2017年7月12日 (水)

東京ガスへの措置命令について

昨日(2017年7月11日)東京ガスとその販売会社2社に対して、不当な二重価格表示(有利誤認表示)で措置命令がでました

ガスコンロなどを販売するにあたり、メーカー(リンナイ、パロマ、ノーリツ)がメーカー希望小売価格を設定していないのに、東京ガスにおいて勝手に「メーカー希望小売価格」を設定し、そこから比べて安くなっているという、不当な二重価格表示をおこなったものです。

この事件、一見するとよくありがちな二重価格表示の事件ですが、課徴金を視野にいれると、なかなか興味深いものがあります。

まず、不当表示の記載がされた媒体が、「東京ガスのガス展2016」というイベントにおける販売のためのチラシだ、ということです。

イベントのチラシだと、CMや新聞広告よりもチェックが甘くなってしまうこともあるかもしれません。こういう表示にも課徴金がかかってくるので、要注意です。

次に、本件では、チラシは直接的には前記イベント(開催期間は平成28年11月3日から6日までの4日間)での販売のためのチラシですが、課徴金の対象になるのはそのイベントで売上に限られるのか、という問題があります。

この問題については、

「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」

の第4の2(10頁)では、

「課徴金対象行為は優良・有利誤認表示をする行為であるから、

「課徴金対象行為に係る商品又は役務」は、優良・有利誤認表示をする行為の対象となった商品又は役務である。

その「商品又は役務」は、課徴金対象行為に係る表示内容や当該行為態様等に応じて個別事案ごとに異なるものであるから、全ての場合を想定して論じることはできないが、

以下、「課徴金対象行為に係る商品又は役務」に関する考え方の例を記載することとする。」

としたうえで、

「(1) 全国(又は特定地域)において供給する商品又は役務であっても、

具体的な表示の内容や実際に優良・有利誤認表示をした地域といった事情から

一部の地域や店舗において供給した当該商品又は役務が「課徴金対象行為に係る商品又は役務」となることがある。」

との基準をあきらかにし、<想定例>として、

「① 事業者Aが、自ら全国において運営する複数の店舗においてうなぎ加工食品a を一般消費者に販売しているところ、

平成30 年4月1日から同年11 月30 日までの間、

北海道内で配布した「北海道版」と明記したチラシにおいて、

当該うなぎ加工食品について「国産うなぎ」等と記載することにより、

あたかも、当該うなぎ加工食品に国産うなぎを使用しているかのように示す表示をしていたものの、

実際には、同期間を通じ、外国産のうなぎを使用していた事案」

「事業者Aの課徴金対象行為に係る商品は、

事業者Aが北海道内の店舗において販売する当該うなぎ加工食品となる。」

という例があげられています。

ここではあきらかに、チラシに「北海道版」と明記されていたことが重視されています。

上の(1)の一般論で、「具体的な表示の内容」を具体化したものです。

次の具体例では、

「② 事業者Bが、自ら東京都内で運営する10 店舗において振り袖bを一般消費者に販売しているところ、

平成30 年9月1日から同年11 月30 日までの間、

東京都内で配布したチラシにおいて、

当該振り袖について「○○店、××店、△△店限定セール実施!通常価格50 万円がセール価格20 万円!」(○○店、××店、△△店は東京都内にある店舗)等と記載することにより、

あたかも、実売価格が「通常価格」と記載した価格に比して安いかのように表示をしていたものの、

実際には、「通常価格」と記載した価格は、事業者Bが任意に設定した架空の価格であって、○○店、××店、△△店において販売された実績のないものであった事案」

「事業者Bの課徴金対象行為に係る商品は、

事業者Bが東京都内の○○店、××店、△△店において販売する当該振り袖となる。」

という例があげられています。

ここでは、

○○店、××店、△△店限定セール実施!」

と限定されていたことが重視されています。

これは、20万円で買えるという取引条件が適用されるのがこの3店舗だけだったので、課徴金対象売上もその3店舗での売り上げとなるのは、わかりやすいですね。

そこで、本件での東京ガスのチラシをみると、

「ガス展特価」

と明記されているので、ガス展で販売された売上にだけ、課徴金がかかる、ということになりそうです。

もし「ガス展特価」と書いていなかったら、全国での売上に課徴金がかかった可能性もあるので、結果オーライというか、わずかな違いで大きな差になった可能性があります。

(ただ、報道によれば、本件では、対象商品は東京ガスのプライベートブランドで、ふだんはメーカー名も出していなかった、ということのようなので、そのような場合に、メーカー名を出して売っている商品(ナショナルブランド的な売り方をしている商品)と、プライベートブランドで売っている商品が、物理的には同じ商品だけれど景表法法上は同じ商品なのかどうか、という論点も出てきそうです。(本件では前述のように課徴金の対象はガス展での売上に限られそうなので、この論点は顕在化しませんが。))

二重価格表示の問題については、当該チラシで、

「ノーリツ プログレ メーカー希望小売価格320,220円(税込)のところ、195,800円(税込・工事費別)」

と書いてあれば、当該イベントで195,800円で買えるということもさりながら、メーカー希望小売価格は32万円以上もするんだ、という誤認も生じうるので、別の機会に25万円で販売している場合ですら、7万円も得した、という誤認を生じる可能性があるわけですが、このような点をガイドラインが事前に明らかにしていたことは、卓見というほかありません。

というわけで、本件では仮に課徴金がかかるといても当該イベントでの売り上げに限られるということになりそうですが、それでもあえて指摘すれば、比較的短期間の不当表示でも課徴金がかかりうるという点には注意が必要です。

つまり本件では、チラシの配布期間(不当表示行為期間)が、新聞折り込みで1日だけとか、手配りでも約20日間くらいとか、比較的短期間です。

しかしながら、課徴金の対象となる売上の期間は、不当表示の期間だけではなく、原則として(誤認解消措置をとらないかぎり)その後6か月間継続するので、たとえば1日だけの広告でも、最大6か月の売上には課徴金がかかることを覚悟しないといけません。

というわけで、課徴金が導入されると、いかに細かい表示にまで気を配らなければならないか、ということを実感させてくれる事件だったと思います。

2017年7月11日 (火)

三菱と日産の軽自動車への課徴金について

三菱自動車の燃費偽装事件については、今年(2017年)の1月27日に、

普通車・軽自動車を対象に、三菱に措置命令

軽自動車を対象に、日産に措置命令

普通車を対象に、三菱に課徴金納付命令

がなされましたが、残っていた、軽自動車についての両社への課徴金納付命令が6月14日に出ました

そこで、同命令について気が付いたことを書き留めておきます。

■誤認解消措置について

命令では、両社とも、平成28(2016)年7月1日に誤認解消措置をとったと認定されています。

ただ両社とも、課徴金対象行為をやめたあと誤認解消措置までの間に違反対象商品を販売していないので、結果的に、誤認解消措置は課徴金額には影響していません。

■自主申告について

今回は、両社とも、違反を消費者庁に自主申告し、それが調査開始の通知前であったことから、課徴金の額が半額になっています。

ただ今回の命令では、三菱について、

「三菱自動車工業は、景品表示法第9条の規定により、前記1の課徴金対象行為に該当する事実を、景品表示法施行規則第9条に定めるところにより消費者庁長官に報告したところ、当該報告は当該課徴金対象行為についての調査があったことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものではない。」

日産について、

「日産自動車は、景品表示法第9条の規定により、前記1の課徴金対象行為に該当する事実を、景品表示法施行規則第9条に定めるところにより消費者庁長官に報告したところ、当該報告は当該課徴金対象行為についての調査があったことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものではない。」

とだけ認定されているだけで、具体的な申告日や調査開始の通知日は明らかにされていません。

前回の三菱の普通車についての課徴金納付命令(平成29(2017)年1月27日)では、

「三菱自動車工業は、景品表示法第9条の規定により、前記1の課徴金対象行為に該当する事実を、不当景品類及び不当表示防止法施行規則第9条に定めるところにより消費者庁長官に報告した。

三菱自動車工業が当該報告をしたのは、消費者庁が三菱自動車工業に対して前記1の課徴金対象行為についての調査の開始を通知したときである平成28年5月27日又は同年8月31日午前より後である同日午後であった

よって、当該報告は、当該課徴金対象行為についての調査があったことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してされたものである。」

と、調査開始の通知日と自主申告の日を具体的にあきらかにしていたのとは対照的です。

これはきっと、前回は自主申告による減額を認めないという不利益をあたえるので具体的な日付まで明らかにいていたところ、今回は減額をみとめるという利益をあたえるのだから細かい日付までは書かなくてよい、という判断なのでしょう。

■日産の過失について

日産の過失について、命令では、

「日産自動車は、三菱自動車工業株式会社と共同して実施した燃料消費率に係る検証において本件6商品の各商品の燃費性能の根拠となる情報を十分に確認することなく前記1の課徴金対象行為をしていたことから、それぞれ、当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が景品表示法第8条第1項第1号に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないとは認められない。」

と認定されています。

報じられているところによると、

2015年11月には日産が届出値と実測値に大きな差があることに気づき、

2016年2月から両社で調査を開始した、

ということのようなので、ここでの「共同して実施した」検証というのは、おそらく2016年2月以降に共同で実施した調査のことではないかとうかがわれます。

今回の件は、基本的には三菱の開発や試験に問題があり、日産はだまされたというのが大方の見立てだと思いますが、 日経電子版6月14日の記事では、

「不正をもっと早く知り得たのではないかという消費者庁の見解は不当。必要な対抗措置を講じる」

という日産のコメントが出ています。

課徴金納付命令によれば対象商品は2016年4月20日まで販売されているので、消費者庁は、「日産はもっと早くわかっていて、もっと早く課徴金対象行為をやめられただろう」、という認定であることがわかります。

これに対して日産のコメントは、「わかってから速やかにやめて4月20日になったんだ」ということなのでしょう。

ちなみに三菱の過失についは、

「三菱自動車工業は、本件8商品の各商品の燃費性能について改ざん等の行為を行い、また、当該行為の防止等を図るための管理監督を十分に行っていない。

三菱自動車工業は、かかる状況の下、前記1の課徴金対象行為をしていたことから、それぞれ、当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が景品表示法第8条第1項第1号に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないとは認められない。」

というように、自らが改ざん等を行った、という、よりストレートな認定になっています。

2017年7月10日 (月)

プライベートブランドの「製造元」は不当表示の主体になるか?

最近よくコンビニのプライベートブランドというのを見かけます。

各コンビニの名前を冠した、

「〇〇コレクション」

「〇〇セレクト」

「〇〇プレミアム」

といったお菓子やパンのシリーズの、あれです。

そういうプライベートブランド商品のラベルをみると、だいたい「製造元」として、世の中でいわゆるメーカーとして名前の通っている有名企業が表示されていたりします。

こういう、「製造元」が不当表示について景表法上の責任を負うことがあるのか、というのは、なかなか難しい問題です。

条文上は、

「自己の供給する商品又は役務の取引」(景表法5条柱書)

とは何か、という解釈論であり、少し形を変えてやわらかくいうと、

自己の商品役務として供給していたのは誰か、

という問題であり(たとえば、白石忠志「景品表示法の構造と要点」NBL1059号(2015年10月1日)58頁)、思いっきりやわらかくいうと、

誰のフンドシで相撲を取っていたのか、

という問題だ、と整理できます。(以下、便宜的に、「フンドシ問題」といいます。)

この問題について、参考になりそうな文献として、大元編著『景品表示法(第5版)』(緑本)p63では、

「イ メーカー、製造元、卸売業者の表示主体性」

というタイトルのもとに、

「小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

と説明されています。

一瞬、主語がはしょられているようでわかりにくいかもしれませんが、重複をいとわず主語を補うと、

「〔メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者が、〕小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

ということです。

そして同書ではさらに続けて、

「例えば、〔ベイクルーズ事件〕では、

小売業者〔ベイクルーズ〕に対して、製造元からの情報に基づいて当該ズボンの原産国がイタリアであると説明し、小売業者の指示に従って、イタリア製であることを示すタッグを作成して商品に付して納品していた輸入卸売業者〔八木通商〕も

表示主体として、小売業者と連名で排除命令の名あて人となっている」

とされています。

これも、主語の重複をいとわず主語を頭にもってくると、

「例えば、〔ベイクルーズ事件〕では、

八木通商は、小売業者〔ベイクルーズ〕に対して、製造元からの情報に基づいて当該ズボンの原産国がイタリアであると説明し、小売業者の指示に従って、イタリア製であることを示すタッグを作成して商品に付して納品していたが、

八木通商も、表示主体として、小売業者と連名で排除命令の名あて人となっている」

ということになります。

この具体例からわかるように、上記で引用した、

「〔メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者が、〕小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

という記述が念頭においているのは、通常の、

メーカー→卸→小売

というルートでの不当表示の話なんだなあ、ということが理解できます。

つまり、今回のテーマである、「誰のフンドシで相撲を取っているのか」という問題意識は、どうも、緑本のこの部分では希薄なようです。

とすると、同書でそのあとに続く、

「このほか、製造元と販売元がともに表示主体とされて措置命令・・・の名あて人となっている事例は多数存在する。」

という記述も、「製造元」も、「販売元」も、それぞれ自分のフンドシで相撲を取っていることは当然の前提になっていて、ラベルの欄に「製造元」とか「販売元」と記載されている(場合によっては、記載されているだけの)事業者については、あまり想定していないように思われます。

少なくとも、他人のフンドシで相撲は取っていたけど表示の作成には関与していた、というような事業者が名あて人となった事例が「多数存在する」ということはありませんし、わたしの知るかぎり1つもありません。

実はこの「フンドシ問題」については、緑本p65に、

「エ その他の留意点」

というタイトルで、もう少し関係する記述があって、その中では、

「表示上、製造元、輸入元、発売元として名称が記載されているかどうか・・・は、

各事業者の関係を判断する材料を提供するものではあり得ても、

記載の有無・・・に従って表示者が誰であるかが判断されるわけではない。」

と説明されています。

(ところでこの部分、主語と述語がかみ合ってませんね・・・。)

ここから、

「製造元」と記載されているからといって、(表示に関与していても)違反者となるわけではないし、

「製造元」と記載されていなくても、(表示に関与していれば)違反者となることがある、

ということまでは読み取れます。

ですがこの部分もやはり、

「自己の供給する商品又は役務の取引」(景表法5条柱書)にあたるのか、

=自己の商品役務として供給していたのは誰か、

=自分のフンドシで相撲を取っていたのは誰か、

という問題に対する答えは出てきません。

なので、どのような場合に、「自己の商品役務として供給していた」(=自分のフンドシで相撲を取っていた)ことになるのかは、「自己の供給する」という文言の解釈をつうじてあきらかにするほかなさそうです。

ここで、先に引用した白石先生の論文では、

A→B→C

という商流を念頭に、

「一般化すれば、BがC〔消費者〕に供給する商品役務(5条各号で一般消費者による誤認が問題となる商品役務)と、AがBに供給する商品役務とが、同じものであることが必要となる。」

と論じられています。

(そのあとに、経済的にはまったく同じということはありえないけれど景表法ではあまり厳格には考えられていない、という説明が続きますが、ここでの議論には直接関係ないので割愛します。)

でもこれを杓子定規にコンビニのプライベートブランドにあてはめて、

メーカー(「製造元」)→コンビニ→消費者

(厳密には、間に卸が入るとか、消費者に売るのはフランチャイジーであって本部ではないとか、いろいろありますが、割愛します。)

と考えると、プライベートブランドは物理的にはメーカーが作った商品そのものなので、同じものということになってしまい、プライベートブランドのメーカー(製造元)も表示に関与していたら責任を負うことになるのではないか?という疑問が沸きそうです。

しかし私は、たんに商流に乗っている、あるいは、消費者に供給するのと物理的に同じ商品を供給している、というだけで「自己の商品役務として供給していた」(=自分のフンドシで相撲を取った)というのは広すぎて、もっと絞るべきなんじゃかいかと思います。

たとえばプライベートブランドの場合、誰のフンドシかといえばコンビニのフンドシなので、メーカー(製造元)は、「自己の商品役務として供給していた」にはあたらない、と考えます。

ほかには、電化製品のOEMやODMの製造受託者も、「自己の商品役務として供給していた」にはあたらないと思います。

少なくとも、白石先生の前記論文で整理されている公取や消費者庁の過去の事例をみるかぎり、プライベートブランドの製造元が責任を負いそうな気配を感じるものはないように、私の目にはみえます。

OEMなら、委託者(ブランド保有者)が仕様を指示して受託者に作らせるので、優良誤認表示があっても、(受託者が表示に関与していても)委託者だけに責任を負わせるのが筋がよいように思います。

プライベートブランドも、基本的には、コンビニ側が表示と商品に責任を持って売るべきなんであって、そうでなければナショナルブランドとかわらなくなってしまいます。

それなのに、プライベートブランドで製造元も企画会議で表示について意見を述べたとか、表示について最終了承したというだけで、製造元にも責任がおよぶとしたら、ちょっと広すぎると思います。

やや微妙なのは、製造受託者側が設計もするODMの場合ですね。

それでもやはり、ODMの場合も消費者に責任を負っているのは、不当表示の文脈では、販売者(製造委託者)ではないでしょうか。

最終的には個別の判断になるのでしょうけれど、「自己の商品」という文言は、重くとらえるべきだと思います。

・・・と、書いたところであるコンビニに入ったら、プライベートブランドでもメーカー名がかなり大きく堂々と書いてあって、ナショナルブランドなのかプライベートブランドなのかよくわからない、その中間くらいのがありました。

こういうのだと、プライベートブランドの「製造元」だから責任を負わないとも言い切れないような気がします。

結局、この手の問題はケースバイケースで考えるほかないように思います。

2017年7月 7日 (金)

トイザらス事件の残したもの

横田直和「日本トイザらスによる優越的地位の濫用事件審決について-「正常な商慣習に照らして不当な行為」の認定を中心に-」関西大学法学論集66巻3号(2016・9)189頁

という論文に、この事件が関係者の取引におよぼした影響をうかがわせる興味深い記述があります。

ちょっと長いですが、p218の注38を以下に引用します。

「本件の審判において、王子ネピアの参考人は、公取委の調査開始後にトイザらスからの返品や減額の要請はなくなったものの、当初の取引価格の交渉が非常に厳しいものとなり、トイザらスから提示のあった低い価格を受け入れざるを得ないため、実際に売れ残り品が生じてから減額の交渉を行っていた従前のほうが、透明感があって好ましかった旨を述べている(公正取引情報2396号3頁)。

ちなみに、王子ネピアの納入商品は紙オムツ等であって、同社ではトイザらスの店頭における販売状況を踏まえ多頻度の配送を行っているはずであるが、減額が問題となるのは最後の配送商品のみであるので、従前の取扱いではそれ以前の配送商品に係る取引条件には関係がないものであった。

しかし、現在では、新規商品の取扱い時や毎年の取引交渉時において、すべての配送時の商品に係る取引条件が売れ残りリスクをトイザらスが負担する形で決定されているため、王子ネピアにとっては、公取委の調査開始により取引条件が悪化したことになっていると考えられる。」

(ちなみに上記引用部分で王子ネピアとされているのは公開版の審決書では「I」とされている企業です。

同論文は公正取引情報などから丹念に情報を収集して審決書では伏字にされている当事者名や商品名を明らかにしており、それだけでも非常に価値があります。

同論文によると、その他の当事者で具体名が判明しているのは、

G→ユニ・チャーム

K→ピジョン

J→テンヨー(玩具問屋)

B→NRS(エポック社の子会社)

A→カワダ

です。商品名についても、たとえばピジョンの哺乳瓶やユニ・チャームの「ムーニー」、王子ネピアの「GENKI」など、一部補充されています。

ついでに、ネット情報により推測できたものとしては、審決書p43の「新商品」というのは、その発売日(平成22年3月13日)から、「シルバニアファミリーあかりの灯る大きな家」というおもちゃではないか、と推測されます。)

上記引用部分は、本件審決の不当性を裏付ける、非常に重要な指摘だと思います。

つまり、取引当事者間でリスクに対する耐性に差がある場合には、リスク回避的な当事者(本件ではトイザらス)からリスク選好的な当事者(納入業者)にリスクを移転するのが効率的だという経済理論を、上記引用部分が裏付けているように思われるのです。

一般的に、小売店はメーカーに比べてリスク回避的です。

その理由は、小売マージンのほうがメーカーのマージンよりも小さい、ということもあるでしょうし、メーカーは多数の商品から1つでも大ヒットすれば他の損失は回収できるけど、小売店はそのような収益構造になっていない、ということもあるでしょう。

リスクを取りたがらない小売店に対して、とくに新規参入メーカーなどが売れ残りの買取りを約束するなどして、在庫リスクを引き受けることはよくあることかと思われます。

そういうリスクの移転ができないと、小売店は、確実に売れる商品以外は売りたがらないわけです。

本件での返品も、トイザらスから納入業者への合理的なリスクの移転であった可能性が理論的には従来から指摘できましたが、上記引用部分は、それを当事者の証言として裏付けている、といえそうです。

要するに、リスクをきらう小売店が事後的な返品によってリスクの移転をすることを禁じられると何が起こるかというと、小売店は少ない在庫しか置かない、あるいは、購入価格を下げる、という形によって、できるだけ事前のリスク移転(事前の手段による事後的な損失の回避)をしようとするわけです。

そのため、理論的には、小売店の在庫が過小になり、売れ行きがよかったケースにおいて欠品が生じることになります。

欠品は小売店にとって、(欠品がなければもっと利益をあげられたという意味で)不利益ですが、リスクを嫌う小売店にとっては、売れなかったときの在庫リスクのほうがこわいので、それでもかまわないわけです。

このように、公取委の調査(あるいは本件審決)が、当事者間の効率的な取引慣行をさまたげることになってしまった可能性が大いにあります。

だいたい、本件審決の認定は非常におおざっぱで、取引の実態に即した判断をまったくしていません。

取引依存度が0.5%でも優越的地位が肯定されるなど、取引依存度がほとんど意味を持たないので、実際には、どちらが減額・返品を申し出たかだけで濫用かどうかを判断している(納入業者が申し出たものは濫用ではない)ような様相を呈しています。

こういう、きわめておおざっぱな認定になったのも、課徴金納付命令に対する審判なのでたくさんの取引先についてのたくさんの証拠(参考人含む)を取り調べなければならなかったために、これくらいおおざっぱな認定にしないと審決を書けないと審判官が思ったためではないか、と想像されます。

もし一対一の民事訴訟で濫用行為や優越的地位が争われたら、裁判所はこれほど大雑把な認定はしないのではないかと思います。

しかも審決を読むと分かりますが、審決の認定は各取引相手方について、細かい事実関係は異なるものの、大筋では全く同じ認定をしており、悪く言えばコピペのオンパレードです。

それぞれの取引先の実情について具体的に認定しているのは、唯一、どちらが申し出たか、という一点についてのみです。

取引依存度も、なんだかんだ言って、結論先にありきのこじつけとしか思えないような、コピペ満載のおおざっぱな認定になっています。

いろんなところでいろんな人が言っていることですが、優越的地位の濫用は課徴金導入後の最初の5件の正式事件について課徴金納付命令がなされ、すべてについて審判で争われています。

公取はそれに懲りたのか、その後、優越的地位の濫用は正式事件がぱったりとなくなり、平成26年6月5日に課徴金納付命令がなされたダイレックス事件を最後に3年以上も正式事件がなく、代わりに、優越定期地位濫用事件タスクフォースによる注意が急増しています(このことは、拙稿「裁量型課徴金制度と確約制度に関する独禁法改正について」法律時報1107巻でも指摘しました)。

ともあれ、こんなおおざっぱな認定で優越的地位の濫用が認定されるルールが結果として残ってしまったことは、きわめて不幸なことです。

公取は、自分が取り上げる価値が思う事件だけを取り上げればいいので、結論としてはそんなに不当なことにはならないのかもしれませんが(それでも私は、トイザらス事件の結論の相当部分は不当だと思っていますし、立法論としては優越的地位の濫用なんて廃止すべきだと思っています)、実務では、この審決で示された公取の判断枠組みが公式なルールになる可能性があります。

これは非常に不幸なことです。

しかもそのルールというのが、きわめて単純化すれば、

そこそこ大きい小売業者(優越事業者)が自分から減額・返品を求めれば、(相手方の取引依存度にかかわらず)濫用になる

ということです。

これを文字どおり適用すると、いかにおそろしいことになるか、少し考えてみればわかることです。

(ということは、本件審決のルールをまに受けている事業者がそんなに多くはない、ということかもしれません。)

また、裏を返せば、

相手方から申し出させれば濫用にならない、

ということなので、これはこれで問題です。

濫用行為は取引の実態に即して認定しなければならないのは当然ですが、それを公取に、紋切型の、「正常な商慣習は現にある商慣習ではない」という理屈で、独断と偏見で濫用行為を認定されたのでは、たまったものではありません。

何が濫用にあたるのか(経済合理性がない行為か)は、そもそもビジネスを知らない公取が判断できるのかについてすら大いに疑問のありうるところであり、その点をゆずって仮に判断できるとしても、その判断のためには公取は一生懸命取引の実態を謙虚に学ばなければならないはずです。

そしてその際に、その行為に経済合理性があるのかどうかという理論的バックボーンは不可欠なはずです。

本件審決はとうていそのような要求水準を満たしているとはいえません。

そういった、モヤモヤした気持ちがずっとあったのですが、上記横田論文は、上記引用部分以外にも、取引の実態に即した評価をさまざまなリソース(日経新聞の「私の履歴書」も含め!)に基づいて丁寧に行っており、非常に説得力があるとともに、わたしなどは胸のつかえがとれて、とてもすっきりしました。

やはり、(経済学者だけでなく)法律家こそ、ガイドラインの重箱の隅をつつくような議論ばかりではなく、このような、地に足の着いた(具体的事実に基づいた)議論をしなければなりません。

※この論文は横田先生ご自身から抜き刷りを頂戴しました。ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。なお、インターネットでも手に入ります

2017年6月30日 (金)

実際と異なるけれど景表法違反にならない表示

景表法は、実際と異なる表示をした場合に違反になる(事実をありのままに表示しているかぎり違反にはならない)のですが、実際と異なるすべての表示が景表法違反になるわけではありません。

不当表示は、表示と実際が異なるだけでなく、

「実際のものよりも著しく優良」(優良誤認表示の場合。景表法5条1号)

である場合に初めて成立するからです。

なので、顧客の誘引とはまったく関係ないような、いわば誤記のたぐいは、景表法違反にはなりません。

たとえば、あるシリーズのお菓子について、「アルミ包装」と表示していたところ、同じシリーズの特別企画の商品についても同じ「アルミ包装」という表示していたのに、生産の都合で紙包装になった、というような場合、アルミ包装か紙包装かで消費者の選択にちがいが生じるとはいえないような場合(より正確には、アルミ包装のほうを紙包装よりも著しく優良だと消費者がとらえないような場合)であれば、それはたんなる誤記であって、景表法違反にはなりません。

ほかには、たとえば、ほんとうはMサイズの服なのに、まちがって「Lサイズ」というシールを貼ってしまったというのも、不当表示にはならないでしょう。

そういう誤記をすると、Lサイズがほしい人は誘引されてしまう(誤記がなければ買わないのに誤記のために買ってしまう)のかもしれませんが、消費者一般が誘引されるわけではない(Mサイズのひとは、誤記のためにむしろ買わなくなってしまう)からです。

ほかには、たとえばほんとうは6月30日が賞味期限の牛乳に、まちがって賞味期限を短めに「6月29日」と表示してしまうのも、不当表示にはならないでしょう。

賞味期限が短いとむしろ消費者はその商品を敬遠するので、「優良」と誤認させていることにはならない(むしろ劣悪と誤認させている?)からです。

もちろん、どんなささいな誤記でも放置しておくのは商売として望ましくないので、すみやかに訂正すべきですが、それと景表法違反とはまた別の話です。

顧客の誘引とは関係のない誤記というのも、世の中には案外多いのかもしれません。

そのような場合に、

「消費者庁から措置命令を受けて新聞沙汰になるかも」

とか、

「課徴金を命じられるかも」

といった心配をする必要はない、ということです。

2017年6月 9日 (金)

日本でのハブアンドスポーク型カルテルの事例?

日本でハブアンドスポーク型のカルテルが処分を受けた事例として郵便区分機談合事件があげられることが時々あります。

でも私は、郵便区分機事件はハブアンドスポーク型のカルテルではないと思います。

たとえば、

池田毅「直接の連絡によらない『非典型カルテル』の近時の発展と求められる競争法コンプライアンス-ハブ・アンド・スポーク(hub-and-spoke)とシグナリング(signaling)を中心に」(NBL1039号36ページ)

という論文では、郵便区分機事件について、

「同事件では、郵便区分機を供給していた2社〔東芝と日本電気〕が郵政省の調達事務担当者の内示に従って入札を行っており、2社が直接に相互の連絡を行わなくても受注調整を行うことが可能となっており、調達事務担当者をハブとしたハブ・アンド・スポークと評価できる事案である。」

と説明されています(44頁)。

しかし同論文によるハブ・アンド・スポーク型カルテルの定義は、

「事業者が直接競争者にコンタクトするのではなく、何らかの仲介者(ハブ)を介して価格情報等をやりとりすることによってカルテルを行うことをいう。」

というものです。

つまり、情報を「やりとり」する主語は、あくまで、カルテル参加者である(複数の)事業者です。

この定義に従えば、郵便区分機事件でいえば、

①東芝が、(郵政省を介して)日本電気に「価格情報等」(受注意向?)を伝え、

②日本電気が、(郵政省を介して)「価格情報等」(受注意向?)を伝える、

という事実がなければならないはずです。

あるいは、

①東芝が、(郵政省を介して)日本電気に「価格情報等」(受注意向?)を伝え、

②日本電気が、(郵政省を介して)東芝に、①を了承する旨を伝えた、

(その反対の、日本電気→東芝、も同様)

という事実関係がなければならないはずです。

しかし、このような何らかの「価格情報等」が東芝と日本電気との間でやりとりされたという事実が審決書からは出てきません。

むしろこの事件では、

「番号区分機の開発に当たり、被審人東芝は、機器をコンパクトにする短手一貫方式というコンセプトに立つと、郵便物の供給、搬送及び集積の一連の工程が左側から右側に流れていく右流れ型が最もシンプルであったことから、右流れ型を採用し、その後同社の区分機類は、基本的に右流れ型として開発されることになった。

他方、被審人日本電気は、ドイツのSEL社からの技術導入という経緯から、上記工程が右側から左側に流れていく左流れ型の番号区分機を開発し、その後同社の区分機類は、基本的に左流れ型として開発されることになった。」(審決書8頁)

という歴史的な経緯から、東芝が右流れ型、日本電気が左流れ型を採用したことがあとあとまで影響して暗黙の合意が成立したという要素が強いようです。

少なくとも、両社が郵政省を介して受注意向を伝えあっていた、というような事実はありません(そんなことしなくても暗黙の合意が成立していた)。

もちろん、東芝と日本電気が、「東芝は右流れ、日本電気は左流れにする」という情報を、郵政省を介して伝え合った、という事実もありません。

むしろ事案をよく見ていくと、

「被審人2社は、郵政省から読取率の目標値案の提出及び新型区分機等の見込価格の提出を求められたことを受けて、平成6年4月26日、打合せを行い、これらのことについて検討を行った。」(審決書84頁)

というような事実があり、直接の情報交換に近いことまでやっています。

(ただ、違反として認定されたのはあくまで右流れと左流れですみ分けるという合意なので、見込価格の協議をしたことは、かかるすみわけの合意とは直接は関係しないともいえそうですが。)

それに、そもそもこの事件をハブアンドスポークというなら、すべての官製談合がハブアンドスポークになってしまい、日本ではハブアンドスポークの事例は五万とある、ということになってしまわないでしょうか?

こういう食い違いが出てくるのは、同論文が、郵便区分機事件を、

「2社が直接に相互の連絡を行わなくても受注調整を行うことが可能となって」

いたというだけで、ハブ・アンド・スポークと評価したためです。

つまり、

直接に相互の連絡を行わなくても受注調整を行うことが可能

な場合の中には、

「直接に相互の連絡を行わなくても、仲介者を介して情報交換をすることで受注調整をする場合」

と、

「直接に相互の連絡を行わず、かつ、仲介者を介する情報交換なく、受注調整をする(できてしまう)場合」

というのがあるはずであり、定義上は、前者だけがハブアンドスポークのはずですが、後者に該当する(官製談合はすべて後者)にすぎないのに、ハブアンドスポークだ、といってしまっている、というのがこのような食い違いが生じた原因だと思います。

なので残念ながら、郵便区分機事件をいくら丹念に読んでも、ハブアンドスポークカルテルについて留意すべき教訓を導き出すことはできません。

いちおう、上では、「ハブ・アンド・スポーク」の定義らしきものを出発点に議論を進めましたが、やはり、定義のはっきりしない目新しい言葉を使って分析するときには、慎重にやらないと物事の本質を見失っていたずらに議論が混乱するし、場合によっては、その概念を導入することで何らかの有益な示唆が得られるのかどうかというところからよく考えないといけない、ということなんだろうと思います。

2017年6月 5日 (月)

独禁法のセカンドオピニオン

仕事柄独禁法の問題についてセカンドオピニオンを求められることが時々あるのですが、ある法律実務雑誌の匿名座談会で企業の法務部の方が、「セカンドオピニオンを取ると、元の弁護士の機嫌を損ねそうで気を遣う」という発言をされているのをみて、びっくりしました。

法務部のみなさん、そんなことに気を遣う必要はまったくありません!

少なくとも私は一向に気にしません。

というより、セカンドオピニオンを出す側としての経験からすると、独禁法に関しては、本当にひどい(独禁法の基本を全く理解していない)意見を述べる弁護士が相当いるように思われます。

以前あった事例では、ある排他条件付取引についての意見書でしたが、たった1社との排他条件付取引で、市場に占める取引高からすれば、その取引先は市場全体の0.1%にも遠く及ばないものであったのにもかかわらず、「1年間ならいいけれど、3年間なら違法の可能性が高い」というような意見を見かけました。

排他条件付取引は流通取引慣行ガイドライン第1部第4の2に規定があって、

「市場における有力な事業者(注7)が、

・・・取引先事業者に対し自己・・・の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為(注8)・・・を行い、

これによって競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には(注9)

当該行為は不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶)、11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))(注10)。」

とされています。

そして、

「他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には(注9)」

の意味については、(注9)で、

「(注9) 「競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合」に当たるかどうかは、次の事項を総合的に考慮して判断することとなる。

[1] 対象商品の市場全体の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)

[2] 行為者の市場における地位(シェア、順位、ブランド力等)

[3] 当該行為の相手方の数及び市場における地位

[4] 当該行為が行為の相手方の事業活動に及ぼす影響(行為の程度・態様等)」

と説明されています。

ここで大事なのは、

「[3] 当該行為の相手方の数及び市場における地位

ですね。

つまり、市場における有力な事業者が、多数の取引の相手方と排他条件付取引を行えば競争者の取引の機会が減少するおそれがあるわけですが、購入シェア0.1%にも遠く及ばない取引先1社との間だけで排他条件付取引を結んでも、残り99.1%超の顧客とは自由に取引できるわけですから、競争者が他の取引先を容易に見出すことができなくなるはずがありません。

この部分は流通取引慣行ガイドラインでも比較的はっきり書いてあるところだと思うのですが、基本がわかっていないとこんな重要なところすらも読み飛ばしてしまうのですね。

そのほかには、企業結合の案件で、以前の弁護士に無理と言われたので一度はあきらめた、というケースが2件ありましたが、2件とも私が担当して1次審査でとくに条件もつかず通りました。

いずれの案件も、公取の審査を通った後にはその業界で、「いったいどうやって通したんだ?」とかなり話題になったそうですから、業界でも難しいと思われていたんでしょうね。

でも、べつに私の力で通したわけではなくって、単純に、前の弁護士のアドバイスがよくなかったんだと思います。

こんなことがわりと普通に起きてしまうのが独禁法の世界です。

しかも独禁法の世界では、ビジネスをやっている人の感覚が法律上もけっこう正しいことが多いのです。

それは、独禁法が競争をあつかうものであって、競争の実態は現場の人がいちばんよくわかっていることが多いからです。

なので、ビジネスの感覚からしてどうも違和感があるアドバイスをもらってしまった場合には、「顧問弁護士のいうことだから」といってあきらめず、セカンドオピニオンをとることをおすすめします。

2017年5月31日 (水)

景品と下請法

景品の製造を委託した場合、下請法の適用はあるでしょうか。

この問題について公取委のホームページでは、

「Q9 景品の製造を委託した場合も本法の対象となるか。

A. いわゆる景品は,商品に添付されて提供される場合,有償で提供している商品の一部として提供がなされているため製造委託(類型1)に該当する。

また,純粋に無償で提供している景品であっても,自家使用物品として当該景品を自社で業として製造している場合には,製造委託(類型4)に該当する。」

と回答されています。

ただ、この回答はやや明確性に欠けるように思われます。

というのは、前段では商品に「添付」されているかが基準であるように読めるのに対して、後段では有償かどうかが基準であるようによめるからです。

前段でも「有償で提供している商品・・・」と、有償性が強調されていることからすれば、このQ&Aをぼーっと読んだ多くの人は、実質的に有償か無償かが適用の基準であると解釈するのではないでしょうか。

(もし添付されているかどうかを明確に意識してこのQ&Aができているなら、後段には、無償の例ではなく添付されていない例がくるはずです。)

よって、おそらく公取は、(商品に添付されているかどうかではなく)実質的に有償といえるかどうかを基準に判断しているのではないかと想像されます。

しかしこのQ&Aをひとまず措いて、下請法の正しい解釈としては、私は添付されているかどうかを基準にすべきと考えます。

つまり、商品に添付される景品は下請法の対象になり、添付されていない景品は対象にならない、と考えます。

条文をみてみましょう。

製造委託は下請法2条1項で、

「事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる

物品若しくは

その〔=「物品」の〕半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型

・・・の製造を他の事業者に委託すること

及び

事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」

と定義されています。

この条文の構造からいえることは、下請法の対象になるのは(販売目的の)「物品」の製造の委託と、「物品」と物理的に一体化してユーザーに提供されるもの(半製品、部品、附属品、原材料)に限られる、ということです。

金型はその唯一の例外です。

金型はあくまで「物品」を製造するものであって、金型自体が「物品」と物理的に一体化するわけではありません。

このように、「物品」と物理的に一体化しないのに下請法の対象になるのは、金型だけなのです(「物品」を製造するための特殊な工具は、「金型」ではないし、まして、「半製品、部品、附属品若しくは原材料」でもないので、下請法の対象にはなりません。)

そして、①親事業者がユーザーに販売する物品、②かかる物品と一体化するもの、③かかる物品を製造するための金型、以外で製造委託になるのが、類型4の自己使用物品になるわけです。

このように、物理的に一体になるかどうかで下請法は明確にその適用範囲が画定されています。

もし物品と物理的に一体化しない景品が、実質的に有償だというだけの理由で下請法の対象になるとすれば、条文上は、景品が「物品」にあたると読むのだと思われます。

しかし、そういうことをやりだすと、こんどは「物品」たる景品の附属品というものまで考えなくてはならなくなって、下請法の適用対象が際限なく広がることになり、せっかく物理的に一体化するかどうかで適用範囲を明確にした下請法を台なしにしてしまいます。

それよりも、「物品」と一体化した(商品に添付された)景品は、「附属品」にあたる、とかんがえるのが、よほどすっきりした解釈で、条文の構造にもぴったりくると思います。

(ちなみに「附属品」の典型例として考えられるのは、医薬品の取扱説明書や容器のようなものです。)

添付されているかどうかを基準にすることが納得いかない人は、たとえば、商品に景品をくくり付けたら「附属品」として下請法の対象になるのに、景品を別に提供すると(たとえば、シールを5枚集めて応募すると景品が送られてくる場合)下請法の対象にならない、というのが腑に落ちない(バランスがわるい)と考えられているのだと思われます。

しかし、そういう人は下請法の条文の構造を理解していません。

条文上はあきらかに、「物品」と物理的に一体になっているかどうかが基準になっています。

そのようにあえて割り切ったのは、下請法の適用対象を明確にするためです。

にもかかわらず、実質的に有償か無償かで判断するとなると、限界がきわめて不明確です。

極端にいえば、町で配っているティッシュだって、企業は宣伝広告費を負担しており、宣伝広告費は商品代金に乗っている、ともいえるのであって、純粋に「無償」とはいえないかもしれません。

あるいは、懸賞による景品は、実質的には無償なのでしょうか、有償なのでしょうか。

仮に実質的には有償(商品の価格に上乗せされている)であるとしても、

「食パン10斤買った人から抽選で1名様に豪華リラックマの抱きまくらプレゼント」

というような企画の場合、リラックマの抱きまくらを「物品若しくはその〔=「物品」の〕半製品、部品、附属品若しくは原材料」のどれかに読み込む(実際には、一番近そうな「附属品」に読み込む)のは、言葉の問題として無理なのではないでしょうか。

やはり、懸賞による景品は、下請法の対象外と読むのが条文解釈として正しいと思いますし、その理由はといえば、唯一当たりそうな「附属品」にあたらないから(物理的に商品と一体化していないので)、ということなのだと思います。

この点について明確に述べた文献は探した限り見当たりませんが、

薮内俊輔「下請法の適用範囲①」公正取引787号

に、試作品の製造委託の説明のところで、

「・・・明確に有償とされていないが量産の完成品の供給に伴って提供する場合(商品添付の景品と類似する。講習会テキスト18頁参照。)は、製造委託の類型1として下請法の適用がある。」(54頁)

というように、「添付」が景品への下請法の適用の条件であることを示唆する記述があります。

また、きっかわ法律事務所のホームページの「下請法Q&A」では、

「懸賞で使用されている景品の製造を委託した場合も下請法の対象になりますか。」

という設問で、

「いわゆる景品は、商品に添付されて提供される場合を除き製造委託には当たりません。」

と明言されています。

とういわけで、添付されているかどうかで区別するのが正しいと思います。

2017年5月26日 (金)

返品による課徴金の減額

景表法の課徴金では(じつは独禁法でも同じなのですが)、返品により課徴金を減らすことができる可能性があります。

というのは、景表法施行令1条では、

「課徴金対象期間において商品が返品された場合」

には

「返品された商品の対価の額」

を課徴金対象の売上額から控除するとされているからです(2号)。

悩ましいのが、その返品が、

「課徴金対象期間において」

なされたものでなければならないとされていることです。

ここでいう、

「課徴金対象期間」

とは、景表法8条2項で、

「課徴金対象行為〔≒不当表示行為〕をした期間

(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日

(同日前に、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置〔誤認解消措置〕として内閣府令で定める措置をとつたときは、その日)

までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、

当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)」

と定義されています。

要するに、課徴金対象期間は、

①原則(不当表示をやめると同時に販売もやめたとき):不当表示行為をした期間

②例外その1(不当表示行為後も販売を継続したとき):不当表示行為をした期間+最後に販売した日(ただし不当表示終了後の追加期間は最長6か月)

③例外その2(不当表示行為後も販売を継続し、かつ、②の6か月の日よりも前に誤認解消措置をとったとき):不当表示行為をした期間+誤認解消措置の日まで

ということです(最長3年は、はしょりました)。

要約してもややこしいですね。

さて上で、返品を受け付けると課徴金が減る、と書きましたが、ここでジレンマが生じます。

典型的な場合として、メーカーが小売店を使って販売していた場合で、不当表示に気付いたと同時に販売もやめる場合を例に考えてみましょう。

この場合、不当表示をやめるのと同時に販売もやめているので、課徴金対象期間の最終日は不当表示行為をやめた日となります。(①)

(なお当然のことですが、この例でメーカーが不当表示行為をした場合、課徴金がかかるのはメーカーから小売店への売上であり、小売店から消費者への売上ではありません。

したがって、メーカーが不当表示行為をやめたあとでも小売店の棚に商品が残っていて消費者が1000円で買ってしまったとしても、その分に30円の課徴金がかかるわけではありません。

というより、正確には、当該商品がメーカーから当該小売店に課徴金対象期間中に売られたときの売上に課徴金がすでにかかっている、ということです。)

ということは、不当表示行為をやめた日のあとに返品を受け付けても、それは課徴金対象期間中の返品ではないので、課徴金の控除はされないことになります。

そうすると、返品により課徴金からの控除を受けようとすると、(さすがに不当表示を続けるわけにはいきませんので)不当表示をやめたあとに

「取引」(景表法8条2項)

をする必要があります(②)。

そうすると、返品による課徴金額の控除を認めてもらうために(課徴金対象期間を意図的に延長するために)、たとえばその商品を1個だけ(通常の販売を継続していたら課徴金が積みあがってしまうので、それはできません)、不当表示をやめたあとに小売店に販売する必要がある、という、おかしなことになります。

そうすれば、その1個には課徴金がかかっても、小売店から100個返品を受ければ、99個分については課徴金から控除されることになります。

でも、返品による控除をうけるために、1個だけ販売して課徴金対象期間を延ばさなければならないというのも、なんだか変な感じがします。

(ちなみに、「取引」は、あきらかに販売のことであり、返品は含まれないと思われます。)

ほんらいであれば、不当表示であることが分かったあとに受けた返品は控除対象にしない、としておくべきだったのでしょう。

この、課徴金対象売上額の算定方法に関する施行令1条の規定は、独禁法を参考にしたもので、独禁法施行令5条では、

「実行期間において商品が返品された場合」

には、

「返品された商品の対価の額」

を課徴金額の基礎となる売上額から控除するとされています(2号)。

ちなみに、ここでの「実行期間」とは、独禁法7条の2第1項で、

「当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間

(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。」

と定義されています。

つまり独禁法も景表法も、基本的な発想は、返品されているのに課徴金の対象になるのはおかしい、という、素朴な会計的な発想でできているわけです。

両者が違うのは、独禁法(典型的にはカルテル)の場合は、対象商品の販売が継続されても課徴金対象期間が延長されることはないので、違反行為の終了後の返品額が課徴金対象売上から控除されるということが、法文上ありえない、という点です。

これに対して不当表示の場合には、不当表示行為をやめても通常その影響がすぐになくなることはないために、課徴金対象期間を最長6か月延長しました。

逆にいえば、カルテルの場合には、カルテルが終わったら価格への影響はなくなる、という前提で制度ができているのです。

というより、価格への影響が残っていたら、それはカルテルの実行期間が続いているのだと解釈するということが、当然あるいは暗黙の前提になっているのでしょう。

このように、不当表示の場合にはカルテルと違って違反行為のあとにも課徴金対象期間を延ばす必要があるという立法判断は正しかったと思うのですが、控除対象の返品まで(あまり深く考えずに?)独禁法に引きずられて課徴金対象期間(≒実行行為期間)内としてしまったために、おかしなジレンマが生じることになってしまいました。

以上のような問題点を、

松田知丈「景品表示法違反を指摘された場合の企業の争い方(上)」NBL1097号

では、

「不当表示をやめると同時に販売も終了した場合、その後の期間が『課徴金対象期間』に含まれるかがポイントとなる。

この要件との関係で、売上額(課徴金額)の減額が難しい場合も考えられる」

というふうな言い方で指摘されています(9頁)。

では「課徴金対象期間」という返品の要件をなくせばいいかといえば、そうもいきません。

そういうことをすると、いつまでも返品による控除を認めることになり、いつまでたっても課徴金額か確定しないということにもなりかねないからです。

そういう意味では、控除が認められるための返品は「課徴金対象期間」内ではなくて、「不当表示行為期間」でなければならない、としたほうが、おかしなジレンマも生じずすっきりしたのではないか、という気もします。

違反者には不利になりますが、独禁法と同様、景表法の場合も、この控除の規定は、前述のような、素朴な会計的発想でできているだけで、たぶんそれ以上の深い意味はないので、この返品に関する規定を使って違反行為終了後の控除までは認める必要はない気がします。

立法というのは、細かく見ていくといろいろ難しいものですね。

実務的には、どうせ不当表示のあった商品は小売店から回収しないといけないのであれば、不当表示行為終了日から6か月以内にできるだけたくさん回収して、6か月目の日に名目的に1個だけその商品を小売店に販売する、というのが課徴金額を減らすポイントになりそうです。

そして、6か月目の日の販売は有償でないと、やっぱり

「取引」(景表法8条2項)

とは認められない認められないのでしょう。

不当表示の判明したいわばキズモノを通常価格で買ってくれる小売業者もいないでしょうから、1円で売る、ということも考えられます。

でも、日用雑貨とか、単価の小さい商品なら細かいことはいわず、事情を説明して頭を下げて買い取ってもらうのでしょうか。

マンションとか不動産とか、単価の大きな商品の場合には、なかなかシビアな問題になりそうです。

あるいは、あとで買い戻す約束付きで売るということも考えられますが、それでは真正の、

「取引」(景表法8条2項)

とは認められないかもしれません。

あるいは、グループ会社に買わせる、ということが可能なら、それでもいいのでしょう。

いろいろと細かいことを考えると悩みは尽きません。

2017年5月23日 (火)

下請法の質問に対する中小企業庁のある課長補佐の対応について

最近、事情があって(通常は公取に聞くのですが)、とある依頼者のために、中小企業庁に下請法の質問をすることがありました。

依頼者は匿名ではあるものの、わたしの名前と連絡先は明らかにし、具体的な事情(大して複雑なはなしでもありません)も包み隠さず説明したうえでの質問だったのですが、某H.S.下請代金法担当課長補佐(中小企業庁事業環境部取引課)から、回答を拒否されてしまいました。

とくに、2回電話したうちの最初の電話での回答は、

「立入検査で具体的な問題が発生したなどというのでない限り、個別の案件についてはいちいち回答しない」

という、信じられないような回答でした。

そんなことはないだろう、公取でも中企庁でも、いくらでも回答してもらっている、といっても、

「(具体的な案件にいちいち答えないのは)当たり前でしょう」

「そっちのほうがおかしい」

と、まったく取り付く島もない感じでした。

最後には、

「これ以上は業務妨害ですよ!」

といって、一方的に電話を切られてしまいましたcoldsweats01

(実は、この課長補佐との「最初」の電話の前に、わたしから中企庁に電話をして質問したところ、もっと若い方が出られて、「検討して折り返します」といって、折り返されてきたのがこの「最初」の電話です。つまり、いちおう検討する時間もあって、わざわざ課長補佐からかけなおしてこられたものです。)

そこで2度目の電話で、下請法テキストの最後の頁に、

「~ご相談やご質問は、全国の相談窓口までお気軽にどうぞ。~」

と書いたうえで中企庁の窓口の連絡先も載ってるじゃないかといって、再度食い下がったのですが、やっぱり同じような回答でした。

当該課長補佐の論理では、「明確なルールがないというのが回答」だということらしいのですが、同じことだと思います。

あと、

「紙に書いたようなルールがないので、明確な回答はできない」

←(心の声)紙に書いたものがあったらこっちもきかないよcoldsweats01

「ルールが明確でない以上、下請法の適用があるという前提で対応するのが望ましい」

←(同)法律論を聞いているんだよangry

という、お役人様らしい迷言も多々ありました。

さらには、

「どうしても下請法の条件を守れない事情でもあるんですか?」

「支払いが60日超えて90日とかなんて、長すぎますよね?」

「守れない事情がないなら、守ったらいいんじゃないんですか?」

といった具合で、まったく理屈の話になりませんでした。

下請法が適用されると取引記録(5条書類)を2年間保存しないといけないとか、下請事業者の名簿を準備しなくちゃいけないとか、いろいろ面倒なことがあることをご存じないのでしょうか。

当該担当課長補佐が、

「具体的な事実関係がわからないと回答できない」

とおっしゃるので、(それまでかなり詳細に事実関係を説明していましたので)では今まで説明した以上にどんな事情が必要なんですかと尋ねたら、

実際に下請事業者にどのような被害が及んでいるのか、といったような事情です

とおっしゃいました。

そんなのは下請法適用の有無とは何の関係もないのは明らかなのですが、万事こんな具合ですから、「この人、何にもわかってないんだなぁ」と思って、回答をもらうことはあきらめました。

こんなわけのわからないことをいう人が所轄官庁の実質的な責任者をやっているというのが、日本の下請法実務の現状です。

ただ中企庁の名誉のために一言いうと、いろいろ聞くところによれば、どれくらいていねいに回答してくれるのかは担当者によるそうです。

わたしも別の中企庁の担当者に聞いたときは、普通に答えてくれました。

そういう意味で、今の担当課長補佐は、たんに「はずれ」なのかもしれません。

もしどうしても、正式な回答でなくてもいいから、(公取ではなく)中企庁の見解が知りたいんだということがあったら、下請法テキストの最後の頁に載っている最寄りの経済産業局に問い合わせたほうがいいと思います。

そちらのほうが、はるかに下請法のことが分かっている担当者が出てくれるので、少なくとも議論がかみ合います。

ちなみに、私は基本的に、当局に問い合わせるのには消極的で、お客さんにもあまり勧めません。

いろいろ理由はありますが、担当者によって、けっこう言うことが変わるからです。

なので、「聞いてもいいけど、あてにしない」というのが正解かもしれません。

役所によっては配属直後の新米が電話質問の回答をやらされるそうなので、信頼性にも疑問がつくことが少なくありません。

だいぶ昔に、特許庁に質問した時に、質問にいたる前段階のところで、

「ライセンス契約は登録しないと効力がないでしょう?」

といわれ、ひっくり返りそうになったことがあります。

たぶん、通常実施権の登録制度と混同されていたのでしょう(平成23年改正による通常実施権の当然対抗制度の導入前の話でした)。

その点、消費者庁では任期付弁護士の方が回答してくれたりすることがあったのですが(消費税転嫁法関係)、あれはよかったですね。

ほんとうに、法律論として、話がかみ合いました。

もっともっと、弁護士資格者が役所にも増えたらいいのになと思います。

あと、当局に質問する場合は、質問する側も、相当勉強していないと、まちがった回答を引き出してしまいがちなので、自信がない場合は弁護士に頼むべきです。

とくに当局の担当者もよくわかっていない場合、わけのわからないことになります。

今まで公取に下請法の質問をしたときは、きちんと答えてくれていたし、議論してもかみあっていました。

融通が利かない結論には納得いかないことはありましたが、それは下請法がそういう法律なので、ある程度仕方がないです。

今回、中企庁と公取でこうも対応が違うのかと思い知らされ、公取がとても立派で誠実な役所に思えました。

私はこれまで、中小企業保護法である下請法は、競争法当局である公取委から切り離して、中企庁の専管にすべきだと考えていましたが、考えを改めました。

中企庁だけに下請法をまかせきったのでは、えらいことになりそうです。

(ちなみに当該課長補佐にも、「公取には問い合わせたのですか?」と聞かれましたので、あまり中企庁が主体的に下請法を解釈運用していこうという姿勢は今でもあまりないのだなと感じました。)

役所とのクローズなやり取りをオープンにするのは多分これがはじめてですし、あまり好きではないのですが、それでも、これは公益にかかわることだ(納税者たる国民が知っておくべきことだ)と考え、率直に書かせていただきました。

今回のことは、あくまで担当者個人の個性の問題であって(それも困るのですが・・・)、中企庁の組織の問題ではないことを祈りたいと思います。

もし、今回のような対応が中企庁のスタンダードなら、下請法テキストに、

「~ご相談やご質問は、全国の相談窓口までお気軽にどうぞ。~」

なんて書かなればいいし、もし書くなら、中企庁の直通番号は載せなければいいのにと思います。

これでは、明らかに看板倒れです。改善を望みます。

【5月25日追記】

本日、中小企業庁のかたから、上記の不適切な対応へのお詫びと、質問への明確な回答をいただきました。ありがとうございました。

«セット販売(バンドルディスカウント)について