2016年9月22日 (木)

ブランド内競争と小売サービスの関係

ブランド内競争が小売サービスに及ぼす影響について

Tirole, "The Theory of Industrial Organization" p 182 

のモデルに従って、整理しておきます。

前提として、小売レベルは完全競争(ブランド内競争が活発)であり、

需要関数: q=D(p,s) 〔pは価格、sはサービス量〕

消費者余剰: S(p,s)

サービス1単位あたりのコスト: Φ(s)

とすると、メーカーと小売店が統合された垂直統合企業が得る利益は、

[p-c-Φ(s)]D(p,s) ・・・①

となります。

そこで、垂直統合企業が利益を最大化するサービス量の条件は、①をsで偏微分して0とすると、

-Φ’(s)D(p,s)+[p-c-Φ(s)]・∂D/∂s=0

であり、整理すると、

[p-c-Φ(s)]・∂D/∂s=Φ’(s)D(p,s)・・・②

となります。

次に、メーカーと小売店が別々の企業である場合(垂直分離企業)に、どれだけサービスが提供されるかについて考えてみます。

消費者は、完全競争の下では最適な価格とサービス量のミックスを提供する小売から購入する(できる)ので、前述のように小売レベルでの完全競争を前提とすると、小売レベルでの完全競争は、「消費者厚生を最大化する価格とサービス量のミックス」と置き換えることが可能です。

(ただし、小売に損が出てはいけませんので、

p=pw+Φ(s) [ただし、pwは卸売価格]

という条件がつきます。)

小売レベルの完全競争は、消費者余剰、すなわち、

S(p,s)[⇔S(pw+Φ(s),s)]・・・③

を最大化します。

(つまり、p=pw+Φ(s)という制約条件のもとでの消費者余剰の最大化問題です。)

次に、消費者余剰Sを最大化するサービス量(s)の条件を求めます。

ここで、S(p,s)をsで偏微分したくなりますが、

p=pw+Φ(s)

という制約条件があるためにpとsは相互に独立ではないので、sで単純に偏微分することはできません。

そこで、ラグランジュ乗数法を用いて、

Z=S(p,s)+λ(pw-p+Φ(s))

と置き、λとpとsで偏微分して、

∂Z/∂λ=pw-p+Φ(s)=0・・・④

∂Z/∂p=∂S/∂p-λ=0・・・⑤

∂Z/∂s=∂S/∂s+λΦ’(s)=0・・・⑥

が、消費者余剰Sを最大化するためのサービス量(s)の条件となります。

これを解くと、

∂S/∂s=-λΦ’(s) 〔⑥より〕

=-∂S/∂p・Φ’(s) 〔⑤より、λ=∂S/∂p〕

=D・Φ’(s) 〔∂S/∂p=-D(総需要を価格で(偏)微分すると需要関数となる)より〕

となり、結局、

∂S/∂s=D・Φ’(s)・・・⑦

が、メーカーと小売店が別々の企業で、かつ、小売レベルで十分な競争がある場合の、サービス提供量となります。

整理すると、垂直統合企業のサービス提供量は、

[p-c-Φ(s)]・∂D/∂s=Φ’(s)D・・・②

となり、垂直分離企業(かつブランド内競争あり)のサービス提供量は、

∂S/∂s=Φ’(s)D・・・⑦

となります。

ここで、②も⑦も、右辺は、需要量に限界サービスコストを乗じたもの、つまり、全需要者に対して追加で1単位サービスを提供した場合の費用であることがわかります。

これに対して、②(ブランド内競争なし)と⑦(ブランド内競争あり)の左辺を比べると、②(ブランド内競争なし)の場合には、サービスを一単位増やした場合の需要量の増加(∂D/∂s)に、マージン([p-c-Φ(s)])を乗じたものであることがわかります。

つまり、②(ブランド内競争なし)の場合には、垂直統合企業は、サービスを1単位増やした場合の費用増(Φ’(s)D)が、サービスを1単位増やした場合の増加利益に等しくなるように、サービス量を決定します(独占企業の行動の特徴です)。

これに対して、⑦(ブランド内競争あり)の左辺は、サービスを1単位増やした場合の消費者余剰の増加分(∂S/∂s)であることがわかります。

つまり、⑦(ブランド内競争あり)の垂直分離企業は、サービスを1単位増やした場合の費用増(Φ’(s)D)が、サービスを1単位増やした場合の消費者余剰の増加分(∂S/∂s)に等しくなるように、サービス量を決定します(ソーシャルプランナーの行動の特徴です)。

別の言い方をすれば、

垂直統合企業(≒独占企業)は、限界的需要者に対する影響だけをみてサービス量を決定し、

垂直分離企業(≒ソーシャルプランナー)は、限界的需要者のみならず、それ以外の需要者(inframarginal consumers)への影響をもみて(つまり、平均的需要者への影響をみて)サービス量を決定する、

ということです。

別の見方をすれば、小売業者間の競争がメーカーに負の外部性を与える(垂直的外部性)、つまり、ブランド内競争があると、小売業者がメーカーの望むレベルの小売サービスを提供しない、ということです。

(なお、ここで言っているのは、あくまで垂直的外部性(小売が競争のために限界的需要者だけをみて小売サービスを提供してしまうことによるメーカーへの外部性)のことであって、水平的外部性(いわゆるフリーライダー問題)とはまったく別の問題です。)

小売レベルの競争がある場合に独占企業の目からみてサービス提供量が過小になるか過大になるかは場合によりますが、単純にいえば、

限界的需要者が平均的需要者よりも小売サービスを高く評価している場合には、小売レベルの競争があると独占に比べて小売サービスの提供が過大になり、

限界的需要者が平均的需要者よりも小売サービスを低く評価している場合には、小売レベルの競争があると独占に比べて小売サービスの提供が過小になる、

という関係があります。

しかし、総余剰の観点からは、競争がいいのか独占がいいのかは、一概にはいえません。

上の分析は、メーカーが設定する卸売価格(pw)を所与のものとして分析していますが、pwは、垂直統合企業(=独占企業)における仮想的卸売価格(fictitious wholesale price)を超えるかもしれないからです。

(ここで、垂直統合企業における仮想的卸売価格は、pm-Φ(sm)と定義されます。〔pmは独占価格、smは独占企業が提供するサービス量〕)

「一概にはいえません」というと、暗闇に放り出されたようでフラストレーションがたまるのでcoldsweats01

A. Michael Spence, "Monopoly, quality, and regulation" (1975)

に従って、結論だけ簡単に述べると、抽象的には、

①限界的消費者によるサービスに対する評価と平均的消費者によるサービスに対する評価と、

②独占企業が産出量を削減する程度

の2つの要素次第であり、より具体的には、

需要が増えるにしたがってサービスへの評価が下がっていく場合(∂P/∂q・∂s<0)には、

独占による産出量削減が少ないと、サービスの供給が(社会的な最適量に比べて)過小となり、

独占による産出量削減が多いと、サービスの供給が過大となり、

需要が増えるにしたがってサービスへの評価が上がっていく場合(∂P/∂q・∂s>0)には、

独占による産出量削減が少ないと、サービスの供給が過小となり、

独占による産出量削減が多いと、サービスの供給が過大となる、

というように整理されます。

これくらい複雑になるととても法執行の指針にはなりそうもありませんが、理屈の上では何が正しいのか答えが出てしまう、というのは経済学のすごいところだと思います。

法学の観点からいえるのは、メーカーがブランド内競争を制限することにより小売サービスをより最適に提供できるかもしれない、ということくらいでしょう。

2016年9月 7日 (水)

懸賞の総額制限における取引予定総額の意味

懸賞により提供する景品類については、その総額について、

「当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2を超えてはならない。」

という制限があります(懸賞制限告示3項)。

そして、懸賞運用基準7項では、

「告示3項・・・の『懸賞に係る取引の予定総額』について

懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額とする。」

とされています。

つまり、景品類の総額は、懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額の2%を超えてはいけない、ということになります。

では、メーカーが懸賞により景品類を提供する場合、運用基準7項の、

「対象商品の売上」

というのは、メーカーの売上(卸売価格が基準)でしょうか、それとも、小売店の売上(小売価格が基準)でしょうか。

たとえば、缶コーヒーのメーカーが、メーカー→卸→小売→消費者、という商流で、小売価格1個120円(卸への販売価格1個50円)の缶コーヒーを販売している状況において、その購入者(消費者)に懸賞により景品類を提供する場合、基準になるのは小売価格の120円なのか、卸売価格の50円なのか、という問題です。

結論としては、小売価格の120円が基準になります。したがって、キャンペーン期間中に10万個の販売を見込んでいるのであれば、「懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額」は、120円×10万個=1200万円となり、景品類の総額は、1200万円×0.02=24万円、となります。

この点については消費者庁のホームページのQ&Aも小売価格を基準とすることを当然の前提にしている設問があり、Q16では、

「Q16

メーカーが実施する景品提供企画なのですが,取引先小売店における販売価格がまちまちである状況において,取引の価額をどのように算定すべきでしょうか。」

というように、小売店における販売価格(小売価格)を基準にすることを当然の前提にした質問がなされており、それに対して、

「A.景品類の提供者がメーカー又は卸売業者である場合の取引の価額は,景品類提供の実施地域における対象商品の通常の取引価格を基準とします。

したがって,本件については,例えば特売セールでの販売価格など通常の販売価格とはいえない価格を除き,景品提供企画を実施する地域における対象商品の通常の販売価格を取引の価額とすることになります。」

と回答されており、回答でも、小売価格を基準にすることを当然の前提に、それは通常の取引価格なのであって、特売セールでの販売価格ではないと、あくまで小売価格を基準にすることは当然の前提として回答されています。

つまり、懸賞制限告示3項の

「当該懸賞に係る取引の予定総額」

というのは、懸賞の対象になっている取引(くじを引くのは消費者なので、当然、消費者が当事者となっている取引)のことをさし、運用基準7項の、「・・・対象商品の売上予定総額」にいうところの、

「売上」

というのは、消費者に対する売上(裏から言えば、消費者の購入額)を意味することになります。

告示3項の「当該懸賞に係る取引」という文言からは、くじが付いてくる取引を指すことが比較的明らかですが、運用基準の「対象商品の売上」という文言だけをみると、メーカー自身の売上と読めなくもないので、やや注意が必要です。

実質的に考えても、2%という基準は消費者の射幸心をあおらないように定めているわけですから、消費者の購入額を基準にすることは自然なことであり、消費者庁のQ&Aの立場が妥当だと思います。

もう1つの問題として、景品類が当たる対象取引を取引額などを基準に制限した場合、「当該懸賞に係る取引」(告示3項)はどう考えればいいのか、という問題もあります。

たとえば、コンビニが700円以上の購入者に対してくじを引かせるような場合です。

これも当然のことですが、この場合、「当該懸賞に係る取引」は、700円以上の購入取引に限られます。

キャンペーン期間中の全売上ではありません。

懸賞の対象にならない取引(700円未満の取引)が「当該懸賞に係る取引」に含まれないことは、当然のことです。

なので、取引予定総額を見積もる際には、店舗の全売上ではなく、1回あたり700円以上購入するお客さんへの売上がいくらくらいになるのかを見積もる必要があります。

では、メーカーが、小売価格1個120円の缶コーヒーを2個購入した人を対象にくじを引かせるキャンペーンを行う場合はどうでしょうか。

これは場合によると思います。

まず、(あまりないと思いますが)1つ目のパターンとして、同時に(1回の買い物で)2個購入した人に対してだけくじを引かせる、というキャンペーンの場合は、同時に2個以上まとめ買いをする人への販売価格が基準になると考えられます。(前記コンビニの例と同じ考え方です。)

これに対して、別々の機会に購入するのでもよくて、ともかく2個購入した人に対してくじを引かせる(あるいはより一般的に、応募資格を与える)、というキャンペーンなのであれば(たとえば缶コーヒーに貼られたシール2枚をはがきに貼って応募するなど)、キャンペーン期間中の当該缶コーヒーの予定売上を基準にしてよいでしょう。

キャンペーン期間中に1個しか買わない人と2個以上買う人を区別して、1個しか買わない人への売上は除外する、という考え方もありえますが、1個しか買わない人と2個以上買う人を区別して見積もるのは不可能なので、そこまでの細かい議論は不可能を強いるもので妥当でないと思われます。

理屈で考えても、2個以上で応募できるキャンペーンに、

「2個で応募できるのか。いまは1個でいいけど、そのうち2個目を買ったら応募しよう」

と思っていながら結局2個目を買わなかった(たとえば、2個目を買うのを忘れてキャンペーン期間を過ぎてしまった)、というような消費者でも、1個目の取引ですでに誘引されているのは間違いないので、やはり、1個だけ買う人も取引予定総額に算入すべきでしょう。

ちなみに、実際にキャンペーンに応募する人の数は予想できるかもしれませんが、実際に応募しなくても2個以上購入した人には応募資格はあるので対象売上に含むべきことがあきらかであり、予想応募人数も正しい基準にはなりえません。

(1個で応募できる場合と2個で応募できる場合の違いは、景品類の最高額(取引価額の20倍)のところで出てきます。)

以上のように、景品規制というのは、細かく見ていくと、実にいろいろな隠れた論点に溢れているように思われます。

2016年9月 2日 (金)

消費税増税前発注・増税後引渡しの工事と消費税転嫁法

8月31日に、株式会社松下サービスセンター及び株式会社APサービスセンターに対して、消費税転嫁法の勧告がなされました

この事件は、金沢のリフォーム業者が、取引先に代金を支払うにあたり、

①工事の下請業者に支払う代金の単価を消費税増税の際に改定せず、

②駐車場の賃借料を増税分引き上げず、

③税務会計指導業務等の代金を引き上げなかった、

といった行為が勧告の対象になっています。

これらの事実自体はオーソドックスな転嫁法違反なのですが、いくつか注目すべき点があります。

1つめは、消費税増税前に発注し増税後に引渡しを受けた工事について勧告がなされていることです。

勧告では、

「・・・平成25年10月1日から平成26年3月31日までの間に発注し,平成26年4月1日以後に引渡しを受けたサイディング工事の工事代金については,平成26年4月1日に引き上げられた消費税率が適用される・・・」

とされており、それはそのとおりなのですが、そんな過渡期の行為、しかも、2年も前の行為でも、勧告されてしまう、ということです。

消費税転嫁法は消費税増税の直後が執行のピークでその後は下火になるのではないかという観測もあったところですが、ぜんぜんそんなことはない、ということです。

また、下請法の場合は5条書類(取引記録)の保存期間が2年であるのに合わせて減額などで勧告されるのも過去2年分ですが、どうやら、転嫁法の場合には、「2年経ったら見逃す」という発想はないようです。

このことは、次の消費税増税(8%→10%)が平成31(2019)年10月に延期され、それに伴い転嫁法の期限もさらに平成33(2021年)3月末まで延長されることが見込まれる現在、結構重要な意味があります。

つまり、平成26年4月ころの代金支払い不足について、平成33年3月(予定)くらいまでは、さかのぼって支払うことが命じられることがありうる、ということです。

とくに、次の消費税引き上げ直後には公取委は集中的に転嫁法の調査をするでしょうから、その際、前の引き上げ時の転嫁拒否もついでに見つかる、ということは十分にありそうです。

この事件でも、

「2社は,それぞれ,本件工事業者のうち,一部のものに対し,平成26年4月1日以後に発注したサイディング工事の工事代金について,工事単価に消費税率の引上げ分を上乗せせず,同年3月31日までの工事単価と同額に定め,前記⑴イの方法で算出した額を支払った。」

とされており、発注時期が「平成26年4月1日以後」であるという点しか特定されておらず(終期の定めなし)、しかも、

「2社は,それぞれ,公正取引委員会が本件について調査を開始した後,前記⑵の代金について,松下サービスセンターは平成28年3月24日までに,APサービスセンターは同年7月12日までに消費税率の引上げ分に相当する額まで引き上げることを本件工事業者及び本件賃貸人等との間で合意し,平成26年4月1日に遡って当該引上げ分相当額を本件工事業者及び本件賃貸人等に対して支払った。」

ということなので、公取がいつ調査を開始したのかによりますが、たとえば半年前(平成28年2月)に調査開始したとすると、平成26年4月から約2年間の代金についてさかのぼって支払わされた、ということになります。

前述のように、転嫁法の失効期限が平成33年3月(予定)まで引き延ばされる状況にある現在、最大、7年分の代金支払い不足が勧告の対象になりうる、ということです。

そこまでいけばさすがに民事上の時効ではないかという気もしますが、代金請求権が時効にかかっていても行政法規である転嫁法違反がなくなるわけではないと思われることからすると、ありえない話ではありません(公取委の運用方針次第です)。

2つめの注目点は、対象会社が金沢の資本金わずか5000万円と1000万円の会社である、ということです。

(これは法律上仕方のないことですが、転嫁拒否で保護される事業者は資本金3億円以下の事業者なので、違反者が被害者よりもはるかに小企業であった可能性もあります。)

つまり、転嫁法については中小企業といえどもお目こぼしはない、ということです。

3つ目の注目点は、勧告対象(③)に、税務会計指導業務(相手方は税理士さんですかね)、広告業務、廃棄物処理業務、が含まれていることです。

単価が単価表できまっているような工事の場合には単価表を改定しないと消費税分上乗せしていないとみなされるのはやむをえないところですし、長期間固定金額になりがちなオフィスや駐車場の賃料も価格改定していないかぎり消費税を上乗せしていないとみなしやすい契約類型です。

これに対して、税務会計指導業務や広告業務や廃棄物処理業務といった業務は、それぞれの業務ごとに個性が強く(たとえば平成27年度の確定申告と平成28年度の確定申告が同じ業務量とは限らない)、転嫁拒否がそれほど簡単には認定できないのではないか(増税後、あらためて価格交渉をした、という抗弁も認められるのではないか)、と私などは思っておりました。

ところが今回こういう勧告が出たということは、各取引ごとに個性の強い業務でも転嫁法の摘発対象になりうる、ということです。

企業はいまいちど、転嫁法違反がないか、調べてみるべきではないでしょうか。

それにしても、消費税増税されてから2年も経った後の代金をいまさら3%上げろと命じられるのを目の当たりにすると、消費税転嫁法というのは、実は国家による物価引上げ策(デフレ対策)だったのだなと、改めて思わざるをえません。

2016年8月29日 (月)

本日日経朝刊の下請法の記事について

8月29日日経朝刊法務面に、

「下請法違反監視強まる 公取委、指導最多『買いたたき』に的」

という記事があります。

その中で、

「発注企業が調達先を分散し、この部品メーカーの納入量は年々減ったのに、単価は据え置かれたままだった。

こうしたケースについて、下請法に詳しい村田恭介弁護士は、『大量発注を前提とした単価に据え置くことは、同法違反の買いたたきに該当しうる』と話す。」

という記述があります。

この村田弁護士のコメント自体は下請法テキストにも同じことが書いてあるので、それ自体は問題ないのですが、そのような考え方が、

「発注企業が調達先を分散し、この部品メーカーの納入量は年々減ったのに、単価は据え置かれたままだった」

という、世の中で普通にいくらでもありそうなケースに適用があるというのは、いくらなんでも厳しすぎると思います。

本当に村田弁護士は、このようなケースに該当するルールとしてこのようなコメントをされたのでしょうか?

(まあ、文末が「うる」なので、たんに可能性を言っているだけだととらえれば、間違いではないのですが、それを言い出すと、

「植村幸也は2020年東京オリンピックで金メダルを取りうる」

というのも間違いではないわけで、この記事をさらっと読んだ読者は大いに誤解するのではないかという気がします。)

この、大量発注を前提にした見積額をそのまま少量発注に適用するというのは、今まで想定されていたのは、たとえば1万個発注する前提で見積もりを出したのに1000個しか発注されなくて、でも同じ金額が適用された、というような極端な場合だったと思います。

(1万個→1000個、というのが、例として適切な割合かは議論のありうるところでしょうが、要するに、固定費が到底回収できないような少量発注だから買いたたきになる、ということです。)

それが、納入量が、「年々減った」、たとえば毎年10%ずつ減ったとして、5年目(1年目の1×0.9^4≒66%(もし毎年20%ずつ減ったら5年目で1年目の41%)になったくらいで買いたたきになるものでしょうか?

この設例では、「価格は据え置かれたままだった」ということになっていますが、同じような例で価格も毎年5%ずつくらい下げさせているものも、とくにこのデフレのご時世ですから、世の中ではいくらでもあるのではないでしょうか。

さらに設例では、「発注企業が調達先を分散」したのが納入量が減った原因ということになっていますが、もっと世の中で普通にありそうな、たんに発注企業の完成品の需要が年々減ったので下請への部品発注量も年々減った、という場合でも買いたたきになるのでしょうか?

親事業者側の事情(調達先を分散したか、完成品の売れ行きが悪いか、など)は、買いたたきの判断には影響しないはずなので(買いたたきの要件は、「同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」ですが、この「不当に」に親事業者の完成品の売れ行きが悪いことを含めて読むのは、下請法のこれまでの解釈からして相当無理があります)、親事業者の完成品の需要が年々減った場合にも、買いたたきになると解さざるをえないのではないでしょうか?

というわけで、わたしはこの記事の設例はかなり問題だと思っています(ちょっと煽りすぎです)。

この記事によれば、

「平成14年度以降、『買いたたき』(で公取委が指導した件数)が急増。

15年度の指導は631件と2年前の7倍強となり、違反件数全体を押し上げている。」

ということなので、ここ最近で指導のレベルでは買いたたきの執行が強化されたのかもしれませんが、もし、「納入量が年々減った」というくらいで指導しているとしたら、市場経済への露骨な介入です。

もしそんなことを本気でやっているとしたら、当事務所の長澤弁護士が同記事で、

「特に製造業は調達のグローバル化が進んでいる。下請法の厳格な運用を嫌って外資系企業が発注を減らしたり、国内の大企業が海外調達を加速したりすれば元も子もない」

とコメントしているとおりの懸念が生じるでしょう。

これは予想ですが、納入量が「年々減った」場合に勧告までいくのは、ちょっと考えられなくて、今後もせいぜい指導どまりだと思います。

過去の事例でも買いたたきで勧告になったのは、かなり特殊な事例です。納入量(納入金額ではありません)が「年々減った」くらいで据え置きが買いたたきで勧告になるとはとうてい思えません。

そもそも買いたたきの指導の中には、明らかに違法となるようなものはほとんどないと想像されますが、そのような、明らかに違法とはいえないような指導に対してどのような対応をとるかは、それぞれの親事業者の考え方次第だと思います。

ただ、親事業者の側も、そういう指導もありうることを想定して、発注量が減っても据え置くことの正当性を裏付ける資料を準備しておいたほうがよいかもしれません。

それと、公取委も、独立行政委員会なのですから、あまり政府の意向で運用方針を大きく変えるのはいかがなものかと思います。

公取委が独立行政委員会であるのは、政府からの独立性を保つためなのではなかったのでしょうか。

べつに今の日本で競争政策が政府から独立していなければならないとは思いませんが、委員会方式は、

意思決定が遅くなるとか、

大臣庁の大臣にくらべて委員長がリーダーシップを取りにくいとか、

委員のポストが財務省の天下り先になるとか、

いろいろデメリットもあるわけで、政府べったりの組織なら独立行政委員会である必要はないのではないかという気がします。

2016年8月24日 (水)

「MFNは競合への価格を上げる」という議論について

最恵国待遇条項(MFN)が反競争的だという議論としてありうるものとして、

「MFNは、MFN義務を負うサプライヤーの他の買手(=MFNで守られた買手以外の買手)に対する販売価格を引き上げるように拘束するものだ」

という議論が考えられます。

しかし、このような議論は、経済学的発想のないナイーブな法律家が犯してしまいがちな、間違った(控え目にいって不正確な)議論だと思います。

このような議論が想定しているのは、

「自分には、他社に対するのより安く売れ」

というのは、裏返せば、

「他社には、自分に対するのより安く売れ」

ということなのであるから、MFN義務を負うサプライヤーの他社に対する販売価格の拘束である、あるいは、ライバル費用の引上げである、ということなのだろうと考えられます。

しかしまず、そのような言葉遊びで独禁法違反かどうかが決まるはずがありません。

次に、ある合意(MFNなど)が反競争性を有するのかどうかについては、当該合意がある場合とない場合を比べて、ある場合のほうが、ない場合よりも、競争が制限されることが必要です。

いわば、ない場合をベンチマークにして、ある場合の反競争性を判断しなければならない、ということです。

ここで参考になるのが、

Steven C. Salop, Practices that (Credibly) Facilitate Oligopoly Co-ordination

の脚注20で言われていることです。

(この論文はMFNの協調促進効果についての先駆的な経済学の論考ですが、MFNの排除効果を考える上でもなかなか示唆に富むものがあります。)

同脚注では、

It should be noted that buyers who are well informed about the prices paid by other buyers may induce a de facto, if not explicit, MFN policy.

他の買手が支払う価格をよく知っている買手は、明示的なものではなくても、事実上のMFNポリシーを導入するかもしれない。

とされています。

つまり、競合他社の購入価格がわかるのであれば買手の価格交渉力が増し、事前にMFNを定めていなくても、個別交渉で競合他社の購入価格までの引き下げを要求し、それに応じない場合には取引を拒絶する、という価格交渉方針を採用することによって、事実上MFNポリシーを採用したのと同じこととすることができる、ということです。

このような事実上のMFNポリシーを禁止するということは、値引き交渉を禁止するのと紙一重ですから、独禁法上は慎重でなければならないでしょう。

次に、論理的に考えると、そもそもMFN条項が競合への販売価格を上げることを約束させるものだという理屈自体がおかしいです。

というのは、MFN条項が禁止するのは、

「MFN義務を負うサプライヤーが、他の顧客に対してMFNで保護される顧客に対して販売するのよりも安く販売すること」(選択的値下げ、selective price cut)

だけであって、

「MFN義務を負うサプライヤーが、MFNで保護される顧客に対しても、それ以外の顧客に対しても、同じように安く売ること」(一律値下げ、general price cut)

は、何ら禁止されていないのです。

つまり、MFNは、一部の顧客に対する選択的値下げ(一種の差別対価)は禁止するものの、全部の顧客に対する一律の値引きは禁止しないのです。

(ちょっと理屈としては遠いですが(しかも差別対価の何が問題なのかがわかっていればあまり説得力のない議論だということもわかるのですが)、日本の独禁法では、差別対価が不当な取引制限として禁止されていることからすると、差別対価ではなく同一の価格設定を求めることになるMFNは、むしろ差別対価を是正するものである、という議論も、独禁法の素人に対しては、それなりに受けがいいかもしれません。)

これに対する反論として、

「一律値引きは禁止されないとはいっても、実際には、一律値引きしか許されない場合には選択的値引きが許される場合に比べて売手の値引きのインセンティブが阻害されるのではないか」

という議論があるかもしれませんが、確かにMFNにそのような要素がありうることがあるとしても、そのような要素が競争に与える影響というのは通常限定的であると思われます。

つまり、大きな流れでいえば、売手が値下げをしようとするかどうかは、そのライバルたちの価格設定で決まるわけです。

価格は市場で決まる、という、当たり前のことです。

したがって、売手の市場で活発な競争が行われている限りは、そのような活発な競争が価格に与える影響がきわめて大きいのであって、MFNが競争(売手の価格設定)に与える影響というのは、通常わずかであるわけです。

MFNだけを取り出してみれば、「MFNはライバルへの価格を上げる合意だ」という短絡的な発想が出てくるわけですが、MFNの競争に与える影響を評価する上では、当然、市場競争全体の中でMFNがどのような効果を有するのかを評価しなければなりません。

このことは、独禁法の解釈上当然であるとともに、きわめて重要なことだと思います。

こういう、競争の枠組みの中で反競争性を評価するという発想がないと、規制当局の目から見てちょっと風変わりな(そしてしばしば、事業者の立場からすれば革新的な)契約形態が出てきたらすぐに「人為的な拘束だ」という発想になりがちで、非常に危ういと思います。

なおMFNの協調促進効果の文脈で、選択的値下げは一律値下げよりもライバルに発覚しにくい(発覚までのタイムラグが長い)ので、ライバルが相互に高価格を設定するナッシュ均衡は、(例えばMFNがあるため)一律値下げのみが行われる場合には維持されるが、選択的値下げが可能な場合には崩壊する、という議論があります(前掲Salop論文p277)。

もし一律値下げと選択的値下げの効果の違いがこのdetection lagだとすると、detection lagの差がなさそうな市場、たとえば価格の透明性が高い市場では、MFNのために一律値下げのみが行われるケースと、MFNがないため選択的値下げが行われるケースとで、均衡価格は大差なさそう、ということもいえそうです。(このことが排除効果にどのような意味を持つのかについては、さらに検討を要します。)

なお、遡及的MFN(retroactive MFN)の場合には、全顧客に対する値引きであっても抑止する効果があるので、反競争性が相対的に強いとされています(前掲Salop論文p276)。

これに対して非遡及的MFN、あるいは同時的MFN(contemporaneous MFN)の場合には、選択的値引きを抑制するだけなので、反競争性(協調促進効果)は相対的に小さいのです(前掲Salop論文p276)。

また、「ライバルへの販売価格を上げる」という点にMFNの排除効果を見出そうとする場合には、排他条件付取引とのバランスを考える必要があります。

つまり、排他条件付取引は、いわば、

「ライバルに対しては無限大(∞)の価格で販売しなければならない」

という拘束なわけですから、それに比べればMFNなんていうのは、

「ライバルに対しては、自分に対してと同等以上の価格で販売しなければならない」

というだけのことですから、はるかに生ぬるいわけです。

そうすると、排他条件付取引のセーフハーバーが日本では市場シェア20%、国際的には30%であることをふまえるならば、MFNのセーフハーバーはもっと高いところにあってしかるべきということです。

また、MFNは(品質やサービスや供給量ではなく)価格という重要な競争手段(?)に関する拘束なので違法性が強い、という議論(そのような議論は聞いたことすらありませんが)にも、説得力はありません。

まず日本では、垂直制限を価格拘束と非価格拘束とに分けて、価格拘束は当然違法に限りなく近い原則違法、非価格拘束は限りなく当然合法に近い合理の原則、ですが、それは、取引相手方が競争的に行動すること(典型的には、値下げ)を妨げる方向での合意であることが当然の前提になっているはずです。

これに対してMFNは、自分に対しては安く売ってほしいという、いわば競争過程そのものの合意なわけですから、通常の価格/非価格の二分論が適用できないことは明らかです。

また、MFNが「ライバルには高く売ってほしい」という合意ではないことは前述のとおりです(一律値下げは禁止されないので)。

以上のようにいろいろと考えると、

「MFNは競争者への価格を上げる拘束なので違法」

という議論は間違いであり、

「MFNは(非価格ではなく)価格の拘束なので違法性が強い」

という議論も間違いです。

さらに、排他条件付取引よりもはるかに生ぬるい排除効果しかないことも明らかであり、これが何を意味するのかというと、たとえば市場シェア6割くらいの事業者が排他条件付取引を行えば確かに違法の可能性が高いけれど、同じシェアでもMFNなら問題ないことも、具体的な市場の競争状況次第では十分にありうる、ということです。

このように、MFNの排除効果を認定するためには、経済学の視点に基づいて非常に緻密な競争分析を行う必要があり、経済学の素養のない純粋法学系の人たちが論理の言葉遊びだけで(あるいは行為の外形だけで)違法、適法を判断するのは無理なんだろうなと思います。

2016年8月19日 (金)

アマゾンへの立入検査について

公正取引委員会が8月8日(月)、アマゾンに立入検査に入りました。

(いきなり余談ですが、月曜日に立入検査することもあるんですね。通常は火曜日あたりが多いみたいです。)

アマゾンがマーケットプレイスの出品者に、競合サイトへの出品よりも安く出品すること(最恵国待遇、MFN)を義務付けていることが、拘束条件付取引に該当すると判断されているようです。

たとえば朝日新聞の記事では、

「公取委は、アマゾンジャパンが日本の取引先との契約で、ライバル社に自社よりも安い値段で出品する際はアマゾンに通知する▽最低でもライバル社と同じ価格でアマゾンに出品する――などの条項を付けていたとみている模様だ。」

と報じられています。

MFNには反競争的な側面があることは以前から指摘されていますが、私は、このアマゾンの事件を違反にするのはかなり難しいのではないかとみています。

まず、MFNには協調促進効果があるといわれていますが(MFN義務を負ったサプライヤーが、他の顧客への値引きのインセンティブを失うため)、今回の公取委が目を付けたのはおそらくそこではないと思われます。

もし協調促進効果を問題にするなら、

①楽天やヤフーもMFNを採用していること、または、

②アマゾンが圧倒的なシェア(少なくとも過半数)を握っていること、

が必要(あるいは控えめにいって極めて重要な要素)であると思われるところ(しかも①なら楽天やヤフーも違反者)、今回そういう話ではさそうだからです。

それに、仮に各社単独で(合意なく)MFNを採用した場合、協調促進効果を理由に日本の拘束条件付取引に該当するというのは相当無理があります(あるいは、すくなくともこれまでの公正競争阻害性の考え方を大きく変える必要があります)。

そこで競争者(楽天やヤフー)を排除する効果が問題視されているのではないかと想像されます。

しかし、MFNに排除効果が認められるためには、けっこうきつい条件が必要です。

たとえば、以前ご紹介した、

本多航・和久井理子「最恵待遇条項(MFN条項)と独禁法」(立教大学大学院法学研究 47巻1号56頁, 2015年)

では、どのような場合に排除効果が認められやすいのかについて、

①競争者(楽天など)に対するよりも有利な条件を要求する場合(追加優遇型MFN)、

②ライバルが品質は劣るが安い価格で原材料を調達し品質は劣るが安い商品を供給する戦略の場合、

③MFNが市場で相当のシェアを占める売手に対して課されている必要がある、

④MFN対象取引が、MFN義務を負う売手にとって相当の重要性を占めていると悪影響が生じやすい、

⑤MFNで保護される買手が、市場で相当の地位を占めている場合に悪影響が生じやすい、

⑥遡及型MFNは排除効果が大きい、

と整理されています。

まず、今回のアマゾンのケースは追加優遇型ではなさそうなので、①は該当しません。

ヤフーが出店料を無料にしていることなどを考えると、出品者の正味での受取価格(=販売価格-出品料)は、むしろヤフーに出品する場合のほうが出品者に有利(MFNのために出品価格が同価格なら、出品者はヤフーに出品したほうが有利)なんではないか、という気すらします。

②の、いわばライバルの差別化戦略は、重要な要素で、アメリカで相当数の先例がある医療保険の分野でもおそらく重視されている要素ですが、おそらくネット販売の分野では成り立ちにくいと思います。

というのは、医療保険の分野では、新規参入者は、保険のカバー範囲や保険適用対象病院数では劣るけれども安い保険料で参入する、ということがありそうですが、ネット販売では、品揃えを絞ったからといって価格を下げられるとは思えず、そのような戦略を採る参入者はそもそもいなさそうに思われる(そもそもそのような戦略の参入者がいないので、MFNで排除効果が生じることもない)からです。

ちょっとわき道にそれますが、医療保険ではカバーする範囲や適用対象病院数というのは、かなり重要な競争の要素だと思います。

むかし、「保険の窓口」で生命保険の契約をしたときに、がん保険を勧められました。

(ちなみに「保険の窓口」は、複数社の保険を公平な立場で比較して勧めてくれて、特定の保険会社のものを推奨するということもなかったので、非常に説得力のある説明でした。)

営業の方によると、「今考えられる中で最良のがん保険だと思います」ということだったのですが、私がまっさきに気になったのは、

「適用される病院数が少ないなあ」

ということでした。その保険は、特定の病院で治療を受けた場合にしか保険金が出ない商品だったのです。

営業の方によると、「これからまだまだ増えるはずである」ということでしたが、それでも、具体名は忘れましたが、慶応病院とか虎の門病院とか、メジャーどころが入っていなかったような気がします。それで、その保険には入らないことにしました。

ガンの治療ともなれば命がかかっているわけで、そこで、良い先生がいるけれどその病院は保険でカバーされていない、というのでは、いったい何のための保険なのか、という気がしたわけです。

しかも、自分が将来ガンになったときに、良い先生がどの病院に在籍しているかなんてわからないわけで、そうすると、ほとんどすべての病院が対象になっているくらいでないと、怖くってその保険は買えないわけです。

このように、医療保険の分野では、どれだけたくさんの病院がカバーされるのかというのがきわめて重要な競争上の要素なのではなないかと思います。

Anthony J. Dennis, Most Favored Nation Contract Clauses under the Antitrust Laws, 20 U. Dayton L. Rev. 821 1994-1995

という論文p832によれば、

Ocean State Physicians Health Plan, Inc. v. Blue Cross & Blue Shield of Rhode Island, 883 F.2d 1101 (1st Cir. 1989)

では、被告Blue Crossが採用したMFNのために、原告Ocean Stateと契約していた1200人の医師のうち350人が、原告Ocean Stateとの契約を解除した、とされていますが、前記のがん保険の例が示すように、医療保険の分野では、それだけの医師が離脱すれば原告にとってけっこうな痛手だったのではないかと想像されます。

なので、MFNの排除効果に納得感があります。

これに対してアマゾンのケースは、どうなんでしょうか。

品揃えはもちろん重要かもしれませんが、ネットショッピングのユーザーは複数のプラットフォーム間をクリック一つで行ったり来たりできるので(二面市場やプラットフォームの議論でいわれる、いわゆるマルチ・ホーミング)、新規参入者は多少品揃えに劣っても価格でマッチするとか、いろいろ対抗手段はありそうです。

これに対して、雇用主が従業員のために複数の医療保険会社と契約するということは、あるのかもしれませんが、あまり考えにくいように思います。

あるいは、雇用主が条件のちがいで毎年複数の医療保険会社の間を行ったり来たりするということも考えにくい(スイッチングコストが高い)と思われます。

しかも、Blue Crossとちがって、アマゾンは圧倒的なシェアを持っているわけでもないですから、アマゾンのMFNによって出品者が楽天との契約を解除するということも、考えにくいでしょう。

なお、MFNの排除効果については、

「ある商品の小売市場への新規参入を計画する事業者がおり、その事業者は、その商品を供給者から安価で仕入れて、需要者に安価で販売するというビジネスを予定していたとする。

このような事案において、その商品の供給者と既存の小売業者との間の売買契約で、既存の小売業者が供給者から商品代金について最恵国待遇を受ける旨が規定されていた場合、供給者としては、既存小売業者の卸売価格への影響を避けるため、参入希望者への安価での卸売りを拒絶することが想定される。

その結果、参入希望者の小売市場への参入が阻止される結果となる可能性がある。」

と説明されることがありますが(中野清登「最恵国待遇条項が競争に与える影響」(ビジネスロージャーナル2015年11月号72頁、74頁)、このような説明は一見わかりやすいですが、これを額面どおり受け取るのは危険です。

というのは、これだと、既存業者は、安価で参入する参入者を手をこまねいて見ていなければならない(受入れ戦略(accommodation)を強いられる)ということになりかねないからです。

もちろん、既存業者としても、新規参入プラットフォームで同じ出品者が自分のところよりも安く出品していたら、「うちでも安く出してください」といえてしかるべきです。

やはりMFNの反競争性は、既存業者と差別化を図る新規参入者が排除されるという面を考えないと説明できないように思われます。

さらに、個別の値下げ交渉と事前のコミットメント(MFN)で、反競争性にどのような影響がおよぶのか(究極的には、売手の価格と供給量の決定にどのような影響を及ぼすのか)を考える必要があります。

そうでないと、「競争者に対するのと同じ値下げを要求したらアウト」みたいな、競争自体を否定する、とんでもない議論になりかねません。

さて本論に戻って、次に、

③MFNが市場で相当のシェアを占める売手に対して課されている必要がある、

という点ですが、これもどうなんでしょうね。

たしかに、個人が日常的に買う物のほとんどがアマゾンで手に入りますから、商品単位(メーカー単位)でみれば相当のシェアを占める売手にMFN義務がかされているのかもしれませんが、マーケットプレイスの出品者は基本的に小売店のように思われ、そうすると、日本中の小売店のうちの相当のシェアを占める売手に対してMFNが課されているのかというと、そんなこともないような気がします。

これに関連して、そもそも本件で市場をどう画定するのか(小売全般か、インターネット小売か)は、大きな問題です。

私は、ネット販売だけで市場を画定するのは無理なんじゃないかと思っています。

常識的に、ネットと路面店は競合しているでしょうし、SSNIPテストを行えば、当然、ネットも路面店も同じ市場になるのではないでしょうか。

(ただ、企業結合以外の分野では、公取委の市場画定は「気分」で判断しているようなところがあるので、このあたり公取委がどう考えているかは、よくわかりません。)

これと関連して、順番は変わりますが、

⑤MFNで保護される買手が、市場で相当の地位を占めている場合に悪影響が生じやすい、

についてみてみると、仮にネット販売だけで市場が画定されるとしても、ある統計によれば、

「2013年の大手EC事業者によるBtoC市場規模は約4兆円(全体では11兆円

出典1 東洋経済

・楽天市場 約1.8兆円

・Amazon 約1.4兆円

・ヤフー!ショッピング 0.32兆円

出典2 「インターネット通販TOP100 調査報告書2014」 p.15

・楽天市場 1.73兆円

・Amazon.co.jp 1.1兆円程度

・ヤフー!ショッピング 0.31兆円

ということなので、アマゾンのシェアは10%(≒1.1兆円÷11兆円)くらい、仮に「大手EC事業者」だけに絞っても(さすがに市場画定として無理がありますが・・・)、28%(≒1.1兆円÷4兆円)にとどまります。

ただ、アマゾンと楽天はビジネスモデルがちがうので売上を比べるのは無意味という見方もありますし、直販とマーケットプレイスの関係もよくわかりません。

ともあれ、単純化すれば、アマゾンのシェアはそんなに高くなさそうです(とくに小売業全体で見た場合)。

欧州の垂直制限規則では、垂直制限のセーフハーバーは30%です。

米国ではむかし、DOJの高官が、MFNのセーフハーバーは35%だと言ったそうです(前記Dennis論文の844頁)。

日本でも最近、流通取引慣行ガイドラインが改正されて、垂直制限(の一般ではないですが)のセーフハーバーが、20%に引き上げられました。

こうしてみると、日本のアマゾンは、海外ではセーフハーバーで救われるくらいのシェアしかない、ということになりそうです。

と、みていくと、どうもアマゾンが「市場で相当の地位を占めている」というのも、いいにくいんじゃないかという気がします。(とくに、「市場」を、小売業全体ととらえた場合。)

1つ戻って、

④MFN対象取引が、MFN義務を負う売手にとって相当の重要性を占めていると悪影響が生じやすい、

についても、そこまでアマゾンに依存しているメーカーや流通業者って、どれくらいいるのでしょうね。

少なくとも、Blue Crossのケースでは、お医者さんは、Blue Crossと契約しないと話にならない(日本でいえば保険指定が取り消されたも同然、といえば言い過ぎでしょうか)、というのと比べると、ぜんぜん違うような気がします。

最後の、

⑥遡及型MFN

は、アマゾンのケースは該当しなさそうです。

家電製品が典型ですが、そもそも消費財は値崩れが激しいものが多いですから、遡及型MFNなんて、合理性がありません。

以上の各要素のほかに考えられる要素としては、参入障壁とか、スイッチングコストとかが考えられます。

私の感覚では、ネット販売なんていうのは参入障壁もスイッチングコストも低いビジネスの最たるものではないかという気がするのですが、この点については、

Martha Samuelson, etc., Assessing the Effects of Most-Favored Nation Clauses, ABA Section of Antitrust Law Spring Meeting 2012

で、プラットフォームビジネスはネットワーク外部性などのために参入障壁が高くなりがちで、使い慣れやブランドロイヤルティからスイッチングコストも高い、という評価がなされており、そういわれればそうかなぁという気もします。

(ちなみにこの論文は、プラットフォームビジネスではMFNの効果はプラスにもマイナスにも倍増される、ということをいっており、なかなか興味深いものがあります。)

いずれにせよ、このあたりはまさに市場の競争状況を具体的にみないとわからないので、門外漢にはなんともいえません。

以上はMFNの排除効果の議論ですが、効率性も検討する必要があります。

よくいわれるのは、MFNはいちいち価格交渉をする手間(取引費用)を省く、ということです。

これは、アマゾンのような、きわめて多数の商品を扱っているビジネスの場合には、非常に大きなメリットのように思われます。

もしMFNがないと、アマゾンは膨大な数の商品をモニターしなければならず、モニターするだけでも大変なのに(モニターは、ひょっとしたら、なんとかボット、みたいなソフトウェアで自動的にできるのかもしれませんが)、そのあと、個別に交渉するなんてことを考えると、気が遠くなりそうです。

それから、マーケットプレイスへの出品価格については、それがダイレクトな小売価格なので、消費者の選択に与える影響が極めて大きく、そのため、プラットフォームとしては、価格をマッチさせる必要性がきわめて大きいといえます。

(もし通常の、メーカーから小売店への売買のようなものだったら、卸価格が即小売価格になるわけではないので、卸価格をマッチさせる必要はそれほど高くないかもしれません。)

これも、マーケットプレイスではとくにMFNの必要性が高い事情といえます。

さらに、フリーライドの問題もあります。

たとえば、楽天トラベルでめぼしいホテルに当たりを付けて、直接そのホテルに電話したほうが安く泊まれる、なんてことになったら、だれも楽天トラベルを通じて予約しなくなるでしょう。

もしアマゾンのマーケットプレイスでも、マーケットプレイスでめぼしい商品を探して、メーカー直販サイトやその小売店の直営サイトでもっと安い値段で買えるとしたら、同じように、フリーライドの問題が生じます。

MFNは、このフリーライドの問題を軽減できます。(ただ個人的には、何でもかんでもフリーライドと言いたがる論者には、私は懐疑的ですが。)

それから、じゃっかん前述と重複しますが、やはりMFNの反競争性を考えるためには、プラットフォーム間の競争がどの程度活発か(活発であれば、MFNの反競争性は表れにくい)、川下市場での競争は活発か(活発なら、仮に川上で排除が生じても、川下の競争のために、プラットフォームは独占利潤を得てもそれを消費者に還元せざるを得なくなる)、といったことも考える必要があります。

私は別にインターネット販売業界の専門家でもないですが、それでも、常識的に想像される競争環境からほんの上っ面をなめただけでも、これくらい、アマゾンのMFNには反競争効果がなさそうな事情が、ごろごろ出てくるわけです。

というか、すべての考慮要素が、アマゾンのMFNに反競争性のないこと、および、効率性が高いこと、を強く示しているように思えてなりません。

公取委は立入検査までしたのですから、それなりの根拠を持ってやっているのだと想像されますが、成り行きに注目したいと思います。

ただ、優越的地位の濫用ではないのですから、間違っても、

「出品者の価格決定の自由を侵害した」

とか、

「MFNの受け入れを余儀なくさせた」

とかいったような、昭和40年代に戻ったような恥ずかしい議論はしないでもらいたいと思います。

2016年8月 9日 (火)

最恵国待遇条項(MFN)と流通取引慣行ガイドライン

最恵国待遇条項が流通取引慣行ガイドライン第1部第6-1(対抗的価格設定による競争者との取引の制限)に該当するという見解があるようですが、間違いです。

山本一郎(個人投資家・ブロガー)「アマゾン(amazon)が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会に突入される」

流通取引慣行ガイドラインをみてみましょう。

該当箇所は、

「(2) 市場における有力な事業者が、

継続的な取引関係にある取引の相手方に対し、

その取引関係を維持するための手段として、

〔①〕自己の競争者から取引の申込みを受けたときには必ずその内容を自己に通知し、

〔②〕自己が対抗的に販売価格を当該競争者の提示する価格と同一の価格又はこれよりも有利な価格に引き下げれば、相手方は当該競争者とは取引しないこと又は自己との従来の取引数量を維持すること

を約束させて取引し、

これによって当該競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には、

当該行為は不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))。」

というものです。

たとえば市場における有力な事業者をA社、A社に商品を供給している取引相手方をB社、A社の競合をR社とすると、ここで言っているのは、次のようなことです。

(なおガイドラインは、価格を「引き下げ」ることが、B社にとって有利だ、ということなので、A社が売主、B社が買主という想定ですが、以下では、上記意見が言及するアマゾンの場合に合わせて、A社を買主、B社を売主と、逆にしています。よって、買取価格を引き上げることが、売主B社にとって有利となります。

また報道によれば、実際の事件ではマーケットプレイスへの出品価格が問題になっているようですが、MFNの反競争性を語る上では売買でもマーケットプレイスでもおおむね同じなので(あるいは、マーケットプレイスの価格の拘束の方が、顧客価格にダイレクトに響くので、売買より反競争性がむしろみとめられない)、ここでは上記「意見」の議論の流れに乗せて売買として説明を進めます。)

ここでガイドラインがいっているのは、

「もしR社から、うち(=A社)よりも高く買い取るというオファーがあったら教えてね。

そしたら、うち(=A社)は、もっと高く買い取るからさ。

でも、うち(=A社)がもっと高く買い取ることにしたら、R社には売らないでね(あるいは、うちへの販売量は現状キープでお願いね)。」

ということです。

つまりこういうアレンジをすると、R社が商品を調達できなくなって困るんじゃないか、ということです。

(ちなみに、このガイドラインのシナリオにうまく乗るのは、供給者の数が限られている場合でしょう。いかにA社が巨大でも、極めて多数の供給者がいれば、全部高値で買い取ることは不可能で、R社は、A社と取引していない供給者からいくらでも商品調達できそうです。

もしA社が、多数の供給者の中からキラーコンテンツに絞ってこういうアレンジをしたら、R社は困るかもしれませんが、キラーコンテンツを有利な条件で囲い込もうというのは通常の競争であり、それ自体を独禁法違反というのは、かなり躊躇を覚えます。

せいぜい、行為者があまりにあこぎな手段を使った場合に、公取委お得意の「困った時の取引妨害」が出てくるくらいじゃないでしょうか。)

ここで、ガイドラインの事例とアマゾンのケースを比較してみましょう。

まず、ガイドラインの事例では、相手方B社に最も有利な価格を申し出ているのはA社のほうです。

この点で、最も有利な(安い)価格を自己(アマゾン)に対して提示するよう納入業者に求めた(と報じられている)アマゾンのケース(「最も有利な価格」を申し出(させられ)ているのはB社)と、まったく異なります。

次に、ガイドラインで問題視されているのは、前述のとおり、競合のR社が商品を調達できなくなることですが、最恵国待遇条項の問題点はそうではありません。

報道では、公取委は、アマゾンが納入業者の価格設定の自由を拘束したこと自体が問題なんだみたいな報じられ方がされていますが、いま一つよくわかりません。

MFNの反競争性については、機会があればそのうち書きますが、価格決定の自由の拘束自体が問題ではありません。

企業が有利な条件で調達するのはあたりまえだからです。

もし価格を下げさせること自体が独禁法違反なら、すべての値下げ交渉が独禁法違反になりかねません。

一般的にいわれているのは、シェアの大きな買手が納入業者にMFN義務を負わせると、納入業者が他の納入先(買手)に対して値下げをするインセンティブを失ってしまい価格が高止まりすることです。

しかし、そのような効果が出るためには拘束する側が相当なシェアがないと無理なはずであり、できるだけ有利な取引条件の獲得を目指す本来のMFNの競争促進的機能とのバランスで、微妙な判断となるわけです。

(ご興味のある方は、

Jonathan B. Baker, Vertical Restraints with Horizontal Consequences: Competitive Effects of "Most-Favored-Customer" Clauses, 64 Antitrust L.J. 517 1995-1996

をご覧ください。)

最後に、適用条文も違います。

ガイドラインの事例は、排他条件付取引がメインです(A社が、B社に、自己(=A社)とだけ取引させようとしている、あるいは、R社と取引させないようにしている)。

これに対して、アマゾンは、納入業者に対して、「楽天と取引するな」といっているわけでは決してありません。つまり、排他条件付取引の要素はまったくありません。

前記意見の執筆者は法律専門家ではないようですが、それを割り引いても、不正確な理解に基づいて、

「報じられている内容が事実だとするならば、ど真ん中の拘束条件付き取引で、独占禁止法で禁じられている内容です」

とか、

「ここまで教科書どおりの競争阻害行為をやらかすアマゾンはマジ確信犯じゃないかと思う」

というのは、いくらなんでもひどいと思います。

ネットにはこの手の不正確な情報が溢れていますし、みなさんそのつもりで読まれているのだとは思うのですが、紹介されているのもYahooというメジャーな媒体なので、あまり議論が混乱してもいけないと思い、あえて指摘させていただいた次第です。

なお、MFNについては、

本多航・和久井理子「最恵待遇条項(MFN条項)と独禁法」(立教大学大学院法学研究 47巻1号56頁, 2015年)

が、よくまとまっていると思います。ネットで入手可能です。

2016年8月 8日 (月)

村田園「万能茶」に対する措置命令について

平成28年3月10日に、株式会社村田園の「万能茶」という商品について、優良誤認表示で措置命令が出ています。

この事件は、原材料が日本産であるかのように表示したのに、実際には、その多くが外国産であった、というものです。

この事件の特徴的なのが、表示のどこにも「国産」と表示していないのに、国産であるように誤解される表示だったと消費者庁が認定したことです。

問題視された表示は、

①「阿蘇の大地の恵み」と記載(対象商品[1]ないし[4])

②日本の山里を思わせる風景のイラストの記載(対象商品[1]ないし[4])

③「どくだみ・柿の葉・とうきび・はと麦・甜てん茶ちゃ・くま笹・あまちゃづる・はぶ茶 甘かん草ぞう・大豆・田舎麦・桑の葉・枸杞くこ・ウーロン茎・びわの葉・浜茶」と記載(対象商品[1]及び[2])

④「どくだみ・柿の葉・とうきび・はと麦・くま笹・あまちゃづる・ゴール ドはぶ茶・甘かん草ぞう・大豆 甜てん茶ちゃ・田舎麦・桑の葉・浜茶・枸杞くこ・グァバ茶・霊れい芝し・びわの葉・極上プーアル茶・南天・かりん」と記載(対象商品[3])

というものです。

実際の措置命令を見てもらったほうがわかりやすいですが、①の「阿蘇の大地の恵み」というのは、どうやら登録商標であり、

「阿蘇の大地の恵み(R) 村田園 万能茶」

で、商品名を構成しているようにもみえます。

この「阿蘇の大地の恵み」という表示が阿蘇地方で栽培された原材料であるかのように誤解されると認定されたのでしょう。

私も「阿蘇の大地の恵み」という表示をみれば、阿蘇地方の大地で栽培されたものだと誤解すると思います。

さらに、同表示が、原材料と同一視野に見える形で表示されていることも、原材料が国産であるかのような誤解を招くとされたのでしょう。

挙げられている原材料も、「どくだみ」とか、「柿の葉」とか、いかにも和風の材料だったことも影響しているかもしれません。

もし原材料が、「ローズヒップ」とか、「オレンジピール」とか、「ブラックベリーリーフ」とかだったら、またちょっと違ったかもしれません。

これに対して、②の「日本の山里を思わせる風景のイラスト」というのは、それだけで原材料が国産と誤解させるというのはちょっと無理じゃないかという気もしますが、不当表示かどうかは表示の全体をみて判断すべきですし、このようなイメージ広告的なものにも消費者庁が積極果敢に執行していったことは、高く評価されるべきだと思います。

とくに健康食品の業界では、はっきりと表示しないイメージ的なものであれば景表法には違反しないという観点から、どうやって効果効能(本件では原産地)を明示せずにそれらしいイメージを消費者に植え付けるのかに腐心されているようです。

弁護士としてというよりも、一消費者として、このような不誠実な、消費者を愚弄した、利益至上主義のビジネスのやり方には、強い憤りを覚えます。

「はっきり効果効能を書きさえしなければ大丈夫だ」という誤った業界認識を正すものとして、本措置命令は非常に重要です。

本件は村田園が訴訟で争っているようです。

報道によれば、「国産とは明示していない」「電話で問い合わせを受ければ国産でないと回答していた」という主張だそうです。

打消し表示は本体表示と同一視野に見やすい形でしないといけないので、「電話で問い合わせを受ければ国産でないと回答していた」というのは景表法上は無意味ですが、「国産とは明示していない」というのは争点になるでしょう。

でも、「国産と明示しない限り国産ではない」、あるいはより強く、「国産と明示していない商品は外国産だ」と一般消費者が認識するかといえば、そんなことはないでしょう。

いかにも国産っぽい商品内容で、いかにも国産っぽい表示をしていれば、反対の表示がない限り、国産だと認識するはずです。

なので、村田園の主張は、

「一般消費者は、国産と明記していないのに国産と誤解することはない」

ということなのでしょうけれど、私の目には、

「国産と明記していないのに国産と誤解する消費者の方が悪い」

という主張にみえます。(前者なら景表法上まともな反論ですが、後者なら主張自体失当です。)

とかく事業者は、不当表示については消費者庁がどう考えるかばかりを気にしがちです(弁護士として相談を受けるのはこの点ばかりです)。

ですが、消費者庁に対してしようとしているその説明を、一般消費者に対して胸を張ってできるのか、胸に手を当てて考えてみるべきではないでしょうか。

事業者は、消費者庁のほうをみるのではなく、消費者のほうをみるべきです。

それで売れなくなるような商品なら、本来、市場競争の中で売れてはいけないのです。

消費者庁には、ぜひがんばってもらいたいと思います。

2016年8月 1日 (月)

ガンジャンピングについて

ガンジャンピング(gun jumping)というのは、企業結合期日前の共同行為のことで、結合実行前に当事者間で協調的な行動をとったり情報交換をしたりすることです。これが、独禁法違反になるのではないかが議論されています。

そもそも「ガンジャンピング」(和製英語でいえば、「フライング」)という言葉自体、ルール違反で失格、という意味合いを連想させますが、そういう意味では法務担当者の目を惹く、なかなかうまいネーミングとはいえそうです。

しかし、日本では、少なくとも企業結合規制で引っかからない(≒合算シェアの低い)大半の事案では、ガンジャンピングを気にする必要はありません。

そもそもガンジャンピングとして議論されているものには、実体法違反と手続法違反があります。

そのうち、実体法違反については、ガンジャンピングの実例がある米国では企業結合とカルテルの違法基準が異なることがポイントです。

つまり米国では、競争者間の共同行為は当然違法と判断されるのに対して、企業結合は競争の実質的制限があってはじめて違法と判断されます。

ここが日本と決定的に違うところです。

(細かいことをいえば、競争者間の共同行為でも、ジョイントベンチャーなどいわゆる非ハードコアカルテルは合理の原則で判断されますが、企業結合前の当事者間にはジョイントベンチャーのような事業活動の一体化がないので、当然違法で判断されるわけです。)

つまり米国では、たとえ合併交渉中であっても、合併が実現するまでは競争者としてふるまうことが要求されているわけです。

これに対して日本では、企業結合もカルテルも、違法性の基準は競争の実質的制限の一本です。

そこで、米国では、

市場シェアの小さい競争者間の合併の場合でも、合併前の共同行為が当然違法として違法とされることになる

のに対して、日本では、

合併自体に問題ない(競争の実質的制限が生じない)なら、その前の共同行為も問題ない(競争の実質的制限が生じない)、

ということになります。

なので日本では、企業結合として問題のないケース(つまり企業結合のほとんどすべての案件)では、ガンジャンピングで何をしても問題ない、ということになります。

次にガンジャンピングの手続面についても、アメリカと日本でかなり考え方が異なります。

アメリカでは、待機期間が満了するまでは、benefitial ownership(実質的に所有者としての利益を享受できる地位)を取得してはならないということになっていて、形式的な所有権譲渡さえなければかまわないというわけではありません。

実際アメリカでは、どう考えても競争制限効果のなさそうな、市場シェアの小さな当事者間の結合が、ガンジャンピングで差し止められたりしています。

これに対して日本では、あくまで法的に(形式的に)所有権譲渡がなされていたかどうかが重視され、そこに実質判断が入ってくることはあまり想定されていません。

そのことは、最近のキヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得が、「グレーだがクロとはいえない」ということで、結果的に不問に付されていることからもうかがえます(新聞報道では、次は刑事告発するそうですが)。

以上のことから、実体面でも手続面でも、日本では、企業結合審査で問題視されそうな事案(たとえば2次審査に行って一部条件が付きそうな案件など)をのぞいて、ガンジャンピングは気にする必要はない、ということになります。

さらにいえば、結合の実体面で問題がありそうな事案であっても何もできないわけではなく、結合前の共同行為(情報交換など)それ自体で競争の実質的制限が生じない限りは違法(カルテル)にはならないので、その意味でも、やろうと思えば相当なことができます。

おそらく公取委も、ガンジャンピングを積極的に取り締まろうという発想はないと思います(法律が違うのだから、当然といえば当然です)。

ガンジャンピングは一時期、一部の弁護士が大騒ぎしたので有名になってしまいましたが、大騒ぎされた論点が必ずしも重要な論点ではない、という例だと思います。

(なお、ガンジャンピングについては、白石忠志『独占禁止法(第2版)』324頁以下に、丁寧かつ正確にまとめられています。)

2016年7月21日 (木)

企業結合届出の脱法規制について

最近何かと注目を集めている企業結合の届出の脱法行為について、以下にまとめておきます。

独禁法17条では、

「何らの名義を以てするかを問わず、第九条から前条〔16条〕までの規定による禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。」

とされています。

いわゆる、脱法行為の禁止です。

ここで、「禁止」「制限」というのは、株式取得に関する10条を例に説明すれば、実体規定である1項の、

「会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはなら・・・ない。」

という規定のみならず、届出に関する規定である8項の、

「第二項の規定による届出を行つた会社は、届出受理の日から三十日を経過するまでは、当該届出に係る株式の取得をしてはならない。」

という規定も含むと読めますし、私も、文言どおり素直に、届出規制違反(手続違反)の脱法も17条でカバーされると考えるべきと思います。

問題は、これに対する制裁(エンフォースメント)です。

まず排除措置命令についてみてみると、企業結合に対する排除措置命令の規定である17条の2第1項では、

「第十条第一項、第十一条第一項、第十五条第一項、第十五条の二第一項、第十五条の三第一項、第十六条第一項又は前条〔17条〕の規定に違反する行為があるときは、

公正取引委員会は、・・・

事業者に対し、株式の全部又は一部の処分、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。」

とされています。

これをみると、10条(株式取得)、11条(銀行・保険会社の議決権制限)、15条(合併)、15条の2(分割)、15条の3(共同株式移転)、16条(事業譲受)については、それぞれ1項、つまり、実体規定違反のみが排除措置命令の対象となる(手続規定は対象とならない)ことが、文言上明らかです。

これに対して、17条については、

前条〔17条〕の規定に違反する行為」

とされているだけで、実体規定の脱法か、手続規定の脱法かをとわず、排除措置命令の対象となるようにも読めます。

ところが17条の2では、出せる命令の具体例として、

「株式の全部又は一部の処分、事業の一部の譲渡」

を挙げており、実体規定違反を想定しているように読めます。

というのは、手続違反の株式取得という「行為を排除するために必要な措置」とは、手続を履践させること、と考えるのが素直であり、手続違反があったから株式や事業の譲渡を命じるのは、異論もあるかもしれませんが、筋が違うと思われるからです。

実際、根岸『注釈独占禁止法』p330では、17条の2の説明において、

「〔17条の2〕1項は、会社が、株式保有、合併、会社の分割、事業の譲受け等およびそれらの脱法行為が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合・・・に、会社を含む『事業者に対し』て違反行為の排除措置を命じる。」

と解説されており、脱法行為に関して排除措置命令を出せるのは競争の実質的制限がある場合、つまり実体規定違反の場合、に限られる、と読めます。

白石忠志『独占禁止法(第2版)』p362でも、17条の解説として、

「それらの〔企業結合規制と事業支配力過度集中の〕各条文における行為要件が形式的に過ぎる場合に、間隙を埋める機能を提供する。それに対し、弊害要件は、もともと抽象的概念であって柔軟に解釈できるのであるから、その外延のすぐ外にあるものを拾うことは許されないであろう。」

と、「行為要件が形式的に過ぎる場合に、間隙を埋める」のが17条であると説明されており、17条が実体規定の脱法規定であることを前提にしています。

また17条の2の文言上も、

「違反する行為があるときは」

と、現在形で書かれており、たとえば待機期間経過前に取得者の事実上の支配の及ぶ第三者に株式を移転して代金を決済してしまうというようなことをしても、それは待機期間経過前に違反していた(違反状態にあった)だけであって、待機期間経過後は違反する行為が「ある」とはいえない(せいぜい、「あった」にすぎない)のではないか、ということも問題になりそうですし、

「違反する行為を排除するために必要な措置」

という文言も、待機期間中の脱法的クロージングについては、何を「排除」するのかよくわからない、ということも問題になりそうです。

以上のような文言解釈もさりながら、

10条から16条までの具体的な規定については実体規定違反に対してのみ排除措置命令が出せるに過ぎないのに、これらの脱法規定である17条でだけ手続的脱法でも排除措置命令を出せるとしたら、あまりにアンバランスだ、

という議論も、至極もっともに思われます。

というわけで、現行法上は、待機期間経過前の脱法的クロージングは、17条の規定(禁止規定)には違反するものの、17条の2により排除措置命令を出すことはできない、という、いかにも中途半端なことになります。

次に、刑事罰について考えてみます。

まず、まったく届け出をせずに株式取得等を実行した場合には、10条2項違反となり、91条の2第3号で、200万円以下の罰金に処せられます。

また、届出は一応したけれども、待機期間中に株式取得をした場合(10条8項違反)にも、同じく、200万円以下の罰金が科されます(91条の2第4号)。

しかし、株式取得等についての脱法(17条違反)については、刑罰は、銀行・保険会社の株式保有制限(11条)の脱法をのぞき、ありません。

(17条違反の刑罰については、銀行・保険会社の株式保有制限(11条)の脱法に限り、1年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられるだけです(91条)。

ちなみに、平成21年改正(法律第51号)前の、株式取得が事後報告の時代だった91条〔企業結合規制違反の罪〕は、

「第九十一条

次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

一 第十条第一項前段〔競争を実質的に制限する株式取得の禁止。なお後段は不公正な取引方法による株式取得の禁止〕の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者

二 第十一条第一項〔銀行・保険会社による議決権保有の規制〕の規定に違反して株式を取得し、若しくは所有し、又は同条第二項の規定に違反して株式を所有した者

三 第十三条第一項〔役員兼任の規制〕の規定に違反して役員の地位を兼ねた者

四 第十四条前段〔会社以外の者による株式保有の規制〕の規定に違反して株式を取得し、又は所有した者

五 前各号に掲げる規定による禁止又は制限につき第十七条の規定に違反した者

となっており、脱法(旧91条5号)については、

株式取得の実体規定(91条1号)

銀行・保険会社の株式保有(91条2号)

役員兼任(91条3号)、および、

会社以外の株式取得の実体規定(不公正な取引方法による取得の部分はのぞく。91条4号)、

の違反の脱法が、刑罰の対象となっていました。

つまり今回のテーマとの関係では、競争を実質的に制限する株式取得が1年以下の懲役または200万円以下の罰金の対象でした。

これに対して、株式取得が事前届出となった平成21年改正後の91条〔銀行・保険会社の議決権保有の制限違反等の罪〕は、

第九十一条    

第十一条第一項の規定に違反して株式を取得し、若しくは所有し、若しくは同条第二項の規定に違反して株式を所有した者

又は

これらの規定による禁止若しくは制限につき第十七条の規定に違反した者

は、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

というふうに、

銀行・保険会社の株式保有(旧91条2号)

とその脱法だけが、残ったわけです。)

つまり今回のテーマとの関係では、仮に17条に手続規定(10条2項や8項)の脱法が含まれるとしても、そもそも17条違反に刑罰がないので、結局、手続違反の脱法については刑事罰は課せられないのではないか、ということが問題になります。

しかし、これは、そもそも17条とは何なのか、という問題と、罪刑法定主義との関係から考える必要があります。

つまり、17条がなければ脱法は処罰されないのか、あるいは、排除措置命令の対象とならないのか、という問題です。

これについては、17条がなくても、脱法は刑事罰で処罰されるし、排除措置命令の対象にもなる、と考えるのが、普通の法律家の感覚ではないかと思います。

脱法を禁じるためにいちいち脱法禁止規定を置かないといけないとしたら、世の中の法律すべてに脱法禁止規定が必要になってしまうでしょう。

実際には、明文で脱法禁止規定がなくても、解釈で妥当な結論を図っているのだと思います。

刑事罰を科す場合には罪刑法定主義の問題がありますが、電気窃盗事件(電気が「財物」に該当するとした判例)をみてもわかるように、程度問題です。

キヤノン株式会社による東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得についての公取委のプレスリリースでは、

「しかしながら,キヤノンは届出の前に,東芝メディカルの普通株式を目的とする新株予約権等を取得し,その対価として,実質的には普通株式の対価に相当する額を株式会社東芝(法人番号2010401044997)(以下「東芝」という。)に支払うとともに,キヤノンが新株予約権を行使するまでの間,キヤノン及び東芝以外の第三者が東芝メディカルの議決権付株式を保有することとなった。」

ということで、そもそも届出をする前に、「第三者」に株式を譲渡していたようです。

これに対して同プレスリリースでは、

「これら一連の行為は,独占禁止法に基づく企業結合審査において承認を得ることを条件として最終的にキヤノンが東芝メディカルの株式を取得することとなることを前提としたスキームの一部を構成し,上記第三者を通じてキヤノンと東芝メディカルとの間に一定の結合関係が形成されるおそれを生じさせるものである。」

「公正取引委員会は,これら一連の行為が,キヤノンが当委員会への届出を行う前になされたことは事前届出制度の趣旨を逸脱し,独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから,今後,このような行為を行わないよう,キヤノンに対して注意を行うとともに,上記スキームの実行に関与していた東芝に対して,今後,事前届出制度の趣旨を逸脱するような行為に関与することのないよう申入れを行った。」

とされており、10条2項の脱法が問題視されていたことがわかります。

ただ前述のように、手続違反については、手続違反そのもの(10条2項)違反であれ、脱法規定(17条)違反であれ、17条の2で排除措置命令を出すのは難しそうです。

(前述のように、そもそも通説的見解は、17条は実体規定の脱法であって、手続規定の脱法には適用されないと考えているようですし、そうであればなおさらです。)

日経新聞の記事では、

「公取委の品川武企業結合課長は会見で「前例のない事案で違反に問えないが問題がある行為」として「黒でないがグレー。こうしたチャレンジはやめてほしい」と話した。

今後同じ手法で企業買収する際、事前届け出がなければ刑事告発する。」

と報じられているのも、17条の規定なしで、手続の脱法については、直接、91条の2第3号(10条2項違反の不届出の罪)、または、同条4号(10条8項の待機期間中の株式取得禁止の違反の罪)で、罪に問えるという認識であると考えられます。

ただ、以上の議論に対しては、

手続規定の脱法については、91条が、11条2項(銀行・保険会社の株式取得の認可)の違反の脱法だけについて刑事罰を科しているのだから、その反対解釈として、11条2項以外の手続違反の脱法については刑事罰に問えないのではないか、

という反論もあり得るところです。(私はあまり説得力のある議論とは思いませんが。)

このように考えると、脱法禁止規定というのはむしろ議論を混乱させるだけの無用の長物ではないかという気もしてきます。

(気分的には、脱法禁止規定があったほうが柔軟に脱法を禁止しやすい、ということはあるかもしれませんが。)

いずれにせよ、脱法禁止規定を通じてではなく直接91条の2第3号や第4号でいくとなると、今回のキヤノンのケースを例にとれば、「第三者」というのがキヤノンと実質的に一体といえるのか、という、問題の核心に迫らざるを得ず、刑事罰のハードルはけっして低くはないでしょう。

それでも今回、こういうケースが起きたことは、次からは刑事告発をする大義名分が公取委にもできたわけで、仮に結果として無罪となる可能性があっても、公取委は刑事告発する可能性が高いのではないかと思います。

もしそれで無罪になったら、本格的に法改正がなされるのではないでしょうか。

その場合には、重たい手続の刑事罰ではなく、欧州のような課徴金が検討されるかもしれません。

そういうわけで、次は本当に危ないと思います。みなさん、脱法はやめておきましょう。

なお当然のことですが、キヤノンのケースが「脱法」にあたるかどうかは、細かい事情をしらないので、私にはわかりません。また基本的に、個別案件に対する私見はブログでは書かないことにしています。

品川課長の、「黒でないがグレー」というコメントの、「黒ではないが」という部分からすると、公取委も違法だという認定はできなかったんだろうなぁとうかがえる、ということくらいしかいえません。

また、本件は性質上海外の競争法の適用がありうるものと思われますが、今のところ、海外当局からも違法だという声が上がっていないことからすると、日本の公取委だけが弱腰だということでもないんではないかと思います(ただ、日本企業同士の買収で実体法上は問題ない事案を、海外当局があえて手続違反で摘発するのが妥当なのか、そこに口を挟める(挟むべき)なのは日本の公取委だけではないのか、という議論は別途ありうるとは思います。)

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