下請法上ボリュームディスカウントが代金減額にならないための要件として、下請法テキスト(令和6年11月版)p56では、
「特定の品目の一定期間A(例えば新年度の1年間)〔リベート対象期間〕における発注予定数量が、
基準となる過去の対応する一定期間B(例えば前年度の1年間)〔基準期間〕において実際に発注した実績を上回るとともに、
それに伴い、下請事業者が、割戻金を支払ったとしても、期間Aにおいて得る利益が期間Bにおける利益を上回ることとなる必要がある。」
と解説されています。
以下これを「利益増加要件」といいます。
また議論の単純化のために、さしあたり、発注単価や原材料費(変動費)は、基準期間とリベート対象期間とで同じとしておきます。
さて、この利益増加要件からはいろいろなことが読み取れます。
まず、
「特定の品目の〔リベート対象期間〕・・・における発注予定数量が、
〔基準期間〕・・・において実際に発注した実績を上回るとともに、
それに伴い、下請事業者が、割戻金を支払ったとしても、〔リベート対象期間〕において得る利益が〔基準期間〕における利益を上回ることとなる必要がある。」
とされており、リベート対象期間の「利益」が基準期間の「利益」よりも大きければよい、とされています。
逆に言うと、あくまで総利益が増えればいいということなので(「利益」といえば、総利益のことに決まっています。)、1個あたりの純利益や、1個あたりの粗利は、減ってもかまわない、ということです。
なので、基準期間よりいくら多く発注しても、それによる増収分を全額リベートで払い戻させることも可能、ということになります。
(あまり極端なことをすると買いたたきになりそうですが、さしあたり慮外に置きます。)
たとえば、基準期間に、製造原価が1個あたり30円の商品を、1個100円で、100個発注したとすると、下請事業者の利益は、7,000円です。
そこで、リベート対象期間に、1個100円で200個注文予定とすると、下請事業者の予定利益は14,000円となるので、200個注文することを条件に払い戻すリベートの額は最大7,000円まで許される、ということになります。
(厳密には、「上回る必要がある」ので、最大6,999円ですが。以下、同様。)
2倍も仕事をしたのに利益が変わらないというのはいかがなものかという気もしますが、下請法テキストがそれでよいといっているのですから、それでよいのだと思います。
ちなみに、このようなリベートにしても一見するほど下請事業者に酷ではないのは、注文が200個を超えればその分は下請事業者の増収になります。
しかも、親事業者がリベート獲得をめざしてがんばって発注したけれど199個しか発注できなかった、という場合には、下請事業者はリベートを払わなくていいので、増えた発注分はまるまる下請事業者の増収になります。
もちろん、200個をこえて発注があった場合は、リベートを払ってもなお、基準期間よりもリベート対象期間のほうが増益になります。
そもそもこのボリュームディスカウントの定めは、代金減額に該当するかどうかという、非常に深刻な場面での議論なので(下請事業者がよろこんで引き受けても違反になる)、これくらいゆるやかにボリュームディスカウントをみとめるほうがむしろ妥当であり、極端な場合は買いたたきで処理すればたりると思われます。
もちろん、そういうボリュームディスカウントに下請事業者が同意してくれるかどうかは別問題です。
次に、以上では固定費は考慮しませんでしたが、もし固定費を考慮するなら、「利益」は減価償却を控除した利益だというのが常識的な解釈でしょう。
そうすると、基準期間には減価償却があったので「利益」が少なめだった、という場合には、リベート対象期間は同じ数量の発注があっても増益になりますから、かかる減価償却がないことによる増益分もボリュームディスカウントに上乗せすることができると考えられます。
たとえば、基準期間が減価償却の最後の年で減価償却額が2,000円だったとして、変動費(材料費等)が1個あたり30円の商品を、1個100円で、100個発注したとすると、下請事業者の利益は、(100ー30)×100ー2,000=5,000円です。
そこで、リベート対象期間(減価償却はすでに終了)に、1個100円で200個注文予定とすると、下請事業者の予定利益は14,000円となるので、200個注文することを条件に払い戻すリベートの額は最大9,000円まで許される、ということになります。(下請事業者の利益は基準期間と同じ5,000円)
次に、下請法テキストでは、
「特定の品目の一定期間A(例えば新年度の1年間)〔リベート対象期間〕における発注予定数量が、
基準となる過去の対応する一定期間B(例えば前年度の1年間)〔基準期間〕において実際に発注した実績を上回るとともに、
それに伴い、下請事業者が、割戻金を支払ったとしても、期間Aにおいて得る利益が期間Bにおける利益を上回ることとなる必要がある。」
とされていて、「新年度」と「前年度」はあくまで例示(「例えば」)なので、基準期間とリベート対象期間が離れていても問題ありません。
たとえば、基準期間が2022年度で、リベート対象期間が2024年度でも、何の問題もありません。
ただ、あんまり古いと「合理的理由」に該当しなくなるかもしれません。
また、期間が1年でなければならない理由もないので、基準期間とリベート対象期間がそれぞれ1か月間、というのでも問題ないと思います。
ですので、たとえば基準期間が2024年1月で、リベート対象期間がその後1か月ずつ来る(同年2月、3月、4月・・・)、というパターンでもかまわないと思います。
ただ、「基準となる過去の対応する一定期間B」とされているので、基準期間とリベート対象期間は同じ長さであるべきでしょう。
たとえば、基準期間を2024年1月として、リベート対象期間を2024年4月~2025年3月の1年間とする(利益は12倍して算定する)のは、認められないと思います。
利益増加要件をみたすために実務上問題になるのは、下請事業者に当該品目からの利益の額を開示してもらわないとボリュームディスカウントの額を決められない、ということでしょう。
でも、ボリュームディスカウントはその条件と金額の定め方しだいではウィン・ウィンになりうることなので、そのあたりはお互い商売人としてうまく交渉するのだと思います。
なお、ここでのボリュームディスカウントの議論は、あくまで、発注金額を事後的に差し引く場合のものです。
ですので、たくさん発注したら発注金額を値引きすることをあらかじめ合意することは、ここでのボリュームディスカウントの話ではなく、何の問題もありません。
(もしかしたら、世の中で「ボリュームディスカウント」と呼ばれるものは、こちらがけっこう多いかもしれません。)
たとえば、1年契約をして、発注価格を、最初の100個までは1個1万円、次の200個までは1個9,000円、次の300個までは1個8,000円・・・というのは、何の問題もありません。
アマゾンジャパンが11月26日に公取委から立入検査を受けたと報道されています。
「カートボックス」に表示させる条件として、ほかの通販サイトとくらべて「競争力のある価格」(安い価格?)とさせていた、とか、アマゾンの物流サービスを利用すると「カートボックス」の表示で有利な扱いをしていた、ということのようです(優越的地位の濫用および拘束条件付き取引)。
法律論としては、他の通販サイトと比べて安い価格(MFN)が条件なら拘束条件付取引っぽくなりますが、たんに出品者の中で一番安い価格の出品者をカートボックスに表示するなら何の問題もないはずで、実際両者はほぼ一致するのではないかという気もして(アマゾン出品者の中で最も安い価格を提示していた出品者が、自身の楽天での価格よりもアマゾンでの価格が高いことを理由にカートを取れなかった、というようなことならアウトっぽいですが)、なかなか興味深いものがあります。
物流サービスの利用で有利な扱いをしていた点については、どれくらい有利なのかが1つの争点になりそうですが、感覚的には、ほんのちょっと有利にするだけでも拘束条件付き取引ないしは抱き合わせになりそうな気がします。
(ただし、一般的に立入検査についての報道は、公取委の大本営発表ですから、私の経験上も、あまりあてにならないということは申し上げておきたいと思います。)
ですが、私が注目したいのは、公取委が最終的にどう処分するのか、です。
アマゾンは2016年にMFNで立入検査を受け(のちに審査打ち切りで終了)、2018年には値引き補填の強要などの優越的地位の濫用で立入検査を受けています(のちに確約で終了)。
3度も立入検査を受けて、今度は排除措置命令だろうといいたくなりそうですが、確約の制度上はもう1回確約をすることが可能です。
というのは、「確約手続に関する対応方針」5では、
「他方,・・・[2]事業者が違反被疑行為に係る事件について独占禁止法第47条第1項各号に掲げる処分を初めて受けた日から遡り10年以内に,違反被疑行為に係る条項の規定と同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けたことがある場合(法的措置が確定している場合に限る。)・・・には,
違反行為を認定して法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があり,公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認めることができないため,確約手続の対象としない。」
とされているところ、ここでいう「法的措置」とは、同対応方針1で、
「排除措置命令又は課徴金納付命令」
という意味だとされているからです。
つまり、10年以内に確約認定を受けていても、制度上は再度確約が可能なわけです。
でも、制度上可能ということと、実際にそうするというのとは、別の話です。
さすがに10年以内に3回も立入検査を受けていたら、次は確約はないのではないでしょうか。
公取委の本気度が試されます。
とくに優越で課徴金の納付命令とかを出したら、最高裁まで争われるでしょうから、かなりの覚悟が必要であり、この点が最も注目されます。
最後に余談ですが、公取委の年次報告では、確約認定も「法的措置」としてカウントされています。
こういう二枚舌を使って見た目の件数を稼ぐというのは、せこいので、そろそろやめられてはいかがかと思います。
このたび、第一法規から、
『製造も広告担当も知っておきたい 景品表示法対応ガイドブック 改訂版』
が出ることになりました。
改訂版が出るということは、それなりに需要があったということかと思いますので、著者としては嬉しいかぎりです。
ほんとうはもっと早く出す予定だったのですが、私の筆がなかなか進まず、しかも書き始めるといろいろと直したいところが出てきて(改訂がこんなに大変だとは思ってませんでした・・・)、当初予定よりもずいぶんと時間がかかってしまいました。
でもそのおかげで、令和5年改正もステマ規制もカバーできたり、ステマ規制については措置命令事案も出たり、消費者庁の緑本(高居編著『景品表示法〔第7版〕』の引用を第7版のものに更新できたりと、結果的にはちょうどよいタイミングになったのではないかと思います。
初版の250頁から280頁にページ数が1割強増えましたが、まだ入門書として通読できる範囲かと思います。
初版のときは、「製造も広告担当も知っておきたい」というサブタイトルはあまり意識していなかったのですが(タイトルは最後に編集担当者さんに決めていただきましたので)、今回、それを意識したわけでもないのですが、最近特に個人的に関心のある不実証広告規制についてはそれなりに事例紹介を厚く書いたつもりで、製造や品質管理の担当の方に読んでいただくと、いろいろ納得できたり、逆に驚いたりするところもあるのではないかと期待(?)しています。
ぜひ一人でも多くの方に読んでいただければと思います!
チョコザップを運営するライザップに対して、2024年8月8日に、消費者庁から措置命令が出ました。
気がついた点をいくつかコメントしておきます。
まず、命令書は有利誤認とステマの2通あります。
ふつう、優良誤認と有利誤認とかであれば1通の命令書にするのに、ステマだと2通にするのはなぜなのか、よくわかりません。
もし事情をご存じの方がいたら教えて下さい。
(まさか命令の件数を稼ぐためではないと思いますが。。。ひょっとしたら対象役務が微妙に違うためか?)
次に、有利誤認のほうをみると、
「あたかも、本件役務のうち同表「サービスの種類」欄記載の各サーピスについて、1日24時間のうち、いつでも又は好きな時に利用できるかのように示す表示をしていた。」
のに、
「イ 実際には、本件役務のうち別表2「サービスの種類」欄記載の各サービスについて、利用できる最大の合計時間数は同表「利用できる合計時間数」欄記載の時間数であって、1日24時間のうち、いつでも又は好きな時に利用できるものではなかった。」
と認定され、別表2「「利用できる合計時間数」欄記載の時間数」をみると、たとえば一番短いセルフホワイトニングでは24時間中5時間しか使えなかったと書かれています。
これだけみると、たとえば朝の10時から午後の3時までしか使えない、みたいなイメージがわいてきて、そりゃけしからん、と思いますが、実はそうではなくて、1時間1枠20分しか予約できなくて、それが1日15枠計5時間だった、ということみたいです。
ということが、RIZAPの報道発表をみるとわかります。
たしかに24時間使えるとうたいながら5時間だといえばそうなのですが、消費者庁はもうちょっとていねいに命令書に書くべきではないでしょうか。
報道をみてわたしのような誤解(24時間中たった5時間しか使えないのはけしからん!という誤解)をした人は少なくないと思います。
ちなみにRIZAPの上記報道発表は、違反がおきた経緯をていねいに説明していて、とても好感が持てます。
ありきたりの「お詫び」の社告を出すだけ(その多くは、「これからも一層コンプライアンスに努めてまいります」という、これまでも努めていたけどもっと努めます、みたいな往生際の悪いもの)の多くの企業とは大違いです。
そういうていねいなRIZAPの報道発表に比べると、消費者庁の措置命令のほうこそ印象操作ではないか、という気すらします。
ただ、もう少しまじめに考えると、「24時間いつでも」と表示するかぎりは、ほんとうに24時間いつでも、でないと違反になる、ということですね。
今回の命令でも、一番長時間使えた「ゴルフ」と「ワークスペース」では、1日16時間使えても違反だと認定されています。
そして上記報道発表をみると、この2つのサービスは、1日中どの時間帯(0時台から23時台)のどこでも、1時間あたり2枠(1日48枠)まで予約できるものであったことがわかり、1枠20分(=16×60÷48)であったのだろうと推測できます。
深夜をふくめ1日中使えるんだし、厳密に「24時間」でなくても、それくらい使えてればいいんじゃないかという気もしますが、消費者庁の判断では、それではだめなのだということなのでしょう。
きっとこの考え方(1日中まんべんなく使えるかではなく、合計利用可能時間のみをみる考え方)だと、24時間中20時間使えるのでも、違反になるのでしょう。
「24時間」をうたうサービスの場合には、気をつけましょう。
次に、有利誤認については、SNSへのインフルエンサーの投稿が違反表示と認定されています。
これはステマ告示が施行されたときにもいろいろなところで話しましたが、実はステマ規制の有無にかかわらず、企業は自社が依頼したインフルエンサーの投稿内容についても全面的に責任を負わされます。
今回の命令では、
「Instagram内の〔インフルエンサーの〕表示内容を自ら決定している」
と認定されているので、表示内容にまちがいがあったときに表示内容を自ら決定したRIZAPが責任を負うのは当然ですが、内容を自ら決定している場合だけでなく、内容の決定をインフルエンサーに委ねている場合も広告主の表示になるので、同様に広告主が全責任を負います。
このことが今回実際にほぼ明らかになったといえ、これはインフルエンサーを使っている企業にとってはおそろしいことだと思います。
というのは、商品を提供して「好きなように書いて下さい」というのが仮にステマと判断されてもステマ告示違反だけですので、最悪「広告」と書いておけばすみますが、もしインフルエンサーの投稿内容に間違いがあったら優良誤認や有利誤認が成立する、ということです。
「広告」と書いてあったら、広告でないと反論するのはむしろ難しくなります。
ということは、企業は「好きなように書いて」というわけにはいかず、投稿内容の正確性をチェックしないと危ない、ということになります。
別の角度からいえば、インフルエンサーに「広告」と表記してね、とお願いする場合は、それだけではだめで、投稿の内容もチェックしないといけない、ということになります。
何でもかんでも「広告」と書いておけばいいだろう、というわけではないのです。
次にステマの命令ですが、命令書では、
「RIZAP は、本件役務を一般消費者に提供するに当たり、
第三者に対し、対価を提供することを条件に、本件役務についてInstagramに投稿を依頼したことによって当該第三者が投稿した表示を
RIZAPが依頼した投稿であることを明らかにせずに抜粋するなどして、・・・等と表示するなど、
別表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示媒体・表示箇所」欄記載の表示媒体・表示箇所において、
同表「表示内容」欄記載のとおり表示をしていたことから、
RIZAPは、本件役務に係る同表「表示内容」欄記載の表示内容の決定に関与しているものであり、当該表示は事業者の表示と認められる。
イ 前記アの表示は、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。」
と認定されています。
そして、「同表「表示媒体・表示箇所」欄記載の表示媒体・表示箇所」というのは、別表をみると、すべてRIZAPの自社ウェブサイトであったことがわかります。
つまり、インフルエンサーにインスタに投稿させた内容を抜粋して自社ウェブサイトに載せたのが、「表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められない」と認定された、ということです。
これについては同社のプレスリリースで、
「これまで多くのインフルエンサーへSNSへの投稿依頼を行なっておりますが、全ての投稿に対して、一般消費者にとって広告であることが明確にわかるように適切な表示を行っております。(Instagramの投稿における、「chocoZAP_officialとのタイアップ投稿」という表記等)
今回、それらの投稿内容の一部を抜粋し、自社媒体であるウェブサイトに表示をしました。弊社としては自社媒体であるウェブサイト上の表示であることから、一般消費者にとって当該表示内容が弊社の広告であることは判別できるものと考えていたため、「chocoZAP_officialとのタイアップ投稿」等、自社広告であることを改めて明確に示す表記は抜粋せずに表示をしておりました。」
と、正直に書かれています。
でも、自社サイトとはいえ、あたかも第三者の口コミであるかのような体(てい)で表示したらやっぱりステマになるでしょう。
ちなみに、実際、ステマガイドラインp6には、「事業者の表示とならない場合」の例として、
「キ 事業者が自社のウェブサイトの一部において、
第三者が行う表示〔例、インスタ投稿〕を利用する場合であっても、
当該第三者の表示を恣意的に抽出すること
(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、
そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)
なく、また、
当該第三者の表示内容に変更を加えること
(例えば、第三者のSNSの投稿には事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載してあるにもかかわらず、その一方のみの意見を取り上げ、もう一方の意見がないかのように表示すること。)
なく、そのまま引用する場合。」
という例があげられていて、その注の中で、
「(注) ただし、上記キについては、客観的な状況に基づき、事業者のウェブサイトの一部について第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、
当該ウェブサイトの一部〔注・「当該」は「ウェブサイト」ではなく、「ウェブサイトの一部」にかかるようです〕のみをもって当該事業者の表示とされない〔当該ウェブサイトの当該一部が当該事業者の表示でないとされる、の意か?〕ことを示すものであって、
当該ウェブサイトの一部を含めたウェブサイト全体が当該事業者の表示とされることは当然にあり得る。
なお、この場合、当該ウェブサイト全体は、通常、当該事業者の表示であることが明らかであるといえる。」
と説明されていますが、この部分は第三者の投稿が「第三者の自主的な意思による」場合の例なので、そもそも対価を払っている本件の場合には関係ありません。
なおついでに、ですが、上記引用部分で、
「当該第三者の表示を恣意的に抽出すること
(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、
そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)
なく」
とあえて断り書きをしていることからすると、逆に言えば、純粋に第三者の(=報酬の支払等のない)投稿の場合であっても、
「第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出」
した場合には、
「そのこと〔=恣意的に抽出していること〕が一般消費者に判別困難な方法で表示する」
とステマになることには注意が必要です。
というか、これはちょっと厳しすぎるのではないかと思います。
というのは、第三者の投稿を自社サイトで引用する場合には、自社に好意的なコメントだけを事業者が選んで掲載していることくらい、言われなくても消費者にはわかるはずだからです。
それなのに、
「これは当社に好意的な投稿だけを恣意的に選んだものです」
とか表示しないとステマになる、というのは常識的な感覚に反していると思います。
そこで私の意見をまとめると、
(チョコザップのように)報酬を支払った第三者の投稿を利害関係のない第三者の投稿のように自社サイトに転載するのはステマになるといわれても仕方ないけれど、
(ステマガイドラインのように)利害関係のない第三者の投稿から好意的な投稿だけを選んで自社サイトに転載するのをステマだというのは行き過ぎだ、
ということです。
こうやって両者ならべると、両者のちがいは案外微妙かもしれず、「自社サイトなんだから当然広告(≒好意的なものだけ選んでいる)とわかるでしょう」というライザップの認識も、あながち的外れではなかった(それだけに要注意)、ということなのかもしれません。
消費者契約法施行規則28条では、
「(公表する情報)
〔規則〕第二十八条 法第三十九条第一項の内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 〔①〕判決
(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。)
又は
裁判外の和解
に当たらない事案であって、
〔②〕当該差止請求に関する相手方との間の協議が調ったと認められるもの
の概要
二 当該判決、裁判外の和解又は前号の事案
に関する改善措置情報の概要」
と規定されています。
ちなみに、元になっている消費者契約法39条1項というのは、
「(判決等に関する情報の公表)
第三十九条 内閣総理大臣は、消費者の被害の防止及び救済に資するため、適格消費者団体から
第二十三条第四項第四号から第九号まで
〔4号判決言い渡し・仮処分決定告知、5号上訴提起、6号判決仮処分決定確定、7号裁判上の和解、8号その他の訴訟手続終了、9号差止請求の裁判外の和解〕
及び第十一号
〔その他差止請求に関し内閣府令で定める手続に係る行為がされたとき〕
の規定による報告を受けたときは、
インターネットの利用その他適切な方法により、速やかに、差止請求に係る判決
(確定判決と同一の効力を有するもの及び仮処分命令の申立てについての決定を含む。)
又は裁判外の和解の概要、当該適格消費者団体の名称及び当該差止請求に係る相手方の氏名又は名称その他内閣府令で定める事項を公表するものとする。」
という規定です。
この消費者契約法28条施行規則は、平成28年に改正されたもので、その前は、
「(公表する情報)
〔改正前規則〕第二十八条 法第三十九条第一項の内閣府令で定める事項は、当該判決又は裁判外の和解に関する改善措置情報の概要とする。」
という規定でした(もとの法39条1項には変更なし)。
つまり、平成28年改正前は、消費者庁が公表するのは、
①法39条1項で定められていた消費者契約法23条4項4~11号(10号を除く)の事由と、
②規則28条で定められていた改善措置情報
(差止請求に係る相手方から、法第二十三条第四項第四号から第九号まで及び第十一号に規定する行為に関連して当該差止請求に係る相手方の行為の停止若しくは予防又は当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとった旨の連絡を受けた場合におけるその内容及び実施時期に係る情報。規則14条)
の概要
だったのが、平成28年改正後は、
③裁判外の和解に当たらない事案であっても相手方との間の協議が調ったと認められるもの(改善措置情報の概要も含む)
も公表の対象になった、ということです。
そこで、「協議が調った」とはどういう意味なのかが問題になりますが、まず、裁判外の和解は平成28年改正前から公表の対象でしたので、この「協議が整った」というのは、条文にもあるとおり、「裁判外の和解に当たらない事案」であることが大前提です。
そしてこの点については、規則改正のパブコメ回答4番で、
「適格消費者団体が相手方事業者に対して改善の申入れを行い、事業者が改善を行う場合には、消費者契約法第41条に基づく請求及びこれに基づく改善のみならず、様々な段階、経緯、類型がある。
事案としても様々なケースが想定されるところ、「相手方との間の協議が調ったと認められるもの」という規定は抽象的であり、どのようなケースが「協議が調った」こととなるのか不明確である。
また、「協議が調ったと」の認定主体が消費者庁であると考えられるところ、規定が抽象的であるため、適格消費者団体の判断と消費者庁との判断とが異なることが想定される。
そのため、適格消費者団体としては、どのようなケースが公表されるのか不明であり事業者との交渉時にも支障が生じる上、事業者にとっても想定外の事態となることも考えられる。
そのため、適格消費者団体が実際に行っている申入れと事業者の対応の状況等を十分に踏まえた上で、どのような場合、どのような内容を公表対象とするのか慎重に検討することが必要である。
今回の改正案についてはその検討を経ていないため、反対せざるを得ない。」
とのコメントが寄せられ、これに対して消費者庁が、
「消費者契約法第39条第1項の規定は、本来適格消費者団体による差止請求権の行使の成果といえるものを幅広く公表することを主眼としており、
適格消費者団体による差止請求権の行使の結果として相手方と協議が調った場合はその概要等を公表すべきと考えられることから、
原案の考え方を維持させていただきます。
なお、協議が調ったものと認められる事案とは、
適格消費者団体と相手方事業者との間で相互の譲歩なしに合意が成立したと認められる事案のことをいい、
相手方事業者との協議が続いている事案や
相手方事業者の対応を待っているような状況にある事案、
今後の差止請求権の行使の可能性は否定しきれないが一旦協議を終了した事案
などは、これには該当しません。」
と回答しています。
このパブコメの議論を理解するポイントは、消費者庁の回答が、裁判外の和解というのは、民法695条で規定されているとおり、
「(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。 」
というものだ、という前提に立っていることです。
つまり、「互いに譲歩」しないものは、裁判外の和解に該当しない、ということです。
なので、平成28年改正であらたに公表の対象に加わった、
「判決・・・又は裁判外の和解に当たらない事案であって、当該差止請求に関する相手方との間の協議が調ったと認められるもの」
というのは、「互いに譲歩」なしに合意した事案だ、というわけです。
民法を知らない人にとっては、「和解」というものに、互いに譲歩しないで合意した場合が含まれないというのは奇異に思われるかもしれませんが、民法を勉強したことのある人にとっては常識です(条文に書いてありますので)。
つまり、平成28年改正前は、互いに譲歩して合意した場合は消費者庁の公表の対象になったけれど、互いに譲歩しないで合意した場合(一方が他方の言いぶんを丸呑みした場合)は公表の対象になっていなかったのを、平成28年改正で、そのような丸呑みの場合も公表することになった、ということです。
ところで、この点に関して、
玉置貴広「適格消費者団体からの要請に対する企業側の対応」(NBL1244号・2023年6月号、p56)
では、
「よって、上記〔パブコメ回答4番の〕見解に照らせば、〔適格消費者〕団体と企業が協議した上で、団体と企業の主張を調整した妥協案のような契約条項や表示内容は、『相互の譲歩なしに合意が成立した』とはいえないため、公表対象外となろう。」
と解説されていますが、残念ながらそれは間違い、ということになります。
というのは、「『相互の譲歩なしに合意が成立した』とはいえない」場合は、もろに裁判外の「和解」の定義にあたりますから、平成28年前からすで公表の対象になっていたからです。
もちろん、平成28年改正後から現在も、公表の対象です。
というわけで、企業のみなさまは、譲歩してもしなくても、協議が整えば消費者庁の公表の対象になる、と理解しておきましょう。
ときどき誤解される方がいらっしゃるようなのですが、優越的地位の濫用において濫用行為該当性を否定するために常に「直接の利益」が要求されるわけではありません。
優越的地位の濫用ガイドラインでは、濫用行為該当性をまぬがれるために「直接の利益」が要求されているのは、
協賛金(第4-2(1))
従業員等の派遣の要請(第4-2(2))
返品(第4-3(2)返品)
だけです。
審判決にまで目を広げても、トイザらス事件審決で、減額を原資とした値引きに直接の利益があれば濫用にならないとされているのがあるくらいです。
あとは、長澤先生の優越本〔第4版〕p331に、給付内容の変更を受入れさせることの見返りとして相手に利益を与えることが約束されている場合があげられているくらいです。
けっして、すべての濫用行為で「直接の利益」が要求されるわけではありません。
たとえば、「取引の対価の一方的決定」(第4-3⑸ア)では、
「(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価又は著しく高い対価での取引を要請する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,
正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注25)。
この判断に当たっては,対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか,他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか,取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか,通常の購入価格又は販売価格との乖離(かいり)の状況,取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に判断する。」
とされており、基準は「著しく低い対価又は著しく高い対価」であって、「直接の利益」という言葉はどこにも出てきません。
もし対価の決定で直接の利益を要するとしたら、値上げしたときには値上げ分に相当する利益を還元することが必要ということになり、事実上値上げが一切できないことになってしまい、不当であることがあきらかです。
そもそも優越ガイドラインで「直接の利益」が出てくるところでは、たとえば協賛金の場合では、
「当該取引の相手方が得る直接の利益(注9)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり,当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注10)」(第4-2⑴)
という書き方になっていて、「直接の利益」はあくまで「合理的であると認められる範囲を超えた負担」かどうかの判断の一要素でしかありません。
では、どういう行為類型に「直接の利益」が関係するのかを考えてみると、主には、不当な経済上の利益の提供要請型(協賛金と従業員派遣)ですね。
返品も、ほんらい契約上の義務ではない負担をさせる(=濫用者に対して利益を提供させる)という意味では、不当な経済上の利益の提供要請型といえます。
減額を原資とした値引きも同じようなものでしょう。
これらの行為は、取引相手方に提供させる利益が契約上のほんらいの義務ではないので、基本的には提供させるべきではなく、かといって一切許されないとするのも窮屈であり、ではどんな場合ならOKなのかなと考えてみると、提供させた経済上の利益で取引相手方に直接の利益があるならいいんじゃないかという基準が浮かんできた、ということなのでしょう。
対価の決定も、値上げに応じることが「契約上のほんらいの義務」であるわけではないのですが、そうはいっても対価は取引の根幹ですから、経済上の利益の提供要請みたいに、付随的な行為(場末の飲み屋のイメージ)というわけにはいきません。
むしろ逆に、優越ガイドラインが「直接の利益」に言及しない行為類型をみてみると、たとえば、「1 独占禁止法第2条第9項第5号イ(購入・利用強制) 」(第4-1)では、
「(1) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務の購入を要請する場合であって,当該取引の相手方が,それが事業遂行上必要としない商品若しくは役務であり,又はその購入を希望していないときであったとしても,今後の取引に与える影響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
(2) 他方,取引の相手方に対し,特定の仕様を指示して商品の製造又は役務の提供を発注する際に,当該商品若しくは役務の内容を均質にするため又はその改善を図るため必要があるなど合理的な必要性から,当該取引の相手方に対して当該商品の製造に必要な原材料や当該役務の提供に必要な設備を購入させる場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。 」
とされていて、「事業遂行上必要としない」かどうかが基準とされていて、こちらのほうが購入強制では「直接の利益」を云々するより明確ですから、これでよいのであり、これをあえて「直接の利益」と読み込む必要はないでしょう。
また、同じ経済上の利益の提供要請でも「(3) その他経済上の利益の提供の要請」(第4-2)では、
「ア 協賛金等の負担の要請や従業員等の派遣の要請以外であっても,
取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,取引の相手方に対し,発注内容に含まれていない,金型(木型その他金型に類するものを含む。以下同じ。)等の設計図面,特許権等の知的財産権,従業員等の派遣以外の役務提供その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって,
当該取引の相手方が今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注15)。」
については、具体的な基準がなにもありませんが、これは、提供される利益の種類がさまざまなので一概にいえないからこうなっているのでしょう。
たとえば、特許を無償提供させることの「直接の利益」といわれても、ピンときません。
ただそれだけのことです。
ちなみに上記引用部分に続けて注15の説明があり、そこでは、
「(注15) 無償で提供させる場合だけでなく,取引上の地位が優越している事業者が,取引の相手方に対し,正常な商慣習に照らして不当に低い対価で提供させる場合には,優越的地位の濫用として問題となる。この判断に当たっては,「取引の対価の一方的決定」(第4の3(5)ア)に記載された考え方が適用される。」
とされており、不当に低い対価で経済上の利益を提供させる場合(特許を安く買いたたくような場合)には、対価の一方的決定の「著しく低い対価又は著しく高い対価」の基準が適用されることが明記されています。
つまり、同じ不当な経済上の利益提供要請型であっても、「直接の利益」の基準がしっくりくるものと、「著しく低い対価又は著しく高い対価」がしっくりくるものがある、ということです。
もちろん、注15にはあたらない、第4-2⑶の利益も当然あり、それについては、ガイドラインでは具体的な基準は示されていない、ということになります。
そのほかの、受領拒否や支払遅延なども、「直接の利益」に触れていませんが、受領拒否が「直接の利益」になるなんておよそ考えられないので、それでよいのです。
どうして何でもかんでも「直接の利益」を持ち出したがる人が出てくるのかなぁと考えると、「直接の利益」という語感が、なんとなく具体的な基準を立てているようで説得力があるように聞こえるから、あるいは、印象的で耳に残りやすいから、ということではないかと想像します。
あと、何でもかんでも「直接の利益」を持ち出して説明する人は、ガイドラインでいう「直接の利益」と「代償措置」の話を混同しているのではないかと想像します。
つまり、「代償措置(相手方に通常生ずべき損失の補償)」(たとえば従業員派遣で、派遣のために通常必要な費用を負担すること。第4-2⑵イ)は、濫用行為該当性を否定する方向にはたらく要素になります(長澤先生の優越本152頁)。
でも、これと「直接の利益」は、まったく別の話です。
少なくとも優越ガイドラインは別に扱っています。
なので、実務家としては、ガイドラインで使っているような意味で「直接の利益」という言葉を使うべきなのであって、代償措置の意味で「直接の利益」などという言葉を使うべきではありません。
実務家である以上、学者ではないのですから、自分で好きなように概念を変えてはいけないのです。
もしそういう言葉の使い方をするなら、はっきりと「私のいう『直接の利益』はガイドラインとは別物です」と断るべきでしょう。
2024年4月18日に、「確約手続に関する運用基準」が出ました。
独禁法の確約のガイドラインと瓜二つで、既視感のある記述がくり返されていますが、注目は確約の対象事件です。
すなわち、景表法の確約ガイドライン5(「5 確約手続の対象」の⑶(「(3) 確約手続の対象外となる場合」)では、
「①違反被疑行為者が、
違反被疑行為に係る事案についての調査を開始した旨の通知を受けた日、
景品表示法第25 条第1項の規定による報告徴収等が行われた日
又は
景品表示法第7条第2項若しくは第8条第3項の規定による資料提出の求めが行われた日
のうち最も早い日
から遡り10 年以内に、法的措置〔注・措置命令又は課徴金納付命令〕を受けたことがある場合(法的措置が確定している場合に限る。)、
及び
②違反被疑行為者が、
違反被疑行為とされた表示について
根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っているなど、
悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合には、
違反被疑行為等の迅速な是正を期待することができず、
違反行為を認定して法的措置をとることにより厳正に対処する必要があることから、
一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めることができないため、
確約手続の対象としない。」
とされています。
ちなみに独禁法の確約ガイドラインの5(「5 確約手続の対象」)では、
「他方,
[1]入札談合,受注調整,価格カルテル,数量カルテル等のように,独占禁止法第3条,第6条又は第8条第1号若しくは第2号に関する違反被疑行為であって,
かつ,
独占禁止法第7条の2第1項
(独占禁止法第8条の3において準用する場合を含む。)
に掲げるものに関する違反被疑行為
〔注・不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約であつて、商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務の供給量若しくは購入量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの〕
である場合,
[2]事業者が違反被疑行為に係る事件について独占禁止法第47条第1項各号に掲げる処分を初めて受けた日から遡り10年以内に,違反被疑行為に係る条項の規定と同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けたことがある場合
(法的措置が確定している場合に限る。)
及び
[3]「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」(平成17年10月7日公正取引委員会)に記載のとおり,
一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な違反被疑行為である場合
には,違反行為を認定して法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があり,公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認めることができないため,確約手続の対象としない。」
とされています。
独禁法の確約ガイドラインの[2]のさかのぼって10年以内の違反については、以下の経緯から、確約手続施行前に違反した場合も含む(一種の遡及効)が明らかです。
すなわち、独禁法の確約ガイドラインの原案では、該当箇所は、
「他方,【中略】
②事業者が違反被疑行為に係る事件について独占禁止法第 47 条第1項各号に掲げる処分を初めて受けた日から遡り 10 年以内に,
違反被疑行為に係る条項の規定と同一の条項の規定に違反する行為を行ったことがある場合
(法的措置が確定している場合に 限る。)
【中略】 には,
違反行為を認定 して法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があり,公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認める
ことができないため,
確約手続の対象としない。」
とされていたのが、パブコメ(16番)で、
「法的措置後に違反行為を繰り返した者でない場合は,
確約制度の対象とすべきと考えられるため,
確約手続の対象としない場合のうち②については,
「(法的措置が確定している場合に限る。)」
という文言を,
「(法的措置が確定している場合であって違反被疑行為が当該法的措置後に行われた場合
(当該法的措置前から継続する場合を含む。)
に限る。)」
と変更すべきである。 (学者等)」
というコメントがなされ、これに対して公取委が、
「御指摘の記載は,
繰り返し違反行為に対する課徴金制度の制度の独占禁止法の関係関係規定〔注・現行独禁法7条の3〕と同様の記載としたものです。
そのことが明確になるように修正を行いました。」
と回答しました。
ここで参照されている独禁法7条の3第1項(くり返し違反による課徴金の加重規定)では、
「第七条の三
前条第一項の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、
当該事業者が次の各号のいずれかに該当する者であるときは、
同項(同条第二項において読み替えて適用する場合を含む。)中「合算額」とあるのは、
「合算額に一・五を乗じて得た額」とする。
ただし、当該事業者が、第三項の規定の適用を受ける者であるときは、この限りでない。
一 当該違反行為に係る事件についての調査開始日から遡り十年以内に、
前条第一項又は第七条の九第一項若しくは第二項の規定による命令〔注・課徴金の納付命令〕
(当該命令が確定している場合に限る。)、
次条第七項〔リニエンシーにより課徴金を命じないこととした旨の通知に関する規定〕
若しくは
第七条の七第三項〔罰金刑またはすそ切りにより課徴金納付を命じない旨の通知に関する規定〕の規定による通知
又は
第六十三条第二項の規定による決定
(以下この項において「納付命令等」という。)
を受けたことがある者(当該納付命令等の日以後において当該違反行為をしていた場合に限る。)」
とされており、公取委回答は、「原案はこれと同様なのだ。」と回答したわけです。
その結果、独禁法の確約手続ガイドラインの成案では、
「他方,【中略】
②事業者が違反被疑行為に係る事件について
独占禁止法第 47 条第1項各号に掲げる処分を初めて受けた日から遡り 10 年以内に,
違反被疑行為に係る条項の規定と同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けた ことがある場合
(法的措置が確定している場合に 限る。)
【中略】 には,
違反行為を認定して法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があり,公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認めることができないため,確約手続の対象としない。」
と修正されました。
つまり、過去10年以内に起こった事実が、原案では、
「・・・違反する行為を行ったことがある場合
(法的措置が確定している場合に 限る。)」
だったのが、成案では、
「・・・違反する行為〔注・前回の違反行為〕について法的措置を受けた ことがある場合
(法的措置が確定している場合に 限る。)」
に変更されたわけです。
変更後の成案が、独禁法7条の3第1項の、
「〔課徴金の納付命令〕
(当該命令が確定している場合に限る。)、
・・・を受けたことがある者
(当該納付命令等の日以後において
当該違反行為〔注・今回の違反行為〕をしていた場合に限る。)」
に沿った内容になっているのか(むしろ、学者コメントのほうが7条の3第1項に沿っているのではないか)、という疑問はありますがそれはさておき、ここで大事なのは独禁法の確約ガイドラインの10年以内のくり返しが独禁法の10年以内のくり返しによる加重規定を参考にしているということです。
そして、独禁法の10年以内のくり返しによる加重規定は、加重規定が導入される前の違反行為も含むと解されています(文言に反しないし、過去の行為を加重して罰するのではなく今回の行為を加重するだけなので、「遡及効」というわけでもないため)。
ということは、独禁法の確約ガイドラインのさかのぼって10年の違反は確約手続導入前の違反も含まれる(つまり、確約導入前で10年前に違反していると、確約の対象にならない)、ということです。
そうすると、独禁法の確約ガイドラインと瓜二つの景表法の確約ガイドラインでも同様に解される(確約導入前の違反もカウントされ、10年前なら確約の対象にならない)、ということになります。
次に、確約の対象から、
「②違反被疑行為者が、
違反被疑行為とされた表示について
根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っているなど、
悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合」
が除外されています。
この、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」というのが何を意味するのかが問題です。
まず、痩せるはずのない健康食品を痩せると謳って販売するのが、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている
」に該当することは、
争いないでしょう。
私はよく講演で、不当表示を、
①虚偽だと知りながら表示していた(痩せないダイエット食品)
②表示の意味を誤解・曲解していた(「芝エビ」を小さなエビと曲解するケース)
③「実際」が変わったのに、表示を変えるのを忘れた
④本来予定した「実際」を作れなかった(能力不足、材料不足)
⑤「実際」の証拠がなかった(不実証広告規制で争って負けるケース)
に分類して説明しますが、この分類にしたがえば、①ですね。
これに対して、「②表示の意味を誤解・曲解していた(「芝エビ」を小さなエビと曲解するケース)」が、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている 」にあたるのかというと、かなり微妙で、ケースバイケースでしょう。
というのは、この②には、ほとんど故意で①に近いものもあるからです。
でも、「芝エビ」を小さいエビの意味で使っていた、というケースなら、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」とまではいえないと思います
「③「実際」が変わったのに、表示を変えるのを忘れた」というのは、メーカー希望小売価格が廃止されたのを知らずに小売店が「メーカー希望小売価格」と表示して二重価格表示をしていたサンドラッグ事件のようなケースですが、これも通常はうっかりミスですから、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」にはあたらないでしょう。
「④本来予定した「実際」を作れなかった(能力不足、材料不足)」というのは、最初は作れると思って作り始めているわけですから、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」の「当初から」の要件をみたさず、確約の対象となるとみていいでしょう。
「⑤「実際」の証拠がなかった(不実証広告規制で争って負けるケース)」は、これまたケースバイケースで、たとえば翠光トップラインのシーグフィルムや大幸薬品のクレベリンのケースは、裁判で負けはしたもののそこそこ証拠はあったので、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」にはあたらないでしょう。
でもそういうケースは取消訴訟で争うので、そもそも確約にはならない、というジレンマもあります。
(もちろん、裁判になったら勝てる可能性があると思っているけれど確約で終わらす、というケースもないわけではないでしょうから、そういうケースなら、確約になる可能性はあるでしょう。)
これに対して、タバクール(ニコチンがビタミンに変わるとうたっっていた商品)の事件や、「バリ5」(携帯に貼ると電波が強くなることをうたっていた商品)の事件は、訴訟で争ったもののほとんどまともな証拠がなかったので、もし当事者が確約を希望しても「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」にあたるとして、確約の対象外になるかもしれません。
反面、消費者庁としては、ややこしい事件を訴訟で争われるより確約にしてしまおう、というインセンティブがはたらくかもしれず、理屈ではわりきれない面もありそうです。
さて、以上は確約の対象についての注目点でしたが、もう1つ注目すべき点として、返金の取扱いがあります。
すなわち、確約ガイドラインの「6 確約計画」の「(3) 確約措置」の「イ 確約措置の典型例」の「(オ) 一般消費者への被害回復」では、
「例えば、被通知事業者が違反被疑行為に係る商品又は役務を購入した一般消費者に対し、
その購入額の全部又は一部について返金
(景品表示法第10 条第1項に定める「金銭」の交付をいう。)
することは(注2)、
一般消費者の被害回復に資すること、及び自主返金制度が設けられた法の趣旨を踏まえると、
措置内容の十分性を満たすために有益であり、重要な事情として考慮することとする。
(注2)返金の手段、方法等は、事業者の自主的な判断に委ねられるが、
自主返金制度において定める内容が参考となる。」
とされています。
まず、注2の記載から、ここでの「返金」は、景表法10条の返金措置にかぎられないことはあきらかです。
では、その他の返金もみとめられるとして、このガイドラインの規定により、確約が認められるためには返金が必須になるのでしょうか。
この点については、独禁法の確約ガイドラインでは、「6 確約計画」の「(3) 確約措置」の「イ 確約措置の典型例」の「(カ) 取引先等に提供させた金銭的価値の回復」で、
「例えば,被通知事業者が取引先に対して,
商品又は役務を購入した後に契約で定めた対価を減額することや,
当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させることが違反被疑行為に該当する場合には,
被通知事業者が収受した利得額や当該取引先の実費損害額を当該取引先に返金することが
措置内容の十分性を満たすために有益である。」
とされています。
これはあきらかに優越的地位の濫用を念頭に置いた規定ですが、優越の事件では、被害回復がされる確約とそうでない確約があります。
はっきりした基準はわかりませんが、お金で被害が測りやすいものが「金銭的価値の回復」の対象になっているように思われます。
そうすると、景表法でも、お金で被害が測りやすいもの(たとえば、レストランが仕入先にだまされてA4ランクの牛肉を「A5ランク」と表示して売ったような場合)は返金が事実上要求され、そうでないものは要求されない、ということになりそうです。
痩せる健康食品の場合は商品が無価値なので全額返金でいいように思いますが、そういうケースは「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている 」に該当し、上述のとおりそもそも確約の対象外です。
場合によっては、「根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っている」場合であっても確約をエサにして返金をさせるという方法もあったのかな、と思いましたが、そういう業者(=社会的信用を重んじない業者)は、全額返金するくらいなら3%の課徴金を払う方を選ぶのでしょう。
というわけで、実際の運用がどうなるのかいろいろと興味が湧いてくるガイドラインでした。
下請法の3条書面は、親事業者自身が交付してもいいですし、代理人が交付しても構いません。
このことは、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」p4で、
「なお、親事業者は、下請法の書面の交付や書類の作成・保存について、自身の代理として、第三者に行わせることも認められる。
ただし、フリーランスとの間で下請法上の問題が生じた場合は、当該第三者ではなく、親事業者がその責めを負うこととなることには留意しなければならない。」
とされていることからあきらかです。
(ちなみにこれは、文章からあきらかなように、下請法に関する説明であって、フリーランス適正化法に関する説明ではありません。でもきっと、フリーランス適正化法の書面交付義務も同様に解するのでしょう。)
また、当局の見解はさておいてふつうに考えてみても、3条書面は(たとえば選挙の投票のように)その性質上代理になじまないということもありません。
下請事業者の保護にも支障はありません。
あえて下請法の条文に根拠を求めるのであれば、下請法10条には、
「(罰則)
第十条
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。
〔以下省略〕」
と規定されており、親事業者の代理人が3条書面を交付しなかったときに罰金の対象になると規定されています。
ということは、代理人が3条書面を交付できることは下請法も当然に前提としていると解されます。
そうしないと、10条1号の代理人に関する部分が空振りになってしまいます。
実務上の注意点を付け加えるなら、代理人が交付することはあらかじめ下請事業者に伝えておいたほうが親切でしょう。
ただし、あらかじめ伝えるのが必須ではありませんし、代理ですから、本人の単独行為であり、代理交付することについての下請事業者の同意も不要でしょう。
もちろん、代理ですから、顕名が必要であり(民法99条1項)、ちゃんと代理人として交付していることが3条書面自体からわかるようにしておくべきでしょう。
実務では、発注者自身が3条書面をタイムリーに交付できないということが時々あり、代理交付が明示的にみとめられたことは喜ばしいことだと思います。
それにしても、こんな大事なことは、仮に当たり前であっても、下請法講習テキストに書いたほうがいいのではないかと思います。
フリーランスのガイドラインなんて、下請法を普段あつかっているひとは、ふつう読みませんから。
ジュリスト1600号の事例速報に、
「電力会社とガス会社の間のガス供給等に関するカルテルの事例(公取委令和6・3・4発表)」
という記事を書きました。
執筆依頼を受けたときは、警告と排除措置命令の両方が出ていて、両者の限界を分析してみたらおもしろいかなぁというくらいに思っていたのですが、読んでみると排除措置命令の市場画定が興味深く、なかなかおもしろい事件だったと思います。
詳しくは記事を読んで頂ければと思いますが(といっても、事例速報なのであまり詳しくは書けていないのですが。笑)、似たような市場画定をしたニチイ学館に対する2022年10月17日排除措置命令と比べるとおもしろいと思います。
つまり、似たような市場画定(=個別案件を束ねて1つの市場にしている)なのに、ニチイ学館に比べて本件は狭い市場になっています。
これは、事実関係が両事件で異なっただけなのかもしれませんし(ただ、いろいろ想像してみましたが、その可能性は低いと考えています)、ひょっとしたら、本件の代理人の先生がうまくやった、ということなのかもしれいと思いました。
ご一読頂けると幸いです。
なお、本号の特集の最初の記事を、当事務所(日比谷総合法律事務所)の代表である多田敏明弁護士が執筆しています。
商品の買い取りに関する景品提供が景表法の対象となるのかに関する定義告示運用基準3⑷が、2024年4月18日に改正されました。
改正前は、
「⑷ ⾃⼰が商品等の供給を受ける取引(例えば、古本の買⼊れ)は、「取引」に含まれない。」
とされていたのに対して、改正後は、
「(4) 自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、
当該取引が、
当該物品等を査定する等して当該物品等を金銭と引き換えるという役務
を提供していると認められる場合には、
「自己の供給する役務の取引」に当たる。」
とされました。
この運用基準3⑷の規定は直接的には景品類に関する規定なのですが、表示規制についても同じに解さざるをえないところ、そうすると、商品買い取りサービスについては不当表示規制が適用されないということになり、けっこう大きな問題でした。
私は、商品買い取りサービスは買取という役務を提供しているのだから景表法の対象だと考えるべきだと考えていたのですが、今回運用基準が改正され、おおむねそのような方向になりました。
ですが、この運用基準は、すべての商品買い取りサービスが景表法の対象となるとまで割り切っているわけではなく、
「当該物品等を査定する等して当該物品等を金銭と引き換えるという役務
を提供していると認められる場合」
に限定しています。
しかし、理論的にも実質的にも、これはいかにも中途半端な感じがします。
私は、消費者から商品を買い取るサービスはすべて、
「物品等を金銭と引き換えるという役務」
とみて、景表法の対象にできると考えています。
景表法の条文で「自己の供給する商品又は役務」とされているのは、「供給を受ける」ことを排除するという明確な意図に基づいて立法されたというよりは、なんとなく語呂がいいから、あるいは、物を売る場合しか頭に浮かばなかったから、そうなっているだけというだけで深い意味はないと思います。
こう言っては身も蓋もありませんが、昭和30年代の法律なんて、そんなもんだと思います。
なので、買取サービスを対象にしても必ずしも文言には反しないと思います。
実質的にも、消費者を相手にした買取業であるかぎり、保護する必要があるのは明らかです。
それに、「査定」を事業者が消費者に提供する役務だというのは、理屈のうえでも無理があります。
というのは、ここでの「役務」は、「役務の取引」を構成する概念であり、当該役務に対して消費者が対価を支払うことが当然に前提とされていると解するのが自然あるいは当然です。
でも、買取サービスにおいて、「査定」というサービスに対価を支払っているという認識の一般消費者はまずいないでしょうし、買取業者側も「査定」というサービスを提供しているとは考えていないと思います。
あくまで、消費者は、「買い取ってくれるというサービス」と認識しているのであって、「査定してくれるサービス」とは認識していない、ということです。
買取業者も、査定をサービスとして提供しているという認識ではなく、不良品をつかまされて自分が損をしないために査定しているのでしょう。
このように査定がサービスではないと考えることは、買取サービスにおいて通常、「査定料」が明示的に買取代金から控除されることがないこや、査定の結果買取金額で折り合いが付かず買取が成立しない場合でも査定料だけ別途請求されるわけではないこととも整合的です。
このように考えると、買取サービスではお金は消費者から買取業者に支払われるので、課徴金を課すことができませんが、それは景表法8条で課徴金が「売上額」にかかることになっているせいなので、しかたないでしょう。
(ちなみに、独禁法7条の2第1項では、2号で「購入額」にも課徴金がかかるようになっています。)
それを、「査定料」相当額を算定してそれを基準に課徴金を課すというような無理な解釈をする必要もないでしょう。
いずれにせよ、消費者からの買取サービスで何ら査定もしないものはほぼないでしょうから、改正定義告示運用基準のもとでは、おおむねすべての買取サービスに景表法が適用されると考えるべきでしょう。