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2024年7月20日 (土)

商品買い取りサービスに関する定義告示運用基準の改正について

商品の買い取りに関する景品提供が景表法の対象となるのかに関する定義告示運用基準3⑷が、2024年4月18日に改正されました。

改正前は、

「⑷ ⾃⼰が商品等の供給を受ける取引(例えば、古本の買⼊れ)は、「取引」に含まれない。」

とされていたのに対して、改正後は、

「(4) 自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、

当該取引が、

当該物品等を査定する等して当該物品等を金銭と引き換えるという役務

を提供していると認められる場合には、

「自己の供給する役務の取引」に当たる。」

とされました。

この運用基準3⑷の規定は直接的には景品類に関する規定なのですが、表示規制についても同じに解さざるをえないところ、そうすると、商品買い取りサービスについては不当表示規制が適用されないということになり、けっこう大きな問題でした。

私は、商品買い取りサービスは買取という役務を提供しているのだから景表法の対象だと考えるべきだと考えていたのですが、今回運用基準が改正され、おおむねそのような方向になりました。

ですが、この運用基準は、すべての商品買い取りサービスが景表法の対象となるとまで割り切っているわけではなく、

「当該物品等を査定する等して当該物品等を金銭と引き換えるという役務

を提供していると認められる場合」

に限定しています。

しかし、理論的にも実質的にも、これはいかにも中途半端な感じがします。

私は、消費者から商品を買い取るサービスはすべて、

「物品等を金銭と引き換えるという役務

とみて、景表法の対象にできると考えています。

景表法の条文で「自己の供給する商品又は役務」とされているのは、「供給を受ける」ことを排除するという明確な意図に基づいて立法されたというよりは、なんとなく語呂がいいから、あるいは、物を売る場合しか頭に浮かばなかったから、そうなっているだけというだけで深い意味はないと思います。

こう言っては身も蓋もありませんが、昭和30年代の法律なんて、そんなもんだと思います。

なので、買取サービスを対象にしても必ずしも文言には反しないと思います。

実質的にも、消費者を相手にした買取業であるかぎり、保護する必要があるのは明らかです。

それに、「査定」を事業者が消費者に提供する役務だというのは、理屈のうえでも無理があります。

というのは、ここでの「役務」は、「役務の取引」を構成する概念であり、当該役務に対して消費者が対価を支払うことが当然に前提とされていると解するのが自然あるいは当然です。

でも、買取サービスにおいて、「査定」というサービスに対価を支払っているという認識の一般消費者はまずいないでしょうし、買取業者側も「査定」というサービスを提供しているとは考えていないと思います。

あくまで、消費者は、「買い取ってくれるというサービス」と認識しているのであって、「査定してくれるサービス」とは認識していない、ということです。

それは、買取サービスに置いて通常、「査定料」が明示的に買取代金から控除されることがないこととも整合的です。

このように考えると、買取サービスではお金は消費者から買取業者に支払われるので、課徴金を課すことができませんが、それは景表法8条で課徴金が「売上額」にかかることになっているせいなので、しかたないでしょう。

(ちなみに、独禁法7条の2第1項では、2号で「購入額」にも課徴金がかかるようになっています。)

それを、「査定料」相当額を算定してそれを基準に課徴金を課すというような無理な解釈をする必要もないでしょう。

いずれにせよ、消費者からの買取サービスで何ら査定もしないものはほぼないでしょうから、改正定義告示運用基準のもとでは、おおむねすべての買取サービスに景表法が適用されると考えるべきでしょう。

2024年7月 3日 (水)

フリーランス適正化法の適用範囲の広さについて

今年11月に施行されるフリーランス適正化法は、個人事業者とのほぼすべての取引に適用され、その適用範囲が同法が下敷きにしている下請法よりもずっと広いので、注意が必要です。

すなわち、同法で保護の対象となっている「特定業務受託者」(2条1項)は、

「この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 個人であって、従業員を使用しないもの

二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる
者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの」

ということで、要するに、従業員のいない個人事業主と、従業員のいない法人事業者です。

そして、保護される取引である「業務委託」(2条3項)は、

「3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。

一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。」

と定義されていて、こちらもたいへん広いです。

2条3項2号(役務提供委託)の定義で、あえて、

「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」

とあえて明記しているのは、下請法で役務提供委託に自己使用役務は(たとえ「業として」行うものであっても)含まないのとは違うのだよ、ということを明確にするためです。

すなわち、下請法で役務提供委託は、

「事業者〔=親事業者〕が

業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を

他の事業者に委託すること・・・」(下請法2条4項)

と定義されており、対象が「業として行う提供の目的たる役務」の委託、つまり役務の再委託に限られており、親事業者が自分のためにする(=他に提供するのではない)役務の委託は、役務提供委託の定義に入らないわけです。

(ですが、立法技術的、ないしは論理的には、フリーランス適正化2条3号2号の「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」という部分は、まったく余分だと思います。)

なので、例えば個人でやっている会議通訳者に会議通訳を頼むと、フリーランス適正化法の保護の対象になります。

(下請法では、自己使用役務なので、仮に社内に通訳者がいても、対象になりません。)

そのほか、たとえばオフィスのトイレの掃除の委託とかも役務提供委託になるので、ともかく個人事業者が相手方のときはフリーランス適正化法の適用を疑うべきです。

なので、フリーランス適正化法(正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」ですが)、あるいはフリーランス保護法といいますが、「フリーランス」という色の着いた表現を使うより、「個人事業者保護法」とか、「個人事業者等保護法」とするほうが、実態に合っていると思います。

(私の感覚では、ウーバーの配達員は「フリーランス」という名に値しません。)

新たな法律ができたときには思わぬところに適用されることがあるもので、消費税転嫁法ができたときには、駐車場料金とか、自動販売機設置料とか、予想もしなかった事件が相次いで摘発されました。

なので、フリーランス適正化法も、思わぬ事件が出てくるかも知れません。

個人への業務委託で注意しないといけないのが、会社のOBに業務委託する場合です。

私もクライアントから相談を受けていて、会社を辞めて独立開業した人が社内で同じような仕事をしている、というような状況に出くわしたことがあります。

会社のほうも、OBで顔見知りだし、いろいろ気安く頼んだりする、ということもありえます。

もちろん、情報成果物作成委託にあたるようなものはこれまでも下請法の対象でしたから、新たに対応が必要ということはあまりありません(ただし、厚労省パートの、妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮(13条)などは別です)。

ですが、これまでたんなる役務の依頼をしていただけの場合には、これまでなかった対応が必要、ということになります(新たな法律ができたのですから、あたりまえですが)。

そのほか、事業者の皆さんは社内で個人事業者に依頼していることがないか、いちどチェックされるのがよいと思います。

2024年7月 2日 (火)

やり直しに対する初の勧告(大阪シーリング印刷2024年6月19日)

2024年6月19日、大阪シーリング印刷(株)に対して、やり直しで勧告が出ました

公取委報道発表によると、違反事実は、

「大阪シーリング印刷は、下請事業者が作成したデザインについて、

給付の受領後に実施する受入検査において問題がないとしたにもかかわらず、

その後に自社の顧客である食品製造業者等からやり直しの依頼があったことを理由として、

令和4年4月から令和5年10月までの間、

下請事業者に対し、

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、

合計24,600回のデザインのやり直しを無償でさせることにより、

下請事業者の利益を不当に害していた(下請事業者36名)。」

とのことです。

NHKの報道(2024年6月19日「下請けに無償でやり直し2万4600回で印刷会社に公取委勧告 ⼤阪」)によると、

「公正取引委員会の調査に対して会社側は「これまで、やり直しを無償で依頼することは、事前に説明して了解を得ていたので、問題はないと考えていた」と話しているということです。」

とのことです。

このように、下請法ではやりなおしがありうることを事前に下請事業者との間で合意していても違反になります。

商品の納入を受けた後にクライアントから修正の指示があるというのは、この手のデザインのかかわる商品ではありがちなことと想像されますが、ではこのような場合、発注者である親事業者はどうすればいいのでしょうか。

まず前提として、下請法では、やり直しの要求が一切認められないわけではありません。

というのは、下請法4条2項4号では、

「 2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号・・・に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。〔1~3号省略〕

四 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。」

とされており、2項に規定されているやり直しは下請事業者の利益を不当に害さなければ違反にならないのです。

(なお、目的物の瑕疵など、下請事業者の責に帰すべき理由があればやりなおしが認められるのは当然です。)

なので、やり直しについての費用を全額発注者が負担するのであれば、基本的には問題ありません。

この問題に関しては、下請法講習テキスト(令和5年11月版)p85に、

「●  放送番組等の情報成果物作成委託における「給付内容の変更」「やり直し」

放送番組等の情報成果物作成委託において、

下請事業者が作成した情報成果物が親事業者の当初委託した内容を満たしているかどうかは、

親事業者の価値判断等により評価される部分があり

事前に給付を充足する条件を明確に3条書面に記載することが不可能な場合がある。

このような場合において、親事業者が、給付の受領の前後を問わず、

3条書面上は必ずしも明確ではないが下請事業者の給付の内容が当初委託した内容と異なる又は瑕疵等があるとし、

やり直し等をさせることは、

親事業者がやり直し等をさせるに至った経緯等を踏まえ、

やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、それを負担すれば

本法違反とならない。

ただし、親事業者が一方的に負担割合を決定することにより下請事業者の利益を不当に害する場合には、本法違反となる。」

とされています。

これだけみると、3条書面に給付内容の詳細を記載することが困難な場合であっても十分協議して合理的な負担割合を負担する必要がある(逆に言えば、費用負担をしないと責任を免れない)かのようにも読めますが、この点に関してはさらに、同テキストp87のQ104があり、

「Q:親事業者は、放送番組の制作を委託するに当たり、給付を充足する条件を明確に書面に記載することが不可能なため、

下請事業者と十分な協議をした上で、当初から何度もやり直しすることを見込んだ価格を設定している。

この場合においても、3条書面に記載していない事項を充足させるためのやり直しについて、別途、その費用を負担せずにやり直しさせることは問題ないか。」

との質問に対して、

「A:当初から下請事業者と十分な協議の上で何度もやり直しすることを見込んだ価格を設定している場合に、

当初の想定の範囲内でやり直しをさせることは問題ないが、

それを理由に3条書面に記載されていない事項について無制限にやり直しをさせることができるものではないので、

下請代金の額の設定時に想定していないような費用が発生するやり直しの場合には、

下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、

それを負担する必要がある。」

と回答されています。

つまり、テキスト本文(p86)の、

「やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し、それを負担すれば、」

というのは、発注者も常に何らかの負担をしなければならないという意味ではなくて、十分協議をした結果下請事業者が全部の割合を負担する(追加支払はなし)ことも認める、という趣旨であると考えられます。

(同じテキストなのですから、記述は統一してほしいものです。)

結局、やり直し(3条書面に記載されていないもの)が認められるためには、

①給付の条件を3条書面に明確に記載することが不可能であること、

②やり直しを見込んだ価格を設定すること、

③当初想定を超えるやり直しの場合は、十分協議して合理的な負担割合を決定すること(想定の範囲内なら追加支払不要)、

という3つの要件を満たすことが必要、ということになります。

シールのデザインは①を満たしそうですから、あとは、それを見込んだ価格を設定すれば(②)、当初想定を超えるようなやり直しでない限り、当初価格のままでやり直しをさせても構わない(追加支払は不要)、ということになるのでしょう。

上記のNHK報道に対する大阪シーリング印刷のコメントからすると、②も③も満たした可能性があるような気もしますが、勧告が出たのですから、公取委は満たさないと判断したのでしょう。

(その判断が正しかったのかどうかは、報道発表からは読み取れません。)

逆に言うと、やり直しが通常の業務の過程で当然のように行われているビジネス(本件でも、やり直しが24,600回あったと認定されており、やり直しが常態化していたことがうかがえますが、数が多いから悪いというものでもないでしょう)では①~③を満たす可能性が高く、それが、これまでやり直しの勧告がなかった理由ではないかと推測します。

また、下請法運用基準第4-2では、支払遅延に関する解説ではありますが、

「⑶ また、情報成果物作成委託においては、親事業者が作成の過程で、委託内容の確認や今後の作業についての指示等を行うために、情報成果物を一時的に自己の支配下に置くことがある。

親事業者が情報成果物を支配下に置いた時点では、当該情報成果物が委託内容の水準に達し得るかどうか明らかではない場合において、

あらかじめ親事業者と下請事業者との間で、

親事業者が支配下に置いた当該情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で、給付を受領したこととすることを合意している場合には、

当該情報成果物を支配下に置いたとしても直ちに「受領」したものとは取り扱わず、

支配下に置いた日を「支払期日」の起算日とはしない。

ただし、3条書面に明記された納期日において、親事業者の支配下にあれば、内容の確認が終わっているかどうかを問わず、当該期日に給付を受領したものとして、「支払期日」の起算日とする。」

と解説されています。

そして、やり直しというのはいったん受領した物についてさせることなので(受領前は給付内容の変更)、「受領」が成立しない以上、やり直しも成立しないと考えられます。

また、そのような運用がテレビ業界で行われている実態について、

上原伸一「テレビ関係における情報成果物作成委託を中心とした下請法対応 スタート事情から現状と問題まで(特集 下請法の今日的課題)」公正取引689号18頁

では、

「心配された不当な給付内容の変更・やり直しの禁止であるが、既に述べてきたように、この業界では制作をしながら内容を練り上げていくという作業が行われているので、制作作業中の「手直し」や「変更」は日常的なものである。

給付内容にある企画内容の範囲で、支払金額に影響を与えない「手直し」等については長い歴史の中で培われてきたやり方であり、少なくとも表立って問題にはなっていない。

下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準においても、第4-2-⑶で、給付内容確認のための情報成果物を一時的に自己の支配下に入れることは、下請事業者との間で事前の合意がある限りは、「受領」したものとは扱わないことが認められており、

この規定の趣旨を柔軟に生かすことにより現場のトラブルを回避している。」

と解説されており参考になります。

ですので、このような一時的に支配下に置く合意をすることも検討に値するでしょう。

2024年7月 1日 (月)

ステマ1号案件について(医療法人社団祐真会)

2024年6月6日、消費者庁はステマをしていた医療法人社団祐真会に対して措置命令を出しました

昨年10月のステマ告示施行から約8か月ですから、まずまず早かったのではないでしょうか。

医療行為という人の生命や健康に関わる役務で違法行為が行われたことが重要視されたのかもしれませんが、ともかく、優良誤認との抱き合わせではない純粋なステマでいきなり命令を出したことに、悪質なステマは見逃さないという消費者庁の本気度を感じます。

以下、措置命令を読んで気づいたことを記しておきます。

まず、本件措置命令では、違反対象役務(「本件役務」)を、「『マチノマ大森内科クリニック』と称する診療所・・・において供給する診療サービスに係る役務」としています。

この事件では、Googleマップに星5つか4つの投稿をしてくれた患者にインフルエンザワクチン接種代金を割り引いていたのですが、違反対象役務はインフルエンザワクチン接種ではなく、診療サービス全般になっています。

これは、割引を受けるための投稿の宣伝対象がインフルエンザワクチン接種だけでなく同診療所での診療サービス全般だったことから、当然であると考えられます。

インフルエンザワクチン接種はあくまでステマの対価として割引提供された役務に過ぎません。

同命令では、

「インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者・・・に対し」

依頼をした、と認定されているので、素朴に考えれば投稿対象はインフルエンザワクチン接種である可能性が高いように思われますが(「インフルワクチン安かった」とか、「インフルワクチン待ち時間なくスムーズに打てた」とか)、ステマの依頼の内容(あるいは内容)が、Googleマップの口コミに、

クリニックの評価として『★★★★★」・・・又は『★★★★』の投稿をすること」

を条件にインフルエンザワクチン接種費用を割り引くということだったので、あくまでクリニックの評価全体が宣伝対象だった、ということなのでしょう。

現在は指定告示違反には課徴金がかからないので違反対象商品役務が何なのかはあまり大きな問題にはなりませんが、もし将来課徴金の対象になったら大きな争点になりそうですし、他の指定告示違反と違ってステマは広告を実際に書くのが第三者なので、宣伝対象があいまいだということもありえそうで、そうするとなおさら大きな争いになりそうです。

それに、命令では、そもそも違反表示とされたのは、別表1と2をみると、「星5」という部分だけです。

つまり、投稿者のコメントの文章の部分は違反表示ではなく、「★★★★★」という表示だけが違反表示だ、ということです。

これは、違反者祐真会の指示が、星5つか4つで割引、というものだったので、その関与した「内容」は星の数だけ、ということなのでしょう。

ここで頭の体操ですが、NHKの報道(2024年6月7日「「☆星4以上のクチコミで割引」はステマ 消費者庁が措置命令」)によると、本件では、違反者が違反行為をするまえは星1つが大半だったのに、違反行為をはじめてから星5つが急増したとされています。

もし、これではいかにもステマっぽいと危惧した違反者が、星1つとか2つとか3つをそれぞれ目標数を定めて個別に患者に依頼して適当にばらけさせたとした場合、星1つとか2つもステマになるでしょうか?

答えは、ステマになります。

ステマは優良誤認表示や有利誤認表示と異なり広告の内容は問わないので、広告主にとって不利な内容もステマに該当するからです。

不利な表示に顧客誘引性があるのか、という疑問が生じるかも知れませんが、ステマであることを見抜かれないために2や3も付けさせている、という実態を全体的に見れば、全体として顧客誘引性はあるといえるでしょう。

同じNHKの報道で興味深いのは、

「NHKがクリニックへのクチコミを調べたところ、「『星5のレビューを投稿すればさらに550円OFF』と案内があったので、(5の評価を)投稿しました」とか、「口コミを登録したらさらに500円引きになりお得でした」といった投稿がみられました。」

という部分です。

措置命令では明らかにされていませんが、もしこれらのコメントを付けた投稿があったとしたら、この部分に限っては違反にはならなかったと思われます。(これが、ステマ発覚の端緒にはなるとしても。)

というのは、ステマガイドライン第3ー2⑴イでは、

「イ 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合。」

が、広告であることが明瞭な例として挙げられているからです。

ここで思いつく問題が、もし違反者が「PR」という表示を付けて投稿するように投稿者に指示していたにもかかわらず投稿者がこれに反して「PR」という表記をしなかったとしたら、ステマになるのでしょうか?

この点、本件措置命令が、「星5つ」という指示をしていたことから、

「同表「表示内容」欄記載〔「星5」〕のとおり投稿している又は投稿していたことから、

祐真会は、本件役務に係る別表1及び別表2 「表示内容」欄記載の表示内容〔「星5」〕の決定に関与しているものであり」

と認定していることからすれば、表示の内容を具体的に指示している(本件では星5か4の投稿をする)場合には、その具体的指示に対応する部分だけが違反表示と認定されているともいえそうです。

そうすると、反対に、広告主が「PR」と表記するように指示していたのに表示行為者がこれに反して(場合によっては、忘れて)「PR」の表示をしなかった場合には、表示行為者の表示は広告主の指示の範囲を超えており、「事業者の表示」にはあたらず、ステマにはならないと考えるべきと思われます。

・・・と、言って早々何なのですが、Googleマップの星の場合、それではまずいような気もします。

というのは、Googleマップの星は集計されて星の数の(おそらく)平均値だけがトップにくるようにできているので、個別のコメント欄に「PR」と書いてあっても、平均の星の数のところには「PR」とは表示されないからです。

というわけで、このあたりは具体的な表示態様に照らして個別に考える、ということになるのでしょう。

次に、違反行為を認定している「別表1」と「別表2」をみると、

別表1では、

表示期間(依頼期間ではありません)が「令和5年12月8日以降」の表示が34件(別添写し1~34)

表示期間が「令和6年5月8日以降」の表示が1件(別添写し35)

つまり命令時点で表示が続いているものが合計35件、

別表2では、

表示期間の始期が「令和5年12月8日」で、終期もそれぞれ認定されている表示が10件(枝番を別と数えれば11件。別添写し36~45)

つまり命令時点で終了しているものが合計10件(または11件)

の違反表示が認定されていることがわかります。

別表1と2を、命令時に続いているものと既に終わっているものに分けたのですね。

次に、ステマに措置命令が出るときに個人的に注目していたのが主文(「1 命令の内容」)の記載でしたが、こちらは案外あっさりしたものでした。

まず、1⑴では、違反表示の取りやめとして、

「(1) 貴法人は、本件役務の取引に関し、次に掲げる表示をしている行為を速やかに取りやめなければならない

本件役務を一般消費者に提供するに当たり、

インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者(以下「第三者」という。)に対し、・・・

Googleマップ・・・内の貴法人が開設し運営するクリニックの・・・プロフィール・・・における・・・口コミ投稿欄・・・のクリニックの評価として「★★★★★」・・・又は「★★★★」の投稿をすること・・・を条件に

当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたこと

によって当該第三者が投稿した、別表・・・記載のとおりの表示」

と命じられていますが、何をしたら「取りやめ」たことになるのかは書かれていません。

理論的には、口コミを消さないと取りやめたことにはならないでしょうから、きっと消費者庁からはそう指示されたのでしょう。

つまり、投稿者に「投稿を消してくれ」と依頼するだけでは足りないということです。

そうすると、投稿をクリニック側で勝手に削除することはできませんから、Googleに削除を請求したのではないかと思われますが、削除請求は昨今数多くの裁判で話題になっていることからもうかがわれるようにけっこう大変そうなので、どうやったのか(するのか)、気になります。

ご存じの方がいたら教えて下さい。

次に、1⑵では、一般消費者への周知として、

「(2) 貴法人は、

貴法人が一般消費者に提供する本件役務に係る表示に関して、

に掲げる事項を

速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。

この周知徹底の方法については、あらかじめ、消費者庁長官の承認を受けなければならない。

ア(ア) 貴法人は、

本件役務を一般消費者に提供するに当たり、

第三者に対し、

本件星投稿を条件に当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝えたことによって、

第三者が、別表・・・記載のとおり投稿したことから、

当該投稿による表示は、

貴法人が供給する本件役務の取引について行う表示(以下「事業者の表示」という。)であると認められること

(イ)前記(ア)の表示は、

表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、

当該表示は、

一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであったこと。」

と命じられています。

これは、原産国告示の措置命令と比べるとなかなか興味深いです。

というのは、原産国告示2項では、

「外国で生産された商品についての次に掲げる表示であって、その商品がその原産国〔本当の原産国〕で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの」

が違反表示なので、それに合わせて措置命令では、「その商品がその原産国〔本当の原産国〕で生産されたものであること」を周知することが命じられます。

これとパラレルに考えると、ステマ告示では、

「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」

が違反表示なわけですから、問題の表示が「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であったこと、つまり、事業者自身の広告であったこと、を周知することでも足りそうなものです。

しかし本件措置命令は、ステマの具体的な手口まで周知するよう命じました。

これは妥当な命令だと思います。

というのは、これくらいきちんと背景事情を開示しないと、消費者には一体何が問題だったのかわけがわからないし、悪質さも伝わらないからです。

ちなみに、本件で、投稿者に頼むなりして、Googleマップへの投稿に「PR」との表記をさせたからといって、過去の表示が広告であると判別困難なものであったことの周知をしなくてよくなるわけではありません。

というのは、(わかりやすさ重視で割り切って説明すると)過去の表示は過去の診療に対する表示であり、現在の表示は現在の診療に対する表示ですから、両者は別物だからです。

あるいは、現在の表示に「PR」とつけたからといって、過去の表示にさかのぼって「PR」と付けたことになるわけではない、とも説明できます。

この点は、原産国告示でも同様です。

2024年6月30日 (日)

フリーランス該当性判断についての難点

フリーランス適正化法2条1項では、同法の保護の対象である「特定受託事業者」(フリーランス)を、

「業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 個人であって、従業員を使用しないもの

二 法人であって、

一の代表者以外に他の役員

(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。

第六項第二号において同じ。)

がなく、かつ、

従業員を使用しないもの」

と定義しています。

ここで問題になるのは、取引先に従業員がいるのかいないのかを、発注者はどのように知ったらいいのか、ということです。

これが下請法であれば、個人はすべからく下請事業者に該当しますし(個人が相手方かどうかは契約書とか見積書とかの取引関係書類で確認できます)、法人は資本金で下請事業者であることが確認できる(しかも中小企業はほとんど資本金3億円以下)ので、ほぼ迷うことはありません。

これに対して、個人や法人に「従業員」がいるかどうかは、相手に聞かないとわからないことも多いのではないかと思われます。

たとえば我々弁護士のなかにも、従業員を雇っていない人がけっこういたりします。

明らかにアパートらしき建物名の1室が事務所だったりすると、「自宅で開業しているんだな」とか、「そうしたら従業員もいないかも」と推測できたりすることもあるかもしれませんが、貸しオフィス的なものを使われていると住所もそれらしいので、それすらわかりません。

しかも、この「従業員」にはさらに細かい定義があります。

すなわち、「特定受託事業者に係る取引の適正化等関す法律 の考え方」p3では、

「⑴ 従業員を使用

「従業員を使用」とは、

①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、

②継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者

(労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者をいう。)

を雇用することをいう。

ただし、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第4号に規定する派遣先として、

①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、

②継続して31日以上労働者派遣の役務の提供を受けることが見込まれる派遣労働者を受け入れる場合には、

当該派遣労働者を雇用していないものの、

「従業員を使用」に該当する。

なお、事業に同居親族のみを使用している場合には、「従業員を使用」に該当しない。」

とされています。

こうなるとやっぱり相手に聞かないと分からないし、同居の親族は含まないということなので、奥さんに秘書をやってもらっている弁護士はフリーランスに該当することになります。

なので、事務所に電話をしたら弁護士でなく秘書さんが電話を取ったからといって、油断はできません。

その人が弁護士の奥さんかも知れないからです。

相手方が個人の場合には安全をみて全てフリーランスとして扱うという対応も考えられますが、相手方が法人だとそういうわけにもいきません。

なので、発注者側の現実的な対応としては、

取引の相手方が個人の場合、その人が間違いなくフルタイムの従業員を雇っているとわかっているのでないかぎり、基本的に全員フリーランスとして扱う、

取引の相手方が法人の場合は、従業員がいないとわかっている場合にかぎり、フリーランスとして扱う、

手間を惜しまないのであれば、少なくとも個人の取引相手方には、従業員雇用の有無を尋ねる、

ということが考えられます。

逆に、フリーランス側の対応としては、自分が従業員を雇用していないのであればその旨を発注者にあらかじめ知らせておくべきではないかと思います。

というのは、従業員がいると誤解している発注者に、法律違反をさせてしまう可能性があるからです。

とくに発注者が、フリーランスに従業員がいると誤解していると思われる場合には、フリーランスは積極的にその誤解を解くべきようにすべきでしょう。

2024年6月29日 (土)

フリーランス適正化法5条(特定業務委託事業者の遵守事項)の適用範囲の疑問

フリーランス適正化法5条(特定業務委託事業者の遵守事項)では、

「第五条 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託

政令で定める期間以上の期間行うもの

(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)

に限る。以下この条において同じ。)

をした場合は、次に掲げる行為

(第二条第三項第二号に該当する業務委託〔役務提供委託〕をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)

をしてはならない。

一 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。

二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。

三 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領した後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き
取らせること。

四 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めるこ
と。

五 特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定
する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。」

と規定されています。

そして、「政令で定める期間以上の期間」について、同法施行令1条(法第五条第一項の政令で定める期間)では、

「第一条 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第五条第一項の政令で定める期間は、一月とする。」

と規定されています。

さらに、「特定受託事業者に係る取引の適正化等関す法律の考え方」p26では、

「ア 単一の業務委託又は基本契約による場合」

として、この「期間」の始期は、

「単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の始期は、次の日のいずれか早い日である。

①業務委託に係る契約を締結した日(3条通知により明示する「業務委託をした日」)

②基本契約を締結する場合には、基本契約を締結した日」

であり、終期は、

「単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の終期は、業務委託に係る契約が終了する日又は基本契約が終了する日のいずれか
遅い日であり、具体的には次の日のいずれか遅い日である。〔中略〕

①3条通知により明示する「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日」(ただし、期間を定めるものにあっては、
当該期間の最終日)

②特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合には同日

③基本契約を締結する場合には、当該基本契約が終了する日」

であるとしています。

つまり、一番単純な、単発の契約で単発の発注だけをする場合であっても、「期間」の終期が給付受領日であるため、作業に1か月以上かかると、5条の遵守事項の対象となることになります。

しかし、私はこの「考え方」の解釈はおかしいと思います。

フリーランスの単発の仕事でも、たとえば個人でやっているイラストレーターとか、書籍の翻訳とか、仕事に1か月以上かかるものはいくらでもあると思います。

それらが単発の発注なのにすべて5条の対象になるというのは、実質的な理由がありません。

この点、立案担当者の解説である、松井他「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要」(NBL1246号39頁)では、5条の「期間」の趣旨について、

「本条〔5条〕で列挙している遵守事項は、政令で定める期間以上にわたり継続して業務委託をした場合(契約の更新により政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む)に適用される。

これは、下請法の規制対象でない小規模な発注事業者であっても、従業員を使用していれば本法の特定業務委託事業者となり得るところ、

発注事業者とフリーランスとの間に経済的な依存関係が生じる継続的な取引の場合に、

発注事業者から不利益な取扱いを受けやすい傾向にあるという保護の必要性と

小規模事業者を含む発注事業者に過度な負担が生じることがないようにする観点を考慮し、

規律の範囲を定めるものである。」

と説明されています。

つまり、経済的な依存関係が生じることが、1か月という「期間」を定める趣旨なわけです。

なのに、単発の発注で作業が1か月以上かかるだけで「経済的な依存関係」が生じるというのは、どう考えても無理があります。

また、継続的な取引関係であるために経済的な依存関係が生じることに注目する立法例として独禁法2条9項5号の優越的地位の濫用の定義がありますが、そこでは、優越的地位の濫用は、

「五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

〔以下省略〕」

と定義されていますが、これに例えば納期が1か月以上の単発の発注が入るのかというと、入らないと思います。

また、単発の発注を「継続的な取引」というのも、言葉の問題としてかなり無理があります。

さらに、単発の取引だけど納入までに1か月以上かかる取引なら「発注事業者から不利益な取扱いを受けやすい傾向にある」というのも、まったく成り立たないと思います。

さらに、「考え方」の解釈は、5条の文言にも反すると思われます。

すなわち、5条では、「政令で定める期間以上の期間行う〔業務委託〕」が、5条の遵守事項の対象だとしています。

そして、「業務委託」は2条3項で、

「一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)」

つまり、1号であれ2号であれ、「業務委託」は、「委託すること」です。

そして、「委託すること」とは、発注(契約の申込み)をすることであると解されます。

このことは、「委託すること」は、広辞苑で「委託」が、

「法律行為または事実行為などをすることを他人に依頼すること」、

つまり他人に何かをお願いすることが「委託すること」であると説明されていることとも整合しますし、民法で、

「(委任)

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

「(寄託)

第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

というように、「委託し」が契約の申込みを意味する用例があることや、同じく民法で、

「(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」

というように、遺言という単独行為で「委託する」という行為がなされることを前提にしている用例があることとも整合的です。

よって、「政令で定める期間以上の期間行う〔業務委託〕」というのは、発注行為を1か月以上の期間にわたって行うこと、という意味になります。

すると、発注(「委託すること」)という、いわば「点」の行為を1か月以上の期間行う、というわけですから、これは、複数の発注を継続的に1か月以上行うという意味に解するほかないことになります。

そもそも、「業務委託」は、「x〔エックス〕を委託すること」なのですから(2条3項)、主語は発注者です。

なので、フリーランスの行為は、「業務委託」の定義に入ってきません。

よって、フリーランス側の行為である納入を「政令で定める期間以上の期間行う〔業務委託〕」に読み込むのは、概念における主語ー述語関係の読み違えです。

このような、主語ー述語関係の読み違えは、法律解釈では致命的です。

例えば事業譲受に関する独禁法16条では、

「 第十六条 会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該行為をしてはならず、及び不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。

一 他の会社の事業の全部又は重要部分の譲受け

二 他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受け

三 他の会社の事業の全部又は重要部分の賃

四 他の会社の事業の全部又は重要部分についての経営の

五 他の会社と事業上の損益全部を共通にする契約の締結」

というように、両社対等で取引の方向を概念できない5号を除き、すべて受け側の行為として統一されています。

(ちなみに、なので企業結合では、「事業譲渡」ではなく「事業譲受」(じぎょうゆずりうけ)という用語を使うことが圧倒的に多いです。)

フリーランス適正化法2条3項の「業務委託」を、委託を受ける側の行為も含むのだという解釈は、事業譲受を譲渡側の行為も含むのだと解釈するようなものであり、主語-述語関係の誤読です。

法律解釈では、概念の広狭を云々することも大事ですが、この主語-述語関係(概念と概念の論理的な関係)を読み違えないことのほうが、ずっと大事です。

時効の解釈において、期間よりも起算点が大事なのと同じです。

このように、フリーランス適正化法の条文のどこを見ても、「考え方」のように、業務委託(「委託すること」)の期間が、発注から給付受領までの期間を意味するという解釈は出てきません。

それに、決定的な問題として、「考え方」の解釈では、例えば1週間で終わる作業を毎月1件ずつ12か月にわたり発注し続けたような場合でも、基本契約がないかぎり、5条の対象にはならないことになり、むしろフリーランスの保護に欠けるのではないかと思われます。

これだと、たとえばウーバーイーツの配達員向け約款が「基本契約」に該当しないと仮定すると(該当するかしないかは、また別の機会に考えます。ひとまず頭の体操として、ここではこれを前提にして下さい)、ウーバーイーツの配達員はそれぞれの配達が1時間程度以内で終わるので、何年配達員をやっていてもフリーランス適正化法の保護を受けない、ということになります。

というわけで、「考え方」の解釈は誤りですから、発注者のみなさんは、納期が1か月以内の発注であっても、くり返し発注する場合にはフ適法5条が適用されることを前提に行動すべきと考えます。

2024年6月28日 (金)

フリーランス適正化法の3条通知の時期に関する疑問

今年11月に施行予定のフリーランス適正化法3条1項では、

「(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法・・・により特定受託事業者に対し明示しなければならない。〔以下項省略〕」

と規定されています。

そして驚くべきことに、この通知(3条通知)の起算点について、公取委・厚労省「特定受託事業者に係る取引の適正化等関す法律の考え方」p8では、

「「業務委託をした場合」とは、業務委託事業者と特定受託事業者との間で 、業務委託をすることについて合意した場合をいう。」

とされています。

これがなぜ驚くべきことなのかというと、下請法の3条書面では、発注後直ちに、という意味だと解されているからです。

すなわち、3条書面に関する下請法3条1項本文では、

「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」

と規定されており、この「製造委託等をした」というのは、発注をした、という意味だと解されているからです。

例えば、令和5年11月版下請法テキストp30では、

「Q31: 電話で注文をして、後日3条書面を交付する方法は問題ないか。」

という設問に対して、

「A: 緊急やむを得ない事情により電話で注文内容を伝える場合であっても、電話連絡後直ちに3条書面を交付しなければならない。」

と回答されています。

つまり、下請法の3条書面は注文後直ちに交付しないといけないということです。

そのことは、下請法テキストに載っている3条書面のひな形のタイトルが「注文書」となっていることにも表れています。

ですので、下請法上は、

発注書→発注請書

で契約が成立する場合に、発注請書が出てから3条書面を出すのでは遅いわけです。

これに対して、フリーランス適正化法では、「業務委託をすることについて合意した」場合に直ちに3条通知をすればいいということになるので、3条通知を出すのは発注請書が出てからでいい、ということになります。

細かいことをいえば、民法97条1項では、

「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」

とされているので、契約の成立は請書が発注者に届いた時点ということなので、そこから「直ちに」3条通知をすればよいことになります。

これは、下請法の3条書面とは大違いです。

そもそも下請法の3条書面が、契約の申込みに過ぎない発注書があたかも契約内容を確定するかのような建て付けになっているのが理屈上はおかしいのであり、そのために下請法をやっているといろいろなところで理論的な矛盾が生じたりします。

でも、そこは、「下請法では細かいことは言わないもんだよぉ~」という、おおらかな解釈で実務が回ってきた、という実態があります。

また、下請取引では、発注書から契約内容が変更されたりすることがあまりないので、実用上も大きな不都合がなかった、ということもあると思います。

それが今回、フリーランス適正化法については、はっきりと、「合意」から直ちに、という意味であるとの解釈が示されました。

これはこれで理屈上はすっきりしますし、理論的には正しい方向なので、これでもよいのかなと思うのですが、下請法3条と同じ条文の文言なのにこんなに解釈が変わっていいものか、という疑問もあります。

それに、条文の文言解釈という観点からいえば、下請法の3条書面の解釈の方が、私は正しい(フリーランス適正化法の解釈は間違っている)と思います。

もう一度条文をみると、フリーランス適正化法3条1項では、

「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法・・・により特定受託事業者に対し明示しなければならない。」

とされています。

そして、「業務委託」とは、フ適法2条3項で、

「一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。」

と定義されており、「委託すること」というのは、作業を頼むこと、であり、これはつまり、委託の申込をすることだと解釈するほうが素直だと思います。

例えば、民法643条(委任)では、

「第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

という用例があり、この場合の「委託し」は、委任契約の申込の意味であることが明らかです。

しかも、フ適法の3条通知が合意後「直ちに」であることは、発注者(特定業務委託事業者)にとってよいことばかりではありません。

というのは、合意後直ちに、という解釈だと、合意成立前には3条通知は出せないからです。

たとえば、食品宅配のウーバー・イーツの場合、案件の依頼がウーバーから配達員のスマホに届いた段階ではまだ「申込」ですから、この案件依頼を3条通知だとみなすことはできません。

そうすると、配達員が案件の「承諾」をクリックしたあとに、ウーバーはあらためて3条通知を出さないといけないことになります。

これはいかにも無駄なように思います。

果たしてこんな不合理なことに、本当になるのでしょうか?

私は、きっとならないと思います。

というのは、条文の解釈としては前述のとおり発注後直ちにと読むのが正しいのと、確かに上記「考え方」には「合意」と明記してありますが、きっと実務では下請法の運用に引きずられて、発注後直ちに(あるいは、発注と同時に)、と解釈されるように思われるからです。

それくらい、実務の慣行というのは大きく、ちょっと指針に「合意」と書いたくらいでは変わらないと思います。

ともあれ、フ適法施行後どのような運用になるのか、注目です。

2024年6月26日 (水)

代金支払期日を定める義務に関する下請法2条の2の民事上の効力

下請法2条の2では、

「(下請代金の支払期日)

第二条の二 下請代金の支払期日は、・・・親事業者が下請事業者の給付を受領した日・・・から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、

前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が

下請代金の支払期日と定められたものとみなす。」

と規定されています。

これとほぼ同様の規定であるフリーランス適正化法4条では、

「(報酬の支払期日等)

第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、・・・当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日・・・から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、

同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、

それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

〔3項以下省略〕」

と規定されています。

そして、フリーランス適正化法の担当官解説である、

松井他「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要」(NBL1246号35頁)

の脚注12(4条2項の説明に対する脚注)では、

「12  行政機関による執行との関係で支払期日が定められたものとみなされるだけで、契約当事者間の合意内容を変更させる等、民事上の効果を生ずるものではない。

と断言されています。

下請法2条の2ではこのような解説がなされることはなく、これはかなり驚きです。

しかしながら、フリーランス適正化法4条でこのような解釈がなされている以上、同条とうり二つの下請法2条の2でも同様の解釈がなされると考えるのが自然でしょう。

それに、個人事業者が主体のフリーランス適正化法における保護が、下請で資本金もさほど大きくないとはいえ法人事業者が保護の対象である下請法の場合よりも劣ってよいという理屈もないでしょう(その逆なら、まだ考えられなくもないですが。)

個人的には、上記担当官解説の解説は、どうしてこんな余計なことを突然言い出したのか(しかも、何ら根拠なく)、まったくもって不可解というほかなく、解釈として誤っていると考えています。

そもそも下請法もフリーランス適正化法も、行政が取り上げる事件は全体のごく一部になるはずで、そうすると、世の中の大部分の、民民の交渉に委ねられる事案では、法律上の支払期日の規定は意味がないことになってしまいます。

ともあれ、少なくともフリーランス適正化法については担当官解説がこれだけはっきりと言ってしまっているわけですから、公取委はそういう立場なのだと実務上は考えざるをえません。

(もちろん、同担当官解説にも、「なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的な見解である。」というお決まりのディスクレイマーがありますが、実務的にはこれは建前だと考えるのが大勢でしょう。)

あとは、下請法について何らかの解釈が将来公取委から示されるのかが注目されます。

2024年6月 5日 (水)

2週間あけて将来価格二重価格表示をくり返す場合に関するガイドラインとパブコメの論理に関する若干の疑問

二重価格表示ガイドラインp7では、

「・・・比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する期間がごく短期間であったか否かは、そもそも当該将来の販売価格での販売が、比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として行われていたものではないかなどにも留意しつつ、具体的な事例に照らして個別に判断されるが、一般的には、事業者が、セール期間経過後直ちに比較対照価格とされた将来の販売価格で販売を開始し、当該販売価格での販売を2週間以上継続した場合には、ごく短期間であったとは考えられない(注6)。」

と規定されています。

そして、これに関連して同ガイドラインパブコメp24では、2週間だけ売ったら値下げしてもいいのか、という質問に対して消費者庁は、

「一般的には、セール自体の期間にかかわらず、比較対照価格とされた将来の販売価格での販売が2週間以上継続されれば「ごく短期間」であったとは考えられませんが、本執行方針第2の1に記載のとおり、合理的かつ確実に実施される販売計画を有しているかどうかが問われることになります。将来の販売価格は、将来における需給状況等の不確定な事情に応じて変動し得るものですので、長期間のセールを実施した後に、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売することができるかどうかの検討が必要となります。

なお、長期のセールを行った後に将来の販売価格での販売期間を2週間実施するということを何度も繰り返したことにより、そのことが消費者にも認識され、将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況においては、当該将来の販売価格での販売が「比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として」行われているとみられる可能性があることに注意する必要があります。」

と回答しています。

たしかに、

「長期のセールを行った後に将来の販売価格での販売期間を2週間実施するということを何度も繰り返したことにより、

そのことが消費者にも認識され、

将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況においては、

当該将来の販売価格での販売が

「比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として

行われているとみられる可能性がある」

という理屈は理解できるのですが、他方で、そのようなくり返しが行われることが

「消費者にも認識され、

将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況」

であれば、消費者が将来価格二重価格表示の有利性を誤認しているということもなく、そもそも、

「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの・・・よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(景表法5条2号)

に該当しなくなるのではないでしょうか?

パブコメを立てれば法律が立たず、ということろでしょうか。

こういう脱法的なくり返しがけしからんという価値判断は理解できるので、これを違法にする法律構成もありそうですが、私にはちょっとわかりません。

少し考えてみたいと思います。

2024年5月27日 (月)

キャンペーンのくり返し(同一性)に関するセドナエンタープライズに対する措置命令の担当官解説の疑問

(株)セドナエンタープライズがキャンペーンのくり返しをしたとして、2022年3月15日に有利誤認表示で消費者庁から措置命令を受け、その担当官解説が公正取引867号64頁に掲載されています(羽原広一「株式会社セドナエンタープライズに対する景品表示法に基づく措置命令について」公正取引867号64頁)。

この事件は、セドナエンタープライズが、その販売する脱毛器について、期間限定で、30%の値引きに加えレビューを投稿すればさらに15%のポイントを付与するキャンペーンと20%のポイントを付与するとのキャンペーンを交互に行っていたことが、有利誤認表示と認定されました。

つまり、同じ付与率で付与をくり返していたわけではないけれど、それでも有利誤認表示になるのかが問題となりました。

この点について前記担当官解説p65では、

「(1) 「乗り換え割」の期間限定表示

「乗り換え割」〔注・不要になった脱毛器と交換すると割引でセドナの脱毛器が購入できるキャンペーン〕の期間限定表示については、

1か月毎に期限を区切って月交代で5%違うポイント〔注・15%と20%〕を繰り返し付与していたことから、

ポイント数に着目すれば「期間限定」であったともいい得ることから、

毎月繰り返されるポイントの付与に変更があった場合でも、その前後のキャンベーンと同ーのキャンベーンであると評価できるのかという点が問題となる。」

「この点、ポイントの付与は、レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていたが、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。

したがって、本件乗り換え割の期間限定表示の取引に付随するポイントの付与については、

毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価されることから、乗り換え割の期間限定表示は、有利誤認表示に該当するとされたと考えられる。」

と解説されています。

しかし、私はこの解説はおかしいと思っています。

キャンペーンのくり返しが有利誤認表示になるのは、先行する第1キャンペーンと後続の第2キャンペーンが「同一のキャンペーン」だからではありません。

キャンペーン終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示が実際と異なるから、優良誤認表示になるのです。

たとえば、第1キャンペーンで「期間限定、通常価格より50%OFF」と表示していれば、その意味するところは、キャンペーン期間が終了したら「通常価格」に戻る、ということでしょう。

なので、キャンペーン期間が終了したら、通常価格に戻さないといけません。

当然のことだと思います。

たしかに、第1キャンペーンと第2キャンペーンが同一の内容であれば、第1キャンペーンの表示は有利誤認表示になるのでしょうけれど、同一内容である場合というのは、キャンペーン期間終了後の取引条件に関する第1キャンペーンの表示内容が実際と異なる場合の一例に過ぎません。

セドナの事件での問題の表示は、

「・「乗り換え割って? 不要になった脱毛器 ※光脱毛器・レーザー脱毛器のみ 除毛マシーンやシェーバーは不可 or 脱毛サロ
ン会員証 ※脱毛ラボ以外 を送ることで・・・ 3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFFで脱毛ラボ Home Edition(新古品※3)を購入できる超おトクなサービスです!」

・「※2 レビュー投稿なしのお場合は30%お値引き、レビュー投稿ありの場合は30%お値引き+15%ポイント付与で実質45%お値引き価格で購入いただけます」

というものでしたが、このように、「3/14までレビュー投稿で45〔※2〕%OFF」と表示すれば、3月15日以降は45%オフをしない、つまり、通常価格に戻す(0%オフにする)、という意味であると解するのが自然だと思います。

私見と軌を一にするといえるものとして、消費者庁の「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針」(将来価格ガイドライン)の第2-1では、

「事業者が、セール期間経過後に比較対照価格とされた将来の販売価格で販売するための合理的かつ確実に実施される販売計画・・・を、セール期間を通じて有している必要がある」

とされており、有利誤認表示とならないためには「比較対照価格とされた将来の販売価格」で販売しなければならないことを当然の前提にしているものといえます。

ほかにも前記担当官解説にはいろいろと問題があって、まず、

「レビューを投稿すれば、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

という部分ですが、実際に15%または20%のポイントは付与されていたわけですから、「15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」というのはまずいと思います。

これではまるで、15%または20%のポイントを実際には付与していなかった(のに付与するかのように表示していた)かのようです。

ここは正しくは、

「レビューを投稿すれば、キャンペーン期間に限り、代金の15%又は20%相当額のポイントが付与されるかのように表示をしていた」

というべきでしょう。

また、仮に同一内容かどうかを基準にする消費者庁の見解に立っても、

「付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはなく

一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識するものと考えられる。」

という理由付けは荒っぽすぎると思います。

ここで言っていることを文字どおりに理解すれば、同一性(有利誤認表示の成否)は、ポイントキャンペーンか、そうでない(例えば、単純な値引き、抽選でハワイ旅行プレゼント、記念品進呈、など)か、で判断し、ポイントキャンペーンであるかぎりは付与率にかかわらず(「ポイントが付与されることに変わりはなく」)、一般消費者は、同ーのキャンベーンであると認識する、といっているのです。

しかし、ポイント付与率(≒値引率)に5%もの差(15%と20%の比を取れば33.3%の差)があれば、顧客誘引力もずいぶんと違うでしょうから、それなのに「同一のキャンペーン」というのは、ちょっと無理なんじゃないかと思います。

もちろん私見でも、ポイントキャンペーンとハワイ旅行プレゼントは別のキャンペーンと考えています。

しかしそれは、「期間限定でポイントを付与する」という表示が、キャンペン期間経過後はポイントを付与しないという意味に解されるにとどまり、およそいかなるキャンペーンも行わないとまでは読めないからです。

ほかには、担当官解説は、

付与されるポイントに5%の違いがあるにせよポイントが付与されることに変わりはな(かった)」・・・①

と指摘する一方で、

「毎月繰り返されるポイント数に若干の変更があった場合でも、これらは同ーのキャンベーンと評価される」・・・②

とも言っており、

①では、ポイント付与率の違いは意味がなく、ポイントが付与されることに変わりがなければ違反なのだ、

とも取れる説明をしながら、

②では、「若干の」変更を超える変更であれば、同一キャンペーンと評価されず違反にはならないのだ、

とも取れるような説明をしており、いったいどっちなんだと言いたくなります(たぶん、②でしょうけれど)。

こんな大事なところの説明は、もうちょっと気を遣ってほしいものです。

このように、担当官解説には理論的な問題があるのですが、実務的には、15%と20%くらいの差でも同一のキャンペーンとみなされてくり返しが有利誤認表示になるということがはっきりしたことが大きいと思います。

これは、ポイントキャンペーンだけでなく、値引きキャンペーンでも同じでしょう。

ですので、キャンペーンの内容を多少変えれば違反を免れられると考えるのは、危ないと思います。

«JAROでの講演がReport JAROに載りました。

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