2019年9月12日 (木)

「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」について

公取委がデジタルプラットフォーマーに関する掲記のガイドライン案を公表しました。

気がついたことを記しておきます。

まずそもそも論ですが、GAFAの個人情報の収集・利用を優越的地位の濫用で規制するのは法律解釈として相当無理があります。

個人情報もサービスの対価だというのは形式論としていうのはたやすいですが、常識的な文言解釈としてどうなのか、外国の議論にまどわされず冷静に議論する必要があります。

一般人はグーグルはただで使っていると思っているし、これを個人情報を対価としていると考える人は、独禁法の世界にどっぷりつかっている人をのぞき、いないと思います。

しかも、「取引」(独禁法2条9項5号)という基本概念にかかわる解釈論なので、GAFAという文脈をはなれて一般化して大丈夫なのか、よくよく考えないといけません。

たとえば、「取引」という言葉は不当な利益による顧客誘引(一般指定9項)でも、

正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること

というように使われているので、その特別法である景表法の解釈に影響しないか心配です。

独禁法の分野で情報も対価にあたると言い出したのは、私の知るかぎり、元FTC委員のPamela Jones Harbourさんですが、英語では、priceという単語が、「価格」「対価」という意味とともに、「犠牲」あるいは「代償」という意味もあります。

なので、消費者はGoogleに個人情報というprice=犠牲=対価を払っている、というのは、英語としては(やや駄洒落っぽいですが)、意味はとおりますし、うまいこというなあと思いました。

でも、日本語で個人情報が対価だといったら、ほんとうに駄洒落のレベルではないでしょうか。

また本ガイドライン案の内容は、競争法というより、ほとんど個人情報保護法を優越的地位の濫用にむりやり載せ替えただけで、それならどうして個人情報保護法で行かないのか、よくわかりません。

要するに、公取委はなんとしてもGAFAに独禁法を適用したいのでしょう。

しかもガイドラインは「個人情報」と「個人情報等」を使い分けており、個人情報保護法を超える規制になっていることにも注意が必要です。

「個人情報」は個人情報保護法上の個人情報ですが、「個人情報等」の定義は、

個人情報及び個人情報以外の情報

となっていて、要するに、情報なら何でもあたります。

重要性とか、センシティブ情報であるとか、個人を特定できるかとか、いっさい関係ありません。

もちろん個人に関する情報のみならず、法人に関する情報もあたります。

これも大風呂敷を広げすぎですね。

われわれ法律実務家は契約書などを起案するときに適用要件が広がりすぎたり狭すぎたりしないか細心の注意をはらって起案する癖がついていますから、こういう、なんでもありの定義をみると、こういう仕事が許されるお役所って楽だなぁと思います。

だってタテマエでは何でもアウトにできるようにしておいて、実際の運用で手加減を加えればいいんですから。

昔から公取のガイドラインにはこういうのが多いです。

たとえば知財ガイドラインの「公正な競争を阻害するおそれがある場合には」なんていうのは、どうにでも解釈できるし、どういう場合にそういう場合になるのという一番知りたいことについて何も書かれていません。

まあそれでも独禁法の理論を勉強すればなんとか理解はできたのですが(逆に言えば、理論を知らずにガイドラインを読んでもやっぱりなにもわからない)、今回のガイドライン案は確固たる理論づけがないので、専門家からみても、何も分かりません。(ほんとうに、「情報」というだけで、こんなに幅広い規制をして大丈夫か。線を引くとしたらどこで引くのか。)

プラットフォーマーガイドライン案は、優越的地位濫用ガイドラインとの整合性も無視していますね。

たとえば優越的地位濫用ガイドライン第2-1では、

甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは,

乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,

甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。

というように、事業経営上の支障があることだといっていますが、消費者に「事業経営上」の支障なんてあるわけがありません。

ちなみにこれに相当する部分はプラットフォーマーガイドライン案3(1)では、

デジタル・プラットフォーマーが個人情報等を提供する消費者に対して優越した地位にあるとは,

消費者がデジタル・プラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である。

とされていますが、これも論理的に変です。

というのは、

消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためにはこれ〔=不利益な取扱い〕を受け入れざるを得ないような場合

がすべて優越的地位とみとめられてしまうと、当該デジタル・プラットフォーマーがサービス提供の条件として当該「不利益な取扱い」(たとえば個人情報の提供要請)をしているだけで、他に代替的選択肢があるかどうかにかかわらず、優越的地位がみとめられてしまうからです。

これがもし優越ガイドラインの「事業経営上大きな支障を来すため」のような要件、たとえば、「私生活上の困難を来すため」というような要件が入っていれば、絞りはかけられそうですが、その部分はばっさり削られています。

ひょっとしたら、マイナーなプラットフォームの場合には、「ざるを得ない」にあたらない(他に乗り換えられる場合には、喜んで受け入れているのであって、「受け入れざるを得ない」わけではない)、と読むのかもしれませんが、ふつうの日本語の読み方としてかなり無理があります。

実はガイドライン案も、そのつぎのところでは、

消費者がデジタル・プラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても,消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断に当たっては,消費者にとっての当該デジタル・プラットフォーマーと「取引することの必要性」を考慮することとする。」

としており、取引必要性を考慮すると明記しています。

ですがそういうわけで、この部分はその前の、「消費者が当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスを利用するためには」という部分とかみ合っていません。

その次の、優越的地位認定の具体的な考慮要素を述べたところでは、

①消費者にとって,代替可能なサービスが存在しない場合,

②代替可能なサービスが存在していたとしても当該デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスの利用を止めることが事実上困難な場合,又は,

③当該デジタル・プラットフォーマーが,その意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合

には,通常,当該デジタル・プラットフォーマーは消費者に対し取引上の地位が優越していると認められる。

とされています。

①と②は取引必要性を具体的に言いかえただけなので大きな問題はないのですが、③はおどろきです。

③は典型的な市場支配力の定義ですが、いままで優越的地位濫用は相対的優越でたりるといっていたところを大きく変更しています。

たしかに優越ガイドラインでも

(2) 甲の市場における地位」

というのが考慮要素としてあげられてはいましたが、

「甲の市場における地位としては,甲の市場におけるシェアの大きさ,その順位等が考慮される。甲のシェアが大きい場合又はその順位が高い場合には,甲と取引することで乙の取引数量や取引額の増加が期待でき,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい

というように、あくまで事業上の支障に結びつけた書き方でした。

プラットフォーマーガイドライン案では、相対的優越と絶対的優越が区別されなくなってしまいました。

まあ、市場支配的地位は相対的優越よりも狭い概念だと割り切れば結論的には問題はないのかもしれませんが、優越ガイドラインでの甲の市場における地位はあくまで一考慮要素だったのが、プラットフォーマーガイドライン案では「通常」優越と認めるとされているので、位置づけがだいぶちがいます。

これはきっと、欧米でGAFAを支配的地位濫用で規制していることに影響されたのでしょう。

あと、優越ガイドラインでは「乙」にあたるのがプラットフォーマーガイドライン案では「消費者」という集合名詞になっているため、個々人との間に優越的地位を認定すべきであるとの発想がきわめて希薄です。

優越的地位の濫用に課徴金が導入されて以来、各取引先との間で個別に優越的地位を認定する実務が定着していますが、それと逆行するうごきですね。

(まあ無料サービスなら課徴金はかからないので、運用上は問題ないのかもしれません。)

濫用行為の例としては、

利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること

なんていうのがあげられていて、個人情報保護法そのままじゃないかとびっくりします。

でも、少なくとも市場支配的にあるプラットフォーマーの濫用行為の認定については、個人情報保護法規に違反する行為は競争法上の濫用行為なのだという運用がドイツなどではなされており(Facebook 2016, Martin Moore、 Damian Tambini etc.Digital Dominance: The Power of Google, Amazon, Facebook, and Apple, p90)、ありえなくはない解釈なのかもしれません。

そのほかの濫用行為もみてみると、

「利用目的の達成に必要な範囲を超えて,消費者の意に反して個人情報を取得すること。」

というのは、個人情報保護法16条1項の、

「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」

と瓜二つで、

「個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに,個人情報を取得すること。」

というのは、個人情報保護法20条の、

「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」

と瓜二つですね。

こうしてみるとやはり、どうして個人情報保護法で規制されているものを独禁法で重ねて規制しないといけないのか、疑問がわいてきます。

しかも個人情報保護法は個人情報取扱事業者ならすべて適用されますが、プラットフォーマーガイドライン案はデジタルプラットフォーマーだけ、さらに割り切っていえばGAFAだけに適用されるので、なぜ重ねて規制しないといけないのか意味がわかりません。

もちろんガイドライン案に書いてある行為だけが濫用行為ではないのでしょうけれど(ガイドライン案にもそう明記されています)、だからこそ、個人情報保護法には違反しないけれども独禁法には違反する行為を明示してこそ、ガイドラインの意味があるのではないでしょうか。

(確かに一部には、

「自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し,消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に,個人情報等の経済上の利益を提供させること。」

なんていうのもありますが、いかにもとってつけた感じで、ほんとうにガイドラインで上げる必要があるほどの典型的な有害行為なのか疑問です。

というより、そもそも個人情報とサービスの対価性があいまいなのに、「消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等」と、それとは別に提供を強いられる「個人情報等」って、どうやって区別するのでしょうね? )

というわけで、本ガイドライン案の意味は、公取はGAFAを捕まえたいんだということがわかる、ということなのでしょう。

でもGAFAにかぎらず外資系はタフですから、きっとこのガイドライン案で正式処分に結びつくことはないのだろうと思います。

ひょっとしたら、先日のリクナビのような、国内のプラットフォーマーがとばっちりを食らうかもしれません。

2019年9月10日 (火)

だいにち堂訴訟での消費者庁の主張について

通販新聞9月5日号(6面)が報じるところによると、消費者庁は、だいにち堂の取消訴訟において、同社が提出したアンケート調査で効果があると肯定的な評価をしたのが1割にとどまるということを前提としたとしても、

「広告が掲載された新聞の販売部数約658万部(1日あたり、推計)を前提とすると『60万人が改善効果が得られると認識する可能性を示すものであり、軽視できない』とも指摘」

しているそうです。

これは実務的には非常に重要な意味があると思います。

というのは、景表法の論点で、誤認はどのような消費者を基準にするのかというものがあり、大元編『景品表示法(第5版)』(緑本)p50では、

「当該商品役務についてさほど詳しい情報・知識を有していない、通常レベルの消費者、一般レベルの常識のみを有している消費者が基準となる。

したがって、・・・ごく一部の消費者のみが勘違いや無知により誤認を生じるようなものは含まれない・・・」

と説明されています。

これについて私は以前から、これだとごく一部でもだまされる消費者が保護されないことになり消費者保護法として不十分だと批判していました。

とくに不当表示はそれ自体たいしてコストがかからないので(いわゆるチープトーク)、ほんのわずかでもだまされる消費者がいればうそをつくのが事業者にとっては合理的ということになり、通常レベルの消費者を基準にしたのでは不当表示が防げないと考えています。

経済学的な比喩を用いれば、平均的あるいはinframarginalな需要者を基準にするのではなく、marginalな需要者を基準にすべき、ということです。

ですがだいにち堂訴訟での消費者庁の主張は、たった1割でも誤解するなら問題だ、あるいは絶対数が多いから問題だ、とするものであり、通常レベルの消費者を基準にするという従来の考えかたから大きく離れています。

実は以前からホンネのところでは消費者庁ないし公取委はこういう運用をしていて、ホンネとタテマエを使い分けているところがあったように思われます。

最近の特に厳しい運用(マクドナルドのローストビーフバーガー事件など)の時代もそうですが、かなり以前にも、たとえば、2008(平成20)年3月13日NTT東西に対する「DIAL104」に関する排除命令で、

DIAL104そのままおつなぎします

と表示しただけで、同サービスの利用には通話料もかからないかのような表示であって、実際には通話料がかかったので不当表示だとしました。

わたしはこの事件は行き過ぎであったと今でも思っていますが(「そのままおつなぎ」というだけで、無料だと理解する人がどれだけいるのか疑問)、それはともかく、ときどきこういう「外れ値」(outlier)的な事件は従来からあり、「通常レベル」というのを額面どおりに受け取ることはできませんでした。

それが今回、取消訴訟の主張という形で、消費者庁のホンネがはっきりと見えたわけです。

事業者としては、そんなホンネとタテマエの使い分けをされたのではたまったものではないわけで、きちんとタテマエを通して欲しいところですが、お役所というのは自分のまちがいはぜったいみとめないので、これからも緑本の「通常レベル」という記述は残るのだろうと思います。

でもこういう記述が残るのは大きな誤解のもとなので、次回改定の際にはきちんとあらためるべきだと思います。

西川課長、よろしくおねがいします。

ところで、600万部の1割で60万人も誤認するから無視できないというのもやや暴論で、それだと、延べ6000万部の広告を出したら1%が誤認するだけでも優良誤認になってしまいます。

あるいは、消費者庁が6万人でも無視できないというなら、600万部の1%でも誤認したらアウトということになります。

しかし、それはそれでちょっとやりすぎではないでしょうか。

従前から、不注意な消費者も保護すべきと主張していたわたしですら、1%だと、さすがに事業者が何も広告できなくなってしまいそう(あるいは、延々と打消し表示をしなければならなさそう)で、行き過ぎな気がします。

(marginalだと最後の1人でも保護されるべきなのですが、それは言葉の綾ということでご了承下さい。)

独禁法での公取委もそうですが、訴訟になったらお役所というのはめいいっぱい自己に有利な(いわゆる高めの)主張をしてくるもので、そういう点では一般私人となんら異なりません。

わたしは消費者庁は最近少々行き過ぎはあるにしても基本的には消費者の味方だと思っているのですが、こういう、理屈をないがしろにしてなりふりかまわぬところを見ると、ちょっとげんなりします。

2019年8月29日 (木)

営業秘密の定義の英訳

政府の法令英訳データベースでは、不正競争防止法の営業秘密の定義(2条6項)は、

この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」

「The term "Trade Secret" as used in this Act means technical or business information useful for business activities, such as manufacturing or marketing methods, that are kept secret and that are not publicly known.

と翻訳されています。

でも、information は単数なので、

The term "Trade Secret" as used in this Act means technical or business information useful for business activities, such as manufacturing or marketing methods, that is kept secret and that is not publicly known.

なんじゃないでしょうか。

それと、「秘密として管理されている」を「that is kept secret」と翻訳していますが、これだと、「not publicly know」とのちがいがわかりにくいですね。

そもそも営業秘密の保護は1990(平成2)年の不競法改正で入ったものですが、そのもとになったTRIPS協定の39条では、

Article 39

1. In the course of ensuring effective protection against unfair competition as provided in Article 10bis of the Paris Convention (1967), Members shall protect undisclosed information in accordance with paragraph 2 and data submitted to governments or governmental agencies in accordance with paragraph 3.

2. Natural and legal persons shall have the possibility of preventing information lawfully within their control from being disclosed to, acquired by, or used by others without their consent in a manner contrary to honest commercial practices so long as such information:

(a) is secret in the sense that it is not, as a body or in the precise configuration and assembly of its components, generally known among or readily accessible to persons within the circles that normally deal with the kind of information in question;
 
(b) has commercial value because it is secret; and
 
(c) has been subject to reasonable steps under the circumstances, by the person lawfully in control of the information, to keep it secret.」

とされています。

2項(a)の「not ... generally known」が非公知性(不競法の英訳では、that are not publicly known)ですね。

とすると、秘密管理性はTRIPS協定では2項(c)がもとになっていることがわかります。

でもそれ(「秘密として管理されている」)を、that are kept secretと訳すと、意図がよくわからなくなってしまいます。

TRIPS協定に忠実に秘密管理性を表現するなら、英訳は、subject to steps taken to keep it secret くらいが適当でしょうか。

あるいは、「管理」というのは、たとえば、出入国管理及び難民認定法が、Immigration Control and Refugee Recognition Act と翻訳されていることからすると、 control が無難そうです。

そすうると正しくは、

The term "Trade Secret" as used in this Act means technical or business information useful for business activities, such as manufacturing or marketing methods, that is subject to steps taken to keep it secret and that is not publicly known.

とか、

The term "Trade Secret" as used in this Act means technical or business information useful for business activities, such as manufacturing or marketing methods, that is controlled as secret and that is not publicly known.

とかですかね。

あるいは、政府の法令英訳データベースの辞書検索で「管理」を調べると、administrationとか、managementがでてきます。

いちおうOALDで英語の意味を調べると、administerは、

「to manage and organize the affairs of a company, an organization, a country, etc.」

と説明されており、manageは、

「to keep sb/sth under control; to be able to deal with sb/sth」

と説明されています。

ただmanageはほかにもたくさん意味があるので(上記引用の意味は7番目で一番最後)、administerのほうが意味ははっきりするかもしれません。

というわけで、

“The term “Trade Secret” as used in this Act means technical or business information useful for business activities, such as manufacturing or marketing methods, that is administered as secret and that is not publicly known.”

にしておきます。

まあ秘密管理性の訳しかたは趣味の問題ですが(それでも、「kept secret」だと、秘密になっている状態というイメージしかわかず、管理者の管理行為が必要だというニュアンスが伝わらないので、やっぱり改善の余地はあります)、be動詞は単純な文法上のミスですから、直しておかれたほうがよいと思います。(この定義はわりと使いますし。)

ともあれ、言うは易しで、この英訳プロジェクトって、たくさんの国際弁護士さんなどが、ほとんど手弁当でやった業績なので、ほんとうに頭が下がります(わたしもとある友人から、このプロジェクトに加わらないかと非公式に打診されたことがありましたが、途中からはいるのはやっぱりむずかしいだろうということで、その話はなくなりました。)

わたしが弁護士になった20年ほど前には、法律の英訳はほとんど一から訳すか、民法系については京大の北川善太郎先生が監修されていた加除式の英文法令集を使うかしていたので、このプロジェクトはほんとうに貴重だと思います。

2019年8月26日 (月)

ビジネスロージャーナルに寄稿しました

ビジネスロージャーナル10月号に、

最近の消費者庁運用例にみる不当表示認定回避のための施策

という論文を寄稿しました。

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 編集部の方からは、こういうふうな表示をすれば不当表示にならないよというような、NGワード集的なものを期待されていたようなのですが、最近の消費者庁の運用に照らすと、そのような小手先の、あるいは、場当たり的な対策ではだめで、一段高いレベルから骨太のチェックしないといけないよ、という思いを込めながら書きました。

教科書的な説明としては、不当表示というのは、通常レベルの消費者を誤認させるかどうかできまるということなのですが、最近は、そういうレベルではなくて、よりより表示に改善できる余地があるなら措置命令で是正させているように思えてなりません。

及第点ではだめで、満点あるいは満点近くでなければならない、というイメージです。

よく依頼者の方からは、どのレベルなら注意止まりで、どのくらいから措置命令を受けるのか、という質問を受けますが、わたしが最近相談を受けた2つの事件でも、どうして一方が措置命令で他方が注意なのか、まったく理解に苦しくというほかないケースがあり、合理的に事前に予測するのはほとんど不可能ではないかと思っています。

(というわけでこの論文にも、注意ですませるノウハウみたいなものは書いていませんのでご了承下さい。)

表示対策課の課長が大元課長から西川課長にかわって、景表法の運用がどう変わるのか、大いに注目です。

ご興味のある方はご一読いただけるとうれしいです。

2019年8月23日 (金)

ジュリスト判例速報にクアルコム審決の評釈を書きました

ジュリスト1536号(9月号)の独禁法事例速報に、

「非係争義務が拘束条件付取引に該当しないとされた事例

ークアルコム・インコーポレイテッド事件」

と題してクアルコム審決の評釈を書かせていただきました。

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話題の事件で興味があったので、たいへんよい機会をいただけたと思っています。

いろいろと議論もありうる事件なので、この記事が議論を深めるのに少しでも役に立てばと思います。

字数がかぎられるので書けないことも多かったですが、きちんとしたことをブログで書くのは時間がかかってたいへんなので、雑感を述べておきます。

まず審決の論理は、クロスライセンスは通常適法だから本件も適法だ、という拍子抜けするくらい単純な論理で、どうしてこんな単純な事件に9年もかかったのか不思議なくらいです。

しかも審決は一見長くみえますが、般若経(読んだことはありませんが)も顔負けにくりかえしが多く、簡潔に書けば審判官の判断の部分は半分くらいになったんではないかと思われます。

(審判官の方は、長いフレーズを1文字で出せるように、ワープロの単語登録機能を駆使したのだろうと想像されます。)

あと、当事者の主張の洗練度をくらべてみると、大人と子供中学生くらいのちがいがあって、矢吹先生さすがだなぁ(JASRAC審決に続いての勝利)と思うとともに、審査官のこんな薄弱な理論に9年間も付き合わされたのかと思うと、国民として恐ろしい思いがします。

と同時に、もっと早く終われなかったのか、関係する審判官の方々には反省していただきたいです。

いくら執行停止をえたクアルコム側には早く終わらせるインセンティブがないといっても、税金の無駄遣いですし、その間、法的にも不安定な状態になるわけで、だらだらとやっていいことにはならないと思います。

改元がなかったらもっと時間がかかってたんではないかと勘ぐったりしてしまいます(審決日は平成ギリギリの平成31年3月13日)。

こういうのをみると、審判制度がなくなってよかったなぁと思わざるをえません。

裁判所なら2年くらいで一審判決が出ていたのではないでしょうか。

理屈の上でもいろいろ問題で、まず、FRAND宣言付の標準必須特許とそれ以外の非必須特許が審査官の主張では区別されていません。

この点はクアルコム側が適切に、標準必須特許は商品差別化の役には立たないと主張し、審決もそのとおりみとめています。

まずこの点だけで、審査官の主張はロースクールの答案なら落第でしょう。

今の公取なら優越的地位の濫用とか、ひょっとしたら取引妨害(!)とかもくっつけて命令を出すかもしれませんが、この当時はもっと品がよかったので、拘束条件付取引だけでした。

そのおかげで、拘束条件付取引では「余儀なくさせた」かどうかは違反の要件ではないと、審決でも明確化されました。

これはよかったと思います。

ところで最近の公取委の実務にならってこの審決でも関係者名は伏せ字になっていますが、それだとイメージもわきにくいので、公開情報からわかる分を以下に記しておきます(たぶん業界に詳しい人ならすぐにわかるレベルだと思います)。

ジュリストの記事でも関係する分については明記しています。

分かった分だけ結論を書くと、以下のとおりです。

A1→松下電器産業
 
A2→パナソニック
 
B→日立製作所
 
C→富士通
 
D→日本電気
 
E→東芝
 
F→三菱電機
 
G→カシオ計算機
 
H→カシオ日立モバイルコミュニケーションズ
 
I→京セラ
 
J→三洋電機
 
K→シャープ
 
L1→パナソニックモバイルコミュニケーションズ
 
特定の根拠は以下のとおりです。
 
審決書で「A1」と表記されている会社は、T63規格に31件の特許、T64規格に8件の特許を有するとされ(審決案p6)、いずれもインターネットで公開されている特許権者リスト(T63規格T64規格)で〔松下電器産業〕(現A2〔パナソニック〕)と確認できます。
 
さらに平成21(2009)年9月の時点で「W-CDMA Patent Licensing Programme」に参加(p91)とされているのも、VIA LICENSINGのウェブサイトで確認できます。
 
Bは、平成16(2004)年4月1日より端末事業をH〔後述のとおりカシオ日立〕に移管した(p8)ことから、日立製作所(G参照)とわかります。
 
T64規格に19件の特許があるとされるのは(p6)、公開リストで確認できます。(ただし、T63規格に26件の特許(p6)があるとされていますが、公開リストでは24件です。)
 
基地局を製造する(p8)ことも確認できます(後述)。
 
Cは、T63規格に21件の特許、T64規格に8件の特許を有するとされ(p6)、いずれも公開リストから富士通と確認できます。
 
富士通が「W-CDMA Patent Licensing Programme」に参加(p91)していることはVIA LICENSINGのウェブサイトで確認できます。
 
富士通は基地局を製造していた(p8)ことが確認できます(後述)。
 
Dは、T64規格に6件の特許を有するとされ(p7)、公開リストで日本電気と確認できます。(ただし、T63規格に7件の特許があるとされるのは(p6)、公開リストでは17件です。)
 
「W-CDMA Patent Licensing Programme」に参加(p91)していることは、VIA LICENSINGのウェブサイトで確認できます。
 
基地局を製造しているとされますが(p8)、日本電気も基地局を製造していました(後述)。
 
Eは、T63規格に7件、T64規格に0件の特許を有するとされますが(p6)、公開リストで東芝と確認できます。
 
Fは平成20(2008)年3月3日に端末事業を収束させる旨公表したとされますが(p8)、これは三菱電機です。
 
・「『D』の三菱電機、携帯電話の開発・生産から撤退」https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/03/news030.html
 
「三菱電機は〔2008年〕3月3日、携帯電話事業からの撤退を発表した。」
 
・基地局を製造していたとされますが(p8)、三菱電機も該当します(後述)。
 
三菱電機は「W-CDMA Patent Licensing Programme」に参加(p91)していることがVIA LICENSINGのウェブサイトで確認できます。
 
T64規格に5件の特許権を有すること(p7)は、公開リストで確認できます。(ただし公開リストによると三菱電機はT63規格にも10件の特許を有しています。)
 
Gは、平成16(2004)年4月1日に端末事業を子会社H〔(株)カシオ日立モバイルコミュニケーションズ〕に譲渡した(p8)とされていますが、これはカシオ計算機です(2004年2月3日カシオ・日立製作所共同報道発表。カシオ:日立=51:49)。
 
Hは、カシオ日立モバイルコミュニケーションズです(G特定により)。
 
Iは、Jから平成20(2008)年4月1日に端末事業を譲り受けたとされ(p8)、これは京セラと特定できます。
 
なおライセンス当時必須特許がなかったとされますが(p60)、公開リストでは京セラの必須特許はありません。
 
Jは、平成20(2008)年4月1日に端末事業をI〔京セラ〕に譲渡したとされるので(p8)、三洋電機と特定できます。
 
・「京セラ(6971.T)は〔2008年1月〕21日、三洋電機6764.Tの携帯電話事業を〔2008年〕4月1日付で買収すると発表した。」(ロイターズ2008年1月21日)https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-29873020080121
 
Kは、「W-CDMA Patent Licensing Programme」に参加(p91)していること、および消去法から、シャープと推測されます。
 
L1は、平成15(2003)年1月1日にL2〔松下通信工業〕から社名変更したとされ(p8)、パナソニックモバイルコミュニケーションズとわかります。
 
・「パナソニック モバイルコミュニケーションズ」(ウィキペディア、https://ja.wikipedia.org/wiki/パナソニック_モバイルコミュニケーションズ)
 
・「1958年1月17日 - 大阪府北河内郡門真町(当時)に松下通信工業株式会社(まつしたつうしんこうぎょう、Matsushita Communication Industrial Co., Ltd.)設立。(松下電器産業「現:パナソニック株式会社」より分離)」
 
・「2003年1月1日 - 松下グループの再編により、携帯電話端末事業に特化したパナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社(初代)が発足。」
 
実は、審決案p8の並び(G、I、J、K、E、D、L1(L2)、B、C、F)が五十音順であることが一つのポイントで、これを前提にすると、カシオ(G)、京セラ(I)、三洋電機(J)、シャープ(K)、東芝(E)、日本電気(D)、L1(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)、日立製作所(B)、富士通(C)、三菱電機(F)となり、上記の推定が裏付けられます。
 
審決案p8の、「《D》〔日本電気〕、《L1》〔パナソニックモバイルコミュニケーションズ〕、《B》〔日立製作所〕、《C》〔富士通〕及び《F》〔三菱電機〕の5社はCDMA基地局の製造、販売も行っていた。」という部分については、平成12(2000)年から平成21(2009)年までの間にCDMA基地局の製造販売をしていたのは、次のとおり、日本電気、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、日立製作所、富士通、三菱電機です。
 
・「キャリア別にみた3G/LTE/LTE-Aにおける無線機ベンダーの変遷」https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mca/757128.html
 
「NTTドコモは3G時代、NECや富士通、松下通信工業(パナソニック モバイルコミュニケーションズ、PMC)の3強であった。」
 
「KDDI(au)では、3G時代に1x方式でMotorola、1xEV-DO方式では日立製作所とサムスン電子ジャパンがシェアを獲得していた。」
 
「ソフトバンクは3G時代、エリクソン・ジャパンやNECが無線機を供給していたが、その後、NECがノキア シーメンス ネットワークス製品にリプレースされた。」
 
・三菱電機技報「W-CDMA基地局装置」http://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/giho/2004/02/index.html
 
審決案p8では、「《D》、《L1》、《C》等は、自社又は関連会社において・・・半導体集積回路も製造していた。」とされますが、この3社は以下のとおりです。
 
・日本電気(D)
 
「NECエレ、W-CDMA端末向け半導体でトップシェア目指す」
 
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0609/21/news106.html
 
・パナソニックモバイルコミュニケーションズ(L1)
 
「松下電器、携帯電話用UniPhierシステムLSIを開発〜通信・アプリ機能を1チップに統合」
https://www.rbbtoday.com/article/2008/07/17/52885.html
 
・富士通(C)
 
「システムLSIへの富士通の取り組み」https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol55-6/paper01.pdf

 

 

2019年8月21日 (水)

コンビニ2%ポイント還元と消費税転嫁法

今朝の日経朝刊一面に、

「消費増税『値引き』で還元

コンビニ4社 ポイント2%分」

という見出しの記事が出ていました。

2%分ポイントを付与すること自体は何も問題がないのですが、

「消費税増税分ポイントで還元します。」

とか表示(広告)すると、消費税転嫁法の転嫁阻害表示にあたるので注意が必要です。

消費税転嫁法8条(事業者の遵守事項)では、

「第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。

一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの

三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの」

と規定されています。 

これをうけて、「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」では、禁止される消費税転嫁表示の例として、

(1) 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示(第1号)

ア 「消費税は転嫁しません。」

イ 「消費税は一部の商品にしか転嫁していません。」

ウ 「消費税を転嫁していないので、価格が安くなっています。」

エ 「消費税はいただきません。」

オ 「消費税は当店が負担しています。」

カ 「消費税はおまけします。」

キ 「消費税はサービス。」

ク 「消費税還元」、「消費税還元セール」

ケ 「当店は消費税増税分を据え置いています。」

(2) 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの(第2号)

ア 「消費税率上昇分値引きします。」

イ 「消費税10%分還元セール」

ウ 「増税分は勉強させていただきます。」

エ 「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします。」

(3) 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって第2号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの(第3号)

ア 「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します。

イ 「消費税相当分の商品券を提供します。」

ウ 「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します。」

エ 「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」

といったものを挙げています。

逆にOKの例として、

(1) 消費税との関連がはっきりしない「春の生活応援セール」、「新生活応援セール」

(2) たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの「2%値下げ」、「2%還元」、「2%ポイント還元

(3) たまたま消費税率と一致するだけの「10%値下げ」、「10%還元セール」、「10%ポイント進呈」

というのが挙げられています。

いろいろいっていますが、要するに、「消費税」「増税」「税」という言葉が入っていたらアウトです。

なので、上の例にもあるように、「2%ポイント還元」ならOKですが、「消費税2%増税分ポイント還元」ならアウトです。

というわけで、日経見出のような、

「消費税『値引き』で還元」

とかコンビニの店頭で表示すると、アウトになります。

加盟店のみなさん、注意しましょう。

でもどう考えてもこの規定って、馬鹿げてると思います。

(まあそのあたりの立法理由はいろいろとあるのですが、

長澤哲也・石井崇・植村幸也・河野良介『実務解説消費税転嫁特別措置法』

でくわしく書きましたので、ご興味のある方はご覧下さい。)

増税による消費の冷え込みを緩和するためなら、「消費税分」だと明記したほうがいいに決まっています。

消費者庁も消費税転嫁阻害表示についてはこれまで一件も摘発していません。

ナンセンスな法律を黙殺するというのも、行政庁の見識だと思います。

というわけで、摘発リスクはほぼゼロですが、コンビニ各社のみなさんは、いちおう気をつけておかれるとよいかと思います。

むしろ独禁法弁護士として気になるのはカルテルですね。

もちろん今回のケースはコンビニ各社で合意したわけではなく、たまたま4社の足並みがそろっただけなのでしょうけれど、値下げの合意をするカルテルでも、やはりカルテルです。

なぜかというと、「うちは5%還元する」という競争がなくなるからです。

というわけで、もしほかの業界の業界団体とかで「うちの業界でもやってみるか」といった話をすると、カルテルになりかねないので注意が必要です。

2019年8月19日 (月)

フジタに対する取引妨害での排除措置命令について

農業土木工事のフジタが取引妨害で排除措置命令をうけました(平成30年6月14日)。担当官解説が公正取引819号46頁に載っています。

この事件は非常に変わっていて、総合評価方式の入札でフジタが自社に天下りした農水省OBのツテを使って発注者の農水省東北農政局の担当職員に技術提案書の添削をしてもらって落札したのが、競争者に対する取引妨害にあたるとされたものです。

命令では問題の行為は、

(2) フジタは,別紙1記載の工事について


ア フジタ東北支店に再就職した東北農政局元職員から,東北農政局の評価担当者に対して,技術提案書の提出期限前に,技術提案書の添削等を依頼し,フジタ東北支店において当該添削等を踏まえて技術提案書を作成して東北農政局に提出し

イ フジタ東北支店に再就職した東北農政局元職員から,東北農政局の評価担当者に対して,入札書の提出期限前に,入札参加申請者の技術評価点及び順位を問い合わせ,これらに関する情報について教示を受け

フジタ東北支店において入札していた。

と認定されています。

公取委実務では昔から「困ったときの取引妨害」という言葉がありますが、いくら取引妨害の行為要件が

いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること

という漠然としたものだからといって、こんな使い方をするなんてちょっと行き過ぎじゃないでしょうか。

たしかにフジタがズルをしたのは事実ですが、それが「妨害」といえるものなのか、アンフェア-だとはいえても、添削の結果良い提案が出せたのなら、結果的に一番良い提案をしたところが落札してるわけで、どう競争がゆがめられているのか、よくわかりません。

担当官解説(p51)では、

この発注手続の制度からすれば、入札参加申請者は、入札前に東北農政局職員の助力を得ることなく技術提案書を作成して提出し、自己の判断で入札価格を検討して入札を行うことが求められていたことは明らかである。

と説明されていますが、説明としては論理的ではありません。

この場合、添削によって競争がゆがめられたというなら、では、職員がフジタの添削をしなかったらどうなったのか、を考えてみる必要があります。

もし添削をしなかったら、フジタの技術提案はもっと質が低かったはずです。

その結果他社が落札したかもしれませんし、それでもフジタが落札したかもしれませんが、いずれにせよ、添削をした場合より悪い条件で契約が成立したと考えるのが論理的です。(よくなることはないはず。)

でもそれって、競争をゆがめたことになるのでしょうか?

劣った結果でも、フェアーな手続なら、そのほうがいいといいきれるのでしょうか?

これはけっこう哲学的な問題で、自己の判断で技術提案をすることが「求められていたことは明らか」というだけでは、説明として不十分です。

担当官解説52頁では、さらに、「競争手段の不公正さ」の見出しの中で、フジタの行為は、

本件対象工事に係る一般競争入札について、当該競争入札の本旨に反し

他の入札参加者が落札・受注できない蓋然性を高め、

農林水産省における取引先の選定を阻害するものであったことから、

価格・品質・サービス等の取引条件を競い合う能率競争を旨とする公正な競争秩序に悪影響をもたらす不公正な競争手段に当たるものと判断されたと考えられる。

と解説されていますが、「本旨に反し」というのでは説明として不十分でしょう。

能率競争を阻害するといってますが、結果的にすぐれた提案だったのなら、果たして能率競争を阻害するといえるのでしょうか。

なので本件の本質は、添削をして最高点をとったフジタの提案が、実は最も高品質な提案ではなかった、あるいは、他より相対的にすぐれた提案ではあったけれど、その差は微々たるもので、最高点をとることが過度に落札結果に有利にはたらく制度だった、ということなのではないでしょうか。

そうでないと、「能率競争」の観点からは説明できないと思います。

落札者の決め方が合理的でない入札というのは世の中にときどきあり、わたしが以前みたものには、価格ではほとんど評価に差が付かなくって、ほとんどもっぱら経験値だけできまる、というのもありました。

本件もそういう不合理な制度だった可能性がありますし、逆に、そういう可能性がないなら、競争をゆがめたというのは、因果関係とかもふくめていろいろな意味でちょっとむずかしいんじゃないかと思います。

総合評価だとか、技術提案の添削だとか、本件独自の細かいところに目が行きがちですが、たとえばもっとシンプルに、フジタが入札担当者に、

「他社の入札価格を教えて下さいよ」

と聞いて、入札担当者がフジタに、

「ほかのところの入札額は最低のところで○○円だから、それ以下で入れたら落札できるよ。

でも最低制限価格(非公表)は△△円だから、それよりは上で入れてね。」

と教えたら、値段を聞いたフジタは取引妨害になるのか、という問題です。

(実際には入札は同時のことが多いため、このようなことはできないでしょうから、頭の体操とお考え下さい。)

本件が取引妨害にあたるというなら、こういう、入札担当者から他社の入札額を聞き出すのも取引妨害にあたるといわないと、つじつまが合いません。

こういうのも取引妨害だ、という人はいるかもしれませんが(公取はそうでしょうが)、わたしには大いに違和感があります。

この事件で思い出すのはパラマウントベッドの私的独占事件で、同事件では入札担当者の無知に乗じてパラマウントが自社しか供給できない仕様をまぎれこませたことが排除型私的独占になりました。

パラマウントベッド事件は、競争が起きない仕様を採用させたこと自体が競争を制限しているので(競争が起きれば価格は下がったはず)、わかりやすい事件だったのですが、本件はそのような説明が不可能です。

また、どうしてパラマウントベッドは私的独占で、フジタの事件は(かなり無理な理論構成をして)取引妨害にしたのかも不明です。

(本件のような事件で私的独占にするのはおおげさすぎてはばかられたのでしょうか? それとも、競争の実質的制限の立証が無理なので、手段の不当性だけで違法にできる取引妨害が選ばれたのでしょうか?)

ともあれ、こんな官製談合くずれのような事件が取引妨害になるんだということは、知っておくべきだと思います。

2019年8月 7日 (水)

下請代金の「減額」の意味

下請法4条1項3号では、下請代金の減額(下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること)が禁じられています。
この点については下請法テキスト(平成30年11月版)52頁では、
 
「親事業者が,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,発注時に定めた下請代金の額を減ずることを禁止するものであり,「歩引き」や「リベート」等の減額の名目,方法,金額の多少を問わず,発注後いつの時点で減じても本法違反となる。」
 
と説明されています。
 
ここでは、減額の「名目、方法、金額の多少」は問わないとされていますが、これだけでは何が減額になるのか実ははっきりしません。
 
「下請代金の額を減ずること」ということの意味が、簡単そうで実は複雑だからです。
 
たとえば、親事業者と下請事業者との間に下請取引とは別のまっとうな取引があって、その取引の代金を支払うべき親事業者が当該代金額をたまたま同時期にあった下請代金債務と相殺することは、何の問題もありません。
 
たとえば、有償支給原材料等の早期決済の禁止では、早期決済に該当しないかぎり、有償支給原材料代金を下請代金額から「控除」することが、4条2項1号の規定上明文で認められています。
 
これを条文に照らして説明すると、有償支給原材料の対価を下請代金から「控除」しても、それは別の取引の代金を支払わせているだけで下請代金はいっさいいじっておらず、よって、「下請代金の額を減ずる」ことにはあたらない、ということなのでしょう。
 
ほかの取引の代金を支払わせただけで、下請代金は全額耳を揃えて払っている、という理屈です。
 
でも、別取引の代金を下請代金から控除して支払わせるというのがすべて「減額」にあたらないと言い切ってしまうのも(少なくとも公取委の運用を前提にすると)問題です。
 
というのは、そういう説明をすると、テキストに載っている減額の典型例である「協賛金」(p52)名目の減額の場合ですら、きちんと「協賛金提供契約書」があれば、減額にあたらなくなってしまうからです。
 
「物流及び情報システム使用料」(p52)なんて、きちんと「物流及び情報システム使用契約」があって、下請事業者による親事業者のシステム利用の実態があれば、下請代金の減額というのは無理だと思います。
 
おそらくポイントは、下請契約とは別の、「まっとうな」契約があるかどうか、でしょう。
 
「まっとうな」というのは、下請事業者が利益を得ている実態がある、という意味です。
 
おそらくこれまで減額とされたもので、たとえば「手数料」(p52)名目のものは、親事業者から下請事業者に対するサービス(「手数」)の提供の実態がなかった、ということなのだと思われます。
 
その観点からみると、テキストにあげられている名目のうち、
 
「歩引き」「リベート」「一括値引き」「基本割戻金」「協賛店値引」「協力値引き」「決算」「原価低減」「コストダウン協力金」「仕入歩引」「特別価格協力金」「不良品歩引き」「分引き」「値引き」
 
などは、その名前からして下請代金自体を減らす趣旨であることがあきらかなので、おそらくその名目どおりの契約書があっても、減額になるでしょう。
 
これに対して、
 
「本部手数料」「管理料」「手数料」「物流及び情報システム使用料」「物流手数料」「品質管理指導料」
 
は、もしこれらの名目が示唆するような、本部のサービス、管理サービス、何らかのサービス(「手数」)、物流及び情報システム提供サービス、物流サービス、品質管理指導サービスが親事業者から下請事業者に提供されている場合には、減らした分はこれらサービス提供の対価であって、下請代金の額を減じたわけではない、といえそうです。
 
ただおそらく実際には、これらの名目できちんと(まっとうに)サービスが提供されていることが少ない、ということなのでしょう。
 
あるいは、なんらかの「サービス」が提供されていても、
 
「そんなものはほんらい発注者が自分の負担でやるべきものであって、下請事業者に提供した「サービス」とはいえない」
 
と公取委に一蹴されてしまうかもしれません(たとえば、請求書処理手数料とか)。
 
以上に対して、あきらかな下請代金減額の趣旨でもなく、まっとうなサービスが提供されているわけでもない、という中間的なもの(あるいは、よく意味がわからないもの)として、
 
「一時金」「オープン新店」「協賛金」「協定販売促進費」「協力金」「協力費」「販売奨励金」「販売協力金」「年間」「割引料」
 
があります。
 
しかしこれらは、仮にきちんと契約があっても、下請事業者が一方的に金銭的負担を負うものであり、(形式的には下請代金自体を減らすというにはやや難があるものの)不合理な内容であるとして、あるいは、実質的には下請代金を減らしているものとして、減額にあたるとされるのだと思います。
 
あと、「支払手数料」というのがありますが、これは、親事業者が支払処理をしたことの手数料という意味でしょうが、支払処理をするのは支払者(親事業者)の当然の義務であってそれについて対価を請求できるようなものではない、ということで、やはり、契約書や支払処理業務の実態があっても、代金減額とされそうです。
 
実はこのように、減額か否かをわけるのは、控除相当額の発生根拠なのだと思います。
 
その意味で、テキストp52で、
 
「減額の名目,方法,金額の多少を問わず」
といっているのは、 実はあたりまえで、あまり意味がありません。
 
まとめると、
 
①実質が下請代金自体を減らす趣旨のもの→違法
 
②下請契約とは別のまっとうな商品役務の提供の対価分を控除するもの→適法
 
(ただし実務では「まっとう」でないことが多い。たとえば下請代金の一定のパーセンテージを控除するような場合、「まっとうな商品役務の提供の対価」がそのように計算されるわけがないので、通常は「まっとう」でないと認定されるか、①と認定される)
 
下請契約とは別に、対価関係にある商品役務を提供することなく一方的に金銭負担を求めるもの→あきらかに違法
 
ということなんだろうと思います。
 
つまり、減額は合意があっても違法で形式的に判断されるといいながら、実際には、けっこう実質的な判断が欠かせない(まっとうな合意ならむしろ減額にあたらないのが当然)、ということです。
 
ところが公取委の事件解説などを見ると、少なくともその字面からは、まっとうな商品役務の対価(②)でも控除できないかに読める解説がよくされています。
 
たとえば公正取引823号60頁(柿本に対する勧告の解説)では、
 
「・・・下請法第4条第1項第3号は、親事業者が、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減ずることを禁止しており、
 
名目、方法、金額の多少を問わず、また、
 
本件のように親事業者と下請事業者との間であらかじめ文書又は口頭による合意があったとしても
 
下請事業者の責めに帰すべき理由がない限り、下請代金の額を減ずる場合は下請法違反となる。」
 
と解説されています。
 
しかしこれを文字どおりに読むなら、まっとうな契約(たとえば原材料有償支給契約)があっても下請代金と相殺したら違反になると読めてしまいます。
 
もちろんそれはおかしいわけで、実際には、まっとうな契約かどうかが当然に(暗黙の内に)判断されていて、まっとうでないから違法だ、としているのです。
 
そして柿本の事件は、「販売協力金」として下請代金の一定率(1~5%)を引いていた、というものだったので、まっとうな(=下請事業者が対価を支払うべき商品役務の提供が親事業者によってなされている)契約でないことがあきらかでした。
 
もっといえば、下請代金自体を減額する趣旨だった(①)ということなのでしょう。
 
上の担当官解説は下請法テキストのままで、下請法の執行では下請法テキストが金科玉条ですので、こういう解説になるのはしょうがないんだろうなあと思いますが、きちんと論理的に説明すると、この解説はあやまりです。
 
でも、「まっとう」かどうかをいちいち判断しないといけないとはっきり書くと事業者が「まっとうな契約だ」と反論しだしてたいへんなので、そこは理由では書かないことにして、解説ではあたかも、まっとうな合意があってもだめであるかのような書きぶりになっているわけです。
 
でも中には、まっとうな契約かどうかにかかわらず、あらかじめ合意があってもぜったいにだめなのだと本気で信じている公取担当者もいるかもしれません。
 
これは、下請テキストが金科玉条であるだけにやっかいですが、そういうひとには「ちゃんと自分の頭で理屈を考えてね」というしかありません。
 
このような「まっとうな」契約かどうかでひょっとしたら微妙だったかもしれないのが、2012(平成24)年9月25日の日本生活協同組合連合会に対する勧告です。
 
この事件では生協連合会がいろいろな名目で減額しており、そのうち多くは下請代金の一定割合を差し引くあきらかな減額(上記①)だったり、一方的な金銭負担をもとめるもの(上記③)だったのですが、なかには、微妙なものもありました。
 
たとえば、勧告の、
 
個々の会員からの発注数量を事前に下請事業者に連絡する場合があるところ,
 
下請事業者に対し,
 
生産支援情報」として,
 
会員に対する納入数量を記載した書面のファクシミリによる送信枚数に一定額を乗じて得た額を負担するよう要請し,
 
この要請に応じた下請事業者について,平成22年9月から平成24年4月までの間,当該金額を,下請代金の額から差し引き又は別途支払わせていた。」
 
というのは、「生活支援情報」がまっとうな情報提供だったら、代金としてもファックス1枚あたりというサービスの従量制であったことからすると、まっとうな契約だったかもしれません。
 
何が微妙かというと、
 
「個々の会員〔=単位生協〕からの発注数量を事前に下請事業者に連絡する場合があるところ」
 
という部分だと思います。 
 
もしこの情報提供が、下請事業者が取引をするうえで絶対に必要なものだったら、発注数量を知らせるなんて発注者としてあたりまえのことなので、それを「サービス」と称して下請事業者に負担させるのは「まっとうな」サービスとはいえないと思います。
 
でも勧告では、「連絡する場合がある」なんですね。
 
つまり、受発注に必ず必要な情報は別途提供されていることがうかがわれ、ここでの「生活支援情報」は、あくまでオプション的なものであることがわかります。
 
そのようなオプション的なものであって、下請事業者の同意もあり、しかも内容がきちんと有益なものであったりしたら、これは「まっとうな」サービスだと言えたんではないかと思います。
 
ほかには、
 
「自らが作成する販促物の作成費用を確保するため,
 
下請事業者に対し,
 
「販促ツール作成費用」として,
 
一定額を負担するよう要請し,この要請に応じた下請事業者について,平成22年9月から平成24年4月までの間,当該金額を,下請代金の額から差し引き又は別途支払わせていた。 」
 
というのがあります。
 
この「販促ツール作成費用」がもし、当該下請事業者の商品の販促ツールを作成する費用だったら、むしろ「まっとうな」契約であることがあきらかだと思います。
 
でもその額の定め方が「一定額」ということなので、たぶん、そういう、自己(下請事業者)の商品の販促ツール作成費用だったのではなくて、生協の販促ツール費用の全額または一部の額を適当に下請事業者にわりふっていたんではないかと思います。
 
このように、ほんらいはいろいろと実質的な判断がなされていたはずなのですが、ざんねんなことに、担当官解説(公正取引750号73頁)では、
 
「日本生協連は、これらの名目による減額を行うに当たり、いずれにおいても、事前に下請事業者から合意を得ていたが、
 
下請法においては、
 
仮に親事業者と下請事業者との間で事前に合意があったとしても
 
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減ずる行為は、
 
下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する減額として問題となる。」
 
と、合意の内実はとわないかのような紋切り型の説明がなされています。
 
事案の解決としてはこれでよかったのかもしれませんが、これではまっとうなサービスの対価ももらえないと誤解され、下請代金と相殺すると減額になるので別途支払わせる必要がある、なんていう、とんでもないアドバイスをする弁護士さんが出てくるかもしれません。
 
(まあそれでも、「まっとう」かどうか微妙な場合には、わたしも「相殺よりは別途支払のほうがリスクは低いんじゃないですかねぇ」くらいのアドバイスはするかもしれません💦)
 
比較的最近の事件でこの点をかなり詳細に解説した担当官解説のある事件として、2018(平成30)年3月26日のサトープリンティングに対する勧告があります。
 
この事件では、「生産システム利用料」「通信回線利用料」「パソコン利用料」等さまざまな名目で減額がなされているのですが、同事件の担当官解説(公正取引812号71頁)では、
 
「生産システム利用料」(発注数量等のデータを送信する発注者の発注システムの開発費・保守改修費等について一定額を毎月下請代金枯らさし引いていたもの)
 
については、
 
「発注業務・・・は、本来、親事業者の責任において行うべきもの」
 
という理由で減額にあたるとされ、
 
「通信回線利用料」(発注システム利用にあたり自社と下請とを専用で結ぶネットワークの接続に必要な費用)
 
については、
 
「・・・一般的なインターネット回線ではなく、加入した者のみが交信できる特定のネットワーク利用に係る費用であり、サトープリンティングが下請事業者に対し、発注する行為にのみ使用されるものであった。」
 
「このため、『通信回線利用料』は、下請法第3条第1項で発注書面の交付義務を負う親事業者であるサトープリンティングが負担すべきものである。」
 
という理由で減額にあたるとされ、
 
「パソコン利用料」(発注データを下請事業者が受信するためのパソコンについて自社が指定した機器を下請事業者に貸与し、当該利用料を下請代金から指しい引いていたもの)
 
については、
 
「これらのパソコン・・・は、発注システムを稼働させるためだけに利用されているもので、サトープリンティングが下請事業者に対して発注する委託業務の実施にのみ必要となる機器類であることから、当該機器類の利用に係る費用は、親事業者であるサトープリンティングが負担すべきものである。」
 
という理由で減額にあたるとされました。
 
このように、親事業者がほんらい負担すべきものだという理由を詳細に認定していることからもわかるように、反対に、下請事業者が当然負担すべきものなら減額にあたらないことになるはずです。
 
ところが同担当官解説では、代金減額がみとめられるのは、給付の瑕疵や納期遅れなど「下請事業者の責めに帰すべき理由」がある場合にかぎられ、上記各利用料はこれにあたらないので違法だ、と説明されています。
 
でも、瑕疵や納期遅れにあたらないなら減額だというなら、手数料の性質をほんらい親事業者が負担すべきものだという必要もないはずで、この説明はまったく支離滅裂だといわざるをえません。
 
長年続いている説明とはいえ、いいかげん、きちんと事実をありのままに伝えるべきだと思います。
 
また、このブログが一部の誤解を解く助けになればと思います。

2019年7月 3日 (水)

下請法の「業として」の講習テキストの変遷

だいぶ以前に、下請法講習テキストの「業として」の説明が変わったことについて書いたのですが、昨年の平成30年版でまた変わったので、これまでの経緯をまとめておきます。

平成25年版p9では、修理委託の類型2の説明で、「業として行う場合」という意味について、

「・・・自家使用する物品の修理を反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている場合に、その物品の修理の一部を他の事業者に委託する場合をいう」

と説明されていました。

他の法律での「業として」の解釈とも整合する、オーソドックスな解釈だと思います。

これが平成26年版p8では、

①「・・・社内に修理部門を設けるなど業務の遂行とみることができる程度に行っている場合・・・をいう。」

②「他方、修理に必要な技術を持った作業員が必要に応じ修理に当たるような場合・・・は該当しない。」

というように、「部門」などがないと「業として」にはあたらず、そのため、「必要に応じて」やるのでは「業として」にはあたらない、と大きく解釈が変更されました。

これが平成27年版p8、28年版p8、29年版p8でも、ほぼ維持されました。

ところが平成30年版p8では少し変わって、①が、

「事業者が,「その使用する物品の修理を業として行う場合」,つまり,他の事業者から請け負うのではなく,自家使用する物品の修理を反復継続的に行っており,社会通念上,事業の遂行とみることができる場合に,その物品の修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

例えば,自社の工場で使用している機械類,設備機械に付属する配線・配管等の修理を社内に部門を設けて行っている場合は,「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当する。」

というように、少していねいになったのはいいのですが、②が、

「一方,修理を行うことができる設備があったり,修理に必要な技術を持った作業員がいたとしても,他の事業者に委託している修理と同種の修理を行っていない場合は,「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当しない。」

と、再度大きく変更されました。

つまり、平成29年版までは、「必要に応じて」やるだけなら「業として」にはあたらないと明記されていたのですが、平成30年版では、

「他の事業者に委託している修理と同種の修理を行っていない場合は,「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当しない

と、同種事業を行っていない場合には「業として行う場合」にあたらない、という、いわばあたりまえのことしかいわなくなりました。

でもこれって考えてみると、「同種の修理を行っていない」なら、「業として」かどうか問うまでもなく、そもそも「行う」に該当しないわけですから、ほんとうに無意味な記載になってしまったといわざるをえません。

この変更をどうみるかはなやましいですが、基本的には、解釈の変更はないとみていいでしょう。

「社内に部門を設けて」という部分は生きているからです。

なので、「必要に応じて」やるだけなら、やはり社内に部門は設けていないので、「業として」にあたらないと考えていいと思います。

というわけで、平成30年版のこの部分の改正は、意味不明です。なんでこんな修正をしたのでしょう???

 

2019年6月26日 (水)

「会社法務A2Z」に寄稿しました

第一法規の法律実務雑誌「会社法務A2Z」7月号に、

「消費者庁の厳しい目~減額化の背景と不当表示を避けるポイント」

という論文を寄稿しました。

A2z  

最近(ここ1、2年)の消費者庁は、これまでの運用ににくらべても、「えっ!」と驚くくらい厳しいものが連発されています。(まだ表沙汰になっていないものもふくめ、そういう傾向を感じます。)

弁護士のわたしがいうのもなんですが、弁護士が「あらたなリスクがある」「対応が必要だ」と雑誌などで言っているときに、ほんとうにリスクがある場合って実はそれほどなくって、こういう特集をしたいので何か注意点はないかという出版社側の都合であったり、弁護士のマッチポンプであったりすることも多いのではないかと思っています。

(こういうと、とくに国際派の弁護士さんや外国の弁護士さんから「だから日本の弁護士は意識が低くてだめだ」「もっと企業に情報提供しないといけない」とお叱りを受けそうですが、率直な感想です。)

ただ今回の景表法の論文については、ほんとうに、企業はいままでにない厳しい基準で表示を見直す必要がある、という思いをこめながら書きました。

わたしは基本的に消費者庁がどんどん景表法を執行するのには大賛成で、あやしげな商品をあやしげな広告で売っている健康食品とかテレビショッピングとかは、徹底的にやってほしいと思っているのですが、さすがに最近、ちょっと(かなり)やりすぎではないか、と思うことが増えています。

ご興味のある方はご一読いただけると幸いです。

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