同じ賞品をもらえる)、というようなものを考えるとわかりやすいでしょう。

この場合、同じ取引について、総付で賞品を提供する企画と、懸賞で賞品を提供する企画が同時に行われていて、たまたま両企画で提供される賞品が同じものである、という企画である、と考えるべきでしょう。

とすると、この企画では、総付の規制(取引価額の2割)と、懸賞の規制(取引価額の20倍かつ10万円)の、両方を守らないといけないことになります。

(さらに、懸賞については、賞品総額が取引予定総額の2%以内という制限もあります。)

とすれば、上記の例の企画では、総付では1000×10×0.2=2000円までの賞品が提供できることになり、懸賞では、1回あたり1000×20=2万円までの賞品が提供できることになります(10回の取引では、合計20万円までの賞品を提供できることになります)。

したがって、同じ賞品を提供する場合には、制限額が低い総付に合わせて、2000円までの賞品を提供できることになります。

上の例では、「1点」のシールは総付と懸賞のどちらかには使えるけれど両方には使えないことを想定していましたが、例を少し変えて、「1点」のシールで総付と懸賞の両方に参加できる場合はどうでしょうか。

「1点」のシールに、総付で賞品がもらえる権利と、懸賞で賞品がもらえる権利の両方が化体しているイメージです。

たとえば、「1点」のシール10枚を集めて応募した人は、総付として必ず賞品が1個もらえ、さらに、シール1枚ごとに抽選がされて全部当たれば10個の賞品がもらえるので、最大で合計11個の賞品がもらえる、というイメージです。

この場合も、取引価額の考え方は同じです。

つまり、総付で賞品をもらうために最低限必要な取引価額は1000×10=1万円なので、総付の取引価額は1万円となり、懸賞で賞品をもらうために最低限必要な取引価額は1000円です。

したがって、(「1点」のシールを10枚集める)総付の方法では、2000円までの賞品を提供でき、(「1点」のシール1枚で応募できる)懸賞の方法では、1回の抽選で提供できる賞品の価額は1000×20=2万円までの賞品を提供できることになります。

そしてこの場合、総付で賞品をもらえる権利と懸賞で賞品をもらえる権利の両方を付与していることになるので、最大で、

総付により2000円

懸賞により20万円

合計20万2000円

の賞品をもらえることになりますが、総付の権利と懸賞の権利を重複して同一取引に付与する場合でも合算はされないので(総付と懸賞は別枠)、これで問題ありません。

2021年10月23日 (土)

お友達紹介キャンペーンにおける取引の価額

お友達紹介キャンペーンをしたときの、紹介者に提供する景品類の算定基準になる取引価額はいくらでしょうか。

まず前提として、定義告示運用基準4(7)では、

「(7) 自己の供給する商品又は役務の購入者を紹介してくれた人に対する謝礼は、「取引に附随」する提供に当たらない(紹介者を当該商品又は役務の購入者に限定する場合を除く。)。」

とされていますので、ここでは、「紹介者を当該商品又は役務の購入者に限定する場合」を前提にします。

たとえば、1万円の商品購入者に対して、「お友達を1人紹介してくれるごとに現金1000円プレゼント」というキャンペーンをする場合、いくらまでプレゼントできるでしょうか。

ここで、景品類の額の算定基準になる取引価額は、商品代金である1万円と考えるほかありません。

そして、お友達紹介キャンペーンは総付だというのが消費者庁の見解らしいので(私は懸賞だと考えています。詳しくはこちらのコメント欄をご覧下さい)、それを前提にすると、1万円の2割までで、2000円までしか提供できないことになります。

ですので、お友達2人までの分しか、現金をプレゼントできないことになります。

つまり、1万円の商品購入者が、お友達を10人紹介してくれた場合でも、2000円(2人分)までしか提供できないことになります。

お友達を10人も紹介してくれるなら商品をただであげてもいいくらい(あるいは、さらにお礼を差し上げてもいいくらい)というのが事業者の感覚ではないかと思うのですが、現状、それは認められません。

私は以前から、定義告示運用基準の紹介の謝礼と仕事の報酬の考え方は矛盾していると考えていますが(詳しくはこちらをご覧下さい)、そのような矛盾はこのような具体例を考えてみると一層あきらかになります。

ですので、ほんらいは紹介の謝礼は仕事の報酬と考えて景品規制がかからないようにすべきなのですが、定義告示運用基準を改正しないとそれはできません。

なので、やはり、解釈変更の範囲でできることとして、紹介の謝礼は懸賞と考えて(そうすれば、上記の例では10万円分に相当する100人の紹介まで謝礼を払えます。ただしキャンペーン全体での謝礼の総額が売上総額の2%を超えてはいけません。)、少しでも妥当な額の謝礼を払えるようにするのが合理的だと思います。

2021年10月22日 (金)

抽選参加券(権)がもらえる企画の景表法上の考え方

抽選に参加できる権利(抽選参加券)を景品類としてもらえる企画は、景表法上どのように考えればいいでしょうか。

抽選参加券を総付で与える場合(例、来店者全員に抽選参加券を配る)と、懸賞で与える場合(例、商品購入者にくじを引かせて、くじに当たった人に抽選参加券を与える)に分けて考えてみましょう。

まず、「抽選に参加できる権利(抽選参加券)」のような、それ自体には価値のない権利(券)は、それと引き換えに結局何がもらえるのかを基準に、権利(券)の価値を判定すべきでしょう。

ですので、ここでも、抽象的に「抽選に参加できる権利(抽選参加券)」を考えるのではなく、その「抽選」の結果なにがもらえるのか、を具体的に考えたほうがわかりやすいでしょう。

そこで、「抽選」で当たった場合には、1万円相当の商品(賞品)がもらえるものとします。

まず、抽選参加券を総付であたえる場合、1万円相当の賞品をもらうためには「抽選」で当選しなければならないので、結局、この企画は全体として懸賞にあたると考えられます。

したがって、抽選の当選者に与えることができる賞品は、取引価額の20倍か10万円の、いずれか安い方、ということになりますので、たとえば取引価額が1000円(その20倍は2万円)であれば、1万円の賞品は、制限の範囲内となります。

次に、抽選券を懸賞であたえる場合、これは、どう転んでも懸賞でしょう。

なので、抽選券を総付であたえる場合と同様、1000円の取引の場合には、1万円の賞品は制限の範囲内となります。

このように考えると、

抽選に参加できる権利を総付で与える企画

抽選に参加できる権利を抽選で与える企画

抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利を抽選で与える企画

抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利を抽選で与える企画

抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利がもらえる抽選に参加できる権利を抽選で与える企画

・・・(以下同様に続く)

のすべてが、結局最後にもらえる1万円の賞品をもらえる懸賞だ、ということになります。

念のために告示に照らして確認しておきましょう。

懸賞告示1項では、

「1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。

一 くじその他偶然性を利用して定める方法

二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」

と「懸賞」が定義されています。

なので、抽選参加券を総付で与える場合には、抽選の結果当選した賞品(景品類)の「提供の相手方」および「提供する景品類の価額」を、抽選という「偶然性を利用して定める方法」で定めていることになるので、「懸賞」に該当することになります。

抽選参加券を抽選で与える場合が賞品の「提供の相手方」および「提供する景品類の価額」を「偶然性を利用して定める方法」によって定めるものであることはあきらかでしょう。

では、少しひねって、物品(たぶん粗品程度)に交換することもできる抽選参加券を景品類として提供する場合はどうでしょうか。

このような抽選券の提供は、物品(粗品)を総付で提供するのと、抽選の結果当たる(たぶん立派な)賞品を懸賞で提供することを、あわせて行っているとみるべきでしょう。

ですので、たとえば取引価額が1万円で、このような抽選参加券が総付であたえられる企画の場合、総付で提供するとみなされる粗品については2000円まで、抽選の結果当選者にあたえられる賞品は10万円まで、ということになります。

同様の抽選券が懸賞であたえられる企画の場合は、粗品も懸賞で与えられることになるので10万円まで(粗品とは言えませんね。笑)、抽選の結果当選者にあたえられる賞品も10万円まで、ということになります。

また少しひねって、複数枚集めてはじめて抽選に参加できる抽選参加券をあたえるの場合はどうでしょうか。

単純に、「2枚集めて1回くじを引ける券」みたいなものを考えてみましょう。

このような、「2枚集めて1回くじを引ける券」を総付で提供する場合、くじに参加するために(最低限)必要な取引額が、取引価額になります。

したがって、たとえば1000円の取引1回で「2枚集めて1回くじを引ける券」を1枚もらえる場合、取引価額は2000円となり、くじに当たったらもらえる豪華賞品の上限は2000×20=4万円となります。

次に、このような、「2枚集めて1回くじを引ける券」を懸賞で提供する場合は、このような「くじ」に参加できるために(最低限)必要な取引額が取引価額となります。

そして、「2枚集めて1回くじを引ける券」がもらえる抽選に全部あたるとしても、賞品をもらえる「くじ」に参加するためには最低2回取引をしなければならないので、取引価額はやはり2000円となり、くじに当たったらもらえる豪華賞品の上限は同じく4万円となります。

では、「2枚集めて1回くじを引ける券」を、総付と懸賞の両方で提供する企画はどうでしょうか。

たとえば、商品1万円購入すると「2枚集めて1回くじを引ける券」を1枚必ずもらえて、かつ、商品1000円ごとに「2枚集めて1回くじを引ける券」をもらえる抽選に1回参加できる、というような場合です。

上記の検討からあきらかなように、この場合の総付による提供も懸賞による提供も懸賞による提供ですから、「2枚集めて1回くじを引ける券」を2枚獲得できるために(最低限)必要な取引の価格が取引価額となりますので、1000円の商品を2個購入した場合の2000円が取引価額となります。

ではさらに、「2枚集めて1回くじを引ける券」を、総付でも、取引付随性のない形態でも、もらえる場合はどうでしょう。

たとえば、1000円の商品1個を購入しても「2枚集めて1回くじを引ける券」を1枚もらえるし、取引とは関係のない行為(たとえば、商品名を答えさせるような簡単なクイズを記載した新聞広告への回答をはがきで送る、オープン懸賞のような行為)でも同じく1枚もらえる、というような場合です。

この場合については、指定告示運用基準4(2)で、

「(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である。)。」

とされています。

この「同様である」の意味について、西川編『景品表示法〔第6版〕』では、

「例えば、〔運用基準4⑵ア~エ〕の場合のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、たとえ取引を条件としない提供方法を併用していても、取引付随性がある(4⑵)。」

と説明されています。

つまり、上の例でいえば、1000円の商品1個を購入して「2枚集めて1回くじを引ける券」を1枚もらえるのであれば、たとえ、商品名をはがきで回答してももらえる場合であっても、抽選の結果もらえる賞品は取引付随性がある、ということです。

ここで問題は、取引価額はいくらなのか、とくに、取引付随性のない形だけで「2枚集めて1回くじを引ける券」を2枚もらい賞品のくじに当たった人(商品名を書いたハガキを2枚送って券を2枚獲得してさらにくじで賞品が当たった人)について、取引価額はいくらなのか、が問題となります。

これは、指定告示運用基準が、取引付随性のある方法と無い方法を併用しても全体として取引付随性ありとする趣旨であると考えられることから、取引付随性がない方法で「2枚集めて1回くじを引ける券」を2枚獲得した人についても、取引付随性がある方法で獲得したものとみなして、取引価額は商品2個分の2000円であると考えられます。

というわけで、「2枚集めて1回くじを引ける券」を、総付でも、取引付随性のない形態でも、もらえる場合は、総付の方法で2枚券を獲得するのに最低限必要な取引の価額が取引価額であると考えられます。

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